僕が初めて友達でオナニーをした翌日は雲一つ無い晴天だった。まるで神様が「よくある事だから気にするなよ」と白い歯を見せつけてくるような青空だったが、元々何も気にしていないので余計なお世話だった。
自転車を漕いでいると少しばかり汗ばむほどの陽気で、周りの登校中の生徒の多くは上着を脱いでいた。衣替えの時期もそう遠くない。
教室に到着し窓際の自席に着くまで、僕が朝の挨拶を交わしたのは親と校門で服装チェックをしていた教師だけだった。僕の方から「話し掛けられると困る」「出来れば一人にしておいてほしい」オーラを出しているのだから仕方無い。どうして我ながらこうも面倒臭い人間になってしまったのか。
やはり幼少の頃に何かあったような気がするが、記憶があまりに断片的で散らばったパズルのようになってしまっている。そのピースの一つに砂場があるのは確かだった。
談笑で包まれる教室の中、朝礼の時間までする事も無いのでぼうっと窓の外を見ていると、すぐ隣で「佐藤君。ちょっと席借りてもオッケー?」という声が聞こえた。佐藤君というのは僕の隣の席の男子で、背が高い天然パーマのお調子者だ。顔立ちも整っているので女子にも人気があるらしい。机に腰掛けて、複数の友達と話していたようだった。
そんな彼が、「お、おう。全然良いぜ」と声を上擦らせている。彼女に話し掛けられて顔に喜色を浮かべたのが露骨に見て取れた。
「サンキュッ」
そんな思春期の男子の揺らぎなど気にも留めない気さくな返事は、どこか愛らしい。彼女としては余分な装飾を付け加えた気は一切無いのだろうが、その飾り気の無さがまた一人の男子を魅了するのだろう。
椅子を引く音がすると同時に、僕の肩がぽんぽんと叩かれる。振り向くと鈴音の人差し指が僕の頬に軽く突き刺さっていた。
そういうフェチは僕には無いが、彼女の指は本当に綺麗だと思う。その細さはどこか儚く、すらりと伸びたフォルムは艶めかしさすら感じる。爪もきちんと切り揃えられていて、派手なマニキュアも塗られていない。
「おーはよ。ツッチ」
目を瞑り、口端を大きく持ち上げた大胆な笑顔は今朝の太陽のように心地良い。
「おはよ」
指が突き刺さったまま、親と教師以外に初めて朝の挨拶を口にする。
「どしたのツッチー。なんか顔歪んでるよ」
「そりゃあ鈴音の指が頬を持ち上げて片目が細くなってるからね」
「なるほど。一理ある」
そう言いながらも指はそのままだ。
「鈴音がネイルしない人で助かったよ。危うく貫通するところだった」
僕も変顔のまま応える。
「たまに付き合いで簡単なのはするけどね。でもほら、ずっと維持するのが大変じゃん? あたしずぼらだしさ」
「いや鈴音は結構マメな方だと思うよ。薬局で買い物する時は絶対ポイントカード使うし。この前も清算中に中々見つからないからガサガサ探し続けてたよね」
「あ、れ、は、結局ツッチーが持ってたんじゃん!」
ぐっ、ぐっ、と僕を責めるように指を押し込むとようやく彼女の身体が僕から離れる。
僕らのこういうやり取りや触れ合いは日常茶飯事である。鈴音の肩越しに、佐藤君とその一味、いや、クラス中の男子からの嫉妬と羨望の視線を感じる。しかしそれはあくまで、鈴音が遊んであげている犬猫に対する感情と同じである。僕という一人の男子は認識されていない。
今だけあの犬猫になりたい、と思う事はあっても、土屋巧が羨ましい、とはならない。それくらい僕らは自他共に男女のコンビとして認識されていない。言わば魔法少女とそれをサポートするマスコットキャラに近いのかもしれない。
男子から見てそうなのだから、女子からすれば、「鈴音がまたぬいぐるみで遊んでいる」くらいだろう。当初は「何で鈴音があんなに冴えない男とあそこまで親しげなのか」と訝しんでいた。僕に話し掛ける彼女の友人も居たが、僕は一貫して「孤独が好きです」オーラを放ち続けたので、今となってはもう関心すら失っているだろう。
鈴音は他の生徒と同様に、上着を脱いでブラウスの袖を捲っていた。両脚を開いた座り方をしていたが、脱いだカーディガンを膝に敷いて広げていたのでガードはばっちりだ。相手が僕だけならともかく、公共の場ではそういうところはしっかりしている。ともかく椅子ごと更に僕へと近づいた。椅子同士が触れ合う。
二年という年月を掛けて、徐々に縮まったその距離感は僕達の間では自然と言えた。
彼女の僕に対するパーソナルスペースの狭さは家族の域に達しているし、僕も不思議とそれを受け入れている。いくら徐々に縮まったとはいえ、こうも近づかれても何も思わない人間は、鈴音以外に果たして存在するのかと思う事はある。
「昨日のロードショー観た? ほら、ツッチーの部屋で観せてもらったアニメの続編」
「いや観てない。もう何回もDVDで観ててセリフも憶えてるくらいだからね。CM入るのも好きじゃないし。でも名作だよ」
「戦闘機が飛んできたけど嘘でしたってシーンの緊張感凄いよね。あとね、あたしが好きなシーンはね……」
「あれでしょ? 緊急出動が掛かって奥さんに止められても『仕事より大事なものを失う』って行っちゃうシーンでしょ?」
「そう! そこっ!」
当ててもらったのが嬉しいようで、鈴音は顔を大きく綻ばせて僕を指差した。
「使命感と葛藤するシーン好きだよね。鈴音は」
彼女は両腕を組んで目を瞑った。
「あそこはね~……奥さんの気持ち考えちゃうんだけどね~……しかもお腹に二人目居るってさ~」
「あれが堂島さんならどうしてた?」
鈴音はきょとんとした表情を僕に向けると、照れ臭そうにはにかんだ。堂島さんが話題に上がると彼女はほんの少し雰囲気が変わる。
「え~……やっぱ行かないでって引き止めちゃうかな。えへへ」
はにかみながら頬を掻く彼女は可憐だと素直に思った。親友のこういう一面を見るのは何だか胸が温かく感じられる。鈴音も三つ葉ちゃんの話を振る事が多いのだが、きっとこんな気持ちになっているのかもしれない。
何より堂島さんは僕から見ても本当に素敵な男性なので、鈴音を幸せにしてくれるかと疑う余地はない。見た目だけでなく物腰などもオシャレな人なのだ。それでいて控え目で、まさに大人の男性といった佇まいに僕も憧れの感情を抱いている。他人に興味が湧く事すら少ない僕が、である。
とにかく僕達は昨日のテレビを見たか、などという朝の教室らしい会話を楽しんだ。昨日の出来事などお互い全く頭に無かった。それを意識させたのは、鈴音の胸元に落ちていた一本の抜け毛だった。
「ここ、髪の毛付いてるよ」
僕が自分の胸を指で差して伝えると、「おっと。あんがと」と鈴音がそれを払った。そこで僕達はようやく昨日の事を思い出す。
鈴音はにやりと口端に茶目っ気をたっぷり含ませると、「おっぱい大きいとさ、ここに載っちゃうんだよね」と僕をからかうように見つめた。
「そう。大変だね」
「巨乳博士のツッチーには釈迦に説法だろうけど」
鈴音はちゃんとデリカシーがあるので、流石にこんな会話は声を潜める。そもそも周囲に人が居る時はあまりしない。それでも彼女は『それ』がとても喜ばしい事だったみたいで口にせずにはいられないようだった。
昨日友人をオカズにオナニーしたというのにドギマギするどころか、事もあろうに忘却すらしていたのだ。そんな僕達の関係を、彼女は改めて身に染みて幸せを感じているように見えた。
彼女はぐっと顔を寄せて、「にしし」と小さく笑った。
「……どでした?」
「何が?」
「照れんなよ。このっ、このっ」
肘で僕を軽く突く彼女も、若干ではあるが恥じらいが見えた。僕も流石に少々気恥ずかしいが、視線を逸らしたりどもったりするほどではない。
「大変ご馳走様でした」
彼女は殊更にやりと頬を緩ませた。
「ツッチー的に合格ラインだった?」
親友にも認定された巨乳博士の名が、厳正な判断を下さないわけにはいかなかった。
「馬鹿言うなよ。あんなの絶品レベルだよ」
鈴音はくつくつと声を押し殺して笑うと、「もしかして一回じゃ満足出来なかったり?」と囁く。
「三回した」
むしろ僕は誇るように簡潔に返すと、彼女は両手を叩いて笑い、にやつきながらジト目で僕を睨んで「このっ! ケダモノ! 野獣!」と僕の脇腹を指で突き続けたのだった。
「まぁ元気で何より。そういえばさっきの映画なんだけどさ、更に続編あるんだよね? DVD持ってる?」
「勿論。でも三作目はちょっと万人にお薦めしづらいんだよね。観念的というか哲学的というか。主人公達の出番も殆ど無いし」
「マジか~。でも一応観たいかも。今日学校半日で終わりだし、放課後行ってもオッケ?」
僕は頷く。あんな会話をしておきながら、僕達は何事も無かったかのように日常会話へと戻っていた。そこに無理をした様子はお互い全く無い。
異性である事は間違いない。しかし段差や壁は見当たらず、性差を全部含めて僕達の友情は成立している事を、今回の件は立証してしまった。
異性でもただの友達でいられる関係性。それは鈴音が心から望んでいたものだった。だからこそ彼女はそれをより強固にしたい、そうであってほしいと心のどこかで願っているようにも見える。
放課後、僕の部屋で件の映画を観終わると、鈴音は難しい顔をしたまま、「うーん。確かにちょっと難解かも」と自分なりに内容を咀嚼しているようだった。
「エンターテイメントではないかな」
「うん。でもあたしこういう雰囲気も結構好きかも。閉塞感とか退廃的みたいな? なんか他にお薦めある?」
そう言って彼女は床に座ったまま伸びをした。僕は彼女に貸すDVDを手に取る為に立ち上がる。
「はいこれ。とりあえず同じ監督の作品。一つはアニメで一つは実写。僕はそれぞれ本当の命とは何か、みたいな死生観がテーマになってると解釈しているよ」
「あんがと。早速今夜観てみる」
今日の日差しは終日陽気で、彼女はブラウスの袖を捲ったままだ。少し暑かったのか、映画の途中で胸元のボタンを一つだけ外していたようだった。DVDを手渡す時に、その胸元に初めて気が付いた。
「あぁごめん。暑かった? 言ってくれれば空調掛けたのに」
「いやそこまでじゃないよ。それにあたしクーラーあんま好きじゃないし」
普通の男女の友達ならそれくらいの露出への視線でも多少は動揺するのかもしれないが、僕達は平然と言葉を交わす。そしてやはり流れるように、全くもって自然に、そういう話に移る。
「いきなり暖かくなったよね。今日のブラちょっと色ついてるからカーディガン脱ぎたくなかったんだけどな。大丈夫? 透けてない?」
友達の胸部を凝視するが他意は無い。
「大丈夫だと思うよ」
「本当? 良かった。まぁ透けてたとしても、もう見られるのツッチーだけだし良いんだけど」
淡々とした様子で彼女は言葉を続ける。
「今日のブラさ、結構高いやつでオシャレなんだよね。薄いピンクなんだけど刺繍とか細かくて」
そこまで言うと、「にしし」と悪戯心を含めた笑みを浮かべ、「良かったら見る?」と問い掛けてきた。
断る理由も無いので、僕は珍しくおどけるように「是非生で拝見出来れば光栄です」と、正座して頭を下げた。
「うむ。よいよい。頭を上げい」
鈴音もそのノリで声色を作ると、口元は照れ臭そうにきゅっと閉じて、視線はやや上目遣いで僕の反応を探るようにして、ブラウスのボタンを上からゆっくり外し始めた。
それが鳩尾辺りで止まる。そこを起点にVの字にブラウスがはだけると、彼女の言う通り、細かい刺繍が施された薄桃色のブラジャーが露わになった。
質の高そうな下着が覆っているのは、更に格の高さを見せつける乳房だった。
無理矢理寄せて上げているわけでもないのに、その谷間はぴっちりと閉まって奥が深い。手刀を差し入れたら殆ど飲み込まれてしまいそうに思える。
そして何より僕の脳髄を激しく揺らしたのは、生で見る乳房の迫力である。それも普通の胸じゃない。極上中の極上。視覚情報だけでずっしりと重そうなのがわかる。
パンパンに中身が詰まっているようなはち切れそうな質感に、無意識に生唾を飲み込んでいた。肌の表面を目にするだけで、ツルツルすべすべといった擬音が鼓膜をくすぐる気がする。
鈴音は唇を尖らせ、少しばかり不安そうに、「で、どうよ? 博士的に」と言った。
僕は改めて生唾を飲み込み、忌憚の無い意見を口にする。
「友達贔屓抜きで、僕が今まで画像や映像で見てきたどれよりも素晴らしいと思う」
手を伸ばせば届きそうな臨場感を抜きにしても、鈴音のそれは紛れもない魔性の美爆乳だった。
「にしし。やったぜ」
彼女は少し演じるように両手でガッツポーズをする。小さな動きだったが、それだけでもGカップはぷるんと揺れ、むにゅりと寄せられた。
僕は股間に息苦しさを覚え、腰を揺らすように座り方を調整した。その動きの意味を理解した鈴音が、「……もしかして元気になっちゃった感じ?」と聞くので、僕は「……そんな感じ」と答える。
彼女は視線を横に向け、再度唇を尖らせると、両手の指を膝の上でもじもじとさせた。
「……あたしだけ見せてんの、なんか不公平じゃない?」
その小声には、やはり僕への性的関心など皆無だった。僕の身体が見たいわけじゃなく、友達同士で曝け出し合いたい。男友達ともそんな関係でありたいという彼女の気持ちが伝わる。
僕はそれに応える。その気持ちに共鳴する。僕も別に彼女に身体を見せつけたいなどという願望は無い。
唯一の親友ともっと距離を縮めたい。それは見終わった映画の意見を交換する行為と全く同じ事だと思った。ただ性的な高揚が伴うかどうかの有無だけで、それは僕達の間でさほど問題ではないのだ。
胡坐をかいたままベルトを外し、一瞬だけ腰を浮かせるとズボンと一緒に下着を下ろして、勃起した男性器を露わにする。鈴音の筆舌しがたい胸の形状や質感が、天を衝くような怒張を完成させていた。
鈴音の表情が強張った。しかしそれも瞬きする間の事で、にへらと頬を緩ませると、僕の膝をぱんぱんと叩く。
「やるじゃん」
「何がだよ」
意味不明の称賛に思わず僕は吹き出してしまう。
「なんかめっちゃ男の子っぽい。いかつい」
そして僕らは目を合わすと、何だかニヤニヤと笑い合ってしまう。流石に性器を見せるのは恥ずかしい。
お互いに頬が紅潮しているが、この恥じらいの雰囲気は修学旅行で好きな子を言い合った時の連帯感と達成感に近いのだろう。例えば僕に恋人が出来たとして、同じ事をしてもこんな淡い気持ちにはならないだろう。
鈴音も同じ事を思ったようだ。
「やばいねあたし達。マジでチョー親友だね」
そして再びぱんぱんと僕の膝を叩く。
「そんじゃさ、ね。見せてよ。ツッチーの男の子タイム」
それは相手との関係性がどうこうではなく普通に恥ずかしい。しかし男友達同士で肩を並べてアダルトビデオを見ながらオナニーをするとしたら、それは確かに親友っぽいエピソードに思える。
相手が女だから出来ない、というのは僕と鈴音が望む友情ではない。
「この状況だと必然的に鈴音がオカズになるんだけど」
竿を握りながら確認するように言う。鈴音は微かに俯いて男根をちらちら盗み見しながら、僕の膝を指で円を描くようにイジイジした。
それから意を決したように顔を上げると、わざとらしく二の腕でぎゅっと胸を寄せると、やはりわざとらしい口調で、「どうぞ召し上がれ」と可愛く言った。そしてすぐに「……なんつって」と照れ臭そうにはにかんだ。
むぎゅりと押し潰されるように寄せられた乳房は、もはや視覚の暴力だった。大人びたブラジャーも相まって、本能を直接拳で殴ってくる色香が僕の手を上下に動かした。
初めて目の前で見る男の自慰に鈴音は真顔で見入るようにしていたが、少しずつニヤニヤと頬を緩ませると、口を開いた。
「……お~っと。ツッチー選手。早速男の子タイムを開始しました。友達のおっぱいをガン見しながらおちんちんをゴシゴシしております」
その表情と口調に、照れ隠しが混じっているのは明白だった。
「実況されるとか罰ゲーム以外の何ものでもないよ」
僕は笑いながらも手を止めない。鈴音も「ごめんごめん」と控え目に笑った。そしてオナニーを続ける僕の膝を指でつんつんと突きながら、気恥ずかしそうに、それでも興味深そうに小声で聞く。
「いつもこんな感じでしてるの? 速さとか体勢とかさ」
「大体そうだよ」
「……少し声が上擦ってるのウケるんだけど」
「しょうがないだろ」
彼女は「にっしっし」と愉快げに笑うと、「……気持ちいい?」と聞いてきた。
「凄く気持ちいい」
鈴音がこくりと唾を飲み込むのがわかった。そしてやや上目遣いで、「……あたしの事オカズにして、おちんちんシコシコするの気持ちいい?」と改めて確認するように尋ねた。
「鈴音でオナニーするの、今までで一番ってくらい気持ちいいよ。こんなに勃起するの初めてだ」
僕は男根を扱きながら、しっかりと彼女の視線を真正面で迎えてはっきりと言う。彼女の気持ちを誠実に受け止めたかった。
「マジか」
鈴音はくすぐったそうに俯いて、そしてまた僕の膝を指でぐりぐりと押し当てた。
「……あのね、あたしね、前にこっそり風の噂で聞いちゃった事があってね」
その声が少し寂しげというか真面目だったので、僕は思わず手を止めようとしたが、「あ、シコシコは続けてていいよ」と彼女が言ったのでお言葉に甘えてさせてもらった。
「クラスの男子がね、あたしでオナニーしてるんだって」
それはそうだろうなと思った。おそらく彼女の男友達、もしくは同級生の殆どがそういう妄想をしてるだろう。鈴音が『男の子タイム』という言葉を使わなかったのは、きっとそこには不快感と嫌悪感しか無いからだ。
「正直気持ち悪いと思った。それで態度変えるのも嫌だけど……やっぱり男女の友情って成立しないのかなって凹んじゃってさ」
そこで彼女は一旦言葉を区切って、そしてすぐに続けた。
「それでね、昨日写メとか送ったじゃん? あれ本当は結構びびってた。ツッチーなら大丈夫だって信じてはいたんだけど、もしツッチーが相手でも気持ち悪いって思っちゃったらどうしよって」
顔を上げた彼女の笑みは安堵で満たされていた。
「でもね、何とも思わなかったんだ。今日の朝もびっくりするくらいその事意識しなかった。あたしマジでそれが嬉しかったんだ。お互い異性って認識した上で、ちゃんと友達になれるんだって。あ、別にツッチーが男として魅力無いとかそういう事じゃないからね? 普通だったらオナニーに使われるとかマジ無理だから」
そして彼女は憑き物が落ちたように晴れやかに笑うと、演技掛かった仕草で胸を張って得意げに鼻を鳴らした。
「なので光栄に思いなさい。ツッチーはただ一人、あたし公認であたしをオカズに男の子タイムを楽しむ事を許可するから。毎日でも励むが良いぞ」
僕は彼女の感動を十分理解して、その意義を汲んだからこそ淡々と応えた。
「いや毎日は流石に飽きるから色々ローテーションするけどね」
その言葉に鈴音は「ちょっ」と言ったきり、身体を前に倒して僕にもたれかかり、激しく引き笑いをしながら僕の肩を何度か叩いた。呼吸困難なほどに爆笑している彼女へ、更に追い打ちを掛ける。
「公認したんならおっぱい見せてほしいんだけど」
鈴音は僕の肩に額を押し付けたまま声を上げて大笑いした。彼女が望んでいるのはこういう関係なのだ。身体を見せ、オナニーして、それでも冗談を言い合って本気で笑い合える関係。
彼女は体勢を元に戻すと、僕の頭頂部を手の平でパシンとはたいて目元の涙を拭った。
「あ~~~…………マジでツッチー最高だわ」
そして胸を張って、「はい、ご所望のおっぱいですよっと。どうぞ気兼ね無く抜いて頂戴よ」と不敵な笑みを浮かべる。そんな彼女を見て僕も友達って良いなと心の底から気分が高揚した。オナニーがこんな風に楽しいものだと初めて思った。
僕達は見つめ合いながら、穏やかに笑い合い、「あたし達ってさ、絶対これからもずっと親友だよね」とお互いの変わらぬ関係性の継続を確信した。
それを僕の身体が悦んだのか、鈴口からとろりと我慢汁が漏れた。それを確認した鈴音が「にしし」と笑う。
「ツッチーったらエッチなお汁漏らしちゃってんの。やーらし」
「ただの生理反応をそんな風に言う方がいやらしいと思います」
「シコりながらも小学生みたいな減らず口を叩くツッチーであった」
普段と何ら変わらない空気で言葉を交わす。
「そういえば、やっぱり三つ葉ちゃんでもそうやって男の子タイムしたりするの?」
「いや、それは一切無い。逆に絶対無理」
「純愛すなぁ」
「そもそも基本的に知ってる人って気まずくて無理なタイプだね。僕は」
「……あたしは?」
「鈴音はそういう意味でも特別かも。なんというか、凄く気安い関係だから」
僕の言葉が嬉しかったのか、彼女は「にしし。そっか」と無垢にも見える笑みを浮かべた。
鈴音は他の男子からはまず性欲や異性愛ありきでオカズにされていて、彼女はそれに不快感を覚えていた。僕の場合は前提が友情で、そして実際致した後もその気持ちが変わらなかった。その事実こそが彼女にとって僕と他の男子に確たる一線を引いたのだろう。
興が乗った彼女は女の子座りしたままミニスカートを摘まみ、「ちらっ、ちらっ」と一瞬めくっては戻し、一瞬めくっては戻した。その度に、ブラジャーと同じく薄桃色のショーツと白く輝く太股の付け根が見えた。
鈴音は明らかに脚が長かった。すらりとした細いふくらはぎがそう見せる一因なのは確かだ。なのに覗き見える太股はそんな細さのふくらはぎから想像も出来ないくらいむっちりと肉付きが良く、思わず野生の本能を誘われるほどに官能的な肉感だった。
そしてそんなムチムチした太股の付け根に食い込み気味だったショーツを纏う下腹部も、中背ではあるが華奢に見える鈴音の印象からは遠いしっかりした腰付きで、座った状態でも桃尻である事がわかる。
だらだらと流れる我慢汁が潤滑油となり、くちゅくちゅと卑猥な自慰の音を立てると、鈴音がにまにまと口元を緩ませるがどこか余裕が無い。
「……ツッチーのおちんちんさ、エッチな音立てすぎでしょ」
僕がもう軽口を返せる状態ではなく、射精がそう遠くない事を知ると、彼女から笑顔が消える。微かに顎を引いて、甲斐甲斐しい雰囲気で僕に問う。
「……してほしい事とかある?」
それはやはり友愛だけで構成された言葉だった。恋人相手だとまた違う口調になるに違いない。
「……もっかいスカートの中見てみたい」
鈴音は下唇をきゅっと噛んだ。その表情は普遍的な女子というか人間としての恥じらいを感じる。相手がどうこう以前に、単純にスカートを捲り上げて下着を見せるという行為は恥ずかしいに違いない。チラチラとしか見せなかったのは、僕をからかう以外にそういう機微があったのだろう。
しかしそんな恥じらいと同じくらい、親友の力になりたいという彼女の友情は強かった。
今度は無言のまま、射精が近い僕の目を見ながら、ゆっくりとスカートを捲し上げた。下腹部を露出したまま、スカートを下ろさない。
「やばい……こっちのが恥ずかしいかも」
彼女は一瞬だけ照れ笑いを浮かべると、「……興奮する?」と尋ねた。その視覚から得られる幸福と、湧き上がりつつある射精感に僕は必死に頷く。
「……鈴音の太股と腰付きもエロすぎ」
「それ彼氏にも言われる。まぁ、じっくり見ちゃってくださいよ、お客さん」
多少は緊張が解けたようで、無邪気な笑みで茶化すように言った。
手淫が鳴らすくちゅくちゅという水音の間隔は、もう後が無い事を鈴音に知らしめる。
「……おちんちん、もうすぐな感じ?」
「……うん」
鈴音はスカートを摘まみ上げたまま甲斐甲斐しく言う。
「……何でも言って良いからね?」
親友のオナニーを応援したいという純粋な気持ちが、あくまで友達として僕に気持ち良く射精を終えてほしいと願っている事が伝わる。僕もそれに甘える形で、縋るような口調で言う。
「……最後は、おっぱい見ながらイキたい。ちょっと前屈みになって、谷間強調してみて」
「こう?」
彼女は僕を見つめたまま、僕の願望通りにやや肩を落とし、胸の下で腕を組んだ。ただでさえ豊満な乳肉が、重力と下から持ち上げられる力に挟まれる。結果、むぎゅっと深い谷間を作ると同時に大きく盛り上がった。
そのむにゅりとした形状変化は、柔らかさの象徴とも言えるほどに艶めかしかった。
「……あと、乳首見たい」
その体勢を維持したまま咄嗟に左右同時には無理だったようで、胸の下でクロスした右手の親指を、左胸のブラジャーに差し入れて外側にずらした。
生で見る鈴音の乳首はやはり綺麗だった。現実味が薄くすら感じるほどに可憐だ。
「……鈴音の乳首さ、冗談かと思うくらい可愛くてエロいよ」
彼女は照れ臭そうに笑みを浮かべる。
「……良いオカズになる?」
「最高……というかもう限界。どうしよう。鈴音の制服に掛かっちゃうかも」
「……でもシコシコ止められないよね? ツッチーのおちんちん、もうパンパンに詰まった精子出したくて仕方無い感じじゃん」
僕が否定出来ないでいると、彼女は僕に罪悪感を抱かせない為に、「にしし」と軽快に笑った。
「いいよ。服は洗えばいいし、そもそもツッチーの精液なら汚いものじゃないんだし。そんなガチガチに勃起してるのに我慢させらんないよ。そのまま精子出しちゃお?」
激しい射精感が尿道を掛け上げる。
「……でも」
なるべく迷惑を掛けたくないという気持ちを、彼女自身が溶かしてくれる。
「ほら、ツッチー、あたしの乳首見てシコって? 勃起ちんぽ楽にしてあげる事だけ考えよ? おちんちんに溜まった精液、いっぱいビュービューって吐き出して気持ち良くなっちゃお?」
その言葉に甘えるように、鈴口を白い衝動がこじ開ける。
「あぁっ、鈴音っ」
びゅるるるるっ!
限界まで膨張した男根が跳ねるように震えて、ほぼ真上にゼリー状の精液を射出した。
「やっ、すっご…………ツッチーの射精、マジで噴火みたいじゃん」
友達に見守られながら果たす絶頂はちょっとくすぐったいけど、一緒に馬鹿をしてるみたいで楽しくもあった。
「おちんちん頑張ってんじゃん。もっと出せるんじゃない? ほら、ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっ」
「……射精してるちんこ応援されるの恥ずかしいからやめてほしい」
絶賛射精中にそう嘆願する僕の言葉に鈴音はけらけら笑うと、両手を小気味よく叩いて「ほらもっと! もっと! もっと!」と飲みのコールのように声援を飛ばした。
「本当やめてって」
僕は笑いながらも彼女のコールに合わせて、びゅっびゅ、と精液を飛ばした。それは危惧していた通りに鈴音のブラウスやスカートに飛び散り、特にスカートにはヨーグルトを零したような液溜まりが出来ていた。
それでも鈴音は気にするなと言わんばかりに満面の笑みを浮かべて、「いっぱい出せたね」とまるでゲームで高得点を出した友達を称賛するように労ってくれた。
射精がようやく収まると、鈴音が身体を伸ばしてティッシュ箱を取って「ほい」と気軽な様子で渡してくれた。オナニーの後片付けを女友達に手伝ってもらうのは何とも不思議な感じがしたが、割りと心地は良かった。
「へ~。ツッチーってそんな風におちんちん拭くんだ~。へ~。あ、ちょっと絞るんだね~。なるほどね~」
鈴音はからかうように後始末を覗き込み、僕は照れから顔を背けた。そんな僕を彼女がとても楽しそうに肘で突きながら「二人でやる男の子タイム、楽しかったね」と屈託の無い笑みを浮かべた。まぁ確かにそうかもしれない、と思いながら男根に付着した精液をティッシュで拭き取っていくのであった。
そんな僕を見ながら、鈴音の瞳が猫のような好奇心の光を灯す。
「……ね。あたしも触ってみていい?」
言うが早いか右手で半勃起状態の陰茎を握る。
「わ、まだちょっと硬い」と、若干頬を紅潮させながらも楽しげな鈴音とは裏腹に、初めて他人の手に性器を触れられた僕は、その甘い痺れに思わず肩を強張らせた。他人の温もりや柔らかさが、こんな刺激を生むなんて想像だにしていなかった。男根が再び、ぐぐぐ、と硬度を増していく。
友達の手の中で勃起させていくのは、何だかとても気恥ずかしかった。僕はくすぐったさと恍惚が混じった顔で鈴音を見つめると、彼女はにやにやとした視線を返す。
「にしし。今更照れない照れない。今度は、あたしがシコシコしてあげる」
鈴音の手がゆっくり上下し、その細い指の内側がカリを優しく撫でると、あっという間に男根が完全に勃起し直す。それを視覚と触感で確認した鈴音が、「若いっすね」とニヤついた。
扱く手つきをやや粗雑にすると、「友達の手でシコられるの気持ち良い? んん~?」とあからさまに僕をからかう。返事をする間も無く我慢汁が垂れると、鈴音の指に絡みついてにちゅにちゃと音を立てた。
友達の手による滑らかな摩擦は自慰とは比較にならない快楽で、僕は思わず両手で床に爪を立てて背中を仰け反った。そんな僕に対して鈴音は益々口角を持ち上げるが、その小悪魔的な微笑みに性的な意味合いは感じない。あくまで友人同士で悪ふざけをしている楽しさに見える。
「ツッチーのおちんちんってさ、濡れるの早くない?」
潤滑油を得た鈴音の手の平が上下する度に、頭の中でパチパチと火花が散る。
「……知らないよ」
「え~。絶対早いって。あとこの形。反り返りすぎだし、カリもエラ張りすぎだし、それにこれ」
鈴音は左手も使い、根本から両手で包み込むように握った。その際に、左手の薬指に嵌めている指輪がひんやりとした。
「ほら、両手で握っても亀頭が丸ごと出るもん。これがエロチンポでなくて何だというのかね?」
両手で握ったまま、くちゅくちゅと上下に擦る。少しでも気を抜いたら空に舞い上がってしまいそうな快感。
「……外見だけで内面を判断するのは良くないと思います」
「でも実際ツッチー巨乳大好きじゃん。PCにも動画が順調に増えていってるし」
お宝フォルダは流石にデスクトップには置いてないが、そこまで厳重に隠しているわけではないので、たまに鈴音が僕のPCを使う時には筒抜けになっている。といっても鈴音相手なら隠すつもりもない。
「……それは、男なら大体好きだろ」
鈴音は両手で扱きながら、言葉を選ぶように間を置いてから聞いてくる。
「でもツッチーってさ、あたしの胸ちらちら見ないよね。見ていいよって言ったらガン見してくるのに」
彼女のスタイルでは、普段から男友達からの好色な視線も絶えないだろう。だが僕は彼女の手の中で男根を射精感でパンパンに膨張させながらも即答する。
「そりゃあ友達なんだから、目を見て喋るだろ」
僕としては当然の想いであるその言葉が心底嬉しかったのだろう。彼女は口元をもにゅもにゅさせるような微笑みを見せると、一転やはり悪ふざけを仕掛けるような悪友めいた笑みと声を向ける。
「……にしし。もっかい親友が射精するとこ見~せて」
恥じらいと友人の願いに応えたいという気持ちがせめぎ合う中、彼女の両手の中で男根が破裂しそうになると、鈴音の携帯が鳴った。着信元の表示を見ると、彼女の雰囲気が淡い桃色で包まれるのを感じた。
「あ、彼氏だ」
鈴音は僕に向けて、「しーっ」と右手の人差し指を唇に当てると、その手で携帯を取った。左手は男根を握ったままだ。
「もしもし? なになに?」
友達とはしゃいでいる時とは明らかに色の違う高揚を感じ取る。そのテンションは手コキにも影響を及ぼし、如何にも友達の性処理といった大雑把な上下運動から、指を絡みつかせるような艶めかしい動きへと変わった。
「今? ツッチーと遊んでる」
彼女のその言葉と感情には何の裏表も無い。僕らは今、確かに遊んでいるだけなのだ。
「今度の日曜? うん。全然大丈夫」
鈴音の鼓動が恋の調べを鳴らすのがわかった。
左手の手つきがより妖艶になり、人差し指の腹で亀頭を撫で回される。トロトロと流れる我慢汁が彼女の指輪にも垂れていたが、彼氏との電話に夢中な鈴音はそんな事に気付けないし、僕も口を開くと喘ぎ声を上げてしまいそうだった。
「マジで? やばい。めっちゃ楽しみ」
おそらくデートの誘いなのだろう。鈴音の声は小さく抑えられ、いじらしい愛らしさを見せる。それと同時に人差し指の腹がくにくにと鈴口を優しく押し込み、その刺激で精液が尿道を駆け上がるのを感じた。
僕は視線で鈴音に訴えかける。
「あ、ちょっとごめんね」
彼女は堂島さんに断りを入れると、携帯を持った右手を膝元に下ろし、すっと顔を僕の耳元に寄せて囁いた。
「声、我慢出来る?」
僕は唇を真一文字に結んだまま頷くと、鈴音は「じゃあこのままぴゅっぴゅしちゃって良いよ」と軽快に囁き、顔の位置を戻した。携帯を耳元に戻しながら僕を見つめ、『いっぱい射精してね』と無言で唇を動かした。
「ごめんごめん。ツッチーが箪笥の角に足ぶつけちゃったみたいで」
そして堂島さんとの会話に戻りながら、左手で上下に扱く。
「それじゃ、うん、細かい行き先とかはまた二人で決めよっか……え~。あたし? あたしはいつも通りだよ。二人でならどこでも良い派。あはは。『俺も一緒』はダーメ。うん、うん……じゃあね。またね……え~、今日はそっちから切ってよ。この前あたしから切ったじゃん」
ニコニコと通話しながらイチャつく鈴音の左手で、僕は再び盛大に射精した。顎を天井に向けるように上半身を反り返らせて腰を浮かすと、びゅるるるるっ、と精液が鈴音の頬に飛んだ。それでも特に気にした様子も無く、射精中の男根を労わるような扱き方に変える。
「あたしはぶっちゃけこのまま彼氏の声聞いてたいんですけど?」
鈴音はおどけるように唇を尖らせる。うっすら頬を紅潮させているその顔つきは、どこからどう見ても恋する乙女だ。射精の余韻を軟着陸させるような優しい扱き方も、親友に対する気遣いが見て取れる。指輪は垂れてきた精液で既にドロドロだ。
「ん? ツッチー? どうだろ。まだ身悶えてるっぽいけど……喋れる? 彼氏が変わってほしいって」
僕は何とか頷き携帯を受け取る。鈴音は両手で男根を握ると、交互に搾り取るような動きを見せた。
「はい。土屋です」
『堂島だけど、少しお久しぶりかな?』
たった一言で伝わる爽やかでスタイリッシュな声に、僕はうっとりとさえする。鈴音の親しみやすさもそうだが、こればかりは先天的な資質だろう。
そこらの男ではキザったらしく滑稽に映る発言や仕草を、堂島さんはごくごく自然にこなす事が出来る。長身痩躯で軽くパーマが掛かった黒髪、掘りの深い顔立ちの彼はヨーロッパの街並みが似合いそうな大人の男性だ。
「そう、ですかね」
『いつも真理と仲良くしてくれてありがとう』
「いえ、そんな、こちらこそ」
『真理は男友達も多いんだけど、その中でも土屋君だけはずっと特別視している節があるんだ。良い意味で異性を意識せずに接する事が出来る男友達が出来たと、凄く嬉しそうに話してくれた事もあってね』
深い知性を感じる声色の奥に、恋人の喜びを心から祝福している彼氏としての気持ちを感じる。
「……僕も、鈴音とは男とか女とか関係無く、仲良くやれていると思います」
僕は尿道に残った精液を鈴音の手で搾り取られ、びゅっ、びゅっ、スカートや太股に飛ばしながらそう伝えた。
『そういう友情はとても希少だから羨ましくもあるよ。とにかく真理は土屋君との関係性をとても喜ばしく思っているみたいだから、俺からも改めてお礼が言いたかったんだ。ありがとう』
年下の、それも学校では空気のような僕に、全くの憐憫も見下しも無く、ただただ一人の男として対等且つ素直に礼を言う。年齢もたかが三つか四つほどしか違わないのに、こんな完成度の高い人物がいるのだなと感服するしかない。
そんな僕の敬愛を知ってか知らずか、鈴音が根本を殊更ぎゅっと強く握り、そこからじっくりと先端まで絞られて思わず呻きそうになる。やがて鈴口からどろりと濃い精液が垂れるまで僕が恍惚で口を開けずにいると、『それじゃあ土屋君もまたいつか一緒に食事でも』と堂島さんが社交辞令による締めの挨拶を口にした。少しでも礼を失したくないと、なんとか言葉を振り絞る。
「……はい。いつかまた」
通話が切れると、鈴音が「何て?」と聞くので、「これからも鈴音と仲良くしてやってあげてね的な話」と言葉を交わした。
鈴音が精液でドロドロになった左手の薬指を見せつけると、「このむっつりエロエロちんぽ」と僕を冗談めかして責めるように笑った。
僕は自分の頬を指差し、鈴音の頬に精液が付着している事を教える。それを手の甲で拭った鈴音は愉快げに口角を持ち上げ、マイクを持っているようなジェスチャーで僕に手を差し出した。
「どうですか土屋選手。彼氏と電話している女友達に顔射した気持ちは?」
「感無量です。これに満足せず、シーズン通して結果を残していきたいですね」
無表情でそう返す僕に、鈴は手を叩いて爆笑した。僕も咄嗟のボケにしては、中々上手くこなせたと満足感に浸った。やはり僕らの間には、性的な行為は普段のじゃれあいの延長にしかならない事を証明する空気で満たされていた。
汚してしまった鈴音の服を入れた洗濯機を回して部屋に戻る。親が帰るまでには乾燥も余裕で間に合うだろう。
女の子の私物を家で洗うのは中々に非日常的行動だ。しかし昔も似たような事があった気がしないでもない。いやあれは僕が洗ってもらったのだったか。僕のトラウマに関わる部分なのだろうか上手く思い出せない。そんな引っ掛かりを抱えながらも、部屋の扉の前に到着するとノックした。自分の部屋なのに変な気分だ。
「入って良い?」
「ほーい。オッケーだよ」
扉を開けると僕の学校のジャージに着替えを済ませた鈴音が出迎える。僕はけして体格の良い方ではないが、それでもやはり袖を余らせていた。
「やっぱツッチーも男の子だね。ブカブカだよ」
彼女はそう言いながら袖を折るとベッドの縁に腰掛けた。
「親が帰ってくるまでには乾燥も終わると思うから」
「ん。ありがと」
鈴音はジャージという事もあり、ベッドの縁で無防備に胡坐をかくと、僕を見上げてニッ、と少年のような笑顔を浮かべた。
「いや~。ツッチーの隠れた一面見ちゃったね~。ワイルドな本性っていうの?」
「人聞き悪いな。僕は言われるままだっただろ」
「あんなに激しく迸るとはね~」
「言い方」
「いや合ってるじゃん」
確かに誤解でも何でもない。文字通り激しく迸ったのだ。しかし性的な話をしている雰囲気ではない。鈴音はとても楽しそうだが、勿論下ネタが楽しいわけじゃない。また一つ僕達の友情が男女という壁を乗り越えた事が嬉しいのだろう。そして彼女はその強度はまだまだ上がると思っているらしい。
「めっちゃツッチーの匂いする」
襟に対して鼻をすんすんと鳴らす。
「洗濯済みだけど」
「え~。でもするって」
「もしかして僕って臭い?」
今まで友達が居なかったので、他人から見られる自分に疎い部分があるかもしれないと不安になる。
「すっっっっっっっ…………」
彼女は数秒息を止めると、「………っっっごく安心する匂い」と言って笑った。
「これパジャマにしたら安眠出来そう。という事で頂戴?」
「やだよ。学校で必要なんだし」
「男の子なんだし裸で走り回りなさい」
「無茶言うな」
「あぁでもさ、卒業する時にジャージの交換とかしよっか? サッカー選手みたいに」
「僕が鈴音のを貰っても着れないから雑巾にするしかないんだけど」
彼女は「ひっど」と笑うと「いやぁそれにしてもさ、マジでツッチーとはこう……なんていうの? より友達になったって感じするよね?」と先程の共同男の子タイムについて言及した。
「まぁ激しく迸るところを見られちゃったからな」
「あたしも太股見られちゃったし。太いの気にしてんのに」
「いや鈴音の太股凄くエロかったよ。本当。自信持って良いと思う」
僕の忌憚の無い意見だが、女の子的にはやはり脚は細ければ細い方が良いらしく、「そりゃどうも」とどこか納得していない様子で苦笑いを浮かべた。
「とにかくさ、話を戻すんだけど、あたし達ってもっともっと友達になれると思うんですよ」
僕が要領を得ないでいると、鈴音は胡坐のまま座っている場所をベッドの縁から中央に移動して、自分の目の前に座れと言わんばかりにベッドをポンポンと叩いた。その指示通りに僕も彼女と対面して胡坐をかいた。
「つまりさ……」
彼女は笑みを浮かべたまま一度だけ視線を横に逸らすと、再度僕を見つめた。その表情には一摘まみの照れと、あとはもう自信に溢れていた。
「……キス、しちゃおうぜ」
きっとそれでも、あたし達は友達で居られるから。彼女の宝石のような瞳がそう語っていた。
彼女の考えている理屈や、望んでいる事はもうわかりきっているので、野暮な突っ込みはしない。ただ事実だけを返す。
「僕、した事無いんだけど」
「あ~……やっぱ初めては好きな人とが良い?」
三つ葉ちゃんの顔が浮かぶが、彼女とキスをする自分など想像も出来ない。そんな事は端から夢物語なのだ。
逆に鈴音とそうする事に対する抵抗感は驚くほどに薄い。手を繋ぐくらいのスキンシップの延長線上にしか思えず、どうしても鈴音と唇を重ねる事に、何ら特殊性を見出す事が出来ない。
「いやそういうのは全然気にしてない」
「……じゃあ良い?」
「別に良いけど」
彼女が小さく咳払いすると、僕もそれに倣い、そしてどちらからともなく顔を寄せると程なくして唇が触れ合った。僕のファーストキスが余りに気軽に滞りなく完了した。まるで落ちた消しゴムを渡すくらいに軽々しかった。それでも鈴音の薄い唇はとてもぷるぷるで、それと唇同士で触れ合うのは単純に心地良かった。
「……どうすか? ファーストキスの味は」
「うーん。グレープフルーツ?」
「それさっき食べてたガムだね」
「じゃあそれだ」
友達同士でキスをしたのに、その感想は羽毛のように軽い。鈴音も予想通りだったという顔をしている。
「でも鈴音の唇、凄く気持ち良かった」
「じゃあもっとする?」
「じゃあ折角だし」
「何それ」
鈴音がくすくす笑いながら顔を寄せてきて、今度は立て続けにちゅっちゅと唇を啄み合う。一々鈴音の唇が気持ち良い。唇同士で触れ合うという行為も、その度に気心が知れていくようで心地良かった。
僕と鈴音はいつの間にか両手を正面から指を絡めて握り合っていた。カーテンを引いてなかったので、まだまだ夕暮れには遠い燦々とした日差しが僕らを照らしている。
まるで出会った頃からキスをしていたかのように自然に唇の接触を繰り返す。
「なんかどんどん友達になってく気がするね」
鈴音のその言葉に同意するよう、彼女の薄くぷるぷるな唇を迎える。僕達が唇を押し付け合う事に特別な意味など無いかのように、ちゅっちゅとキスをしながら会話も交える。
「あとさツッチー。前から思ってたんだけど、あたしだけツッチーをあだ名で呼ぶのなんか距離感じるんだけど」
「じゃあ『鈴』で」
「安直」
「『ツッチー』の名付け親に言われたくない」
「一理ある」
僕達は唇を密着させたまま笑い合った。吐息が直接鼻腔をくすぐる。鈴の甘いフェロモンは僕にとって友情の芳香でしかない。
「そういえばさ、最近三つ葉ちゃんとはどうなん?」
「別にどうもないよ。店には通ってるけど」
「いい加減本格的にアタックしようよ。あたし応援するからさ」
「……正直自信無いんだ」
鈴の顔が少しだけ離れると、彼女は僕を真面目な顔でじっと見る。
「あたしはさ、例えダメだったとしても気持ちは伝えるべきだと思う」
そう言って母性すら感じるくらい穏やかに僕の唇を啄むと、殆ど唇が触れ合っている距離で優しく囁いた。
「……綺麗事でも他人事でもないよ。ツッチーの事だから、真剣に考えてそう思った」
「わかってる。ありがとう。善処するよ」
「なら良いけど……どうする? キス続ける?」
「出来れば。鈴とこうしてると落ち着く」
「あたしも。ツッチーとキスしてるとほっとする」
鈴は嬉しそうに、でも普段通りの気さくな声色で微笑んだ。
「じゃあ将来、ツッチーが三つ葉ちゃんと付き合った時に、メロメロに出来るようなキスを教えてしんぜよう」
そう言うと彼女は僕の下唇を自身の唇でそっと挟み、そのまま甘噛みしながら左右に唇を滑らせたり引っ張ったりを繰り返した。確かに背筋がぞくぞくするほど気持ち良かった。
「……ほい、ツッチーもやってみて」
自分がやられたキスを模倣して親友に返す。すると鈴の握る手がきゅっと強くなり、「んっ」と吐息が漏れた。
「……上手いじゃん。エロいエロい」
「先生が良いんだよ」
鈴が「わかってんじゃーん」と微笑むと、ちゅ、ちゅ、とじゃれ合うように唇を押し付けた。彼女の唇が、今度は僕の上唇を挟む。
そんな官能的なキスをしながらも、僕らは事前に厳重なる約束を交わしていたかのように、舌は差し込まなかった。それは友達のキスではないという共通の認識があったからだ。
いくら高揚しようがただの性欲に流される事は無い。僕らが行っているスキンシップは、『普通のキス』とは全く別の回路に存在していたので、漏電する危険性も感じられない。
ただしそれはあくまで意識や心の問題で、身体は性的な刺激に反応はする。鈴は視線を一瞬僕の股間に向け、そしてくつくつと笑った。
「……おちんちん、また元気になっちゃってるよ?」
僕は上唇を甘噛みされたまま、彼女の下唇を挟んだ。まるで唇での交尾のようだった。その状態で彼女が囁きを続けるので唇の微振動がくすぐったい。
「……触っていい?」
唇で繋がったまま頷くと、「僕も鈴を触りたい」と返し、やはり彼女も唇を離さないまま頷いた。
鈴の細く長い指が股間に張られたテントをそっと包むと、僕はジャージの上から鈴の爆乳を下から持ち上げるように触った。
鈴の乳房はずっしりと重かった。そしてジャージとブラジャー越しでも、そのぷるるんと揺れる瑞々しい弾力に僕は戦慄した。
「……さっきあんな射精したのに、メチャクチャ硬いね」
「……鈴、凄く柔らかいよ」
同時に真逆の感想を口にする。何だか僕と鈴の心のどこかが、また一つ重なった気がした。僕らは微笑み合いながら唇を突き出して、友愛を確かめる儀式のように唇を押し付け合った。
言葉も無しに僕らは意思疎通すると、やはり同時に互いの両手が同じ意味の作業を行った。
鈴の手が僕のベルトを外してスラックスと下着を下げたので、僕も腰を軽く上げてそれを補助する。再び勃起した男根が晒されるが、先程と違うのはスラックスと下着が完全に脱ぎ取られた事。中途半端に脱がされて、僕が窮屈そうな仕草をした為だ。
僕の手は鈴が着ているジャージのファスナーを上からゆっくり下ろしきると、それを脱がして上半身をブラジャーだけにした。その際にやはり鈴も肩を揺らして、脱がしやすいように協力してくれた。次いでウエスト部分に手を掛けると、僕と同様に鈴は腰を浮かして脱ぎ取らせてくれた。
ベッドの上で向かい合って座る僕らは、鈴は下着のみ、僕は上半身のシャツのみになった。
鈴の半裸はもう眩しいの一言だった。均整の取れた肢体に、そして乳房と腰回り、そして太股は魅惑的な肉が付いている。男を発奮させる究極の曲線。
鈴が両手で僕の勃起した男根を包み、ゆっくりと上下に擦る。思考が激しい性的な高揚に陥ると同時に、性器へ直接伝わる彼女の体温に安らぎも感じた。その優しくも煽情的な動きが、肉槍の筋肉を軋ませて増大させる。
キスの応酬ですっかりと我慢汁塗れになっていた肉竿は、いつの間にか彼女の華奢な手の平でにゅるにゅると粘り気のある摩擦音を奏でていた。
「さっきも思ったけどさ、ツッチーって意外と熱い男だよね」
「……それはどういう意味で?」
彼女はニヤついたまま僕の唇を軽く吸うとそのままの状態でくすくす笑い、両手で肉竿を擦り上げた。
「おちんちん的な意味で。触ってるだけで汗掻いちゃうくらい熱い」
その言葉通り、鈴の乳房はうっすらと汗で湿っているように見えた。
確かめるように乳房を揉むと思ったよりブラジャーはしっかりしていたが、それでもジャージの上から触るのとはまた段違いなぽよんぽよんとした弾力が手の平に伝わる。
直接触ってしまったらどうなってしまうんだと考えると同時に、僕の手は彼女の背中に回っていた。
鈴が殊更表情をニヤつかせ、僕を挑発するように見る。
「外し方わかんの?」
「……見守っててくれ」
僕の精一杯の強がりに、鈴は楽しげに「オッケ」と返すと左手で竿を掴み、右手の人差し指の腹で我慢汁が止め処なく溢れる亀頭へ円を描くように弄り出した。視線はじっと僕を見守る。
経験不足と多少の緊張も加わりブラジャーのホックを相手に悪戦苦闘していると、「ゆっくりでいいからね。がんばれ~」と軽やかに、そして優しく鈴が微笑んだ。僕の緊張を煽らないようにとの彼女の配慮を感じる。
言い訳ではないが、彼女のホックは想像していたよりも背中から浮かなかった。胸が大きいとそれだけパツンパツンになってしまうのだろうか。とにかく中々上手くホックが外せない僕に対して、鈴はにまにまと口端を歪めた。それはやはり敢えてからかう事で、僕が劣等感などを持たないようにしてくれているようだった。
「にしし。焦ってる焦ってる」
亀頭を指でぐにぐに突きながら、僕の焦燥を解そうと普段よく見せる気さくな笑顔を向ける。
「一人でブラ脱がせられたら、ご褒美にえっちぃ事してあげる」
僕もなんとか軽口を返す。
「何それ。どれくらいエロいの?」
「ん~?」
再び鈴の両手が竿を包み、搾り取るような扱き方をする。
「……このおちんちんが、もう辛抱堪らんってガッチガチになるくらい」
「もうガチガチなんですけど」
「もっと。思わずおちんちんからあたしへの白い友情がぴゅっぴゅって漏れちゃうくらい」
「白い恋〇みたいに言うな」
互いに多少は声が上擦っているが、基本的には教室で交わす時と同じ調子で会話をしていた。そのおかげでリラックス出来た僕の指がようやくブラジャーのホックを外すと、さらりと大きなカップのそれがはだけた。
乳首がつんと上を向いた釣鐘形の美爆乳が、やや外側に向いて解放された。メロンやスイカに匹敵するGカップの質量である。なのに鈴のそれは下着の力を失っても殆ど垂れる事が無かった。
あまりに理想的な爆乳に視線が釘付けになっている僕を、鈴は口元をにやつかせながらジト目で睨んだ。
「ガン見しすぎ。あとおちんちんバッキバキにしすぎ」
鈴の指摘をスルーして僕の両手が生乳に伸びる。真正面から鷲掴みにすると、まず掴み切れない事に驚愕する。片方の乳房を完全に包み込むには両手が必要だろう。
指先を沈めるように指を曲げると、ぷるんと弾き返す弾力と、むにゅりと柔軟に指を受け入れる柔らかさを両立している。
僕は確かにその瞬間、宇宙空間に意識が飛んでいた。神が作り上げた奇跡の感触。そして極めつけは肌の触り心地だ。見た目の質感通りにツルツルすべすべした肌触りに加え、もちもちと指に吸い付いてきたのだ。
鈴はくすぐったそうに微かに身体を揺らすと、おどけるように言った。
「土屋選手。初めての生おっぱいはどうですか?」
力を込めると指の間から乳肉がぐにゅぐにゅと漏れるのを愉しみながら応える。
「両親が帰ってきたら、彼らに『僕を産んでくれてありがとう』と感謝を伝えたいと思いました。それくらい感動してます」
「親孝行でよろしい」と鈴音がくつくつ笑うと、「……じゃあ、ご褒美の件なんですけど……」と顔を寄せて、僕の上唇を唇でくにくにと甘噛みしながら囁く。それは僕に表情を見られたくない照れ隠しでもあるようだった。
「……口でしてあげよっか」
「え?」
一瞬意味がわからずに聞き返すと、彼女は顔を離して「にしし」と笑った。やはり気恥ずかしさをノリで誤魔化しているように見える。屹立した男根を両手で撫でながら、彼女は親しみやすさを強調して演じた。
「だから、フェラチオで、このパンパンのおちんちんからザーメン抜いてあげよっかって言ってんの」
口による性器への奉仕。そんな行為は僕にとっては外国の風習のように非現実的だった。しかも鈴のような校内でも指折りの美少女ならば尚更だ。
動揺で返事が出来ない僕に業を煮やしたのか、鈴は両手で男根をぎゅっと握りしめると、恥ずかしそうに上目遣いで僕を睨んだ。
「……どうすんの? フェラしてほしいの? してほしくないの?」
「……してほしいです」
僕の返事に鈴は安堵するように口端を緩ませた。性的な障壁を友情で打ち破りつつも、どこかで引かれるんじゃないか、という不安は彼女にもまだあるようだった。そんな懸念を払う為か、彼女は殊更茶化すように言った。
「ツッチーからお願いのチューしてくれたら咥えてあげる」
そして目を瞑り、顎をやや上げ、「ん」と僕の唇を待ち構える。
果たして今の彼女に恋心を抱かない男がどれほど居るのだろう。その愛らしさに感心しながら、僕はフェラチオへの期待から、血色の良い友達の唇に軽くキスをする。
彼女は目を開けてニヤリと笑うと肘で僕の肩を突きながら「ツッチーのエッチ! ドスケベ!」と囃し立てる。
にまにまと頬を緩ませながら、彼女は僕のシャツのボタンを上から外していった。
「言っとくけど、あたし結構自信あるから」
「堂島さん仕込み?」と僕が尋ねると、少し照れ臭そうに「あ~、まぁそれもあるかも」と微笑んだ。
「楽しみにしとく」
「マジで口の中でおちんちん溶かしてあげるから。覚悟しといた方が良いよ?」
僕だけが全裸になるのも違和感があったので、シャツを脱がされながら僕は彼女のショーツの腰紐に指を掛けた。彼女はそれには言及せずに僕と言葉を交わしながら腰を浮かして、僕と同時に全裸になった。
僕はそのままの体勢で、彼女は僕の股間に顔を埋める形でうつ伏せに寝た。見下ろす彼女の背中は頼りないほど細かったが、臀部の肉付きに僕は驚いた。寝た状態でもぷりんと盛り上がり、丸みを帯びてまさに白桃のようだった。男と同じ部位のはずなのにこうも差異が出るものなのかと、感銘を覚える。
僕と鈴は示し合わせたように両手の指を絡めて軽く握り合った。鈴の顔が僕の男根のすぐ隣にある。彼女の吐息が竿に掛かってくすぐったい。
「なんかリクエストある? ここが弱いとか、ここ嫌いとか」
僕を見上げて口にするその声色や表情は、まるでランチの店を相談するかのような雰囲気だ。
「初めてなんだからわかんないよ。お任せで」
「にしし。オッケ」
まず根本に、ちゅっ、と音を立ててキスをされた。勃起した男性器に受ける女性の唇の感触というのはそれだけでもう全身を痺れさせる。肉竿が激しく揺れた。
「こーら。暴れないの」
鈴が男根に話し掛けながら、ちゅ、ちゅ、とキスしながら亀頭へと向かっていく。その途中で彼女は僕を見上げて挑発するような笑みを浮かべたが、それは少し無理をしているように見えた。
「なんかさ、これってさ……普通なら最後までしちゃう流れになっちゃってるよね」
何と返していいかわからずにいると、鈴も無言で舌の腹で裏筋を舐め上げたり、鈴口に尖らせた唇を何度も押し付けたりしていた。その度に僕は未知の甘い刺激に、身体を痙攣させるしかなかった。
鈴の唇が、手での固定が不要なほどに直立する僕の男根の、その先端を包もうとするのを感じる。これから咥えられるのだという予感。そんな時、鈴の方から握る手がきゅっと強まった。
「……あたしはさ、ツッチーとなら別に良いからね。友達だし」
そう言うと、彼女の唇が亀頭を滑るように呑み込んでいく。
「あぁっ」
性欲と筋肉の塊が、友情に包まれる。唇は根本近くまで這っていったが、舌は動いていない。
彼女的にはまだ何もしていないに等しいのだろう。それでも他人の口の中の温もりは、それだけで身も心も蕩けさせていく。
「……やばい鈴……本当に溶ける」
無意識に彼女の手を握る力を強めると、何とも情けない声を漏らしてしまう。
鈴がゆっくりと首を戻して、口を離すと、優しげな視線で僕を見上げ、掠れた声で囁く。
「良いよ。あたしのお口で、おちんちんトロトロに溶かしちゃお」
そう言って、再び咥えて唇を滑らせていく。舌や吸引を一切使わない、温もりだけを与えるそのフェラチオは、初めての僕に過度な刺激を与えない彼女の配慮が感じられる。
しかしそれは十分、天にも昇りそうな快感を僕に与えていた。
鈴は先程よりも長く、僕の男性器をただただ頬張り、じっくりと温めてくれた。
十秒くらいだったのかもしれないが、その時間はまさに至福だった。ただ性技に優れる女性相手でもこんな幸福感を得る事が出来ないだろう。僕と鈴だからこその穏やかな繋がり方。
それだけでも男根の根本がヒクついた。射精の前兆だ。鈴は刺激しないようにゆっくり口から引き抜く。
「射精ちゃいそうになってたね」
そう言って微笑み、更に視線で『もう少し長く楽しみたいでしょ?』と僕に語り掛けてきた。
僕も肯定の意を視線で返すと、鈴は先程とは逆の順番で、ちゅ、ちゅ、と根本に向かって優しくキスをしていく。その間、握り合った手はいちゃつくように指を弄り合っていた。
そんな緩やかで甘い安らぎの中、想像すらしていなかった方面から刺激を受ける。
「うっ」
鈴が僕の睾丸に唇を這わしたと思ったら、そのまま口に含んだのだ。そして優しく舌で転がされる。友達の唇と舌で睾丸を愛撫されるのは酷く背徳的で背中が痺れた。
「堂島さんにもそういう事するの?」
僕の質問に鈴は少し楽しそうに応える。
「彼氏はちょっと嫌がるんだよね。なんか怖いんだって。ちょっとした刺激でも痛いとこなんでしょ?」
その辺の男の人の事情は理解してるから大丈夫だよ、と言わんばかりに優しく睾丸にキスをした。
「あたし的には男の人のここ、可愛くて結構好きなんだけどな~。ツッチーは大丈夫?」
「確かにちょっと怖いかも。でも唯一の親友だしね。信じるよ」
「にしし。まっかせなさい」
ちゅっちゅと睾丸にキスをすると、男根がビクビクと切なそうに揺れる。鈴口からはどくどくと精液のように我慢汁が漏れ続けている。それが竿を伝って根本まで垂れると、鈴はそれを舌で受け止めるように舐め取った。
「精子増産中だね」
しかしながら今更だが、こんな事をしながら僕達は堂島さんや三つ葉ちゃんの話題を普通に出す。互いにこれが性行為だという認識は極めて希薄な所為だろう。性的快感を与え合う事で友情を深めているとしか考えていなので、お互いの恋愛事情は全くの別腹となっている。
鈴が睾丸をはむはむと頬張りながら、恋人のように繋いだ手で、僕の手の甲を人差し指でかりかりと擦った。
「……で、どうする? ツッチー的にはこのまま口で射精しちゃいたい?」
鈴は先程から時折言葉に漏れていた自身の気持ちを、再度僕に投げかける。
「……あたしは、このままツッチーとしちゃいたい」
視線を伏せたまま呟かれたその声には、微かな不安が混じっていたが、それを乗り越えようとする彼女の意志が感じられた。
「ツッチーとなら、きっとセックスしても、『ただの友達』のままでいられると思うから」
不思議な感覚だった。これがただの可愛い女友達なら、ヤリたい、と性欲に流されたかもしれない。あり得ない想定だが、三つ葉ちゃんならただただ愛したいと情念を燃やしただろう。
しかし今、鈴に向いている僕の感情は、明らかにそのどちらとも違った。友達として彼女の気持ちに応えたい。彼女と一つになって、楽しい事や辛い事だって共有したい。
少し不安そうな彼女の手を強く握り返す。
「鈴……」
僕の呼び掛けに彼女が顔を上げる。視線を交わしたまま、僕は改めて自分の気持ちを彼女に伝えた。
「……僕と友達になってください」
鈴も身体を起こすと、「こちらこそこれからもよろしくお願いします」と頭を下げた。その後見つめ合うと、「今更かよ」と二人でへらへら笑い合って、ちゅ、っと気さくにキスをした。
それがセックスの合図となった。それは却って僕ららしいと思った。
「あたしコンドーム持ってるから。どうせツッチー持ってないっしょ? 使う予定無いもんね」とからかわれたので、「いざって時に練習する為に買ってある」と僕が返すと鈴は爆笑した。
「男なら全員そうだし」と言い張るけれど、鈴はけらけら笑いながら「はいはい。男の子男の子」とあしらった。
僕がコンドームを着用しようとするところを、彼女が応援とからかいの比率半々の視線でじっと見つめる。
「本当にちゃんと着けれんの? あたしがやってあげよっか? ん?」
「大丈夫だから」
「ちょっと手ぇ震えてるし。ウケる」
「童貞なんだから仕方無いだろ」
確かにセックスを前にした緊張感は無くはない。しかしそれとは別でどこか吹っ切れた僕達は、あまりに肩の力が抜けた様子で言葉を交わす。他人が耳にしたら、これからセックスする二人とは思えないだろう。
「あたしが上になった方が良い?」
「いや、正常位でさせて欲しい」
「三つ葉ちゃんといざって時に上手く出来なかったら格好悪いもんね」
「何度も言うけど、あの子とそんな関係になれるなんて夢にも思えないってば」
鈴が僕のベッドに勝手知ったる様子で横になると「ビビってちゃゼロパーセントだよ?」と、にやにやしながらも僕の恋を本気で案じてくれた。
しかし彼女の美乳は本当に一々僕を感動させる。仰向けに寝そべっても少々左右に開くだけで、たぷんと柔肉による丘を形成したままだ。脇腹から腰にかけてしっかりくびれているのも、その豊かさを余計に強調する。
その美乳に全く引けを取らない美脚を左右に広げると、彼女の股の間に腰を下ろす。陰毛はとても薄かった。
女性器に対してはグロテスクな先入観を抱いていたが、鈴の性器を目にするとそんな印象は吹き飛んだ。男性器を迎えるようにやや開いた大陰唇はつるんとしていたし、膣口は乳首と同様に控え目な桃色だった。柔らかそうな肉壁がぬるぬると湿っているように見える。
「これって濡れてるんだよね?」
僕としては濡れてない状態で挿入して、彼女の身体に負担を掛けたくないという心づもりだったのだが、彼女は恥ずかしそうに視線を横に逸らした。
「……だってツッチーのおちんちん、エロい形してんだもん」
そして一転攻勢に出ようと彼女は僕を小馬鹿にするように、「それより挿入れるとこわかるの?」と口端を歪めた。僕は正直に答える。
「最初はリードしてもらえると有り難い。場所はわかってるつもりだけど自信が無い」
「素直でよろしい」
彼女の手が黒いゴムを纏った僕の男根の根本をそっと固定し、そして肉槍の穂先を自らの恥部に押し当てた。
「……ここ?」
「……ん。そのまま腰ぐっと突き出して、入ってきたら良いから」
流石に僕達の声に照れが混じる。挿入直前の独特の緊張感。
そんな淫らな空気を追い払うように、鈴が作り笑いを浮かべると、やはりカラっと乾いた口調で言った。
「男とか、女とか、性行為とか、そんなのあたしらの友情の前には関係無いって証明してやろうぜ」
僕は頷くと、「じゃあ、いくよ」と声を掛けた。意識してそうしたわけじゃないけど、こんな男らしく言葉を発せられるのだなと自分に驚く。鈴も「うん、おいで……本当の友達になろ?」といじらしく返した。
滑るように、ごくごく自然に、僕らは一つとなった。まるで繋がっているのが当然のように。
その瞬間鈴は目を瞑り、「んっ」と聞いた事も無い音色で声を漏らした。
僕の剛直が嘘のように、鈴の狭い膣口を押し広げながら、にゅるりとその中に侵入した。肉竿が根本まで鈴の胎内に姿を隠す。こちらから差し込んだはずなのに、呑み込まれた、という風に感じた。
鈴の中はとにかく温かかった。フェラチオは蒸気で蒸されるような温もりだったが、こちらは勃起した男根のみをお湯に浸からせたような心地良さがある。
鈴の中は狭く、触れ合っていない箇所が無いほどぎゅうぎゅうに密着しているので、ゴム越しとはいえ男根で満遍なく彼女の体温を受け取る事が出来た。
鈴がゆっくり目を開けて僕を見つめる。
「……どうすか?」
彼女が知りたいのは、僕の脱童貞の感想などではない。
「友情ってあったかいなって、再認識したよ」
それが僕の気持ちの全てで、そして鈴の聞きたかった答え。彼女の満面の笑みは安堵に満たされていた。
「だしょ?」
セックスに及んでも微塵も揺らがなかった気持ちは何だかとても崇高に思えて、互いを誇りに思う気持ちが僕らの口元を緩ませた。そして鈴が普段通りの飾らない笑みと口調で言う。
「もう動いて良いんだよ? おちんちんガッチガチじゃん。気持ち良くさせてあげなよ」
「どう動いたら良いのかわかんないんだけど」
「うーん。そればっかりはあたしもわかんないなぁ。とりあえずツッチーがやりやすい感じで振れば良いんじゃね? その内慣れてくるよ」
「いや、というか鈴がどう動いて欲しいとかあるのかなって」
鈴がくつくつと笑う。
「お、童貞なのに一丁前な事言うじゃーん」
「いや男としてどうこうじゃなくて、友達としての気遣いというか」
僕の言葉に鈴は「んー」と視線を斜め上に向けて逡巡すると、にへらと照れ臭さを隠すような笑みで僕を見た。
「ぶっちゃけツッチーの大きいし反り返ってるから、普通に動いてくれたらそれでめっちゃ気持ち良さそうだな、と思いました。マル」
「大きいのは嫌って声もネットとかで見るけど」
僕は彼女の開いた両膝に両手を置きながら、聞きかじった意見をぶつけてみる。
「あ~。確かに友達でそんな事言ってる子もいたね。まぁ結局は相性とかだと思うよ」
男性器が根本まで女性器に埋まった状態で、世間話のような調子で言葉を交わす。
「あれだけ僕の巨乳好きをからかっておいて、鈴も大きいのが好きなんじゃん」
僕が珍しく意地悪を言うと、鈴は不貞腐れるように唇を尖らせた。
「だって大きい方が『入ってる……』って感じがするんだもん。好きな人と繋がってる感っていうかさ。友達相手でも一緒だよ」
その言葉を受けて僕はようやく腰を前後し始めた。彼女ともっと交わりたい。
「んっ……んっ」
鈴が再び目を閉じて、断続的に吐息を漏らす。
「はぅ……あっ……はぁっ……」
男根が陰唇を掻き分けたり吐き出されたりを繰り返す。他人の中を自身が往来するその光景は眩みを覚えるほどに背徳的だった。
「……ツッチー……気持ち良い?」
「……正直、いつ暴発してもおかしくないくらい気持ち良い」
鈴のぬるぬるでぎゅうぎゅうな挿入感は、僕のぎこちない摩擦でも容赦無い恍惚を与えてきた。
彼女は眉根を下げながらも、僕をフォローするような優しく笑顔を作る。
「んっ……んっ……んっ……ツッチー初めてなんだからさ、色んな事考えないで、ただ気持ち良くなっちゃえば良いんだからね?」
「ありがとう」
友達セックス特有であるその気遣いの気持ちに、僕は肩に力が入っていた事に気付かされた。脱童貞で無意識に緊張していた部分もあったのかもしれない。
「んっ、んっ、んっ、んっ」
ピストンがリズミカルになるとベッドが軋みの音を上げた。鈴のきゅっと閉じた口元から漏れる吐息も間隔が狭まる。更には彼女の閉じた瞼に強張りが増していく。
「やっ、あぁ……ツッチー……腰の振り方、上手になってきたじゃん」
そんな中でも、鈴は気さくな笑みを僕に向けようと努める。それでもどこかぎこちない。
「凄く緊張してるけどさ、でもやっぱり鈴が相手だからまだリラックス出来てる方なのかも」
友情に感謝しながらも、視線はどうしても揺れる爆乳に目がいく。僕の不慣れなピストンでも、それはぷるんぷるんと皿の上のプリンのように揺れた。
「……おっぱい見すぎ」
彼女はそう笑うと、「えいっ」と折り畳んだ両腕で乳房をぎゅっと中央に寄せて僕に見せつけた。むりゅりと左右から押し潰されながら、仰向けとは思えないほどのボリュームを見せる。
その光景は僕の鼻息と腰使いを機関車にさせた。
「あっ、あっ、あっ、あっ、やだっ、ツッチー、はげしっ」
「ごめん。痛かった?」
鈴はむぎゅりと胸を寄せたまま切なそうに僕を見上げ、首を左右に振って、「……めっちゃ気持ち良かった」と恥ずかしそうに言った。
僕の心の機関車が蒸気を噴き上げた。
「あっあっあっあっあ! やっ、ツッチー、マジですごっ、いっ…………はぁっ、あっ、あんっ、あんっ!」
鈴は喉と背中を少しだけ反り返らせた。暫くは胸を寄せたままだったがそんな余裕が無くなったのか、両腕が左右にぱたりと落ちてシーツをきゅっと掴んだ。拘束から解かれた美しいGカップが縦横無尽に揺れる。
流石に初心者の僕に激しいピストンの継続は難しく、一旦休止すると二人で息を荒らげた。鈴の額に玉粒のような汗が浮かんでいるのを確認すると、僕も背中にじっとりと汗が広がっているのを感じた。
僕達の陰毛は互いの愛液でびっしょり濡れていた。そんな中、鈴は呼吸を整えながら、にやりと笑った。
「……ツッチーもやっぱさ、男の子だね。元気で結構結構。にしし」
身体で繋がっていると心も繋がりたいという願望が生まれる。それが、するすると吐くように僕の気持ちを口
にさせた。
「僕はさ、人にはそれぞれ合う水があると思ってる。鈴みたいに誰とでも仲良くなれるとも、なりたいとも思わない。そんな鈴の哲学は尊重するし、誇りにも思ってる。それでも僕はこれからもきっと、こんな風に生きていくと思う」
「うん。ツッチーはそれでいいと思うよ」
鈴は両手をそっと僕の手に重ねて、認めてくれた。そんな彼女に向ける言葉に迷いは無い。
「ありがとう。鈴は僕にとって、最高の友達だよ」
その言葉に鈴の身体と心がきゅんきゅんと疼いたのが伝わった。膣が男根をぎゅっと抱擁した。
勿論それは恋心などではない。そもそもどちらが上という話でもない。僕と堂島さん。鈴と三つ葉ちゃん。どちらも比べられない。全く別のカテゴリの存在だ。ただ僕らの関係のそれは、繁殖欲などが混じる恋愛と比べて不純物は皆無に感じた。
鈴は僕に両手を開いて伸ばすと、「……ツッチー。チューしようぜ。友達のチュー」とにっこり笑った。
僕が身体を倒していくと、彼女の両腕が僕の首に巻き付き、そして、ちゅう、と甘い音を鳴らして唇を押し付け、吸い合った。恋人同士ならもっと甘い音が鳴るのだろうか。
ちゅっちゅとキスをしながら、鈴が「……続き、しないの?」と掠れた声で囁いた。僕は単純にそれが聞き取れなくて、「え?」と聞き返す。彼女の腕が更に僕を引き寄せ、耳元に口を寄せた。
「……エッチの続き、しよ?」
耳たぶをはむっと甘噛みされる。
「……ツッチーのおちんちん、もっと欲しいんですけど?」
くすぐったさで身悶えしていると続けて少しおどけた口調で、でも愛らしく囁かれた。
上半身まで密着させた体勢なので、先程とは勝手が違ったが、それでも僕は腰を振った。
「んっ、んっ……ふぅっ、く……あっ、はぁ……」
鈴の吐息が直接耳に掛かると、それだけで脳が溶けそうになる。何より全身で密着しているので、互いの体温が僕らを汗ばませた。僕の胸板で潰れる乳房の感触は、しっかり口を閉じてないと涎が垂れそうなほどに甘美だ。
「ツ、ツッチー……あたしのエッチ中の声ってさ、変じゃない?」
右手で僕の後頭部を、左手で背中を抱き寄せながら、鈴が切ない声を漏らす。
「正直それだけで暴発しそうなくらいめちゃくちゃ可愛いよ」
「んっ、あっ、はぁっあん…………ホントに? こんなの彼氏に聞けないからさ」
鈴はこういうところが結構乙女だ。もしくは普遍的な女子の恥じらいなのだろうか。恋人を作った事が無い僕にはわからない。三つ葉ちゃんが相手だったら、確かに射精する瞬間など恥ずかしくて見せられないかもしれない。そんな事を考えていると、彼女が見透かしたように言う。
「友達とするエッチも気心が知れてて乙だけどさ、恋人とするのはまた違った良さがあるよ?」
鈴は昔から僕の三つ葉ちゃんへの想いとアプローチに思うところがあったみたいだが、僕の気持ちを尊重して強くは言ってこなかった。
友達を通じて『他人と繋がる』事に対して価値観に変化が訪れ始めた僕に、あくまで押し付けがましくない程度ではあるが鈴が手を引いてくれる。やはり、友達には恋愛でも幸せになってほしいという純粋な想いがあったのだろう。
「……三つ葉ちゃんとどうこうなるなんて考えた事も無かったけど、ちょっと頑張ってみようかな」
まさに目と鼻の先で、鈴が一瞬きょとんとすると、まるで引きこもりの息子が部屋から出てきた母親のような顔を浮かべる。そして両手両足で僕に抱き着いた。
「マジで超応援するから」
冷やかしではない。本気で僕の幸せを考えてくれているのを肌と汗と吐息と性器の温もりを通じて感じる。
僕は両手をシーツにつくと、上半身を浮かせ鈴を見下ろした。
「どうせなら、当たって砕けろ、だよね」
「大丈夫。砕けてもあたしが接着剤で直してあげるから」
その言葉が心から頼りになる。正直上手くいくとは思えないし、失恋は覚悟している。
でもそんな僕と一緒に本気で悲しんでくれて、慰めてくれる親友が居るというだけで、一歩進んでみようかという気持ちになれた。
「その時はお願いするよ」
ゆっくり腰を振り始める。
「んっ、んっ、んっ…………任せてよ、にしし……」
男らしい宣言をしたのだから、男らしい行動を伴おうと力強いピストンを見せる。
「あっ、あっ、あっ、やばっ、あたし……本気で喘いじゃいそう」
鈴の手が僕の肘辺りを掴む。
「あっあっあっ、それっ、やぁっあっあっ、ツッチーっ、あぁ、いいっ、あっい♡ きもちっ♡」
鈴の声が明らかに際立って溶けた。いつもの鈴からは想像も出来ない媚びたような声。目を閉じて顎を引いた口も半開きになっている、
「いっいっ♡ やぁっ、はっ……あぁんっ……あっあっ♡ ツッチーっ、おっき♡」
鈴は一瞬だけ目を細めて開けた。そして顔を横に向けて、あくまで独り言として呟いた。
「……やば……マジでどー君より大きい」
どー君とは、鈴の堂島さんに対する呼称である。明らかに僕に聞かせるつもりの無い言葉だったのだろうが、喘ぎ中という事もあり、声量の調整を失敗してしまったのかもしれない。僕は聞こえなかった振りをしつつも、雄としての優越感を煽られてピストンが加速した。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ♡」
ベッドが激しく軋み、摩擦する結合部はぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てた。
「……こんなやらしい音がするんだね」
経験が無い僕としては、セックス自体がこういうものなのかという意味の言葉だったのだが、鈴はどうも自身が責められたという捉え方をしたみたいだった。
「やっ、違っ、あっあんっ♡ ツッチーの勃起ちんぽが、エロい形してるのが悪いんだからねっ?」
その言い方からすると、彼女が普段よりも濡れていて、その事について恥じらっている事が窺い知れた。友達としてそこは触れずに、とにかくピストンを続ける。僕ももうとっくに限界なのだ。
「あっあっ♡ さっき射精してたのに、こんな硬いしっ…………あっあっ、いっあぁっ♡ はぁ、はぁ、ん……はぁ……来ちゃう……」
鈴は切羽詰まった様子でそう言うと、どこか不満というか納得がいかないといった表情で僕を睨み上げた。
「……イっちゃいそうなんですけど!?」
「はい?」
彼女は額や胸にも汗を浮かべ、はぁはぁと呼吸を荒らげながらも、無理矢理苦笑いを浮かべると、両手で僕の頬をつねって左右に広げた。
「ツッチーのおちんちんが気持ち良いから、中イキしちゃいそうって言ってんの!」
そして顔を横に向けると僕を責めるように「童貞ちんぽの癖に」と唇を突き出した。
「なんか怒ってる?」
「……怒ってない。ただあたしの思い描いていたプランと違う」
「一応それ聞いとくよ」
「こう、オロオロするツッチーをですね? あたしが妖艶なお姉さん的な感じでリードすると言いますか」
「妖艶て」
僕は声を出して笑ってしまった。確かに鈴の身体は本や映像で見る誰よりも煽情的で洗練されていたが、僕が彼女に抱く内面を含んだ印象からは余りに遠い。というか真逆だ。
僕の頬をつねる鈴の両手の力が強まる。
「何笑ってんの。こっちはクラスの男子にオカズにされてんですけど? 立派な妖艶キャラでしょうが」
鈴も一緒になって笑う。あれほど本気で不快そうに言っていたクラスの男子にオカズにされていた話も、僕との色々な行為を通じて笑い話の種に出来るくらいにはなったらしい。
そして鈴は両手を離すと、「はぁ」とわざとらしくため息をついた。
「ま、良いけどさ。でも一人でイクのは恥ずかしいから、ツッチーも一緒じゃなきゃヤダかんね?」
「それは大丈夫。僕ももう限界だった」
「なら良し」
とん、とん、と腰を振る。
「あっ、んっ♡」
直前まで軽口で笑い合っていたのが嘘のように、蕩けた声と摩擦音が部屋を甘くする。
「あっ、あっ、あっ……ツッチーのおちんちん、マジできもちっ……♡」
鈴が切なそうに「……ツッチー、手」と言う。僕は要望通りに両手をシーツに押さえ付けるように握ると、彼女は縋るように僕の手を握り返して見つめてきた。
「……ツッチーだけだからね?」
下腹部が射精感で満たされ始めた僕は無言で腰を振る。
「……あたしでオナっても良い男友達は、ツッチーだけだから」
笑い話には出来たが、やはりそこは彼女なりに思うところがあるみたいだった。
「……このエッチも思い出してオカズにしちゃったりする?」
「……絶対すると思う」
鈴は眉を八の字に下げて、唇をきゅっと閉じた。そして普段通りの笑顔を浮かべようとしたが、僕のピストンでそれは無理だったようで、切なそうな顔のまま口を開く。
「いいよ……いっぱいシコって……あたしとヤった事思い出して、勃起したおちんちん、シコシコしていいよ」
彼女の手に籠もる力が強くなると、膣も同様に狭まるのを感じた。そこで彼女はようやく数秒だけだが、普段通りの気さくな笑みを浮かべる事に成功した。
「……そんでいっぱい射精さないとダメだかんね? 勃起ちんぽ、沢山気持ち良くして、どぴゅどぴゅって精子いっぱい射精してくんないとダメだから」
「……わかった。鈴でオナニーする時は、絶対沢山射精すようにするから」
「……にしし。よろしく」
その会話が僕達に残された余力だった。腰に詰まった絶頂の前兆はもう破裂寸前の水風船のようだった。
僕が遮二無二腰を振ると、鈴ももう茶化そうとはしない。頑張って気さくさを出そうとするが、切なさと笑みを混ぜたような表情を浮かべていた。
「……一緒にイこうね?」
マラソン大会みたいだなと思ったが、もう僕にもそんな冗談を口にする余裕は無い。
鈴の膣内は本当に温泉のように温かく、結合部では男根の存在が不確かなほどにトロトロに溶け合っていた。
ベッドの強度が頼りないと思うくらい軋ませて腰を振る。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ♡ ツッチーのちんぽっ、射精したくてガッチガチ♡ あんっ、あんっ♡ 強すぎっ♡ 射精ちんぽ、強すぎだってば♡ あぁっ、あっ♡ はっあっ♡ イクっ、イクっ♡ イクイクイク♡ ツッチー、大丈夫? 一緒にイケる? じゃあさ、一緒にイこっ♡ あっあっあっ♡ あああぁっ♡」
彼女が一際大きな声を上げるのとタイミングを合わせて大きなストロークを敢行する。
「イックッ♡♡♡」
僕らの両手が握り合う強さが最高潮を迎えると、鈴の中で溶けていた男性器が膨張し、そして爆ぜた。それは僕の知る射精の感覚とは少し違い、夢精で精通した時のような未知なる刺激を想起させた。
同時に頭の中でも白い何かが拡散した。コーヒーに垂らしたミルクがその苦みを甘さで浸食していくように、じんわりと僕から理性を奪う。
気が付いたら、少しでも男性器を鈴に結合させるように腰を押し付け、彼女の名を連呼しながら射精していた。
彼女はそんな僕を愛でるようにじっと見つめていた。愛でるといっても、その愛の種類は言うまでもない。
鈴の細い指が、僕と握り合っていた手を優しく握り直してくれる。その所作は、初めての性交による絶頂で白い波に攫われている僕を助けてくれているようで、妙に安心させた。
「……そのまま全部、あたしの中で射精し切っちゃって良いからね?」
その言葉に甘えるように、腰をぐっ、ぐっ、を押し込むと、正常位でM字に開脚していた鈴の脚が、それに合わせて揺れ、同時にびゅっ、びゅっ、と狭い膣に搾り取られるように精液が射出された。鈴は「んっ、んっ♡」と射精に合わせていじらしく喘ぐと、「……にしし、おちんちんから気持ち良いの、いっぱいビュッビュした?」と見覚えのある親しみやすい笑顔を浮かべた。