暗い暗い闇の中。
なにも無い暗闇の中で俺は漂うように、浮かぶように、そして沈むように存在していた。
俺の心境の変化でも表してるのか、まるでこの真っ暗な空間は俺の情欲そのもののようだった。
『うにゃ、ようやくそちの中に眠る情欲のすべてを自覚したかにゃ』
その闇の中に、白い少女の姿がロウソクの灯りのように浮かび上がった。
背丈は昨晩見たものよりさらに少し伸び、今は小学生高学年、十二、三歳ほどだろうか。
イシュタルは俺を熟した果実を見るような、期待の念がこもった瞳で見つめてくる。
ああ、ようやく分かったよ。今まで無意識に蓋をしていた情欲が、間欠泉のように噴き上がったみたいな感じだ。イシュタルが言った『情欲による絶望』ってのが今なら想像出来る。顔見知りだろうと家族だろうと、俺は手を出す奴なんだ。
『うにゃうにゃ、それでこそ我が認めた男にゃ。それじゃ、明日からの淫行に我も力を貸してやろうにゃ』
力を貸す?
イシュタルは無重力の中をふわふわとこちらに近づき、俺の胸をクッション代わりにして停止する。
上半身を預けるように、イシュタルは俺の胸に寄りかかった。揺れる長髪が猫の姿だった時の毛並みを思わせ、彼女の神々しさを遺憾なく発揮させていた。
『割合で言えば、現在の我の力は三割程度の充電率にゃ。これほど溜まれば、さらなる力をそちに授けることも出来るにゃ』
どうやらイシュタルへの感情エネルギーの供給は順調のようだ。
『我に限らず、神というのは人間の思考を操ることに長けておる。人間世界を管理するための上位存在故の特権かにゃ。ちなみに言うと、そちに与えた改竄術もそういう神の特権を変質させて授けたものにゃ』
なるほど。今まで考えてこなかったが、確かに性愛の神と記憶操作だなんて一見関わり無いよな。けどそれは人間を超えた超常の存在共通の特権的な能力だったのか。
『そして、その特権を使えば面白いことが出来るにゃ。小娘達の弱い部分を見破る……とかにゃ』
なんとなくイシュタルが人間には見えないものが視えるというのが理解出来たが、それを自分に伝えた結果がどうなるのかはいまいち分からない。
『にゃはは、まぁいずれ分かるだろうにゃ。うにゃ、それでだにゃ……』
と、ここで急にイシュタルの言葉が歯切れ悪くなる。いつも饒舌に語る口がまごつく様子を初めて見た。
『そのためのにゃ……儀式がいるのにゃ。にゃに、とても簡易で簡素で簡単なものにゃが……』
イシュタルが言い淀むなんてどんな儀式なのだろうか。そこまで無理はしなくていい、と言いたくなる。
『うにゃ!? じゃ、じゃあ改竄術を授けた時みたいに脳みそガリガリの方がいいのかにゃ! また、あの痛みを味わいたいかにゃ!?』
初めて改竄術を使った時のことを思い出す。頭が割れるような激痛は二度と体験したくない。
『嫌だろう!? 嫌だろうにゃ! だからこの方法が一番なのにゃ! と、とりあえず目を瞑れ!』
そもそも改竄術だけで俺は十分なのだが……仕方なく、言われるがままに俺は瞼を閉じる。
『絶対に目を開けてはならんにゃ。儀式が中断されてしまうからにゃ……こ、これは儀式だからにゃ』
目を閉じた俺の首筋になにか温かいものが触れた。
これはイシュタルの腕?
どうやらイシュタルは腕を俺の首に手をやり、俺の頭を固定して……と、そんなことを考えてる最中に、俺の唇になにか柔らかいものが触れる。
一体、これは……。
『うにゃあ! 目を開けるなと言っただろうがにゃ!』
俺が正体を見ようと開けたまぶたの隙間から見えたもの、それは俺の鼻筋目掛けて迫ってくるイシュタルの額だった。
今日もベッドからの自由落下の、痛覚による強制目覚ましを食らった。今回は顔面から床に落ちたために、鼻に言葉に出来ないような痛みを感じる。
大ダメージを受けた鼻を押さえながら俺はいつも通りに登校していた。
今朝、意を決してダイニングに行ったのだが、そこに柚姉の姿はなかった。
テーブルの上に一枚のメモが置いてあり、そこにはすでに家を出たことを伝える柚姉からのメッセージが綴ってあった。なんだか避けられているような気がして、軽く憂鬱な気分になるが昨日のことを思えば仕方ないのかもしれない。あれはマッサージの度合いを超えていた。
「……まぁ、今は柚姉のことばかり悩んでも仕方ないか」
校舎に入り教室へと向かう途中、俺は廊下で立ち止まった。
いや、具体的にはそうさせられたのだ。
なぜなら、俺の行く手を阻むようにとある女子生徒が仁王立ちしていたからだ。
「あの、なにか用でも……」
「芽森総太ね?」
キリッとした瞳が、鋭い眼光と共に俺を真正面から射抜く。
凛とした雰囲気を纏い、やや長めのショートヘアに、前髪の赤い髪留めが印象的だ。
おそらく同学年で、しかも最近見た記憶がある。確か彼女は──。
「私は三組の如月明衣、陸上部よ」
そうだ、昨日篠宮さんの部活を見学していた時に見た記憶がある。陸上部とわざわざ言う辺り、用件もそれに関係してくるのだろうか。けれど陸上部と言われても、篠宮さんと(ただの)友人関係であるぐらいしか繋がりが無いのだが。
「えーと、陸上部の如月さんはどんな用件で──」
「放課後ちょっと付き合ってもらえるかしら。場所は西校舎三階の第二視聴覚室。そこで聞かせて欲しいの、篠宮とあなたとの関係について」
「え……?」
その言葉に、時間が一瞬止まる。彼女は今、なんて言った?
フィールドも出していないのに体が全く動かず、俺は如月明衣がそのまま立ち去るのを黙って見送るしかなかった。
昼休み。
「はぁ……」
「どうしたの? 溜息ついて、なんだか元気がないけど」
「あ、いや、なんでもないよ。なんでも」
俺は校舎一階の隅にある女子トイレの個室に高原さんと二人で入っていた。
ここもいわゆる『あまり人が来ない場所』であり、昨日の廊下よりも安全な場所なのでこれからはここを定位置にしようかと思っている。
なんの定位置かと聞かれれば、それはもちろん高原さんの下着を見せてもらうための、である。
今日は場所が安全を保証してくれるため、いつもとは違う方法をとっていた。
「やっぱり、これはその……恥ずかしいよ……」
「うーん、でもいつも持ってもらうのも悪いしさ」
そう、俺は洋式の便座に座りドアを背に立つ高原さんのスカートを、自分の手で大きくめくっているのだ。
片手で大きく裾を持ち上げると、かわいい猫柄の下着を纏った股が丸見えだ。その光景を、もう片方の手で持った携帯で写真を撮る。
『自分の手でスカートをめくる』という男子にとって夢のようなシチュエーションだ。性的なことをしているという感覚が増し、俺は正直この行為だけで性器が膨らみそうな気がした。
「今日は猫の柄か。いいね、これもかわいらしいよ」
「うん、子供っぽくないか心配だったんだけど」
「いやいや、高原さんが選んだんだもの。間違いない、いいセンスだよ」
「ほ、本当? よかったぁ……」
個室という狭さのおかげで、いつも以上に高原さんのショーツを間近で見ていた。
灰色の生地に記号化された猫が散りばめられたデザイン。
仮に白地に猫のプリントがデカデカと書かれていればそりゃ子供っぽい。ほとんどギャグみたいなものだろう。しかしこれはデザインが良いおかげであまり幼稚さは感じない。
かわいらしい猫と、彼女の太ももやショーツに包まれた陰唇の柔らかそうな膨らみがとても柔和で癒される。
舐めるようにショーツを眺めていると、軽い眩暈を覚える。
……なんだこれ?
一秒と続かなかった眩暈が治まると、目の前の景色が微妙に違って見えてきた。具体的になにが、という訳ではないのだが、視覚そのものが脳に『ある行動』を訴えかけてくるようだ。
『彼女のショーツに息を吹きかけろ』と。
俺はその意味は分からなかったが、なぜか従うべきだということは理解する。
ただやはり戸惑いの念もあったので、さっきみたいに溜息を漏らすようにしてその行動を決行した。
「はぁ……」
「ひゃあっ!?」
想像通り、というか当たり前だが高原さんは大きく驚きの声をあげた。
「ごめん高原さん。驚かせちゃった?」
「い……いや大丈夫だよ!」
顔を上げて高原さんの顔を見ると、彼女の頬はいつも以上に紅潮していた。最近は割と下着を見せる行為に慣れてきたのか、初めての時ほど顔を赤らめなかった彼女が、今まで見たことないほどに真っ赤に染めていた。
「ん?」
「め、芽森くん?」
俺はなにか嗅ぎ覚えがある匂いを察知して、ショーツに顔をさらに近づける。
これは確か柚姉をイカせた時に嗅いだ……。と思い当たったその時、昼休みの終了を告げるチャイムが響き渡った。
それと同時に高原さんは背にしたドアを大きく開け、外に跳び退くように個室を出た。
「つ、次の授業が始まるから私急ぐね……!!」
そう言い残して、高原さんはほぼ走るような勢いで女子トイレを出て行った。
俺はその急な反応に圧倒され、なにも言えずに便器に座っているしかなかった。
彼女の、羞恥で真っ赤に染まった表情に俺の息子はすっかり元気になってしまったのだが。
さて、授業まであと五分。どうしようか。
俺は悩んだ末、遅れるのを覚悟で竿を握った。
放課後。
俺と目を合わせないようにそそくさと教室を出る高原さんを尻目に俺も教室を出る。
どうやら嫌われた訳ではなさそうだが、今日はもう会話は出来ないだろう。
俺はあの逃走行為の意図をなんとなく察して、そう判断した。
柚姉に続いて高原さんも? なんて期待を持ちながら廊下を歩いていると、その幸福な気持ちを打ち崩す出来事があったことを思い出す。
如月明衣。
彼女の呼び出しと、「篠宮さんとの関係について聞かせて」という発言。
どう考えても俺と篠宮さんが定期的に行っているアレについての言及だろう。
このまま無視して帰っても解決にはならない。その情報を教師や他生徒に言われても困るわけだし……いや、すでに言われている可能性もある。
そうなっていた場合はなんとかその相手を聞き出して、記憶改竄術で強引にでも揉み消すしかない。
つまりはどっちにしろ彼女と会わなければいけない、という結論に至り憂鬱な気持ちを隠せない。
如月明衣とは話す内容以前に苦手なタイプだ、特にあの鋭い眼光とか。
仕方なく俺は向かう先を下駄箱から西校舎に変えると、その途中で篠宮さんに遭遇する。
「あ、偶然。総太くんじゃない」
「やあ、篠宮さん。ああ、そうか陸上部は今日休みなのか」
「うん、なんか顧問の先生が出張ってことと、たまには休部日があってもいいだろって部長がねー。あたしも今日は自主練お休みにしよっかなってことで、今帰るとこ」
同じ陸上部の如月明衣が放課後に呼び出したのは、そういうことだったのか。
「総太くんも今帰りなの? なら、その……一緒に帰らない? ほら、最近駅前に出来た鉄板焼き屋あるじゃん、あれ行きたいんだけどなかなか女子友で行くって言ってくれる人が居なくてねー。総太くんって、そこそこ食べられるタイプでしょ?」
「ごめん篠宮さん。実はもう用事が入っててさ、また次の機会にってことでいいかな」
「あー……そっか。先約が入ってるなら仕方ないなぁ。じゃ、また今度誘わせてもらうよ。流石に女子一人で鉄板焼き……ってのもね」
「恥ずかしさより食欲を優先すると思ってたよ」
「なっ! そんなことないし! あたしも少しはセケンテーを気にするし!」
いつものように軽く笑い合って、俺達はその場を後にする。
えーと、西校舎にはこの角を曲がって──。
「……あーぁ……待っ……たのに」
背後でなにか篠宮さんが独りごちていたが、残念ながらその呟きは俺の耳にまで届かなかった。
西校舎の第二視聴覚室前に到着した。
先ほど篠宮さんには如月明衣のことは、あえて黙っていた。たとえ如月明衣に篠宮さんの淫乱な姿を見られていたとしても、その記憶を俺は消すことが出来る。
だから篠宮さんに余計な心労を背負わせることは無駄なことだし、知らせる必要がないと思ったのだ。
だが、記憶を消すと言っても簡単なことではない。
他に誰かに教えてないかを聞き出し、俺と篠宮さんの関係について怪しまれないように上手く記憶を変える必要がある。
戦の前のような気持ちで、俺は心の中で自分の頭にハチマキを巻くイメージをして、気合を入れる。
すでに開錠されていたドアを開け、教室内へと足を踏み入れた。
「遅いじゃない。呼び出した人間が先に来るのが礼儀とはいえ、女性を待たせるのは感心しないわよ」
普段使う教室よりも大きく、少し上等な机が並ぶ教室の中央に、如月明衣は立っていた。
その出で立ちはまさに『待ち構えていた』という印象を受けた。俺の中での彼女のイメージは「待ちかねたぞ」とでも言う魔王に固まりつつあった。
「それで、まずここに呼び出した理由を聞きたいんだけど」
「理由? それは朝にも言ったじゃない。あなたに篠宮鈴羽のことを聞きたいって」
やはり、俺の予想は外れてくれないか。
このままフィールドをこまめに出しつつ、彼女から上手く情報を──。
「で、あなたは篠宮のどこに惚れたの? なんで付き合おうと思ったの?」
「…………は?」
「ん? まさか誤魔化す気? 無駄よ。私は知っているんだもの。あなた、篠宮と付き合ってるんでしょ?」
「いや、全然。ただの友達で──」
「誤魔化さないで」
彼女はピシャリと言い切る。
なんだかややこしいことになっている気がして、俺は不安を抱きつつあった。
「私は昨日、篠宮があなたにどこかで落ち合おうと相談してるのを聞いたし、部活中も篠宮が校庭端にいるあなたに視線を送ってるのを見たのよ?」
「いや、見たのよ? て言われても……そもそも、仮に付き合ってるとしてなんで如月さんがそんなことを聞く必要が?」
「なぜって、それは…………実は私は部の公序良俗を守る役目を任されてて」
「ぜっったい嘘だ。今考えただろ、それ」
なんだか腹を括って来た俺が馬鹿みたいだ。これなら篠宮さんと鉄板焼き屋に行けばよかったな……。
「ともかく、私は篠宮に彼氏が出来たなんて信じられないのよ。だってあの篠宮よ? 中学から陸上一筋で、身なりとかにも無頓着で、恋愛関係の話より今日の帰りはどこで買い食いしようかなんて話題の方を好む篠宮よ? そんな篠宮に、彼氏が出来るなんてそんなこと……」
彼女が挙げた情報は俺も知らないこともあったが、なんとなく想像出来た。特に最後のは。
ここで俺は以前、友人から聞いたある話を思い出す。
篠宮さんは一年の頃は高跳びの選手であり、ハードル走に転向したのは数ヵ月経ってからなのだそうだ。
彼女はもっと走る競技がしたかったそうだが、その才能は主に『跳躍』の方が大きかったそうだ。なので、最初は才能を買われて高跳びの選手だったわけだが、結局は間を取ってハードル走を選んだそうだ。
そして、彼女が一年の頃に築き上げた成績は今でも現役の高跳び選手達に引けを取らない輝かしいものばかりで、それが選手達からはあまり好ましく思われていないと。
確かに、途中で自分のやりたいことを優先して転向した相手の記録に、必死でやってる自分達が追い付けないというのは面白くないだろう。
そして昨日の練習風景を見る限り、如月明衣は走り高跳びの選手なのだろう。
他の種目でも大成した選手が残した置き土産のような記録を越せず、そんな相手が男相手にうつつを抜かしていると思い、我慢出来ずに彼氏相手にその不満をぶつけに来た。
あくまで予想だが、大筋はそんなところだろう。
なんともはた迷惑な話だし、そもそもそれは誤解だ。
「ちょっと、聞いてる?」
「あぁ、聞いてるよ。でも、別に陸上部が恋愛禁止というわけじゃないだろう? そこまで必死になることか?」
「そうよ。同じ部の部員が不純異性交遊をしているのを見たら、なにか言いたくなるものでしょう」
「不純って……相談したり、目線を送ってただけだろ」
「あとはそうね……校舎裏で淫行に及んでいたことぐらいだけれど」
「えっ」
……おい、待て。今、なんと言った。
「い、いんこう……?」
「……? 西校舎の裏であなた篠宮にフェラさせていたじゃない。まぁ、漫画でもよくあるし、高校生で恋人を作ったら、みんなしたくなるんでしょうけど」
ここに来て、俺はこの如月明衣がヤバい人間なのではと思い始めた。
俺と篠宮さんの情事を見られたことも危険だが、彼女自身の感性も危ういもののように思えた。
「……いや、どんな漫画だよ」
「あら、ごめんなさい。あなたは少女漫画なんて読む柄ではなかったわね。じゃあ、あれは篠宮が言い出したことなのかしら」
俺も昔は柚姉の持っていた少女漫画を読んだことはあったが、そんな過激な描写は無かったような……いや、今はそんなことどうでもいい。
「つけていたのか……あの場所まで」
「顧問からの伝言があって、篠宮を探していたのよ。それで、あなたのモノを篠宮が……」
「あぁ、分かった。もういい。言わないでくれ……」
「分かった? 分かったということは認めるのね。やっぱり、そうなんじゃない」
なんという注意不足。あそこは校舎側からは窓がないし、塀と校舎に挟まれて出入り出来る場所も限られている。心理フィールドでこまめに確認していれば、防げたことなのに。
「どうせ、お互いの自宅でも隙を見て交わっているのでしょう? まったく、どうして篠宮が……」
ぶつぶつと呟き始める如月明衣をよそに、俺は必死で頭を働かせる。どうすればいい、どうすればこの状況を打開出来る?
とりあえず会話を続けなければと、俺は思ったことを適当に述べる。
「もしかして羨ましいのか?」
「……なにを言っているのかしら。私は部活前に淫行をする部員の恋人がどんな男か……いや、不純異性交遊をするのはどうなのかと思っただけよ」
……ほう。
適当に言ったのだが、もしや本当に羨ましくて突っかかってきたのかもしれない。そもそも、最初に聞いてきたのが「どこに惚れた?」と「なんで付き合おうと思ったの?」なのだ。単に色恋沙汰に興味があるだけなのかもしれない。
ここで俺は心理フィールドを展開する。
眉をひそめて不機嫌顔の如月が、ぴたりとその動きを止めた。
[ 篠宮の 彼氏と 一緒に 第二視聴覚室に 居る ]
浮かび上がる文字を見つめていると、良い改竄内容を思いついた。どうにも彼女は恋人関係に憧れている節がある。
なら、実際の気分を味わわせてあげようではないか。
限定神力・記憶改竄開始────。
[ 『私の』 彼氏と 一緒に 第二視聴覚室に 居る ]
色褪せた世界から帰還し、俺は反応を見るために再び問いかけた。
「で、改めて聞くけど、今日呼び出した用事ってなにかな?」
「用事? そんなの決まってるでしょう……?」
如月が俺の近くへとゆっくりと、歩み寄ってくる。そして、俺の目の前まで近づくと……。
「それは総太と会いたかったからー、えへへー」
と言って、抱き付いてきた。
え? ……あれ?
あまりにも想像してなかった反応に困惑する。
これがさっきまでピリピリしていた如月明衣だというのだろうか。一瞬、誰の声なのか分からなかった。
「あのー、如月さん? なんか性格が変わって──」
「もう、さん付けなんてよそよそしいわよ。私達付き合ってるんだから、明衣って呼んで。そうだ、私もそろそろニックネームで呼ぼうかしら……総たん、というのはどうかしら」
そう言って、彼女は俺の胸板に頬ずりをするように自分の顔を押し付けてきた。
確かに、俺は彼女の記憶を改竄して自分の彼氏と一緒にいるように思わせた。
しかしこの反応は予想外で、予想以上だ。
恋人の前では別人のように振る舞う人間がいること自体は珍しい訳ではないが、ここまで極端な人間はそうそういない気もする。
目下で揺れる黒髪がふとこちらを見上げてきた。アーモンド型の瞳が、さっきまでと違い純粋な光を宿している。
「ねえ、総たん。下向いてくれるかしら」
「こ、こうか?」
デレッデレな如月に俺はまだ馴染めず、言われるがまま顔を俺より小柄な彼女に向ける。
あれ、こういう体勢は最近したような──。
「えい」
そんな軽い声と共に、如月は背伸びして自分と俺の唇を重ねた。
彼女の突然の行動に、脳が一瞬フリーズする。
そして、驚きで思わず後ずさろうとするのを、如月は俺の首に腕を絡めることで制し、おまけに舌を俺の口の中へと強引に入れてきた。
俺の舌に絡まるヌメリとした感覚を、最初は苦しく感じた。しかし、だんだんとそれは快感へと変わっていく。普段なら絶対に他人と触れ合わない口内で、他人の舌が蠢くのは新鮮な感覚だった。
「ん……ぷは……ふっ……あは……」
慣れない……いや、それどころか初めての口づけなので、上手く息継ぎが出来ずに口を放した。
「いっぱいしましょう。ねぇ?」
だが、如月は我慢が出来ないようですぐに舌による求愛を要求する。俺の口内で舌と唾液をいやらしく絡ませている間、俺は彼女と一体化しているような感覚を覚える。
もはやどちらのものか判別出来ないぐらいに唾液は混ざり合い、獣のように荒い息は問答無用でお互いの肺を満たしていく。
もう何分経っただろう。
濡れたキスが交わされる音と、時折漏れる甘い吐息は不意に止んだ。
「はぁ……はぁ……やっと、解放された……」
「ふふ、どうする? 今日は最後まで……する?」
俺を見上げる如月の頬は赤く染まり、首に回されていた手はいつの間にかブラウスのボタンを数個外して、胸の谷間をアピールさせて俺を誘ってくる。
正直、俺はここまでの行為を彼女とする気はなかった。
きっと如月は過激な少女漫画の読み過ぎかなにかだろう。恋人と校舎内で『最後』まで行うなんてことをするような人間には、とても見えなかったからだ。
誰かに見つかるかもしれないという危険性を考えてここでやめるべきだろう。
昨日までの俺であればそう判断したかもしれない。
「ああ、最後までしよう」
俺は再び、彼女の柔らかな唇に自分の唇を重ね、そのまま視聴覚室の机の上へと如月を押し倒した。
我慢や理性なんてものは、昨晩すべて吹き飛んでしまったのだ。
こんな機会をみすみす捨てられるほど、今の俺の情欲の猛りは大人しいものではなかった。
彼女を抱きたい。彼女を犯したい。彼女のすべてを感じたい。
今朝初めて会話した相手にそんなことを考えてしまうほど、俺の情欲はどうしようもない状態だった。
うん? ……なんだ、また眩暈が……。
唐突に、昼休みの時と同じ眩暈に襲われた。
それもまたすぐに治まり、またしても目の前の風景がどこか違ったように見えてくる。
俺の視界は淡く光るラインを捉えていた。改竄術の時に浮かび上がる、記憶の文章のような白い光だ。
そのラインは彼女の口から下へと伸びていた。
これをどう活用するべきかは、すぐに理解した。触れ合っていた唇を離し、光るラインに沿うように舌を這わせる。その細い首筋に口づけをして、時折舌先で舐める。
「んん……もう、そんな弱い所ばかり……あっ……」
これがイシュタルの言っていた新しく授けた力なのだろうか。今の俺は次にどうすればいいのか、どうやれば効果的に性的快感を与えられるのかが、直感的に把握出来ていた。
首筋を通り過ぎると、皮膚の下から浮き出た鎖骨をなぞるように舌を動かしていく。
彼女も篠宮さんと同様に日焼けした肌をしているのだが、舐め心地に悪い箇所は無かった。若い女性というのはどれだけ日に焼かれようとも肌の柔らかさを保てるのかと、俺は感動に似た高揚感に包まれる。
そして露出している肌を一通り舐め終えると舌による愛撫を止め、如月のブラウスのボタンに手をかけた。
「じ、自分でするわよ……」
「いや、待てない」
乱暴とまでいかないが、急かすように残りのボタンをすべて外すと、そのままブラウスを果実の皮のように剥いた。
服の下にはスポーティーな無地の白いブラが、小ぶりな膨らみを包み隠すように覆っていた。昨日柚姉のものを体験してしまったせいか、余計にそれは寂しいものに感じた。
だからといって、俺はそれを無価値と思うタイプではない。慣れぬ手つきで如月の背後に手を回して、ホックに手を掛ける。体勢としては如月を抱きしめるような形になっていた。
「私は逃げないわよ……ふふ」
耳元で如月が笑みをこぼした。それは必死になっている俺の姿を見た反応なのか、それとも激しく自分を求められているという事実に対してだろうか。
未だにこいつの価値観が分からないが、確かに俺は如月明衣を求めていた……正確には、その体をだ。
ようやくホックを外すと、ブラを上にずらす。そしてその慎ましい胸が現れる。……如月が机の上で仰向けの体勢をしていたので小さいと思ってしまったが、十分な膨らみがあった。両手でしっかりと掴めるほどの大きさのおっぱいは、指先の力でふにふにと形を変えた。
乳首と乳輪は綺麗なピンク色をしていて、そこにも淡い光のラインが指示を出すように引かれていた。
俺はそれに従い、乳輪のふちをなぞって焦らす。乳首に触れるか触れないかの感覚で指を這わせ、不意に爪先で固くなった突起を弾いた。
「いゃんっ……!」
今まで聞いた中で一番かわいらしい声が出た。顔全体を紅潮させ、じんわり汗を掻いて快楽を味わっている如月の顔はとても惚けていて、淫靡だった。
如月の体が感じやすいものなのかどうかは分からないが、きっと昨日の柚姉相手よりかは上手く出来ているはずだ。このラインは相手を感じさせる場所を示し、従うことで、間接的に俺の情欲を高める役割も持っているようだ。昨日の柚姉へのマッサージと同様に、自分の手で女性を感じさせるという興奮を再び実感していた。
我慢出来ず、俺は彼女の小ぶりな胸に食らいつくように口づけをする。
本当に食べてしまいたいほどのサイズの柔らかい胸が俺の舌や唇を優しく押し返す。極上の果実を舐めるように、時には吸うようにして的確に如月に快感を与え続ける。
「やんっ……胸、弱……いからぁ……やっ、やぁ……!」
この教室は防音設備が整っているからか、彼女はなにも憚ることなく甲高い声を漏らしていた。
小さめの乳首を軽く歯で挟み、コリコリとその感触を確かめる。
「あっ……ほんと、感じやすい所ばかり……んん、ずるいわよ……!」
本当に自分でもどうかしてしまったのかというぐらいに手際よく、そして確実な愛撫を繰り返した。
胸への愛撫を手に任せ、舌先は彼女の脇腹やヘソなどの敏感なポイントを舐めながら、スカートをめくる。
日に焼けた足は細くも、しっかりとした筋肉が付いている。そして日焼けが薄くなる足の付け根の先に、ブラ同様にシンプルな柄のショーツが彼女の一番大事な場所を包んでいた。
「……脱がせるから、腰浮かしてくれ」
如月が控えめに腰を浮かす姿に生唾をごくりと飲み込んでから、俺は彼女のショーツに手をかける。そして禁断のベールを剥ぎ取るようにショーツを腰から下ろして、足から引き抜いた。
「……すごい」
遮る布が無くなったそこには確かめなくてもまだ誰にも侵入を許していないことを確信出来る、綺麗で色の薄い割れ目があった。
形自体はネットなどで見たことがあったが、実物を見るのは初めてだった。やはり実物は画像で見るよりも受ける印象が異なっていた。
俺は薄く生え揃った陰毛を掻き分け、その奥にある外陰唇を両手の親指で広げて中を観察する。
「そ、そんなにじっくりと……そ、総たんがそうしたいならいいんだけど……」
「綺麗だよ、とても」
広げた割れ目の間は肉のヒダの密集地帯だった。赤いヒダはピクピクと痙攣していて、すでに愛液でテカテカと光り輝いている。
すでに痛いぐらい膨張した肉棒を取り出すため、制服のズボンを下着も一緒にすべて一息に脱ぎ捨てた。
誂えてあるかのように机は俺の腰より少し低めの高さだったので、そのまま正常位で挿入しようとする。
「あぁ……来て……来て、総たん。私に愛を注いで」
まるで官能小説のような台詞も、きっとどこからか拝借したものなのだろう。そんなあざとさを感じさせる言葉にも、俺の情欲は反応した。
名前を呼ばれること自体がある種の快感をもたらしたのか、彼女の猫が甘えるような声に魅了されていた。
「今日は……無しでいいから、そのまま生で……ね?」
「メイ……!」
それに対して俺は、上っ面だけの心のこもっていない名前呼びで返事をする。
如月はまだ誰にも許していないだろう挿入を、簡単に、それも生で許していた。
俺は初めての性交に対する感慨深さを感じるよりも、早く入れた後の快楽を感じたかった。初めての行為だが手間取ることもなく膣口に照準を合わせ、ためらうこともなく肉棒を彼女の体内へと突き進めていく。
俺は膣壁が絡みつく感触に、如月は純粋な苦しさからか、二人とも息を漏らす。
ちょっとずつちょっとずつ前進を続けた俺の竿は、ついに完全に鞘へと収納された。
性器を全方位から圧迫され、温められるこの感触は自慰やフェラでは到底味わえない快感だった。
「全部、全部入った……温かいのと硬いのと大きいのが、全部伝わってくる……」
如月は本当に愛おしいように、肉棒の先端辺りが収まっているであろう下腹部をそっと撫でた。
「動くぞ、メイ」
「え、ええ……いいわ」
なんとか挿入の感触に耐えると、今度は腰を動かすことで擦れる快感が俺の竿を震え上がらせた。快感の波に、腰がぞわぞわとする。カリ首が狭い膣内で肉ヒダを引っ掛けながら後退し、また奥へと進んでいく。
その度に搾り取られるような感覚が、大きくなった肉棒を襲う。
「あぁ、すごい……私の中身が、すべて持っていかれそうになる……こ、こんなの経験したこと……ないっ」
「はぁ、はぁ……痛むか?」
俺は割れ目からピストン運動で見え隠れする竿に、血が混じっていることに気づいた。如月自身は気づいていないようだが痛みは感じているだろう。
「そう……ねっ……んんっ、総たんとは、初めてじゃないのに……スキンを付けてないから、かしら……でも、いいのよ、気にしなくて。優しい総たん……あなたの好きなようにして」
その言葉に、血を見て怯んだ俺の心は再び情欲で滾った。
腰を引き、そしてまた押し込む。その度にペニスから全身へと快感の電流が駆け巡る。
如月があげる声が痛みからなのか快感からなのかも分からないが、そこに艶やかさを感じた。
俺は自分のペースでだんだんとピストン運動の速さを増していく。
掻き混ぜられた愛液がじゅぱじゅぱと、キス音の数倍も大きく卑猥な水音を出していた。激しい運動に揺さぶられ、スチール製の机がギシギシと音を立てる。
まだ十分にほぐれたとは言えない陸上部員の引き締まった処女マンコを、俺は引っ掻き回すように出し入れする。鍛えた体が今は俺の肉棒から精子を搾り取ることだけに使われていると思うと、限界だ。
「あっ、あっ……もう、そんな……ああぁ、ダメ、イク……」
キュッと如月の膣が引き締まるのと、俺が射精感を我慢出来なくなったのはほぼ同時だった。
「やぁ、あっ、ああぁぁああん!!」
教室内に響く嬌声と共に、如月の膣は俺の肉棒から精液を搾り上げた。大量の熱い奔流が、竿の中から外へ一斉に吐き出されていく。精液以外に精気まで抜かれていくような感覚だった。
ドロドロしたもので膣の中が満たされていく感覚を、きっと如月は感じているのだろう。
机の上で仰向けになっている如月が、顔だけで俺を見上げた。
「はぁ……はぁ……もう、いきなり激しいじゃない……」
「悪い……でも、次はそっちにも合わせるよ」
「え、次って……」
竿を膣内から抜く時、ヒダに擦れる感触だけでまた勃起してしまう。とても一回じゃ満足出来ない。
「この教室、何時までとってある?」
「……最終下校時間までだけれど」
俺はチラッと壁に掛けてあった時計を見やり、「あと三回はいけるよ」と言って再び口づけを交わした。
「えっ……ふ……んっ、んあ……」
今度はこちらが如月の口内に舌を差し入れる番だ。
すでに疲れ切っていた如月は抵抗出来ず、言葉にならない声をあげて、ただこちらの舌を受け入れるだけだった。上から覆いかぶさるように如月に口づけしながら、指先で小さな乳首をこりこりと弄る。
キスしたままではラインは見えないが、そろそろコツも分かってきた。傷つけないように気をつけながらも、時折きゅうっと指の腹で乳首の先を潰してやる。
「やぁっ、あっ、らめ、それ弱いから……」
その反応に俺は満足して、如月を机から降ろした。ふらふらの如月は膝から崩れそうになり、慌てて腕を支え、ゆっくりとタイルカーペットの床に膝をつかせた。
「ご、ごめんなさい」
「気にするな……そのまま、尻をこっちに向けてくれ」
如月の腰を掴むと俺の意図が通じたのか、少し恥らいながらも床に手をついて、膝立ちの下半身を突き出す、いわゆる『女豹のポーズ』になる。床がカーペット地だから痛くはないだろう。
短く「脱がすぞ」とだけ言って、俺は如月の突き上げた尻からスカートをはぎ取った。再び、濡れに濡れた如月のヴァギナが俺の前に差し出された。
顔を伏せている如月がどんな表情をしているか分からないが、文句一つ言わないところを見るに、『恋人』が望むならこれぐらいは平気なのだろう。
差し出された如月の腰に、膝立ちの格好で竿を握って自分の腰を突き出した。ぐちゅじゅ、と乾く間もなく濡れたままの亀頭が、再び熱い挿入感を覚えた。
「あっ! これ、ふか……深い……んんぅ!」
確かにさっきまでと違い、如月の奥の奥まで肉棒が呑み込まれていくのを感じる。入れるどころか、如月を貫いてしまっているかのような感覚の中で、ぎこちないが、腰を前後に動かし始める。
さっきよりも深く、奥までピストン出来るのが分かる。深くなればなるほど、如月の膣内は俺の肉棒を離すまいと、きゅうきゅうと締め上げてきた。
二度目の限界は、すぐだった。
「だ、出すぞ……!」
「また、くる……のね……ん、んんんっ!!」
射精中の敏感なカリはヒダヒダのしごきに堪えきれず、先ほど注いだ精液へさらに新しい情欲の塊を混ぜ合わせた。今度はもっと、膣内の奥の奥、子宮により近い所で。
「はぁ……はぁ……」
流石に連続で搾られた俺は、竿を抜くとそのまま腰を下ろした。頭がぐらぐらして思考がおぼつかない。ただ気持ち良いという感覚だけが体の中で血流のように駆け回る。
「まだよ」
息も絶え絶えに汗でじわりと肌を濡らしていた如月が四つん這いで俺に近寄ってくる。手を後ろについて足を投げ出したままの俺は、ただそれを見守っていた。そして俺の伸ばした足に跨るように移動した如月は、愛液と精液でどろどろの竿を躊躇なく握ると、ぐちゃぐちゃと音を立ててしごき始めた
「あと二回、するんでしょう」
ぬるぬるになった如月の指先が絞り上げる圧迫感に我慢出来ず、竿はすぐに完全な形になる。
如月はその固くなったモノを手で確認すると、ゆっくりとヴァギナを亀頭へと導き挿入を果たした。
足をM字に開いた如月は手を俺の腹について、恥も外聞もない格好で腰を前後させ始めた。
「こん、どは……んんっ、私が動いて……あげるわ」
その言葉通り、如月は性器を俺の竿に擦り合せてきた。お互いの陰毛がベタベタに濡れ、絡み合っている。
自分でペースを調整出来ないせいで、さっきよりも何倍も大きい快感の波が俺の腰を襲う。
しかし如月も消耗しているのか、たまに動きを止めて発情期の猫のように荒い息を吐き出していた。
先を促すように俺が如月の乳首を弄ると、膣がきゅっと締まった。快感で顔を歪ませた顔で、如月はまた腰を前後に振り始める。しばらくすると俺の玉袋が引き締まり、射精の準備をしているのが分かった。
三度目の射精と、『四回戦目』が始まるのはそう遠くないことだった。
視聴覚室に響く女の艶めかしい声と、腰を打ちつける音。
すでに三回も射精していたが、漲る情欲は衰えを未だ見せず、「あと三回はいける」なんて冗談半分な言葉は現実のものとなりそうであった。
机の上にぐったりと上半身を預けている如月を俺は後ろから、動物の交尾のように腰を打ちつけていた。
「ん、総たん、すごいっ……ぅ、じゃない……総たんのモノが、奥の……くぅ……奥まで、深く……んん!」
如月明衣はマラソンの最中のように息を乱し、こちらに振り返りもせずなんとか言葉を紡いでいた。
俺は四回戦目になっても初めてのセックスの快感に溺れ、抑えきれず自分勝手に激しく動いていた。
いつの間にか全裸となっていた彼女の白い背中を見ながら、肉棒を奥の方まで味わわせている。始めは壁に手をついた状態だった如月だが、一時間以上も続くこの性行為で疲労がピークに達したのか、机に寄り掛かるとそのまま動けなくなり、ただ俺のピストンで喘ぎながら腰を揺らすだけとなっていた。
陸上部で鍛えられた体といえど、使い慣れない部位を酷使するのは相当体力を使うようだ。
その弱々しくなった彼女の体に、俺は無遠慮に「射精をさせろ」と言わんばかりに肉棒を突き続ける。
「ダメっ……総たん、イクっ! ……また、イっちゃう……」
「ああ……これで、四回目……だ、くぅっ!」
彼女の細い腰を掴んで、膣の中を掻き回す。三回分の精液が溢れ返り、彼女の足を伝っていた。
どろどろの熱い肉壺の中で今まで以上に深く、そして奥の奥へと彼女の膣壁を肉棒で押し広げていく。
性器を襲う絞り上げるような圧迫感に、俺は生命力を根こそぎ奪われそうな感覚に陥る。
自分がペースを握っているはずなのに、逆に相手から「早く出して」と責め立てられているかのように、射精感が限界まで高まり、そして。
「んんんっ! ああぁぁっ!」
もはやどちらの声かも分からぬ快楽の咆哮をあげ、俺はようやく抱えていた情欲すべてを吐き出した。