カバー

迫害された少年と魔女VS元クラスメイトの騎士

クラスメイト全員からイジメられていた少年は、突然異世界にクラス転移してしまう。異世界に飛ばされても繰り返されるイジメに耐えかねた少年は一人逃げ出し、この世界で同じく迫害されていた魔女たちに与し、復讐を決意する。現実世界の名前を捨てて通称ネロと名乗り、同志の魔女を集めながら復讐の機会を窺う。そうして見つけ出した復讐の手段は、魔女に催眠を施し、欲求を揺さぶることで発現する【固有魔術】を利用することだった――。

書籍化に伴い読みやすく大幅改稿!
書き下ろしに本編の幕間の物語『魔女の館と空飛ぶ憂鬱』を収録!

  • 著者:ろく
  • イラスト:三品諒
  • 本体価格:1,200円+税
  • ISBN:978-4-8155-6506-0
  • 発売日:2018/5/30
口絵

タイトルをクリックで展開

 気怠く瞼を持ち上げる。

 窓から月明かりが射し込んでいた。

 悪夢に魘されていたわりには、悲鳴は上がらなかったようだ。

 自室のベッドから起き上がり、窓を開けて真っ暗な山林の空気を肺いっぱいに吸い込む。熱の篭った身体を冷やすには、丁度いい具合だった。

 両手を見る。血に濡れてはいない。

 血に濡れてはいない手で、机上にあった葡萄酒を掴み、そのまま呷った。血のように赤い葡萄酒の酒気を吐く。あるいは溜め息のように。森の賢者の鳴き声よりも、それは間延びしていた。

「出会えなかったか……」

 せっかく魔女を監禁しているという聖教騎士を捜し出したのに……。

 引き寄せた椅子に腰掛けて、銀製の手鏡の蓋を開ける。映し出されるのは、似合わない貴族服を着た冴えない男の微笑みだった。見ていられなくて、僕は眼を閉じる──。


 過去があった。

 けれど、過ぎ去っていない現実だ。僕の悪夢とはそういうもので、明けることない真夜中がずっと続いている。未来永劫の悪夢。現実と地続きの悪夢。

 あの世界の、あの教室──二年D組で行われていたことは、永遠に繰り返される。

 ──僕はイジメられていた。


 私立頭橋とうばし高等学校商業科──学校に登校しても、靴箱に上履きはない。買っても買ってもバラバラに切り刻まれるからだ。僕は靴下で廊下を歩き、教室に入る。机の上には菊の花の活けられた花瓶が載せられていて、退かそうとすれば背中を蹴られ、水を掛けられた。

 ウザい、キモい、死ね、などの文字で真っ黒に塗り潰された教科書。授業中に投げ飛ばされる消しゴムのカス。

 給食には痰とツバと蟋蟀が入れられていて、僕はそれを食べなければならなかった。食べなければ、無理やり口に突っ込まれるか、制服の中に流し込まれるから。

 これらはまだ、些細と言える程度のイジメだったけれど──。


 この異世界に召喚されてから、もうすぐ六年が経とうとしていた。

 きっとみんなは──僕を除いた三十五人のクラスメイトは、足のつま先から頭の天辺まで聖教騎士になっているだろう。白銀の鎧を身に纏い、傲慢に剣を振り回して、魔女狩りに励んでいるはずだ。

「……はは」

 こんなところに召喚てまで、弱い者イジメをやめないなんて──。

「あははははははは! あははははははは!」


 ──コンコン。

 僕の笑い声が響いていたのか、控えめなノックだった。

 この叩き方は一人しかいない……。

「夜分遅く申し訳ありません。ネロ様」

 入室の許可を出していないから、扉は開かれない。

 扉越しの彼女に、「どうしたのかな?」と背中で訊ねる。

「先日救出した者の体調が整いました。頃合いかと……」

 淡々とした涼やかな声は、山林の空気に冷やされたこの部屋の温度をより一層低くした。葡萄酒を呷れば、込み上げてくる酒気に熱くなる。これで釣り合いを取ろう。

「見計らったようなタイミングだね。呼び鈴を鳴らそうか、考えていたところだよ」

 本棚から取り出した革装丁の分厚い書物を膝に載せて、栞を挟んでいる頁を開いた。

 そこには、文明の発展していないこの異世界の、この名もなき国に於いて、絶対の罪悪とされる存在──魔女について記されている。


 穢れた血はその身に顕れる。褐色の肌は罪深く、獣と交わる為にも闇夜に近しい。

 死肉を喰らい、子供を拐かし、毎夜の淫蕩に耽り、自堕落を尊ぶ。

 病を吐き、災いを祝い、獣を産み捨てては、死を論い、されど多産にして殖える。

 無知に火を恐れれば、獣に等しい人間の形。


 聖教騎士団を率いる聖教十字会は、魔女をこんなふうに嘯き、公公然と自らの正義を謳い上げている。

 民衆の支持を得て行われるのは、魔女狩りという名の大量虐殺。逃げ惑うことしかできない魔女を捕らえ、四肢を削ぎ落とす拷問をした挙句、生きたまま火炙りにする。

 どんな世も、いつの時代も、形を変えて必ず存在する迫害──迫害イジメ

 みんなが聖教騎士として魔女を迫害するというなら、迫害イジメられていた僕は──魔女側だ。

 利害は概ね、一致していると考えていい。

「あの娘は、左の道を選ぶかな?」

 その問い掛けに数瞬の間を置いて、「はい……」と、端的に返事が戻ってくる。二年間も監禁されていたそうだ、意志は固いらしい。

「明後日、改めて顔合わせしよう。命懸けなら、きっと協力し合える」

 獣と交わらなければ、獣姦をしなければ、生き永らえることのできない者たち。扉の向こう側にいる彼女も、その一人。

「畏まりました」と答えたあと、わずかな沈黙があった。次に密やかな足音。律儀にも、一礼していったようだ。

「魔女の館、ね……」

 言葉にしてみると酷く滑稽な響きだったので、僕は苦笑を漏らした。自分でも笑えるほど滑稽だと思うのなら、

こう言い換えてみるのもいい。

「復讐の館……」

 やっぱり滑稽だった。まるで喜劇だ。だったら喜劇のように開幕して、悲劇のように終わればいい。

 とても凄惨な結末で──。

「さぁ、幕開けといこうじゃないか……」

 復讐の始まり。

 その第一歩目を祝して、僕は葡萄酒を呷った──。

 ◇◇◇


 心を楽に。

 リラックスして。

 そっと眼を閉じてみよう。──ここはどこ?

「り、立派な……お館、です」

 どこにあるのかな?

「森の中……です」

 どうして森の中に館なんてあるんだろう?

「わ、わかりません」

 君は誰?

「エレノア・エレクトール、です」

 君はどうしてここにいるんだろう?

「ネロ様に、助けて頂きました」

 ネロ。それは誰だろう?

「あ……彼方……様、です」

 ねぇ、エレノア。君を攫ったのは、誰だったかな?

「聖教騎士団です」

 どうして攫われたんだと思う?

「……わ、私が……」

 怖がらなくてもいいよ。僕は君の味方だから。

「……魔女の……系譜だから、です」

 聖教騎士団は悪い連中だ。自分たちと少し違う生き方をするというだけで、魔女狩りなんて酷いことをする。

 彼らが憎い? 

「……に、憎いです」

 僕もだ。とても憎い。とっても……。

 ──さぁ、想像しよう。

 空は高く風は緩やか。辺り一面は青々とした草原。君は一本道に立っていて、その先は二本に分かれている。

 右の道に進めば、穏やかな暮らしが待っている。毎日が平和だ。焼き立てのパンと温かいスープが食べられる。衣食住には困らない。でも、それ以外はなにもない。

 左の道に進めば、争いが待っている。命を失うことになるかも知れない。でも、復讐の機会が与えられる。聖教騎士団に怨みを晴らすことができる。自らの手でね。

 エレノア。君なら右と左、どちらの道に進む?

「左です」

 どうして? 右の道には平和があるんだよ?

「……二年前……十五の頃、村が……故郷が、焼き払われました」

 聖教騎士団は本当に酷い連中だ。僕も彼らが憎くて、復讐したい。

 手伝ってくれるかな?

「はい、ネロ様」

 じゃあ一緒に行こう。

 ゆっくり眼を開けて。


 ◇◇◇


 エレノア・エレクトールは眼を開ける。大きな瞳は群青。薄い唇が涸れているのは緊張のせいだろう。灰色一色のワンピースは、彼女の肌の色を際立たせる。褐色の肌は、多くの魔女の象徴的な色。

 わずかに肩に掛かる黒髪には、まだ艶が戻っていない。栄養失調のせいだ。聖教騎士団に捕まってる間、ろくな食事を与えられなかったらしい。

 洋館の一室。

 椅子に腰掛ける僕の目線は見上げる形になっている。エレノアは真正面に立ったまま、動いていない。

「これからエレノアの魔女の血に宿る魔力を引き上げようと思う。成功すれば、君は正血統の魔女と同等の力を得られる。その辺の話は聞いてるかな?」

「は、はい」

 頬を赤らめるということは、内容は正確に伝わってるようだ。

「葡萄酒、飲む? 気分が楽になるかも」

「だ、大丈夫です」

 返事のわりには身体が硬い。糸繰り人形のように。

 すっと人差し指を伸ばして、膨らみに乏しいエレノアの胸をふにっとつつく。

「──ひゃ!」

 幼さの残る可愛い悲鳴が上がった。身体は硬いのにおっぱいは柔らかい。女の子の身体は不思議でいっぱいだ。

「僕のことは聞いてると思うけど、改めて自己紹介するよ」

 神妙な面持ちで頷くエレノア。話してるうちに少しは緊張も解けるかも知れない。

「通称はネロ。本名は山犬に喰わせた。出身は異世界。わかり易く言うなら、とても遠い国。馬で駆けても、箒で空を飛んでも、辿り着けないくらい遠い国。年齢は永遠の十七歳。この世界の時間軸から外されてる僕は不老なんだ。趣味はエレノアのような可愛い女の子のおっぱいをつつくこと。以上だけど、質問はあるかな?」

「……わ、私は、可愛くなんて、ありません」

 俯いて答える。

 照れているわけではなく、自分では本当にそう思ってるんだろう、声色は酷く暗い。

「隣の部屋に姿見があるから見てみるといい。そこには胡桃みたいなパッチリした二重の眼で、黒髪が知的なお姫様が映ってるはずだから」

 俯いたまま、ふるふると小さく首を振る。

「……遠目からは黒く見える瞳の色に、肌は雨が降ったあとの土の色。髪はカラスの翼のよう。私は闇夜に溶けてしまうほど真っ黒です」

 表情が失くなってしまっている。代わりに浮き出ているのは、強い劣等感。

 彼女の肌の色は褐色だけれど、他の魔女と比べて濃いなんてことはない。

「磨かれた黒曜石がどれほど輝くか知ってる? 軽薄な金色なんか比べものにならないよ」

 涙を堪えるように、唇を仕舞うエレノア。慰めの言葉に聞こえてしまったらしい。緊張を解こうと思ったのに裏目に出てしまったようだ。

「──ひゃ!」

 おっぱいをつつかれて漏れる声はこんなにも可愛いのに……。

 左右のおっぱいの中心を交互につつく。指の腹でノックをするように、とんとん、とんとん、と……。

「ひゃっ……あ……あっ、んぅ……んん……っ」

 敏感な体質。堪え切れず後ずさってしまうエレノア。

 感受性も豊かなんだろう。劣等感が強いのはそのせいなのかも知れない。

「エレノア、動いちゃ駄目だ。じっとしてること」

「は、はい」

 元の位置に立つ。でも腰と膝がやや低くなっている。丁度いい。座りながら両手の人差し指でエレノアの乳首をくにくにと弄ぶ。小さな口から漏れる吐息は、湿り気を帯びていく。

「……んっ、はぁ、んっ……んあっ……はぁ……あっ」

 程良く微弱になるワンピースの上からの刺激。太ももを擦り合わせてもじもじしている。もうしばらくしたら立っていられなくなりそうだ。閉じ掛ける瞼。黒髪が揺れて、色艶が増す。

「じっとしてることって言ってるのに」

「あっ……ごめ、あっ、なさ、い、んっ……」

 もう乳首が硬くなっている。人差し指をやめて手のひらで優しく、乳房も両脇から柔肉を集めてくるように持ち上げて撫でる。

「──あっ! んっ、あっ、んぁ……っ」

「動いちゃ駄目だって、エレノア」

「ご、ごめ……あっ、なさっ……あっ、んんぅ」

 ピクンピクンと身体を震わせるエレノア。動くなというほうが無理な話だろう。承知の上だけれど。

「エレノア、すごく硬くなってるよ」

「……あ、だっ……て。──あっ。んっ、んんっ」

「どこが硬くなってるかわかる?」

「え? ……あっ! あ……む、むね……」

「胸? おっぱいのこと? おっぱいのどこが硬くなってるの?」

「……んっ、お、おっぱ……ぃ……の、さき、あっ……んっ」

 少しずつ揉むようにして力を強めた。エレノアの乳房はもう充分に解されている。両脇に触れるときのこそばゆさも快感に変わっているかのように、身体をくねらせる。

 けれど動いてはいけないと言われているので、唇を閉め、どうにか持ちこたえているエレノア。その表情はすごくそそられるものがある。

 とりあえず感度は相当いい。これなら媚薬の必要はないだろう。

「おっぱいの先って、ここ?」

 痛くない程度に、きゅっとつまむ。

「──あぁっ!」

 力なく腰が砕け、エレノアはストンと座り込んでしまった。これだけ昂ぶった状態で急に乳首をつままれては、さすがに堪えられない。瞳を潤ませながら息も絶え絶えに「はぁ……はぁ……」と、肩を上下させている。

「エレノア。好きな食べ物はなに?」

 突然の問い掛けにぽかんとして、

「……あ、り、林檎のパイです」

 尻餅をついたまま真剣に考え、あせあせと答える。

「嫌いな食べ物は?」

「キノコ、です」

 不思議そうに上目遣いでちらり、こちらを覗く。質問の意味がわからないのだろう。

「繰り返しになるけど、本当に葡萄酒は要らない?」

「あ、はい。私、お酒飲めないので」

「そっか。じゃあ、続きを始めよう。立てる?」

 座ったまま、僕は手を差し伸べる。

「続き」という言葉に反応し顔を紅潮させながらも、「はい」と従順に返事をして、エレノアは手を掴んだ。

 立ち上がり、姿勢を正す。神に捧げられる仔羊を連想させる弱々しい立ち姿。呼吸はまだ少しだけ乱れている。

「服を脱ごうか」

「……はい」

 背中にボタンがあるわけでもない、頭から被って着る仕様のワンピースは、脱ごうとすれば必然的にスカートをめくり上げることになる。その行為が恥ずかしいのか、躊躇いがちにゆっくりとスカートの裾を掴む。

 未成熟な太もも、白い木綿のパンツ、可愛い小さなおへそ、小振りに膨らんだ胸当てを経て、頭からすっぽりとワンピースを脱ぎ終わったエレノアは、けれどすぐに折り畳んだ服で身体を隠した。

「下に置いて」

 息を呑み、小さく頷いて、ワンピースを手放した彼女は下着姿を露わにする。

 褐色の肌に映える白の下着。だから、身体を隠した理由もよくわかった。

「下着が濡れているね。乳首弄られるの、気持ち良かった?」

「あの、は、は……い……」

 尻窄みに答えるエレノアの顔が、さらに紅潮する。

「気持ちいいのはいいことだよ。僕はもっとエレノアに気持ち良くなって欲しい」

 おへそのわずか下に指先を這わす。次に手のひらを広げ腰回りを中心に優しく撫でる。時間を掛けて。

 眼前のパンツの水分が増していく。触れられていることも然ることながら、息を吹けば温度がわかるほど近い距離で下着を晒している状況に、羞恥と興奮が入り混じってるんだろう。口から切なそうな呼吸音が零れている。

「指で押したら音がしそうなくらい濡れてるよ、エレノア?」

「あぅ……」

「どのくらい濡れてるか、パンツを下げて、見てみてもいい?」

 顔を見上げて訊ねると、エレノアの視線がさっと逸れた。視線ごとすぐに顔の向きも。

「エレノアのここが見たい。僕が下げる? 自分で下げたい?」

「……じ、自分で……」

 蚊の鳴く声。

 黙っていると意を決したようにパンツに手を掛け、中腰になり、スルスルと太ももまで擦り下げる。

 晒された秘部。産毛のような陰毛は褐色と混ざり、生えてないようにも見える。われめは閉じているけれど、少しだけ柔らかそうに解れていた。納得いくだけの愛液が溢れている。

「やっぱりすごく濡れてるね。そんなに乳首良かった? それとも見られるのが好き?」

「……わ、わかり……ま、せん」

 肺に空気を溜めて、「はああぁぁ……」とエレノアのあそこに熱い息を吹き掛ける。

「あぁ……あっ、はぁ……んっ」

「エレノアは毛が薄いね。だから全部見えちゃってる。クリトリスが大きくなってるのがわかるよ」

「──っ。……あぅ」

 晒されている部分を隠したがっているように太ももを擦り合わせる。両手は胸の前で指を絡ませていた。

 椅子に腰掛けている僕の目線の高さにあるエレノアの秘部。秘められた部分、というわりには、僕の視界から逃げも隠れもできていない。

「こんな眼の前で恥ずかしいところ見られてると、興奮する?」

「……あ……わ、わかりま……せ、ん……」

「わからない? 興奮してるよね? 乳首立ってない?」

「……あ……え……」

「乳首立ってたら興奮してるってことだから、エレノアのあそこ、ひろげて見せてもらおうかな」

「──え? ……あっ……の、え……?」

 エレノアの顔を見上げて微笑む。

「おっぱい見せて」

 微笑んで、エレノアの顔をじっと見る。さぁ、早く……と急かすように。

 目線をあっちにこっちに移動させて躊躇っていたエレノアも、ずっと顔を覗かれていることに堪え切れなくなったのか、おずおずと胸当てを上にずらし、ささやかな胸を見せる。小さな乳首は桃色で、確かめるまでもなく、ぴんと立っていた。

「やっぱり見られて興奮していたね。約束通りパンツ脱いで、エレノアのあそこ、奥まで見せてくれる?」

 僕はまた、エレノアの顔を覗く。彼女は顔を見られることを恥ずかしがっている。どんな表情を作っていいのかさえわかっていない、そんな表情とは言えない表情を見られることのほうが困惑するようだ。

 観念したらしく、下着を取り払い、胸当ても外して、全裸になる。細身の身体、その褐色の肌のすべてが、僕の眼の前に晒される。

「エレノアは可愛い。エレノアの恥ずかしがってる可愛い顔をずっと見てたい。男なら誰だってそう思う」

「可愛く……なんか……」

「じゃあ誰か連れて来て、今のエレノアの顔を見てもらおう。絶対に可愛いって言うから」

「え? ……あ……それは……」

 テーブルに置いてある呼び鈴をそっと持つ。

「たくさんの人に見てもらおう。エレノアの可愛い顔も、可愛いおっぱいも、可愛いあそこも、全部」

「……あ、ネロ様、それは……っ」

「たくさんの人に見てもらって、たくさんの人に可愛いって言ってもらったほうが自信がつくだろうし、エレノアは今よりももっと気持ち良くなれると思うよ」

「わ、私は……ネロ様だけに、見て……もらい……たいです」

「そう?」と首を傾げ、呼び鈴から手を離し、

「だったら、僕だけに見て欲しいってお願いしながら、エレノアのあそこの奥、全部見せてくれる?」

 そう言って前屈みになり、膝に頬杖をつく。

「……ネ、ネロ様だけに、見て……欲しいです。見て下さい……わ、私の……おく」

 震える両手で、花びらをひろげていく。太ももを合わせた状態ではひろげられないことに気づいたのか、足の幅も大きくする。外気に触れたそこは褐色ではなく、てらてら光る薄紅色だった。お世辞でもなんでもない、素直にきれいだと思う。

「ぴくぴくしてる。お汁も溢れてるよ? エレノアはいやらしい女の子だね」

「……あっ……だっ……て……」

「そんなところも可愛い」

 その言葉で、エレノアの腰が引いてしまった。可愛いと言われることにまったく慣れていない。

「もっとあそこを突き出して。僕だけに見てもらいたいんでしょ? みんなに見てもらったほうがいい?」

「ネ、ネロ様……だけ、に」

「僕も可愛いエレノアを独占したい。だからよく見せて。エレノアの可愛いあそこを眼に焼きつけたいんだ」

「はい……」と、さっきよりも花びらを大きくひろげて、股間を前に突き出すエレノア。体勢は弓形になった。

 鼻の頭が触れそうなくらいにエレノアの秘部を覗き込む。僕が呼吸するたびに、吐息が掛かってるはずだ。

 エレノアは敏感だから、感じ取れているんだろう、奥から粘っこい愛液が垂れてきて、太ももを伝った。

「すごいことになってるよ、エレノア。どんどん溢れてくる。見られてるだけで」

「……だっ……て、あっ」

「ここから見上げると、エレノアのあそこも、乳首がぴんぴんになったおっぱいも、真っ赤な顔も全部、同時に見れちゃうんだ」

 エレノアの視線が定まらない。どんなに顔を逸らしても逃げられないことはわかっているように。だから眼だけは合わせないように泳がせている。

「動いちゃ駄目だからね、エレノア。動いたらきっと、呼び鈴もゆらゆら動く」

「……はい」

 体勢を弓形にして、全裸で花びらをひろげ、秘部の奥まで晒すエレノア。そんな彼女を、椅子に腰掛け頬杖をついて見上げる中、視線を胸の辺りに置き、「ところで」と、会話を切り出す。

「僕は林檎のパイは嫌いなんだ。でもキノコはわりと好き。──駄目かな?」

「そ、そんなことは……」

「好き嫌いは良くないかも知れないけど好みは人それぞれだから、僕は他人の好き嫌いに文句は言わない。それでもいいかな?」

「……? はい」

 何故かまた食べ物の話に戻ったと思っているエレノアは、自分の格好も忘れてきょとんとする。そういう無垢なところもエレノアの魅力の一つだと思う。

「エレノアが自分の容姿を嫌っていてもかまわない。僕は文句を言わない。だから僕がエレノアのことを好きになっても文句なしということでいいかな?」

「……え? あ、でも、私は……ま、魔女の系譜で、ネロ様は……」

「エレノアの可愛いところたくさん見ちゃって、もう忘れられない。実は僕、独占欲が強いんだ。エレノアを独り占めしたくなっちゃった。エレノアの可愛いところも、僕だけのものにしたい」

 そんなことを口にする眼の前の男の顔を覗き見るエレノア。

 言っていることがよく理解できてなくて、頭の中で僕の言葉を噛み砕いているんだろう。それでいい、エレノアのほうから僕の顔を見ているのなら。

 彼女の胸に置いていた視線を、群青の瞳の奥へ。

 言葉の意味を探し出そうとして僕を見詰めていたエレノアの視線を、僕の視線に絡ませて、捕まえる。

 昂ぶっている身体に、無防備になった心。

 掌握する。エレノアはもう、僕の瞳から眼を逸らせない。その状態で──。

「エレノアのイクところが見たい。可愛くイクところ、僕だけのものにしたい」

 心に直接に響く、お願いをする。

「………はい。わ、私、も」

 一つ息を呑んで、

「み、見て……欲しい、です。わ、私の、イク……ところ、ネロ様、だけに……」

 心の底に落ちたものを拾い上げるように、答えてくれる。

 その返事に微笑み掛けると、エレノアも小さな笑みを返した。

 まだまだ愛想笑いに近い。でも、心の距離を縮めていくのはこれから先、ゆっくりでいい。

「いつも一人で遊んでるみたいにして、イッて」

 確信的に言ってみる。これだけ感度がいいんだ、それなりに自分で慰めているだろう。

 僕の問いには答えず、エレノアはおずおずとクリトリスに中指を当てた。縦に指を動かす。

 指の動きは手の動きに変わり、次第に激しくなっていった。

「……ふっ、はぁ……あ、んぁ……あっ、んんっ」

 これまでのやり取りで相当に溜め込んでいたらしい。貪るように没頭していく。快感に浸っていく。

「クリトリスが好きなの、エレノア?」

「は、い。好き……です。クリ……トリ、あっ、好き、好き、ここぉ、あ、あっ……はぁ、はっ………あっ」

「いつもと違う? 僕に見られてて、気持ちいい?」

「き、気持ち……いい……み、見られ……て、ネロさまに、あっ……見られぇ……ああっ!」

挿絵1

「可愛い、エレノア。顔が蕩けてるよ。おまんこも蕩けてる。おまんこも可愛いよ」

「──あぁっ! ……わ、私の……おま……あっ……んこ……かわぃ……ぁ」

 昇り詰めていくエレノア。僕は両手を伸ばし、子供を抱っこするような、両脇を掴む形で親指を彼女の乳首に押し当てる。

「あぁっ! ──あっ!」

 痛くしないように乳首をこね繰り回すと、連動するようにエレノアの指の動きも激しくなっていった。

「乳首も気持ちいい?」

「いいっ! ……ちく、びも、きもち、いいぃ……ちくびぃ、くにくにってぇ……あっ! あっ、あっ」

「おまんこは?」

「あっ! きもちいいぃ……おま、んこ、も……きもち、いいぃ、はぁ、あっ! あぁ!」

 そろそろ限界のようだ。

 開けっ放しの口からよだれを垂らしていることにも気づかないほど、快楽に溺れている。

「見ててあげるよ、可愛いエレノア。イクところ、僕に見せて」

「ネ、ネロさまぁ、見ててくださ……ネロさまぁ……あっ! イク……わた……しぃ……イ、ク! あっ! ネロさま! ネロさまぁ! ……みて……イク! イクぅ! あっ! あああああああああぁぁぁぁ─── …………っ!」

 反り返って、ビクンと跳ねた股間から愛液が飛び散った。

 気絶するように、立つ力を失くして倒れそうなエレノアを抱きかかえる。服越しでも感じる体温。とても熱い。

 支えている手が動くたびに、エレノアの身体がビクビクと過敏に反応した。

 僕と交代で椅子に座らせ、正面からガウンを掛ける。

 熱が冷めるのは当分先だろうと思った矢先、「ネロさま……」とエレノアは気丈に声を絞り出した。

「可愛いイキ顔だった。また見たい。見せてくれる?」

「は……い……」

 眠りに落ちる赤ん坊のように、重たそうな瞼。けれど口元は緩んで両端をわずかに上げている。

 汗で湿った髪を撫でて、刺激させないよう息を吐くような小声で囁いた。

「魔力の引き上げには成功したと思う。鑑定てもらおう」

 大丈夫、という意味を込めて、エレノアに手のひらを見せてから、呼び鈴を一回だけ鳴らす。

 足音も立てずやって来たのは、紺色の長袖服に丈の長いスカート、白いエプロンドレスで正面を覆ったメイド姿に黒髪をたなびかす女性──クレア。椅子に座るエレノアを一目見て、涼やかに言う。

「おめでとうございます、ネロ様」

 その言葉に、エレノアもかすかに眼を開いた。

「魔力値は上級。固有魔術は──【透過】です」

 一歩前進できたようだ。鐘楼が近くなる。

「林檎のパイを焼こう。お祝いだ」


 身なりを整えたあと、クレアにつき添われながら退出するエレノア。

 僕は深く椅子に腰掛けて天井を見上げる。

 姿を消せる固有魔術──【透過】

 エレノアは予想通りの魔術を発現させた。これから【透過】が、どのように発展するのかも想像に容易い。

 対して次の予定に入っている娘は、すでに魔力の引き上げには成功しているものの、発展性はいまだ未知数。

 さて、どんな誘導催眠を施そうか……。

 ◇◇◇


 見上げる空は真っ青で、雲一つない。光輝く太陽はスポットライトのように君だけを照らす。

 レイラ・オリオンドーラ──君だけを。

 白亜の城を背に、演劇にも使われる演説場に立つ君は、大勢の民衆に囲まれてる。みんな君に眼を奪われてる。

 無理もない。レイラ、君は美しい。

 金糸のような長いブロンドの髪に、踏み出すことを躊躇わせる新雪の肌。深い青の瞳は蒼玉以上に価値がある。

 すっと高い鼻と艶やかな薄紅色の唇は計算されたかのように整っていて、大聖堂の彫刻のようだ。

 肩と背を大胆に晒したビスチェドレスは純白で、薔薇の刺繍と繊細なレースが贅沢にあしらわれてる。

 それでもレイラ、君の美しさの前ではどんな豪華なドレスも、ただの引き立て役に過ぎない。ブロンドの髪によく似合う白銀の髪飾りだってそう。

 君は誰よりも、なによりも美しく、そして気高い。どんなに手を伸ばしたって届かない高嶺の花。

 当然だ。君は一国のお姫様なんだから。

 見渡して御覧、君を讃える民衆でいっぱいだ。「レイラ姫」「レイラ姫」と、君の名前を呼んでいるよ。

 手を振って応えてあげよう。みんな君の虜なんだ、とても喜ぶと思う。──どうかな?

「そうね、手を振るくらいなら」

 ほら、大歓声だ。演説場が揺れるくらいの大歓声。君の人気の表れだよ、この大歓声が聞こえる?

「聞こえるわ、みんな熱狂してる」

 そう、熱狂だ。君が手を振っただけで、とてつもない熱狂の嵐だ。

 これから君はこの民衆に対して演説をする。ハープの音のようにどこまでも透き通る君の声を聞いたら、感動のあまり失神する者もいるかも知れない。でも仕方ないさ、演説はお姫様の義務だ。

「そうね、仕方ないわ」

 失神したって、きっと君の夢を見る。もしかしたらそっちのほうがお得かも。君とダンスをする夢でも見たら、最高に幸せだ。

 さぁ、演説を始めよう。

 レイラ、君は民衆になにを訴える? 国政に関すること? それとも国民の在り方?

「……なんだっていいわ。私の声を聞けるだけでも満足なんでしょう?」

 そうだね。君の声はハープ、綴れば天使のオーケストラだ。

 なんでもいいのなら、税の引き下げでも宣言してみよう。みんな君の心優しさに胸を打たれるはずだ。

「税の引き下げなんかして、国は成り立つの?」

 もちろんさ、ビクともしない。君への貢ぎ物が増えるだけだよ。

 さぁ、大きな声で宣言してみよう。

「わかったわ。──通行税を引き下げてあげます! 喜びなさい!」

 すごい大歓声だ。泣いて喜んでる者もいる。耳が痛いくらい。──聞こえる?

「聞こえるわ、みんな私の名前を叫んでる」

 そうだね。「レイラ姫」「レイラ姫」って、君の名前を叫んでる。

 男は拳を突き上げて、女は手を振って、みんな「レイラ姫」「レイラ姫」って叫んでるよ。

 君は人気者だ。君は民衆の期待に応えてくれる。

 女神が羨むくらい美しく、しかも心優しい君に、誰もが虜だ。誰もが君を愛してやまない。

「私はお姫様だもの。愛されて当然だわ」

 その通りだね。

 いつだって民衆のことを考え、民衆の期待に応えてくれる君は誰からも愛される人気者だ。演説場に身を乗り出して、輝く瞳で君を見詰めてる街娘を見て御覧よ。

 パサついたこげ茶色の髪の毛を三つ編みにした、顔にそばかすのあるあの街娘を。

 くすんだ橙色の服は継ぎ接ぎだらけ。腰に巻いたエプロンは石窯の灰で汚れている。美しい君とは正反対。

 眼を輝かせてるのは、君に憧れてるからだよ。

 太陽に煌めくブロンドの髪、染み一つない真っ白な肌、贅を凝らしたビスチェドレス。憧れるものは多いけれど──なにより憧れるのは、その美しさに驕らない心優しさだ。民衆の期待に応えてくれる心優しいお姫様だからこそ、みんなが憧れる。

 彼女が言ってるよ。「手を振って」って。どうする、レイラ姫?

「手くらい振ってあげるわ。──ほら」

 嬉しくて両手を口に当てて、泣いて喜んでる。向こうの男も「こっちを向いてくれ」って言ってるよ?

「しょうがないわね。──はい、手も振ってあげる」

 レイラは本当に優しいな。男は嬉しくて失神しちゃったよ。今頃夢の中で君とダンスだ。

 右向こうの男も「こっちを向いてくれ」って言ってるよ? 人気者は大変だ。

「民衆の期待に応えるのはお姫様の務めだもの。──はい、ウィンクをあげる」

 周りの男も失神しちゃった。レイラ姫の魅力は罪深いな。僕まで倒れそうだよ。

 左向こうの男は「レイラ姫の素足が見たい」って言ってるよ。

「素足?」

 靴を脱いで欲しいってことだよ。

 男としては美しいお姫様の素足なんて、一生ものの宝なんだ。瞼の裏に張りついて離れなくなる。

「一生の宝なんて大袈裟ね。──えい、靴もあげたわ」

 奪い合いが始まってる。素足を上げて見せてあげなきゃ収まりそうもないよ。

「男って単純ね。──いいわ、ふくらはぎまで見せてあげる」

 レイラ姫のきれいな足に見蕩れて、奪い合いが収まったよ。他の民衆までレイラ姫の足に釘づけだ。

 だらしのない男たちの顔がわかるかい?

「わかるわ。これくらいのことで鼻の下伸ばして、情けないわね」

 レイラ姫が魅力的だからさ。みんな君の虜だ。

 男たちが「太ももも見たい」って、お祈りのように手を組んでお願いしてるよ。情けなく懇願してる。

 どうしてもレイラ姫の真っ白できれいな太ももが見たいらしい。

「呆れてしまうわね。でもここまでよ、これ以上ははしたないもの」

 そうだね、これ以上は駄目だ。許せるのは太ももまで。

 それじゃあレイラ姫、いきなりは勿体ない、情けない男たちを焦らすようにゆっくりと、スカートをたくし上げてみよう。

「そうね、いきなりは勿体ないわ。お姫様の足だもの」

 ゆっくり、ゆっくり、スカートをたくし上げよう。──どのくらいまで上げた?

「膝までよ」

 膝も真っ白でスベスベだ。なめらかで形もいい。

 ──今はどのくらいまでたくし上げてる?

「膝の少し上までよ」

 指でつまんだビスチェドレスのスカートは、国宝を公開する幕のようにどんどん上がっていくよ。

「私の太ももは、国宝?」

 そうだよ。一生に一度もお眼に掛かれないことだってあるんだから。だから今、ここに集まってる民衆はとても幸運だ。

 ──どのくらいまでたくし上げた?

「全部上げたわ。これ以上待たせるのも可哀想だもの」

 きれいな太ももだ。太陽の光が反射して、輝いて見える。女性らしくふっくらしてて、張りがあって、もう眼が離せない。誰も眼が離せない。みんな恍惚とした顔でレイラ姫の太ももに見蕩れてる。

 君の太ももはとても熱くなってるはずだ。大勢の民衆の視線を一点に集めているんだから。

 空は高く真っ青で、太陽は真上に昇ってる。わずかに吹き抜ける風は春の陽射しのように暖かい。ここは外。屋外の演説場。そんなところで一人、大勢の民衆の前で、ドレスのスカートを大胆にたくし上げてる君は──レイラ姫は、なにを思う?

「……す、少し、恥ずかしい、かも」

 大丈夫、ここまでだから。みんなの前で晒すのは太ももまでだから、大丈夫。──違う?

「そうね。太ももまで……なら」

 だから君はみんなに愛される人気者なんだ。その心優しさで、民衆の期待に応えてくれる。

 さぁ、もっと演説場の端に寄ろう。みんなの近くでレイラ姫のきれいな太ももを見せつけてあげよう。

 スカートをたくし上げたまま、ゆっくり、みんなの前に近づこう。──近づいた?

「……ち、近づいたわ。これ以上は、行けない。演説場から落ちちゃう」

 眼の前には大勢の民衆がいるはずだ。手を伸ばしても届かない距離。でも、とても近く。とても近くで食い入るように、熱くなってる君の太ももを見てる。民衆は──男たちは、どんな顔をしてる?

「だらしのない……顔」

 鼻の下を伸ばして?

「ええ」

 欲情してるんだ。君の太ももを見て、欲情を隠し切れないでいる。

「欲情……?」

 仕方のない話さ。レイラ姫の、そんないやらしい太ももを見れば男なら誰だって欲情する。憧れの的なんだ、レイラ姫は。

 だから欲情して、あそこを硬くする。

 見て御覧、男たちの股間を。──どうなってる?

「ふ、膨らん……でる、すごく……」

 そうだろう? みんなレイラ姫の虜だ。股間を膨らませて、熱くして、その視線を受けて君が熱くなるのも、仕方のないことだ。ビスチェドレスのスカートをたくし上げるその姿、すごくいやらしい。

 肩も背中も肌を晒して、太ももまで晒して、君は半裸で大勢の前に立っているも同じなんだ。いやらしくないはずがない。レイラ姫。君はとってもいやらしくて、きれいだ。

「いやらしくて……きれ、い……?」

 そう。美しいだけじゃない、きれいなだけじゃない。いやらしくて、きれいなんだ。とってもね。

 男たちの股間はどんどん膨らむ。レイラ姫がいやらしくて、きれいだから。どんなふうに膨らんでる?

「……い、痛そうな……くらい」

 じゃあきっと痛いんだ。ズボンに圧迫されて痛いんだよ。どうしたら痛くなくなるだろう?

「ズボンから……出した……ら?」

 なにを?

「……男のひとの、お、おちんち……ん」

 じゃあ宣言してあげよう。ズボンから出してもいいって。そしたら君の人気もまた上がる。

 大きな声で、宣言してみよう。

「──だ、出してもいいわ! お……お、ちんちん、を……」

 聞こえなかったみたい。もっと大きな声で、ハッキリと。

「──おちんちんを! ズボンから出していいわ!」

 男たちは喜んでズボンを脱ぎ始めたよ。みんな下半身剥き出しだ。男たちの情けない格好、見える?

「見えるわ。みんな、おちん……ちんを、出して……る」

 たくさん?

「たくさん……あるわ」

 どんなのがある?

「大きい、の。く、黒いの。み、みんな、形が……先っぽとか、少しずつ形が違う……」

 形の違うモノでも、先端はみんなレイラ姫の太ももに向いてる。大きくなって、硬くなって、そそり立ってる。

 下半身を剥き出しにした大勢の男たちが、レイラ姫を見てるよ。スカートをたくし上げてるレイラ姫を。

 でも知ってるよね? 男は射精しなきゃ治まらない。射精しなきゃ、辛いままだ。──そうだろう?

「そうね。知ってるわ。男は射精しなきゃ駄目……男は、そういうものだわ」

 さすがレイラ姫。いやらしくて、きれいで、そして聡明だ。

 では宣言しよう。射精してもいいって。そしたら君の人気はもっともっと上がる。

 大きな声でハッキリと、さぁ、宣言してみよう。

「──射精してもいいわ! おちんちんをしごいて、射精しなさい!」

 すごい。レイラ姫のハープの一声で、男たちは一斉に自分のモノをしごき始めた。獣のような眼で、君を見てみんなしごいてる。百を優に超える男たちが、スカートをたくし上げてる君に欲情して、自分のモノをしごいてるよ。──どんなふうにしごいてる?

「ほ、箒の柄を握るように、ぎゅっと。でも柄より、ずっと太くて、硬そう……」

 激しい?

「い、痛そうなくらい……すごく……は、激しい……」

 君がいやらしい太ももを晒しているからだよ、レイラ姫。男たちはレイラ姫の太ももを見て、夢中でしごいてる。もっと足をひろげて、太ももを見せつけてあげよう。

「そうね。みんな私に夢中なんだもの。もっと見せてあげなきゃ」

 遠くの男が「レイラ姫のパンツが見たい」って言ってるよ。

 レイラ姫のパンツ──薔薇模様のレースがあしらわれた上品な薄絹のパンツ。

 ほら、また違う男が「レイラ姫のパンツが見たい」って叫んだ。人気者は本当に大変だ。

「こ、これ以上は駄目よ。み、みんなの前で、パンツは……」

 一人去った。

「……え?」

 男たちの期待に応えなかったから、人気が下がったんだ。また一人去った。

「……で、でも」

 また一人去った。どんどん去っていく。どんどん人気が落ちていく。

「だって」

 パンツくらいどうってことないさ。スカートをあと少したくし上げればいいだけだし、男たちはモノを晒してしごいてるんだ。それに比べれば、どうってことない。また一人去った。

「み、見せるわ!」

 じゃあ大きな声でハッキリと、宣言しよう。

 男たちはみんな、レイラ姫のいやらしくてきれいなパンツで射精したがってるんだ。

「──見せてあげるわ! 私のパンツでおちんちんしごいて、射精しなさい!」

 戻って来た。去っていった男たちが全員。当然だ。だって、大勢の男たちの前でスカートをたくし上げてパンツを晒してるレイラ姫は、最高にいやらしい。腰から太ももに掛けて描かれる曲線のすべてが見えるんだ。

 ひろげた足はレイラ姫の股間のわれめに喰い込んだ純白のパンツを見せてくれる。愛液で濡れるパンツは、もうその機能を果たしてないくらい透けてる。

 ほら、みんなレイラ姫のわれめを見て、さらに激しくしごき始めた。先走り汁に濡れて、男たちのモノの先が黒光りしてるよ。わかるかい? これがレイラ姫の人気の表れなんだ。

「わかる。みんな私のわれめを見てる。おちんちんがさっきより、もっと大きくなってる」

 近くの男が「レイラ姫のパンツが欲しい」って言ってるよ。

「……え?」

 一人去った。

「あ、あげるわ! ──ほら!」

 隣の男が「レイラ姫のドレスが欲しい」って言ってるよ。

「あげるわ! 脱ぐから待ってて、去っていかないで! ──はい!」

 その隣の男が「レイラ姫の絹の胸当てが欲しい」って言ってるよ。

「あげるわ! ──えい!」

 胸当てを投げたら、レイラ姫の豊満な胸がたぷんっと揺れたよ? これで全裸だね。

 演説場の上で一人、大勢の男たちに囲まれてるレイラ姫は一糸も纏っていない。乳輪がぷっくり膨れ上がった乳首も、金色の陰毛も、その下の愛液に濡れる股間も、全部丸見えだ。生まれたままの姿はドレスを纏っているよりもよっぽど美しい。その証拠に男たちの手の動きは、自分のモノを壊す勢いだ。──そう見えるだろう?

「見えるわ。逞しいおちんちんが、ぶらんぶらんしてる。たくさん、おちんちんが、ぶらんぶらん動いてる」

 一人の男が演説場に登って来た。レイラ姫と同じように全裸だ。

「……な、なんで?」

 大丈夫。君は誰よりも人気者だ。手を出されることはないよ。手を出すのはレイラ姫──君だ。

 君は与える側、施す者だ。一国のお姫様なんだから。

 男は演説場の床に寝そべった。モノは天を衝いてる。それはどんな形のモノかな?

「く、黒くて大きくって……先っぽが丸い槍みたい……ビ、ビクンビクンしてる」

 きっとレイラ姫に挿れて欲しいんだ。だからジッと動かずに待ってる。君は与える側だ。快楽だって同じ。君も、もう欲しくて欲しくて堪らないはずだろう? その男の上で乱れれば、それを見る大勢の男たちだって、もっと悦んで、君の元から去ることなんてなくなるよ。

「本当? 誰もいなくならない?」

 本当さ。だから、これから君がどんなふうに乱れるか、僕に教えてくれる?

「──教えてあげる。今、男の顔を跨いだわ。下から視線を感じる。私のおまんこをジィィ……って見てる。おちんちんもまたピクンって動いたわ。お腹がむずむずする。男の視線が……私の膣内に挿入ってくるみたい。も、もう、我慢できない。視線じゃなくて、このおっきいおちんちん挿れたい。おちんちんだって挿れて欲しいって、ぴくぴくしてる。おちんちんに触ったわ……硬い! おっきくて硬い! 早く挿れたい!」

 じゃあ、ゆっくり腰を落として御覧、レイラ姫。

「今、中腰になっておちんちんの先っぽ……おまんこに当ててるの。──きもち……いいっ! こするとクリトリスに当たって……だめ、立ってられない。挿れる……挿れたい! 挿入ってきた。おちんちんおっきいからぎゅうぎゅう。──あっ! だけど、あっ! きもちぃっ! ぜんぶ挿れ……た……おくに……あたる、あ、あっ! きもち……いいぃぃぃっ!」

 そんなに激しく腰を上下させたら、男のモノが取れちゃうよ?

「──だって! こし……とまら……ないっ! んっ! あっ、はぁっ……あっ!」

 没頭するのはいいけれど、周りも見て御覧。お姫様の腰つきに、男たちはみんな驚いてるよ。

「──とまら……ないん、あっ! もん! こしが勝手に……うごい、はぁっ! いいぃっ!」

 どこが気持ちいいの、レイラ姫?

「──ぜん……ぶ……おまんこ、ぜんぶ……いいっ! おまんこきもちっ……いいぃっ!」

 胸を張って、周りの男たちにもたぷんたぷん揺れてるおっぱい見せてあげて。

「──み、見せて、あっ! あげる! わたしの……おっぱい! あんっ! あっ! ああ、見てぇ!」

 周りの男たちも大喜びだ。レイラ姫も本当に気持ち良さそう。

「──あっ! う、んっ! きもちいいぃ! おまん、こ……きもちいいぃっ!」

 下の男が羨ましいよ。僕もあやかりたいくらいだ。

「──ネロも……っ。あんっ! して……あげるっ! ネロにも、おまんこ……してあげるっ! あっ!」

 それは嬉しいなぁ。

 じゃあ早く下の男をイかせて、代わってもらおうかな。

 下の男は、レイラ姫がイかないと、射精しないよ? レイラ姫と一緒に絶頂したいんだ。

「───イク、イクぅ、わた……し、もうっ……イ、クぅ! あっ! はぁっ……おまんこイっちゃうぅ!」

 イキ顔も男たちに見せてあげよう。みんなレイラ姫のいやらしいイキ顔を見たがっているよ。

 胸を張って背筋を伸ばして、遠くの男たちにも見えるように手を振ってイこうか。

 さぁ、手を振って、これからイクことを男たちに宣言して、思いっ切り絶頂しよう。

「───あっ! み、みんなあぁぁっ! わたし……イ、ク! 見て……てぇ、イク、イクからぁ! いまからぁ……おまんこイクから見てぇぇっ……あっ! 見てぇっ! イク! はぁんっ! あっ! あっ! イ……ク……っ! イク! イクぅ! あああはぁ! んんっあぁああああああぁぁぁぁ───…………っ!」


 ◇◇◇


 ゆっくりと眼を開ける。

 洋館の一室。汗と愛液に塗れた全裸のレイラが、ベッドに横たわっていた。

 達したと同時に気を失ったんだろう。長いブロンドがシーツに波打ち、海原のように広がっている。

 部屋にはレイラと僕の他にもう一人、メイド服を着たクレアが、テーブルに置かれた砂時計を見詰めていた。

「何時間……保った?」

「誘導催眠に入る前から数えて、三時間です」

 納得できる数字じゃあないな。

 溜め息を吐いて、僕は腰掛けている椅子に深く凭れ掛かった。レイラ一人だけなら、最低五時間は欲しいところだ。ベッドに眼をやると、彼女の固有魔術──【変幻】は完全に解かれ、元の姿に戻っていた。

 こげ茶色の髪を三つ編みにした、そばかすのある顔。身長百五十前後の、元の姿に。

「飛躍的な進歩だと思いますが……」

 僕の表情を見て胸中を察したのか、クレアの涼やかな声が耳に届く。

「【変幻】が解ける寸前で催眠状態に入り、空想下で姿を留めるこの方法、私は有効だと思っています」

「慰めありがとう」

「慰めではありません。先日まで一時間しか保たなかった【変幻】が、今では三時間なのですから」

 客観的に考えても、僕が急いているとは思えないけどな。

 冷静なクレアがそう言っているなら、そういうことにしておこうか。

 けれど、レイラの【変幻】が、他者を【変幻】させられるまでに練度を上げなければ、意味がない。

 しばらくして。眼を覚ましたレイラがベッドの上でもぞもぞし、胸元にシーツを巻きつけて僕の前に立った。

挿絵2

 晒されている肌は肩と背中、その様はまるで──ビスチェドレス。両手は腰に当てている。

「約束通りネロにもしてあげるわ! どんな姿でして欲しい? どんな娘が好みなの?」

「三つ編みそばかすが好み」

 洋館を出て一人、獣が通る道なき道を歩く。

 片手には手提げカゴ。中身はシフォンケーキとミルクゼリー。クレアのお手製だ。

 木漏れ日が射してはいるものの、山の森は薄暗い。落ち葉の絨毯を踏んで、木々の隙間をすり抜けて、歩き続けること二時間。

 視界が開け、見えてきた大きな丸太小屋に内心ほっとする。

 気分は赤頭巾ちゃんだ。でも狼は味方だから心強い。寄り道さえしなければ。

 近づくと、丸太小屋の扉がバンッと開かれた。

「ネロさまぁ!」

 兎が跳ねるように飛び出てきたのは、通称──リゼ。本名は不明。見た目は年の頃十。実年齢は、これまた不明。走って来て三歩手前で飛び掛かってくるリゼを、回転して勢いを殺し無事キャッチ。

 手提げカゴの中身も無事だといいな、と思う。

「ネロさまがあるいてくるの、なんかいも視えたの」

「一ヶ月振りだね、元気だった?」

「うん!」

 リゼの頭を撫でる。一本一本が細く、量の多い栗色の髪はふんわりとしたカールのボブヘアー。綿毛のように柔らかい。

「リゼ、外に出るときは上着を羽織らないと駄目だよ?」

 僕の首に巻かれた両手は、褐色の肌を露わにしていた。ややサイズの大きい袖なしワンピースは、山の暮らしにはお勧めできない。薮蚊もいれば、毒蜘蛛だっている。

「いつもはそうしてるよ。えらい?」

「偉いね。小屋に入るまでしがみついていられればもっと偉い」

「わぁー!」

 そのまま、足をぶらりぶらり揺らすリゼを連れて小屋の中へ。

 テーブルに長椅子、棚からタンスに至るまで、ほぼすべてが木作りの部屋は、腐葉土みたいな独特なニオイがする。洋館にはないニオイ──そして、少し孤独な雰囲気。リゼはここで毎日を過ごしている。

「ネロさま、どうしたの? わたしによーじ?」

「朝起きたら突然リゼが恋しくなったのと、はい、おやつの差し入れ」

 手提げカゴをテーブルに置くと、両手を放し、とんっと降りて、カゴの中を覗いてはしゃぐリゼ。

「わぁ! ケーキとゼリーだぁ!」

 膨大な魔力を秘め、固有魔術──【鳥類転心】を有するリゼは、山の監視役を担っている一人である。

【鳥類転心】を極めていると言ってもいい彼女は、半径五十キロメートル四方の山鳥約百羽と視覚を共有できる。侵入者がいれば即座に発見できる高性能のセキュリティシステムだ。

「これ、ネロさまがつくったの?」

「まさか。僕にお菓子は作れないよ。作ったのはクレア」

「クレアすごーい」

【鳥類転心】の難点を挙げるのであれば、視覚を共有できるだけで山鳥を自由には動かせないことと、夜は山鳥が巣に帰ってしまうので監視範囲が極端に狭まること。

「麗しのローレライは?」

「おしっこいった」

 と言うと同時に、年の頃をリゼと同じくした、腰に届く長い黒髪をたなびかせる彼女──ローレライが扉を開け、ツカツカとリゼの前まで急ぎ足で歩き、頭をポカッと小突いた。

「せめてお花を摘みに行ったと言ってくれる?」

「いたーい」

 それから彼女は眼を細め、にんまりとした澄まし顔でこちらを見る。

「ネロ、お久しぶり」

「お久しぶり。元気してた?」

「問題ないわ」

「お尻をムカデに噛まれないようにね。問題になるから」

「き、気をつけてるわよ」

 ムカデは怖い。噛まれるとすごく痛い。しかも攻撃性が高く、近づくのは危険だし、お尻を晒すのはもっと危険だ。実際、用を足してる最中にムカデや毒蛇に噛まれる被害が続出している。注意をするに越したことはない。

「この手提げカゴ、ネロが持ってきたの?」

「そうだよ」

 リゼとローレライは、僕と館、そして山の奥にある村の魔女たちにとって、なくてはならない存在と言えよう。【鳥類転心】の難点を補うようにして、リゼとローレライは二人一組で行動する。

 魔力値はリゼに遠く及ばないまでも、ローレライの固有魔術──【狼転心】は十匹ほどの狼と感覚を同調させ、操ることができる。狼は夜行性。夜の監視は、狼の遠吠えを駆使するローレライの役回りだ。

「そんなの、ネロがすることないのに」

「どうして?」

「ネロは館の主でしょう? お使いなんてすべきじゃないわ」

「僕が館の主なんて、便宜上そうなってるだけだよ」

 加えて、他者を攻撃する固有魔術が極めて稀である中、ローレライの【狼転心】は現在唯一の攻撃手段となっている。例えば、群れのボスと感覚を同調させれば、狼を率いて人を襲わせることも可能だ。

「少しやつれたわね、ネロ」

「そう?」

 けれど、狼の群れは多くても精々三十から四十。

 聖教騎士団は十二団から構成され、一団が五千から一万。戦力は桁からして違う。現状では話にならない。

「蜂蜜を摂りなさい、ネロ。持って来てあげるわ」

「わたしもハチミツたべるー」

 長椅子に腰掛ける僕の膝の上に乗って、リゼが手を挙げた。

「因果律って知ってる、リゼ?」

「しらなーい」

「じゃあ、ネロの法則って知ってる?」

「ネロさまのネロ?」

「うん、そう」

「しらない。おしえて、ネロさま」

 後ろから両手を回してリゼの乳首を軽くつつく。

「……ぁん」

「概念としては、因果律とよく似てるんだ。僕の膝の上に座ると必ず乳首に悪戯される」

 リゼの胸は膨らみがないので、胸当てをしていない。服越しでも、乳首の感触が直接触れているようにわかる。

「僕の膝の上に座ったリゼ、という原因がなければ、僕に乳首を悪戯されるリゼ、という結果は起こり得なかった。だからこれはリゼが自分で自分の乳首をつついているも同じことなんだ」

「ぁはぅっ! こ、こそぐったいぃ……あっ♥」

「原因を取り除けば──リゼが僕の上から降りれば、乳首は悪戯されないよ?」

「やっ……ぁだぁ……ここにすわるぅー」

 眼下には身をよじるリゼの乳首が、たわむワンピースの首回りから覗き見れる。小さな乳輪は桜色。

 指先で軽く触って、軽く離して、軽く触ってを繰り返すうちに、リゼの乳首がぴんっと立って存在を主張した。

「うぁ……はぁっ……あ……あっ」

「早く退かないと、いつまでも触り続けるよ?」

「やぁ……んぁ、どかないもん、あっ……」

 触り続けていいらしいので、せっかくだから袖ぐりの隙間から両手を入れて、リゼの乳首に指先を伸ばす。

「ぁはぁん……あっ♥」

 こりこりしていて、柔らかい木苺のような感触の乳首。手のひらに当たる両脇はしっとりと熱く汗ばんでいる。ボブヘアーからは甘い汗が香って鼻腔をくすぐり、リゼが身をよじるたびに揺れる肉の薄いお尻は、僕の股間を刺激していた。

「はぅ……あんっ……んっはぁっ……あっ」

「しりとりしようか、リゼ?」

「え? ……ぁ……す、するぅー……しりとり、あはぅ、するぅー……はっ……ぁんっ」

「僕からね。木の実」

「きのみ? んっ……はぁっ……」

 リゼの両乳首を人差し指と中指の間で、きゅっとつまむ。

「──ぁあんっ!」

「餡? ん、がついたから僕の勝ち」

 奥から蜂蜜の小瓶を抱えて、ローレライが戻って来た。あごを上げ、少しにやけて僕たちを見下ろす。

「なにしているの?」

「しりとり」

「私にはリゼが弄ばれているようにしか見えないのだけれど?」

 すぐ下にあるリゼの右耳に唇を当てて、僕は息を吹き掛けながら囁く。

「僕たちはぁ……しりとりをぉ……してるだけぇ……だよねぇ……リゼぇ……?」

「あはぁっ! あぁっ! ん、うん……しりと、あっ! ……りぃ」

 ローレライが近づき、リゼの左耳に柔らかそうな唇を当てて、同じように囁く。

「しりとりをぉ……しているのぉ……リゼぇ……?」

「あはぅ! あっ! しりとりぃ……あっ! これぇ……しりとりぃ……あはぁっ!」

 乳首をつつかれながら、僕に右耳を、ローレライに左耳を攻められるリゼ。頭は固定されて逃げられない。

「私も仲間に入れてもらえる?」

「もちろん。じゃあ僕、ローレライ、リゼの順でいこう」

 そう言うと、ローレライもリゼの袖ぐりの隙間から手を入れて、僕の左手と交代し、か細い指先でリゼの乳首を弄り始める。

「いくよ。──白詰草」と言うと同時に、リゼの右耳に舌を這わす。

「──あぅっ!」

「さ? さとうあめ」

 ローレライも言うと同時にペロリと、リゼの耳に舌を這わす。

「──あはぁっ! ……んっはぁ……っ」

「リゼの番よ?」

 二人の唇で頭を固定され、二人の手で乳首を弄られながら上半身も固定され、リゼは身動きができない──が、腰だけは、もぞもぞと小刻みに動いていた。

「リゼ、め、からよ?」

「……め、あっ! んはぁっ……め……あぁ! ……め? メダ、カ」

「蛙」と言ってすぐに、耳の奥を舌でつつく。

「──ああぁっ! はぁ……っ」

 リゼの反応で気づいたのか、ローレライも、「紅玉」と言って、左耳の奥を舌でつつく。

「──っぁあはぁっ! ……あぁん……」

「リゼの番。び、からよ?」

「あっ! はぁっ! んあぁ、はぁっ! ……あんっ!」

 ローレライのときのほうが、リゼは過敏に反応している。乳首も耳も強く攻めているのだろうか。

「リゼ、び、よ? 早く言いなさい」

「──あぅ! ……はぁ! あっ! あっ! んっ、あっああん」

「さぁ、早く」

「──あっ! あはぁ! んぁ! あっ! んはぁ! あっ、はっ、んぁああああ!」

 これはもう、ローレライは確実にリゼを攻め立てている。

 それでなくても、両の耳と両の乳首をすべて同時に嬲られているのだ。リゼの腰がかくかくと震え始めた。

「リゼ、ネロを待たせてはダメよ? 早くなさいな」

「──はぁっ! だ、もぉ……あはぁ……んっ! むりぃ……あっ! ああぁっ!」

 温かい。微妙に。太ももの辺りが。

「はぁぁ……あっ! はぁぁ……んっ、はああああぁぁぁぁ……」

 かすかにニオイもする。間違いないか。

「リゼ、お漏らししてない?」

「あら、粗相をしてしまったの? リゼ」

「……だ、だってぇ……んっ」

 両脇を抱えてリゼを退かすと、やはり染みが滲んでいた。ツンと鼻を突くアンモニアのニオイ。

「ネロの膝の上で粗相するだなんて、いけない子ね、リゼ?」

「す、すこしだけだもん」

「反省の色が見えないわね。テーブルの上で四つん這いになりなさい」

「……ふぇ?」

「言うことを聞かないと、ネロが持って来たおやつは抜きにするわよ」

 僕の知らない間にどのような関係が出来上がってしまったのか謎だけれど、ローレライの言葉に、リゼはそそくさとテーブルの上に四つん這いになった。

 リゼの体格からして、軽々とテーブルに乗れてしまうその様は、小動物を連想させる。

「お尻はこっちよ」

 よちよちと方向転換するリゼ。染みの滲んだお尻が目の前に突き出される。

「こんなに濡らして。恥ずかしい子ね」

 言いながらローレライは、リゼのスカートを腰までめくり上げ、かぼちゃパンツを太ももまで擦り下げた。

 お尻の穴まで露わになったそこを、「あひゃ?」と甲高い声を上げて、手のひらで覆い隠そうとするリゼ。しかし残念ながら手が届いていないので、産毛すら生えていないつるつるのわれめも、まったく隠せていない。

「いまさら恥ずかしがることはないでしょう? あなた何度もネロに抱かれてるじゃない」

「だ、だって……おしっこ、が」

「だから拭いてあげようとしているのよ──ネロが」

 僕なのか。

「リゼ? 恥ずかしがらず、お尻の穴までネロに見てもらいなさい」と、何故かローレライは蜂蜜の入った小瓶の蓋を回す。なにをするのかと思ったら、指で掬ったたっぷりの蜂蜜をリゼの秘部に塗りたくった。

「……ふぇ? ふぇ? なにこれ、ローラ?」

「粗相をした罰に、あなたにはまんこ皿になってもらいます。さぁ、どうぞ召し上がって、ネロ」

 もはや僕が口を出せる領域を超えているようなので、素直にローレライのご厚意に甘えることにした。

「主よ、この食事を祝福して下さい。身体の糧が心の糧となりますように」

 祈ってから、リゼのわれめに舌を這わす。

「──あぅっ! おしっこついてるのに、ネロさまのべろ……べろが……はぁんっ、あっ! ざらざらしてきもちいいぃ……ネロさまのべろぉ……」

 われめに沿って舌を上下させていると、力を込められなくなったのか、四つん這いになっていたリゼが両ひじをつき、お尻だけを突き上げた状態になった。もっと見て下さいとお願いしているように。

「あっ! ……あはぁ! はぁ、ネロさまのべろ……べろ、んぁっ!」

 ローレライの指先からリゼのお尻の上に、蜂蜜がベタァー……と垂れる。その光沢は未成熟なリゼのわれめに艶かしさを足した。

「おかわりはたくさんあるわ、ネロ」

「あ、だめ、そこおしりの穴──あはぁ、あっ! ネロさまぁ……そこおしりの、あっ! んっんぁっ」

 リゼのわれめから垂れているものが蜂蜜なのかリゼの愛液なのか、わからなくなっている。

 われめは花開くようにぷっくりとひろがり、色の違う膣内が露わになっていた。

「あっ、あっ、んっ! ネロさまのべろぉ……あっ! すきぃ……きもちいいぃ……あはぁっ」

「まんこ皿は喋ってはダメよ」

 蜂蜜だらけの指が、ぬぽっとリゼの秘部に挿入される。ローレライの短い指の関節が、何度も折り曲げられているのがわかった。リゼの気持ちいいところを知っているらしい。

「──ああぁっ! あっ! はぁっ! あっ! んっ! んぁっ!」

「ネロは気にせず、下から蜂蜜を舐めてて」

 言われた通り、ローレライの手を避けて蜂蜜を舐め回す。リゼの愛液と混ざっているので、甘酸っぱい味。

「あっ、あはぁ! ゆび、ゆびぃ、ろーらのゆびぃ……ネロさまのべろぉ……あっ、いいっ、すきぃ……あっ。いいぃ……ネロさまのべろぉ」

「まだわかってないわね、このまんこ皿は」

 ローレライの指が激しく前後に動き、リゼの膣内を掻き回す。

「あぁっ、あはぁ、はんっ! ……あっ! はぁんっ、あっ! いいぃ! おまんこいいぃ! ああぁっ!」

 表情は見えないけれど、ローレライの指遣いでリゼは達しそうだった。突き上げられたお尻も力を失くし、テーブルについた膝は開かれて腰が下がってきている。

「──あっ! あはぁあああぁぁ……っ!」

 絶頂を迎えるだろう寸前、ローレライはリゼの膣内からズッポリと指を抜いた。

 息も切らせながらも、「え?」と言うような表情で、こちらに振り返るリゼ。

「まんこ皿がまた喋った」

「え……だ、だってぇ……」

「服を脱いで、テーブルに寝そべりなさい。まんこ皿に服なんて必要ないわ」

 リゼの膣内で、蜂蜜と愛液の混ざったヌルヌルの指を、僕の眼前に向けるローレライ。

「はい、ネロ。あーん」

 口を開けると、ローレライの指がすっと入ってくる。指先で奥歯を撫で、頬の内側を撫で、舌を撫で回された。まるで僕の口内が膣内になった気分だ。にも関わらず、どちらかと言えばローレライのほうが恍惚な表情を浮かべている。全体的に、熟れた柘榴を彷彿とさせていた。

「あは、いいわね、これ。素敵よ、ネロ。私の指、吸って」

 ちゅるちゅるちゅると吸いながら、さらにローレライの指を今度はこっちから舐め回す。指の側面、腹、間接の裏。間隔を空けず、じっくり、ねっとりと。

「あん……ネロの舌、上手。あっ、もっとして……」

「いいな……ローラ……」

 指先を唇に宛がって、リゼは心底羨ましそうな態度と潤んだ瞳を見せる。

「まんこ皿は服を脱いで、テーブルに寝そべりなさい。早く続きが欲しいのなら」

 イキ損ねたリゼは「続き」という言葉にピクンとして、ワンピースも、ベトベトになったかぼちゃパンツもささっと脱ぎ捨てて全裸でテーブルの上に仰向けになった。さすがに恥ずかしいのか両手は胸の上に、足は膝を立て閉じている。

挿絵3

「甘いものにも飽きたでしょう? ネロ。酸っぱいものをご馳走するわ」

 眼を細めてにんまり。ローレライの凄惨な笑みの意味はわからないけど、「そうだね」と答えておく。

「まんこ皿は両手を頭に上げて、みっともなく足をひろげなさい」

 僕とローレライは長椅子から立って、平たい胸から秘部に至るまですべてを曝け出し、まな板の上の鯉のようになったリゼを見下ろす。

 ふんわりとしたボブヘアー。くりっとした瞳。褐色の肌。凹凸のない身体。なだらかなおへそ。M字開脚でぱっくり開いた恥毛のないつるつるのわれめ。なにもかも未成熟。儚くて、壊れそうなほど、幼い。

 リゼの乳首を指差し、ローレライは言った。

「ここに二つの木苺があるわ。いただきましょう」

 左の乳首を遠慮なくつまむローレライ。

「──ぃあぁんっ!」

 僕も遠慮なく、右の乳首をつまむ。

「──あはぁ! あぁん!」

 両手を上げてテーブルの端を掴むリゼ。快感に浸る心も、身悶える褐色の身体も、なにも隠せていない。

「取れないよ、この木苺」

「あふぁ! あぁっ! ……んっ! あぅん!」

「もっとつまみ上げなさい、ネロ。こんなふうに」

「──あっ! あはあぁぁっ! ……あはぁっ」

 リゼの左乳首がゴムのように引っ張り上げられている。千切れてしまいそうな勢いだった。

「それはちょっと痛いんじゃ……」

「このまんこ皿、少し痛いくらいが丁度いいのよ。知らなかった?」

「そうなの、リゼ?」

「ぁあんっ、すきぃぃ……ネロさまぁ……いたいのすきぃ……ネロさまぁ♥」

「なに喋ってるのよ、このまんこ皿は」

「ああぁはぁっ! あんっ、あっ! はぁぁん……」

 目尻をとろんと下げ、だらしなく口を開けている表情を見るに、少し痛いくらいがいいというのは本当のようだ。僕もローレライに倣って、リゼの右乳首を引っ張り上げる。

「──あはぁっ! あっ! あっ! んっ、あはぁ」

 引っ張り上げながら、くりくりと乳首をこねる。

「ぁんっ! あっはぁっ! あぁん! ……あはぁっ! んん!」

「見てみなさいな、この表情。大悦びよ、このまんこ皿」

「可愛い顔だね。よだれ垂らして、可愛いよ、リゼ」

「あはぁ……あぁん、あんまり、あっ! ……みないでぇ……ネロさまぁぁ」

「だからなに喋ってるのよ、このまんこ皿」

「──はぁぁああ! あはぁ! あんっ! あぁっ!」

 乳首だけでイキそうなくらい敏感になってる。腰が浮いて、蜂蜜の量を超えた愛液が、われめから溢れて出ていた。

「ネロ、ここに畑のお肉があるわ。食べなさい」

 もちろんクリトリスである。本当に大豆のように大きく勃起していた。

 汗と蜂蜜と飛び散る愛液でベトベトになった身体に左手の指を這わせて、ゆっくりとわれめに向かう。

 蕩け切った表情でもわかる。クリトリスに触れられる期待をしているリゼの眼差し。欲望に光っている。

 クリトリスに触れた瞬間、浮いていた腰がガクガク揺れ動いた。

「──あはぁ! んぁ、ぁはあ! あんっ! ……ああああぁぁっ!」

 中指の腹で、膨れ上がったリゼのクリトリスを前後左右にころころ転がす。

「あはっ! あはぁ……んっ……あっ! ぅあっ、んっ! ぅはあぁっ! はぁ!」

「可愛いなぁ、リゼ。気持ちいい?」

「──あぁん! はぁ! あっ! ……あっ! ……あっ!」

 僕の右手で右乳首を弄られ、左手でクリトリスを弄られ、左乳首はローレライに弄られ。釣り上げられたばかりの魚がぴちぴち跳ねるように乱れるリゼ。開いた両足はより開かれていく。

「もっと顔、見せて、リゼ」

「あぁんぁ! ……あっ! んぁ……はっ! あぁ! あっ!」

「顔がとろとろだ、リゼ。こんなに可愛いリゼを見たのは初めてだよ」

「ぁはぁん! あぁんっ……あっ! んっ! あはぁっ……っ!」

「なに無視してるのよ、このまんこ皿は」

「──あはぁああぁぁはっ! ぅはああぁぁっ! ぁあん!」

 ローレライの左手の指が、ふたたびリゼのわれめに挿入っていった。

「まんこ皿のくせして、私のネロを無視する気? 生意気ね」

 さりげなくローレライのものにされてしまった僕だった。こんなときに口を挟むのは野暮なので黙っておこう。

「あはぁ! きもちいいぃ! すきこれぇ! ネロさまぁ! きもちいいぃ! すきぃ……ネロさまぁ♥」

「なに勝手に喋ってるのよ、このまんこ皿は」

「──はぁぁあっ! ……んぁ! ああぁぁっ! ……あん! あはぁ、あっ!」

 リゼの膣内がローレライの指によって掻き回される。壊れそうな勢いで。

「そろそろこのまんこ皿、イかせるわ。イかせるから、私の指でイクまんこ皿の表情、しっかり拝みなさい」

「そういうわけらしいから、ローレライの指でイっちゃう可愛いリゼの表情、僕に見せてね」

「あぁん……やぁ、ネロさまぁ あっ! みないでぇ! わたしの……あはぁ! イクかお……みないでぇ!」

 いやいやする子供のように首を振るリゼ。ふんわりとした綿毛の髪の毛は、風に踊らされるたんぽぽを思わせる。ローレライの嗜虐心を刺激する理由が、わかるような気もする仕草だった。

「でもリゼはこういうのが好きなんでしょ? 違うの?」

「すきぃ、すきぃ、こぉゆーのぉ……だいすきぃぃ……あはぁ! あっ! んぁ……はぁ♥」

「リゼ、舌出して、舌。リゼが舌出して、ローレライの指でイかされちゃう表情が見たい。ほら、べーって」

 加速するローレライの指の抽挿。彼女と僕の二人で、テーブルの上のリゼは両の乳首とクリトリスまで攻め立てられている。ここで膣内まで掻き回されては、すぐに達するだろう。短い舌先を一生懸命出しながら、浮いたままのリゼの腰は自分からも絶頂を求めるように、さらに浮き上がる。

「べぇー……あはぁ! みやいでぇ! えく、えったう! あっ! おーらのゆびでえったうとこ、あっ! えおさまにみやえたうぅぅ!」

「リゼのちっちゃい舌、可愛いね」

「かはぁ♥ えく、えったう……えく、あっ! あはっ! えくぅえろさまぁぁぁあああああ──……っ」

 たっぷり三十秒ほど仰け反って、ピクピクと痙攣するリゼ。やっとテーブルに落とした腰は、水溜まりになった愛液をピチャンと弾いた。

 リゼは完全に悦楽の底に堕ちてしまっている。舌を出し、半目を開けているも、白目だった。

 彼女の吹き出した潮で顔をべっとり濡らしたローレライ。それを舌舐めずりしながら、

「こうすると起きるわよ」

 と、嗜虐的な顔でにんまり。痙攣しているリゼの乳首を、ギュッとつまみ上げた。

「──ああああぁぁっ! はぁっ! はっ……あふぅ、あっ……ね、ネロさまぁ……」

「大丈夫、リゼ?」

「すきぃ……すきぃ……こういうのぉ、だいすきぃ……ネロさまぁ……♥ ネロさまぁ……♥」

 発熱で魘されているように呟くリゼ。まぁ、好きならいいんだけど。

 館から遠く離れたこの丸太小屋で、普段なにが行われているかは問うまい。山の監視さえちゃんとしていてもらえれば。

 澄ました顔で、長い黒髪をふわっとかき上げるローレライ。その表情はどう考えても年の頃十には見えない。

「理解が深まったわね、ネロ。これが女というものよ? お役に立てば嬉しいわ」


 生まれながらの魔性。

 実年齢不詳の魔女は微笑わらう。

 山は陽の傾きが早い。

 リゼとローレライと一緒にシフォンケーキを食べながら談笑し、紅茶で一服。

 名残惜しかったけれど、早々と丸太小屋を出発する。健気に手を振り続けるリゼの姿を愛おしく感じた。

 森を歩き始め小一時間。生い茂る木々を見渡しながら、奇妙な気配がすると注意を払っていたら、

「待ちなさい」

 と、聞き覚えのある声に呼び止められた。

 深い紺色に染められた長袖ワンピースに、革の長靴。首回りにペイズリー柄のスカーフを幾重にも巻きつけたローレライが姿を現した。

 狼に尾行させていたんだろう、眼を細め、にんまりとした澄まし顔で、落ち葉の絨毯を踏む。

「どうしたの、ローレライ?」

「忘れ物よ」

 麻布に包まれた小瓶を渡される。少し濁った黄土色の蜂蜜。一般的な蜂蜜の色合いとは随分と違っていた。

「私の作った特別製よ。これを食べて養生なさい」

「ありがとう、ローレライ。特別製ってこれ、なにが入ってるの?」

「鹿のペニスを粉末にしたものとか……」

 鹿のペニスの効能、精神的疲労の回復。血行促進・滋養強壮。そして、勃起不全の改善。つまり、精力剤。

「あとは……私の愛とか、色々よ」

 ローレライの愛の効能はわからないけれど、禁断症状が起こる類のものではないと信じよう。「色々」という言葉に含みがあったようにも聞こえたけれど、とにかく信じよう。でも、ローレライの細い足が僕の股の間に入ってきている現実をどう捉えていいのかは、非常に悩むところだ。

 擦りつけるように身体を密着させてくるローレライ。黒髪からは、甘酸っぱい柑橘系の香水の匂いがした。

 思わず頭の天辺に顔を埋めたくなるような匂い。恐らく香水にも「色々」入っているんだろう。

「……ねぇ、抱いて……って言われたら、困る……?」

「少しね」

 僕の手首を掴んで、手のひらを自分の下腹部に宛がう。丸みを帯びたそこは心臓のように脈打っていた。

「ここが疼くの。今日、ネロの姿を見たときからずっと……」

 ローレライは僕の背中に手を回して、胸部に顔を埋めた。溶け込んで、侵入するかのように。

「私の番は、まだ……?」

「あと一ヶ月とちょっと先かな」

「待てないわ。待てないし……堪えられないの……」

「ローレライの儀式はまだ先で大丈夫だよ」

 顔を埋めたまま、弱々しく首を振る。

「そういう問題じゃないの。気持ちの問題なのよ」

 吐息が胸に熱い。顔の真下、潤んだ瞳が上目遣いで見詰めてくる。

「切ないの、ネロ……」

「でも、なんだか演技臭いし」

 そう言うと、くるりと背を向けて数歩の距離を取り、ローレライは長い髪をふわっとかき上げた。その手は腰に据わる。肩越しに細めた眼でにんまり、いつもの澄まし顔が披露された。

「らしくなかったかしら?」

「そうだね。しおらしいのはローレライには似合わないよ」

 ──けれど。

 あの丸太小屋にずっと二人だけで山の監視を続けているリゼとローレライ。寂しいという感覚が胸に穴を空けているのは事実なんだろう。エレノアを助けたとき、ローレライに頑張ってもらったこともある。

 ここは森の道すがら。まだ館から離れてるし、ローレライを抱いても順番抜かしでレイラ辺りにあーだこーだ文句言われる心配もない。試してみたいことだって、あるにはある。

「僕の、欲しい? ローレライ」

 片手を腰に添えたまま正面に向き直り、あごを上げて答える。

「ええ、欲しいわ」

 その声は深く静かな咆哮のようで、眼は野獣のようにギラついていた。

「──じゃあ語尾に、わん、ね」

「……え?」

「僕のが欲しいのなら、語尾にわんとつけながらお願いして」

 表情が固まって、なにを言われてるのかわからない様子のローレライ。

 しかし僕は丸太小屋でのリゼとのやり取りに、彼女の願望を垣間見た気がしていた。ローレライがリゼにした行為は恐らく、本人も望んでいることなんだろう、と。

「できないのなら、僕のはおあずけ」

 リゼがまんこ皿なら、ローレライには皿まで舐め回す犬になってもらおう。

 理解が追いついたのか、ローレライの澄まし顔がわずかに崩れる。語尾にわんとつけて喋る自分を想像したらしく、頬が赤く染まった。澄まし顔を持ち直すも、視線は斜め下。しばし沈黙が流れる。

「できないみたいだから、僕は帰るね。じゃ……」

「──ま、待って! ……できるわ」

「できるわん?」

 太い樹木に寄り掛かり、ローレライの口から紡がれる言葉を待つ。

 スカートを指先で、のの字を書くように小さく動かし、躊躇いつつもややあって──。

「……ネ、ネロのが欲しい……わん」と、絞り出すように言う。可愛く震える声だった。

「もういいでしょう? 早く頂戴、ネロ」

「駄目だよ。犬はおあずけが基本なんだから。それに語尾はずっとわんだからね」

「……え、ずっと……?」

「そう。言いつけを守らない躾の悪い犬なら、ご主人様はさっさと帰っちゃうかも知れない。でも、芸を覚える賢い犬には、きっとご褒美に美味しい肉棒が与えられると思うよ」

「──欲しい。ネロの肉棒、早く欲しい」

「わん?」

「ネ、ネロの肉棒、欲しいわ……ん」

「よくできました。まずご褒美の肉棒、見てみようか。僕のズボンから取り出してくれる?」

 こくこくと頷いて、「わん」と可愛く答えたローレライ。我慢できないとでも言うように荒々しくズボンに手を突っ込み、ぎゅうう……っとモノを握り締めた。

 体感的に伝わる小さな手のひらと、か細い指の存在。ローレライの身体自体はリゼと同じようにただただ幼い。

「あぁ……熱いわ……はぁ、硬い……」

「わん?」

「──か、硬いわん……ネロの、硬いわん」

 ローレライがズボンを擦り下げて、僕のモノを外に出した。森の空気に晒されひんやりとするけれど、眼孔の中に入っていきそうな勢いでモノを凝視するローレライの吐息で、熱くもある。

「はぁぁ……反り返ってるわ、ネロ。凶悪なエラ……あぁ、早く挿れたぁい……」

「わん?」

「──早く挿れたいわん。挿れて欲しいわん」

 片手でモノを握り、もう片方の手でモノの先端を優しく撫でる。撫でながら、ローレライは自分の顔まで引き寄せて鼻と口の間に宛がった。

「ネロのニオイ。久しぶり、ネロのニオイ……ネロのおちんぽのニオイ……」

「わん?」

「おちんぽのニオイ……好き……わん。ネロのおちんぽのニオイ、好きわぅん」

「ずっと嗅いでいたいわん」と呟きながらも、唇から舌を覗かせたのでローレライの頭を引き離した。

 舌を出しながら「あぁ……」と声が漏れる。

「ご褒美をしゃぶっていいなんて許してないよ? まだニオイを嗅いで、触って見てるだけ」

 多分、わかった、わかったから……という意味で、「わう、わぅん……」と頷くローレライ。また鼻と口の間に亀頭を宛がう。

 すんすんと鼻息が聞こえるくらいに、呼吸が荒い。吐く息は獣じみている。

 ローレライは細い指先で輪っかを作り、亀頭の位置をずらさないまま、モノを上下にしごき始めた。

「先っぽ汁……ネロの先っぽ汁のニオイ嗅ぎたい……わん。きついニオイ欲しいわぅん」

 精液は膣内に欲しいのだろうローレライは、我慢汁を出そうと微弱な刺激をモノに与え続ける。指を上下に動かしながら、亀頭には鼻の軟骨の感触、やや下には唇の感触。裏筋はローレライの吐息で湿っていく。

「いいニオイしてきたかな、ローレライ?」

「してきたわん。きつくていいニオイ……先っぽ汁のニオイしてきた、わぅ。あぁ……ネロのニオイ……」

「どんなニオイ? 栗の香り?」

「違うわん。柚子と金柑を混ぜたニオイだわん」

「初めて聞いたよ、それ」

「……もう口の中が唾液でいっぱいよ、ネロ……わん」

 一瞬、口調が素に戻ったローレライだったけれど、ぎりぎりで語尾にわんをつけた。

 親指と人差し指──モノをしごく二本の指の動きが激しくなる。亀頭はローレライの鼻が歪むくらいに押しつけられている。熱い吐息はもはや、形を有するかのように裏筋を攻め立てていた。

「あ、あぁ……ヌルッとしたわん。先っぽ汁出てきたわん、先っぽ汁ヌルッとしたわぅん……」

「ローレライが上手だから、もう出てきちゃったよ」

「上手わん? 私、上手わん?」

「うん、すごく上手。すごく気持ちいいよ、ローレライの手まんこ」

「ああ、ネロ……嬉しいわぅ……私……嬉しいわぅ……」

 一度出始めた我慢汁はわずかな量でありながらも止まらずに零れていた。潤滑油代わりになって、亀頭はローレライの鼻の下でヌルヌル滑っている。

「いっぱい出てきたわん。ネロのおちんぽから先っぽ汁いっぱい出てきたわん。きついニオイ……鼻の奥が犯されるわぅ……。もっと欲しいわぅ……先っぽ汁のきついニオイ、もっと欲しいわぅぅ」

 未成熟な唇を含め、顔の半分を使ってしごくようにモノを押し当てる。愛しいものに頬擦りするような仕草。我慢汁が溢れ、ローレライの顔を濡らし、ベトベトに汚していく。

「いっぱい出てきたわぅ、いっぱい出てきたわぅ。おちんぽ気持ちいいからわぅ? ネロのおちんぽ気持ちいいからわぅ? 先っぽ汁いっぱい出てくるの、私で気持ち良くなってるからわぅん?」

「ローレライの顔を犯してるみたいで気持ちいいよ」

「あぁ……私も気持ちいいわぅ……ネロのおちんぽの感触とニオイ……気持ちいいわぅ。──あ、先っぽ汁、少しだけ口に入ったわん。……はぁ……美味しいぃわぅ……先っぽ汁美味しいぃわぅぅ……」

「あれ、舐めちゃった?」

「ち、違うわん。不可抗力だわん。舐めたわけじゃないわん」

「はい、お終い」と、ローレライを身体ごと引き剥がして、僕はモノを仕舞った。

 一体化していたかのような温度が、森の空気で冷やされる。

「ちがっ、ネロ、今のは違うわ。先っぽ汁のほうから口に入ってきたの、本当よ」

「わん?」

「ほ、本当だわん。先っぽ汁が垂れてきただけだわん」

「犬がよだれを垂らしながら弁解しても説得力に欠けるかな」

 言われて気づき、自分のよだれなのか、僕の我慢汁なのかわからなくなっている粘っこい液体を、袖先でそそくさと拭うローレライ。僕と彼女のつき合いは五年以上になる。「あげない」と言った僕が、本当にあげないことを彼女はよく知っている。だから慌てる。ここまできて、もらえなかったら……と想像して。

 スカートをぎゅっと握り締め、ローレライは顔を伏せる。

「本当だわん。信じて欲しいわん」

「よだれが垂れてなかったら、信用したんだけどな」

「よだれじゃないわん。先っぽ汁だわん」

「じゃあ確かめてみようかな」

 すでに口元を拭き終わっているローレライが一瞬きょとんする。けれど、さすが生まれながらの魔性。すぐに言われていることに気づき、だから余計に慌て始めた。

「む、無理よ。これだけ焦らされているんだもの」

「わん?」

「も、もうよだれ……いっぱい垂れてるわん。たくさん……濡れてる、わんぅ……」

「だったら陽も暮れ始める頃だし、もうお開きにしようか」

 ローレライは僕の服を掴んだ。彼女の焦りと不安が手に取るようにわかる。彼女が彼女であるからこその焦燥。彼女が彼女であるからこそ、僕が今、本当に帰ろうとしていることを理解している。読み取れている。

「ネロ、欲しいの。本当に彼方が欲しいの。彼方が来てくれなかった一ヶ月で、季節が百回巡ったわ。私にはそう感じたの。本当に、彼方が欲しいのよ」

「本当わん?」

「本当わん……」

「僕のが欲しいわん?」

「ネロのおちんぽ……欲しいわん」

「わんわんわん?」

「わん? ……わん、わん」

「わんわん、わん?」

「……わん? わん、わん」

 ローレライは小首を傾げる。僕が即興で適当に作った犬語がわからないようだった。僕自身よくわからないので、仕方のないことだと言える。ローレライの股間からよだれが垂れているのも仕方のないことだから、

「じゃあ、よだれ乾かそうわん」

 と、提案する。

「乾かすわん?」

「ベトベトのパンツ脱いじゃって、ローレライのおまんこ乾かすわん。乾いたらよだれ垂らしたこと、なかったことにするわん」

「……どうやって乾かすわん?」

「普通に空気で乾かすわん。まずパンツを脱ぐわん」

 少し離れてスカートに手を入れ、かぼちゃパンツを脱ぐローレライ。彼女はパンツを脱ぐことぐらいでは動じない。かぼちゃパンツは、そこだけ夕立に降られたかのようにぐっちょり濡れていた。

 軽く絞って、枝先に干す。背景が緑と茶色で占める森の中、白いかぼちゃパンツは場違いに目立った。

 自分のしていることが僕にとって正しいのかどうかわからないローレライは、チラリチラリとこちらを窺う。

 僕は努めて無表情を作っていた。

「こ、これでいいわん……?」

 無表情をやめて微笑み、ローレライの長い黒髪を撫でた。ゆっくりと、できるだけ優しく。頭の天辺から後頭部に掛けて、長く、何度も。ローレライは眼を閉じた。一欠片の感触も逃がさないように。

「服は濡れてないわん。あと濡れてるのはローレライのおまんこだけわん。スカートめくり上げて足をひろげてお尻をこっち向けて乾かすわん」

「……わん?」

「森の中で手をつくのはムカデとかいて危ないから、スカートを持って九十度に腰を曲げて、足をひろげておまんこもひろげて空気に晒して乾かすわん」

「……わん?」

「一言で言うなら、獣の交尾みたいにするわん」

 ああ……と、ぽんと手を叩くように頭の中で要領を得てから、ふるふる首を左右させるローレライ。

「……恥ずかしいわん……」

「制限時間は陽が暮れるまでわん。早くしないと、精を放つ時間も失くなるわん」

「……わぅ」

 うな垂れて、しかしローレライは背を向けて、めくり上げたスカートをお腹辺りで抱え持ち、身を屈めた。

 その様は、足を開いての立位体前屈。長い黒髪が左右にバラける。小さく丸いお尻。肉づきがいいとは言えないほっそりとした太もも。ぱっくりと花びらを咲かせた秘部だけが、大人びていた。

 香油で漏らしたかのようにてかてか濡れて、薄紅色の膣内はぴくぴくとひくついている。

 上から、お尻の穴、おまんこ、開かれた足の向こうにあるローレライの逆さまの顔。僕は真正面に座って、それを眺めた。

「素敵な格好だわん、可愛いわん、ローレライ」

「恥ずかしい……わぅぅ……」

「でも、こうしてれば早く乾くわん。そしたらすぐこのまま挿れてあげるわん」

「ほ、本当わん?」

「本当わん。むしろ僕は早く可愛い格好のローレライに挿れたいわん」

 ズボンから自分のモノを取り出して、逆さまのローレライの顔に近づける。

「僕はもう、こんなにカチカチだわん。早くローレライのおまんこに後ろから出し入れしたいわん」

「出し入れして欲しいわん。ネロのカチカチおちんぽ欲しいわん、おちんぽ欲しいわん」

「ローレライのおまんこいやらしいわん。ずっとひくついてるわん。お尻の穴もひくついてるわん」

「お、おしりの穴は見ないで……欲しい……わぅ」

「でも、お尻の穴丸見えわん。お尻の穴も可愛いわん。ローレライのぴくぴく動く可愛いお尻の穴を見てるだけで、僕はカチカチだわん」

「あぁ……それぇ欲しいわん……ネロのおちんぽ欲しいわぅ……早くおまんこ乾くわぅぅん……」

 いや、乾くわけがない。乾くどころか、どんどん愛液が溢れ出ている。

 スカートをめくり上げ、足をひろげながらお尻を突き出し、秘部を晒している。足の間からは勃起したモノを凝視して、眼を離さない。この状態で乾いたら驚きだ。

 焦らしに焦らして、そのあとリゼのように、と考えていたとき、草木の向こうで、ガサッと音が鳴った。

「…………」

 四本足の感じではない、それなりの体重──人間か。

「欲しい、ネロぉ、早く挿れてぇ、ネロぉ……」

「……まだ、おあずけわん」

「いやぁ、欲しいぃ、早くおちんぽ挿れてぇ、ネロぉ……」

「わん?」

「ネロのおちんぽ欲しいぃ……早くおまんこしてぇ……」

 語尾がわんじゃなくなってる。わざとだ。ローレライも気づいてるのか。

 立ち上がり、背中からローレライを抱き上げる。スカートをめくり上げたまま、彼女は剥き出しのお尻をモノに押しつけながら、小声で言った。

「保証するわ、ネロ。今、私の膣内に精を放ってくれれば、私の魔力は格段に上がる」

「どういうこと? 誰がいるの?」

「大丈夫、敵じゃないわ。襲ってはこない。私をレイプするように犯して頂戴、早く」

「信用するよ? ローレライ」

「信用は要らないわ。愛を頂戴」

「……わかった」

 まだ夜じゃない。この山は現在、リゼの監視下にある。僕を尾行した狼だっているはずだ。状況は正確に把握できないけれど、ローレライの誘いに乗っておこう。充分に濡れているわれめにモノを宛がい、上下に擦る。

「挿れるよ、ローラ」

「──ああぁ! 嬉しい! 愛称で呼んでくれた! ネロ、挿れてぇっ!」

 先端を少しだけ挿れて、あとはズブズブズブッ──と一気に捻り込む。

「──あはぁぁぁっ! きたぁきたぁきたぁ! ネロのおちんぽぉっ! ……ああっ!」

「どう? おあずけ喰らったあとのモノは?」

「あっ! あっ! ネロぉ……すきぃ! もっとしてぇ! もっとおまんこぉ! ぁはっ! あぁ!」

「自分から腰を振るなんて、ローラは犬じゃなくて、牝犬だったのかなぁ!」

「うれしぃぃ! あぁっ! はぁ! もっと! ローラって呼んでぇ! あっ! ご主人様ぁっ!」

「いいよ、ローラ。僕の牝犬になる? ローラ、躾けてあげるよ、ほら!」

「ああぁ! ぁはぁ! 素敵ぃご主人様ぁっ! 躾けてぇ! おちんぽで躾けてぇ!」

「でも、だらしのないおまんこだからなぁ……牝犬ローラの躾は大変そうだぁ!」

「いいぃ……それもっとぉ! 牝犬ローラぁ! 私はご主人様の牝犬ローラぁ!」

「じゃあ牝犬らしく、自分で腰振ってぇ! 牝犬ローラぁ!」

「はぁっ! 動くぅ……自分で腰振るぅ……だから呼んでぇ、あっ! あぅっ! ご主人様ぁっ!」

「おまんこぎゅうぎゅう絞まってきたよ、牝犬ローラ! イくときは盛大に遠吠えしてねぇ!」

「んはぁ! するぅ……とぉーぼえするぅ! あはぁ! めすいぬローラぁとぉーぼえするぅ! あはぁっ!」

「ほら、牝犬ローラぁ! おまんこ溢れてるよぉ! よだれでいっぱいだぁ!」

「あんっ! めすいぬローラの、おまんこイクぅ! めすいぬローラぁおまんこイクぅ! あわぅぅ!」

「いいよ、ほらイって! 盛大に遠吠えして牝犬ローラぁ!」

挿絵4

「あはぁん! わぅ! わぅ! イクぅ! わ、わぅ……わん、あはぁ! イ、イクぅ! めすいぬローラぁイクぅ! わぁう、うはぁっ!わはぁ! わんぅ! わんぅ! イク、イクぅ! ごしゅじんさまぁっ! のおちんぽぉ! おまんこイクぅ! あはぁわぅ! わんぅ! イ、イ、わ、わ、んぁ! わぅぅ! あっ! あっ! おまんこぉ! イクぅ! わぁうんぁっ! わぅ、うをぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉ──…………っ」

 喘ぎ声なのか遠吠えなのかよくわからない声でとにかく叫び、ローレライは果てた。

 ほぼ同時に僕も精を放つ。ローレライの膣内に、たっぷりと。

 果てながらもローレライは僕の腰を掴み、精液を出し切るまで手を離そうとはしなかった。

 それどころか、ローレライの幼い身体は絶頂して尚、腰を小刻みに動かしている。わぅ……わぅ……と、うわ言のように鳴き続け、やがてモノが萎んでいっても、まだ離そうとはしなかった。

「ネロぉ……どこぉ?」

「ここにいるよ、ローレライ……」

「いやぁ……ろーらっていってぇ……」

「……じゃあ、今だけ。──ローラ」

「……わん……♥」

 さて。本当に襲い掛かってはこなかったけれど、念の為……と、護身用のナイフに手を掛ける。

 誰? ……そう言おうと思ったとき、その瞬間を察したようにローレライが声を上げた。──凄惨な笑い声を。

「あはっ! 「あはははははははっ! 「あはははははははっ! 「あはははははははっ! 「あはははははっ!」

 身体はまだ繋がったまま。繋がったままで、重複しているような笑い声を上げる。

「あははははははっ! 「あはははははははっ! 「あはははははははっ! 「あははははははははははははっ!」

 いつまで続くのかと思っていた凄惨な笑いが、ピタッ──と止まる。

 ローレライが背中を引っつけたまま、右手で僕の首の後ろに手を添えた。

「覗き見とはいい趣味ね! あなたに鑑定てもらうまでもなく! 感じるわ! たった今! 私は膨大な魔力を引き上げた!」

 魔力が引き上がった? この状況で、根源欲求に手が届いたのか?

お仕事中・・・・、失礼します。──ネロ様」

 現れたのはクレアだった。涼やかな声で言う。伸ばした両手を前で重ね、いつものメイド服を身に纏って。

「苦し紛れね、クレア! お楽しみ中・・・・・の間違いよ! これは儀式ではないのだから・・・・・・・・・・・・・!」

 紺色の長袖服に丈の長いスカート、白いエプロンドレスで正面を覆ったメイド服。手にも白い手袋。靴下で素足が覗くこともない。すらりと伸びているはずの首にもリボンのチョーカー。

 詰まるところクレアは──クレア・ヴァーミリオンは、顔しか肌を見せていない。

 魔女にしては稀な、比喩でもなんでもない、文字通りの白い肌。青白いと言ったほうが正確だろうか。

 背中まである黒髪が、余計に青白さを強調させている。

「私の儀式はずっと先。私たちはただ愛し合っていただけよ、クレア?」

 澄まし顔は変わらず、身体を密着させて勝ち誇ったようにローレライは言った。

 片や、それが返事であるかのように沈黙するクレア。

 クレアは僕に対し、恋慕に近い念を抱いている。恋と呼べるものでもなければ愛と呼べるものでもない。

 縋りつくものがそれしかないから抱いているだけの感情。とても後ろ向きな、仄暗い想い。

 頼りない藁を掴もうとするくらい、クレアは過去に溺れている。魔女であることを一度は捨てた──自身の過去に。呼吸の仕方を忘れるほど、息苦しく。感情を見せない冷静な表情の裏で、ずっと……。

 僕と多くの魔女の関係を乱暴に、誤解を恐れず言うのであれば、ギブアンドテイクの協力関係と呼べるだろう。それは聖教騎士団への復讐に限ったことではない。

 クレアには世話になっている。藁にしかならないとしても、クレアの助けになるのならどんな役目を担おうと、僕はかまわない。同情ではなく、協力関係として。

 僕は──だ。

「相変わらず、その【鑑定】はなにも映せていないようね、クレア」

 魔女であることを捨てたこと──魔女であることから眼を背けたこと。

 それらの関係性を含め、クレアのことを快く思わない魔女たちがいる。その代表格が──ローレライ。

 魔女の資質を量る天秤。クレアの固有魔術──【鑑定かんてい】を揶揄して嘲笑う。

「自分は鑑定られない」と。

 ローレライの挑発を冷静な表情で受け流し、目線を向けようともせず淡々と、それでいて涼やかにクレアは小さく口を開く。

「エマからの報告です、ネロ様。現在メイリオ街道を北東方向に逸れ、逃亡奴隷と思しき女性が追われています」

 北東方向──この山だ。

「何人に?」

「六人の男です。短剣を携帯しています」

 厄介だな。逃亡奴隷がこの山に逃げ込めば、最悪、人数を集められて山狩りだ。館も村も見つかってしまう可能性がある。できれば関わりたくない。別方向に誘導するのが一番だけれど……。

 話こそ聞きはすれ、聖教騎士団に入団する前にさっさと王都から逃げ出した僕は、奴隷というものを詳しく知らない。大きな街に住んでいたことのあるクレアは知っているんだろう、逃亡奴隷の悲惨な末路を。

 クレアの口調からして、「助ける許可が欲しい」と言外に言っている。

 逆に、衣服を整え終わって、片手を腰に添えるローレライは放っておけばいいという態度だ。

 クレアに対抗して、ではなくごく自然な対応として放っておけばいいと、そういう澄ました顔をしている。

 ローレライに賛成だ。僕たちは逃亡奴隷を助ける義理もなければメリットもない。

 助けるということは、六人の追っ手を追い払うか殺すかし、逃亡奴隷を館に匿わなければならなくなる。

 追っ手だけどうにかして、逃亡奴隷をその辺に放置したところで、結局は野垂れ死にするだけだ。

 だったら最初から助ける意味はない。そして逃亡奴隷を助けるとしても、ローレライの魔術が必要になる。

 ローレライの固有魔術──【狼転心】で、狼の群れを操らなければならない。

 それ以外の方法で助けられないこともないけれど、どこに誰の眼があるかもわからない状況だ。狼の群れに襲われたという偶然を装うことが、一番の方策。

「ローレライ、狼は空腹かな?」

「満腹よ」

 即答。やっぱり、放っておけということらしい。

『助ける』の選択にローレライの【狼転心】は必須条件。彼女が頷かなければ、それが結果と見做すしかない。

 逃亡奴隷は助けない。そう決めたところで、ローレライが言葉を続けた。

「──だから、運動の必要があるかも知れないわね」

 逃亡奴隷を助ける気があるのか?

 髪を華麗にふわっとかき上げ、ローレライは眉を顰めた僕へ目線を向ける。

「条件があるわ。──次の満月の夜、一晩中私を抱くこと」

「満月はクレアの儀式の日だよ」

「だからよ」と凄惨な微笑みを浮かべるローレライ。今度は、あごを上げた顔をクレアに向ける。

「私を抱いたあとのネロに抱かれなさい、クレア」

 重く響く。

 僕に出した条件でもあれば、クレアに出した条件でもある。一対九くらいの割合で。僕はそもそも逃亡奴隷を助けることには否定的だから。ローレライはそれを承知の上で、条件を提示している。あるいは利用して。

 冷静な表情を崩さないクレア。佇まいすら微動だにしないまま、ただ「はい」とだけ一言。

 ふたたび沈黙する。沈黙のほうがよほど雄弁な、沈黙。僕への意志確認も沈黙したようだ。

「そういうことだから、奴隷が殺される前に片づけてくるわ」

「一緒に行くよ」

「彼方は早く館に帰って身体を休めなさい。精を放って、また疲労させてしまったわ」

 確かに疲労している。けれどローレライについて行けないほどでもない。自衛の術くらいは備えている。

【狼転心】があるとはいえ、相手は六人の男。さすがにローレライ一人で行かせるのは無責任だろう。

「心配しなくても大丈夫。今の私の魔力はリゼに次ぐわ」

 すっと身を寄せ、「満月が待ち遠しい……」と耳元で妖艶に囁いてから頬に触れて、森の奥へ消えていった。

 リゼに次ぐ魔力値。

 それは山奥で平和に暮らしている百人超の魔女を合わせても、上から二番目の位置。それだけ膨大な魔力。

 本当に引き上がったのか?

 森で行為に及び、精を放っただけで──それをクレアに見られただけで、根源欲求が揺さぶられたのか?

 男なら不倫のような『他人の女を寝取っている』という背徳的な感覚が、快感を強めることもあるのかも知れない。女性にもそれに近い感覚があるものなのだろうか。『クレアから僕を奪った』──という感覚が。

 でも僕はクレアのものってわけではないし、そんなことはローレライだってわかってるし。

 そもそも館にいる魔女とは全員、交わってるわけだし。

「ねぇ、クレア。ローレライの魔力は本当に引き上がったの?」

「おめでとうございます」

 迂遠な回答。けれど本当らしい。そして、どうやら怒っているらしい。ローレライにだけではなく、僕に対しても。

 クレアは無表情に「館に帰りましょう」とツカツカ歩き始めた。

 そのあとを追う。


 館に帰り、すぐに一睡。

 目覚めると、部屋の窓から月明かりがぼんやりと射し込んでいた。深夜らしい。身体が重たく、ベッドは寝汗でベッショリ濡れている。テーブルには、ローレライからもらった蜂蜜の小瓶が置かれていた。

 お風呂と食事を同時に済ませる為、僕は小瓶を持って館の地下室へ。

 独房のような石製の小部屋。バスタブがあるので一応はお風呂である。水道などという気の利いたものはなく、大鍋に火を焚いて湯を沸かし、バスタブに張った水に注ぎ足して、適温を作らなければならない。

 面倒な作業だけど、いい加減慣れた。王都から逃げ出しもうすぐ六年。これでも快適になってきたほうだ。

 湯船に浸かり、ほっと一息。鈍色の天井をぼんやり眺める。

 コツンコツンと、石畳を叩く足音が近づいてきて、扉の前で止まる。歩調に乱れがない、きっとクレアだろう。

「ネロ様、ご報告よろしいでしょうか?」

「逃亡奴隷は助けられたのかな?」

「はい。今は気を失っているそうですが、明朝には館へ到着する予定です」

「そっか」と端的な言葉で呟くと、返ってきたのは「申し訳ありません」と酷く沈んだ返事だった。

「また……ネロ様を振り回してしまいました」

「一緒にお風呂入ろうよ、クレア。ちょっと内緒話がしたいんだ」

「……はい」

 間を作った返事をして、次に緩やかな衣擦れの音。

 メイド服は着るのも脱ぐのも大変だ。時間が掛かっているのは、そのせいだと思うことにしよう。

 しかし、衣擦れ音がまったくしなくなっても、クレアは一向に扉を開けようとはしなかった。

「……申し訳ありません。ネロ様を賭けの対象にしてしまい、負けてしまいました」

 条件があると言い出したローレライのあれは、クレアにとって『賭け』だったのか。

 条件を呑まなければクレアの望みは叶わず逃亡奴隷は死ぬ。そして満月の夜、僕をローレライの元に行かせることはなかった。条件を呑めばこの通り。逃亡奴隷は助かり、けれど僕はローレライの元に行くことになった。

 賭けというのであれば、どちらにしてもクレアの負けが決定しているダブルバインド。

 賭けに乗ってしまった時点で負け。僕と逃亡奴隷を同じ天秤に乗せてしまった時点で、クレアの大きな負け。

 乗せるよう誘導したローレライの勝ち。賭けというのであれば、だ。

「クレアの大好きな人が、クレアの大嫌いな人に奪られちゃうね」

「……はい」

「僕は売られていく仔牛の気分だよ」

「……申し訳ありません」

「最後にママのおっぱいが飲みたい。早く入っておいで」

 キィィ……と、ゆっくり扉が開く。

 顔を伏せ、前髪を垂らすクレアの表情はわからない。けれど、表情以外はすべて曝け出されている。

 青白い肌。すらりと伸びた手足。くびれた腰の上にあるのは形のいい大きな乳房と、桜ん坊のような乳首。

 下半身には肉感のある安産型の大きなお尻。下腹部はなだらかな曲線を描いて、手入れのされた陰毛を見せている。不均等にならないぎりぎりの均等を保った、理想的で魅力的な体型。

 足が滑らないように、僕は手のひらを差し出した。

「風邪を引くから、早く湯に浸かろう」

 手を掴み、片足を上げ、バスタブに入るクレア。腰を下ろすと、音だけがそこにあるように湯が溢れた。

 手を伸ばさなくても触れられる距離。けれど真正面のクレアはいまだ顔を上げない。

「顔を見せて?」

「…………」

 沈黙。この沈黙は、なにも語っていない。

「白い肌。雪原に紛れる白兎のように。だからきっと──赤い瞳」

 ピクリとして、隠すのを諦めたようにおずおずと顔を上げる。山林で背を向けたときにはもう涙を溜めていたんだろう、真っ赤に眼を腫らしていた。代わりに僕が顔を伏せる。目線は下、クレアの乳房に。

「おっぱい触っていい?」

「……どうぞ」

 お許しが出たので、両手でクレアのたわわなおっぱいを揉む。揺れる水面が、裸体の艶かしさを足していた。

上から覗けば、華奢な鎖骨。下腹部と陰毛。丸みを際立たせる太もも。

「泣くくらいなら、奴隷なんか放っておけば良かったのに」

「そんなことでは、泣いたりしません……」

「儀式でもないのにローレライを抱いたこと、怒ってるの?」

「そのことで怒る権利を私は持っていませんし、泣く、というほどではありません」

「じゃあなんで泣いたの?」

「……わかりませんか……?」

 何故だろう、わからない。

 抱く抱かないだけで言うのであれば、儀式の関係上ローレライよりもクレアのほうが遥かに多く抱いている。館のみんなも別段、不具合なく抱いてるし、それを管理してるのは他でもないクレアだ。

「ごめん。本当にわからない」

 本来であれば魔女にとって、僕に抱かれるというのは──精を放たれるという行為は、当然の儀式であって、食事に等しい意味しか持たない。もちろん拒否することだってできる。

「私は……ネロ様が……彼方のことが、好きです」

「うん、知ってる」

「彼方は、誰が……好きなんですか……?」

「僕は特定の誰かを特別に好きになることはないよ。って、知ってるよね?」

「知っています。……知っている上で……訊いても……いいですか……?」

「いいよ、なんでも訊いて」と、僕はクレアのおっぱいを揉みながら答えた。

 ちゃぷんちゃぷんと水音が鳴る中で、しばしの沈黙。

 けれど雄弁なる沈黙は言っている。「本当に訊いてもいいんですか?」と。

 柔らかなおっぱいが解れて、さらに柔らかくなってきた。

 今まで触れずにいた乳首を、きゅっとつまんで返事に代える。

「──んっ」と、声が漏れた。その勢いで、沈黙を破る。

「な、何故……ローレライとの逢瀬を、隠していたんですか?」

「おうせ?」

 一瞬その言葉の意味がなんなのかわからず固まったところに、僕の両手首を掴んで身を乗り出したクレアが、鼻の頭が当たるくらいの距離で、叫んだ。

「特定の誰かを好きにならないと言うのなら! 特別な誰かを作らないと言うのなら! 何故、逢瀬を重ねていたんですか! 館と小屋の真ん中で! 誰にも見つからないところで隠れて! どうして逢瀬を重ねる必要があるんですか! どうして私に隠す必要があるんですか! 彼方が好きです、私に至らないところがあれば直します! いえ、ネロ様の手で私をお好きなように直して下さい! 身体の形から心の形まですべて! ネロ様のお好きな形に! だから捨てないで下さい! 心がローレライに向いても、どうか私をネロ様のお傍に置いてやって下さい!」

 眼だけではなく顔まで真っ赤にして、一気に捲くし立てたクレアは「はぁ……はぁ……」と息を切らした。

 おうせ。逢瀬とは──愛し合う男女が密かに会うこと。

「クレア、それは誤解だよ」

「いえ、私の本心です」

「そうじゃなくて、僕はローレライと逢瀬なんて重ねてないよ。あれが初めて。エレノアを助けるときローレライには随分と無理してもらったから、そのお礼みたいなものだよ。一回こっきりのね」

 跳ねたお湯で髪を濡らし、影を落とす長いまつ毛にも水滴が乗っていた。信じられないという瞳で真偽を問う。

「……本当ですか……?」

 不安と戸惑いが滲み出ているクレアの顔。泣いたあとではなく、これから泣き出しそうな表情。

 唇から少し逸れて、頬に軽くキスをする。

「このキスに誓って、本当」

 顔を離し、頬に手を添えるクレア。

「──ぁ、キス……初めて……」

「長いつき合いになるけど、そうだね。なんせ僕の初めてのキスだ」

 さっきとはべつの意味で、信じられないという丸い瞳。

 一度だけ、「キスは苦手なんだ」とクレアに言ったことがある。憶えていたんだろう。

 本当に、キスは苦手だ。

 特別な感じがして。

「──も、申し訳ございません。取り乱して……しまいました」

「誤解は解けたかな?」

「こ、この……キ、ス……に、誓って頂けるの……なら……」

 気が動転しているのか、揺れる水面に映る自分の顔を見たり、ぎこちなく僕の顔を見たり、なにもない石壁を見詰めたり、すっかり冷静さを失くしているクレア。

「おっぱい飲んでもいい? クレアのお乳は美味しそうだ」

「で、出ません……お、お乳……なんて……」

「じゃあ、出るまで吸い続ける。──あーん」

 瞼を閉じ、口を空けてじっと待つ。

 薄目を開けると、クレアはどうしたらいいのか困ったふうにあたふたしてから、片方のおっぱいを両手で持ち上げて、乳首を僕の口内に入れる。唾液を溜めた舌で乳首をくるりと転がして、ちゅぅ~……と吸った。

「──んっ」

 肩で乳房を寄せるようにして、身を小さくしたクレアは漏れ出しそうな嬌声を堪える。

 他人に嬌声を聞かれることを嫌うクレアは、いつもこうして我慢する。僕は嬌声を出させようと舌先を動かしながら、ちゅぅ~……と、乳首を吸い上げた。

「お乳、出ないね」

「──んんっ……わ、私は、お乳は……あっ、で、出ません……」

「おっぱいをよく揉み解せば、きっと出るよ。僕は乳首を解すから」

 舌先で乳首を下から持ち上げるように丹念に舐める。ぴんっと、音が弾け出そうなくらいに硬くなっていた。

「──んんっ」

「ほら、クレア。おっぱい揉んで」

「──は、はい……んっ」

 出るわけないとわかっていながら、クレアは自分のおっぱいを両手で揉み始めた。そのリズムに合わせてちゅぅ~と乳首を吸い続けながら、舌でころころ転がす。

「んん……ふぁ……あ、あっ……んっ」

 ──ちゅぅ~ちゅぅ~……。

「ぁ、んっ……んん……んぁ……あ……あっ」

 乳首から口を離し、クレアの背中に手を回す。豊満な乳房に反して、薄くて狭い背中に。

「もっとこっち来て、僕の膝の上に乗って」

「ぁはぁ、はぁ……は、はい……」

 対面座位のように向かい合い、片手は背中に手を回したまま、もう片方は肉づきのいいクレアのお尻に宛がう。

 お腹が密着して、チャプンと水音が鳴る。小部屋に反響すると、そういえば風呂に入ってたんだと思い出した。

「……んっ、あ、の……ネロ様の……が、私、のに……当たって……あっ」

 クレアの秘部の真下にあるモノは、膣内に挿入ってしまう勢いで屹立していた。さおの部分はすでに、われめに挟まれている。

「こっちのおっぱいを試してみよう。──あーん」

「あ、あの……私は、お乳は……絶対……で、出ません……から……」

「あーん」と開け続ける僕の口に、おずおずと隣のおっぱいを持ち上げ乳首を運ぶクレア。口内に入ってすぐ、乳輪ごと吸い上げながらそれを舐め転がす。

「んっ……んん……ぁ……んっ」

 片手でお尻を揉みつつ、ずいっと背中を抱き寄せて顔をおっぱいで埋めた。口内では舌を左右に動かし、クレアの乳首を弄ぶ。ちゅぅ~と吸い上げ乳首を転がし、ちゅぅ~と吸い上げては、また乳首を転がした。

「──んっ……んんぁ……んっ、んっ……んんっ」

 頑なに唇を結び、クレアは漏れてしまいそうな嬌声をどうにか堪えようとする。

「──ぷはぁ、お乳出ないね」

「はぁ……ん……わ、私は、お乳は……お乳はぁ……出ません……ネロ様……」

「こんなに大きなおっぱいしてるのに?」と、ぺろっと乳首を舐めて言う。

 ビクンとクレアの身体が浮き、ふたたび沈むと、さおが秘部を刺激し、クレアの腰が前後に動いた。

「──ああっ……んっ」

 僕の首に手を回し、刺激に堪えるクレア。髪から滴る水滴が肩に弾ける。

「乳首もうちょっと強めに吸ってみようかな」

 両手を巻きつけたままクレアは首を振って、「出ないです。お乳……絶対に、出ないです、ネロ様……」と弱々しい声で答える。

「クレアのお乳は甘くて濃厚で、美味しいと思うんだけどな」

「出ません、絶対に出ません」

「じゃあ、声を出そうか」

「……こえ?」

「お乳で僕の舌を楽しませてくれるか、クレアのいやらしい声で耳を楽しませてくれるか、選んでくれる?」

「わたしは、声は……」

「ここは地下だから誰にも聞こえないよ。僕だけにしか聞こえない」

 巻きつけた手を緩めてクレアは僕を見た。膝の上に乗ってるクレアの目線は、やや下。

 沈黙に入りそうだったので、グッとモノに力を込めて熱り立たせた。

「──んぁ!」

 クレアのわれめに深く入り込むモノ。自然と彼女の腰はわずかに前後する。僕の顔を見ながら、僕にはわからないと思わせる程度に。けれど水面は確かに揺らめいている。

 両手が緩められたので、乳首が口に含められる位置に来た。「あーん」と口を開ける。

「やっぱり、お乳にしよう」

「──こ、声で。ネロ様、声でお願いしますっ」

「クレアのいやらしい声、たくさん聞かせてくれる?」

「──は、はい……」

 了承を得ると同時に、僕はクレアのおっぱいにしゃぶりついた。ちゅぅ~……ちゅぅ~……と。

「あっ! ネ、ネロ様、お乳じゃ、お乳じゃありま……あっ、んあぁ!」

「うん、お乳は諦めた。これはクレアにいやらしい声を出させる為だよ、れろれろ」

「──ぁんっ……ぁ、あんっ……これ、では、同じっ……で、は、あっ……んんああっ!」

「もっと腰を動かして、クレア。それとも僕が動いたほうがいい?」

「──わ 私が、あっ、動きます、んぁ……あ、あっ」

 ばしゃんばしゃんと波打って、バスタブのお湯が零れ始めた。首にしがみつき、クレアの腰が激しく揺れる。

「ぁんっ! ──んぁ、あっ! 硬いぃ……んっ、ネロ様ぁ、の……っ」

「なにが硬いの? クレア」

「んぁ! んっ! ネロ様の……あっ、立派な……あんぁ、おちん……ちん……で、す……っ」

 顔を上げてクレアを見る。紅潮して「はぁ……はぁ……」と口で息をする、クレアの乱れた表情を。

「──あんぁ……っ! ネロ様……ぁ……んぁ、ネロ様ぁ、ネロ様ぁ……!」

「いやらしい顔をしていたほうが素敵だよ、クレア。ずっと、そのままの顔でいて」

「あんぁ、い、今だけぇ……あっ! ネロ様の前だけでぇ、んっ……ああっ!」

「みんなにも見せたほうがいいと思うけどなぁ」

「いやぁ、あっ! ネロ様の、前だけぇ……私は……はぁ、ネロ様の、んっ、ものぉ……です、からぁ……」

「クレアのいやらしいおまんこも、僕だけのもの?」

「あっ、わ、私の……おまん、こ……んはぁ……ネロ様だけの、おまんこ、です……ぅ」

「いやらしいおまんこじゃないの?」

「いやら……しいです。わたしの、おまんこ……はぁ、ネロ様だけの、いやらしいぃおまんこ……です」

 片手に収まっていたお尻を、ぎゅっと握って、

「──んあぁ……!」

 そして、中指の腹をお尻の穴に当てて、くにくに動かす。

「──あっ、そこぉダメ、で、す。ちが、違い、ます……んっ……そこはぁ……っ」

「ん、違わないよ? ここはクレアのお尻の穴だけど」

「そ、そぉで、す、けど……んっ、あっ! そこはぁダメぇ、指ぃ挿れちゃダメぇ……ですぅ」

「え? どこに挿れちゃ駄目?」

「え、あっ! はぁ、お尻ぃ……です。わた、わたぁ、あっ、しの……お尻の……あなぁ、ダメぇ……」

 お尻の穴に当てている指を、さらにくにくに動かす。指の腹だけ埋めていくように。

「あ、はぁ……へ、変な感じぃ……お尻の穴ぁ、ダメぇですぅ……ネロ様ぁ……お尻はダメぇ……」

「でも、腰の動きが激しくなってるよ?」

「ネロ様、もぉ……おちんちんがぁ、あんっ! 硬く……硬くなっ……てっ、あっ……んああ!」

「クレアの可愛いお尻の穴、駄目?」

「ダ、ダメぇです……はぁ、変な感じぃ……だから、お尻はぁ……ダメぇ、あっ、んぁ、です……ぅ」

 秘部をモノで擦り上げる合間を縫い、クレアは小さく肩を震わせて、本当になんとも言えない表情を浮かべる。

 お尻の穴は未開発なんだろう。少なくとも僕は開発した憶えはない。

「指、挿れちゃダメ? クレア」

「あっ、んんっあ、ダメぇです……お尻、のあなぁ……ネロ様ぁ、ダメぇ、あっ、ああ……」

 指の爪はすべて、深爪と言えるくらい切ってある。ゆっくりと、ほんの少しだけお尻の穴に指を挿れる。

 秘部とはまったく異なる感触が、指先を締めつけた。

「──ああっ! はああああぁぁ……!」

「変な感じ?」

「──あはぁ、変な感じぃ……変な感じぃ、ぁはっ、ダメぇ、ダメぇ、ですぅ……ネロ様ぁ」

「お尻の穴と、おしっこ、どっちがいい?」

「……え? おし? あっ……お尻ダメぇ、挿れちゃダメぇ……挿れちゃダメぇです……ああっ」

 指を深めていく。快感を多分に含んだ、未知の感覚に戸惑うクレアの表情を見詰めながら。

「このまま、お尻がいい? それとも、おしっこ?」

「あっ、んっ、おしっ……こ、って、なんです……か……?」

「おしっこしてるクレアの姿、見せて欲しいんだけど」

「……え? 見せ? あっ、あっ、い、挿れちゃダメですぅ、お尻ぃ……お尻は、ああああ!」

「お尻の穴に指が挿入っちゃうまでに決めてね、クレア」

「──んぁ! おし……っこ、ネロ様ぁ、おしっこぉ、おしっこにぃしてぇ……お尻はダメぇ……っ」

 ゆっくりと指を抜く。と言ってもほとんど挿れてないのだけれど。

 クレアは僕にぎゅううっと抱きつき、離そうとしなかった。彼女の弾んでいる息遣いが全身に伝わってくる。

 僕は、ぽん……ぽん……と、優しく背中をたたいて撫でる。赤ん坊にする、それのように。

 呼吸が整うと、手を離すクレア。対面座位のまま顔を伏せて、

「あ、あの、本当に……ですか……?」

 と上目遣いでこちらを覗く。

「なにが?」

「してる……ところ、おし……っこ……です……」

「うん、見たい。クレアがおしっこしてる姿は可愛いだろうからね、絶対に」

 言って僕はバスタブの栓を抜いた。お湯がどんどん減っていく。

 その様子を膝の上に乗ったまま黙って見詰めていたクレアが、ハッと気づいた。

「──こ、ここで……ですか……?」

 クレアの頬に触れながら「駄目?」と、訊ねる。

 もう、お湯は失くなっていた。僕はバスタブの縁をとんとんっと指で叩く。

「ここに座って足をひろげて、クレアのいやらしいおまんこ見せて」

 これからする行為を思い浮かべているのか、目線を泳がしながらもじもじと立ち上がって、クレアが縁に腰掛ける。眼前の彼女の膝小僧をくすぐるようにつつくと、ゆっくりと両足を開いて秘部を露わにした。

 手入れされた陰毛の下、すでにほころんでいるわれめがぷっくり膨らんでいる。

 太ももに手を添えると、ピクンと反応してクレアの髪から水滴が降ってきた。

「おまんこぴくぴくしてる。生きてるみたい。可愛い」

「い、言わないで下さい。い、いつも……いくらでも、見ているじゃあ……ないですか……」

「場所が違うから新鮮なんだよ。それに今からクレアがおしっこするんだから興奮もする」

 立ち上がって、屹立しているモノを見せる。

 クレアの柔肌に先端が触れるとドクンと跳ね上がって、彼女を驚かせた。

「ほら、こんなに元気。さっきまでクレアのおまんこで擦られてたモノだよ。触ってみて」

「い、いいんですか?」

「僕もクレアの乳首に触りたい。触りっこしよう」

 乳首を両の指で弄ると、

「──あっんっ」

 甘い嬌声を上げて、クレアも脹れ上がったモノを、そう……っと、手のひらに包む。

「あ、熱い……ネロ様のおちんちん、すごく、熱い、です。──あんっ、んあっ」

「クレアの乳首もこりこりしてる。もう敏感になってる?」

「ずっと、あっ、んっ……敏感……です、はぁっ、ん……敏感でした、ずっと、ん、ああ!」

「おまんこも敏感になってる?」

「なって……ます……んっ、ネ、ネロ様のおちんちんを、握ってますから。ネロ様の──おちんちっ……あっ」

「申し訳ないんだけど、今日はもう僕の役立たずなモノは使えないんだ」

「いいです、あっ、こうして一緒に……気持ち良くなって、あっ、乳首、乳首ぃ気持ちいいです、ネロ様ぁ」

「おまんこも気持ち良くなって、クレア」

 僕はふたたび座って、クレアの股の間に入った。

 愛液が太ももを伝い垂れている。舌を伸ばして愛液を掬い、腫れ上がっているクリトリスに塗りたくった。

「──あんんっ……ネロ様っ……そこぉ……気持ちいい……んぁ、ネロ様ぁ……あっ……あっ……っ」

 舌先で感じる熱い肉芽。転がすたびにクレアの嬌声も転がるように零れ出る。われめから愛液を掬って、どんどんクリトリスを濡らしていくと、控えめに開いていた両足が水平に近づいていった。

「あっ……あっ、んっ……んぁん……そこ、気持ちいいぃです、ネロ様っ、ネロ様ぁ……あ、あっ、はぁっ」

「びんびんに勃起してるよ? クリトリス気持ちいい?」

「いいです、あっ……クリトリス、気持ちいいぃです。ネロ様の舌ぁ、クリトリスで、わかります……あっ」

 クリトリスも乳首みたいに吸い上げる──ちゅぅ~……と。

「──あぁ! あ、はっ! 気持ちいっ、あっ! いいぃ……ネロ様ぁそこぉ気持ちいいぃ……あっあっん!」

「片足、縁に上げてもっとおまんこ開いて、クレア。全部吸ってあげるから」

「──は、はい、ネロ様ぁ、吸って下さい……私のおまんこ全部、吸って下さい、ネロ様ぁぁ……」

 左足を縁に乗せると、これ以上ないくらい花びらはぱっくりと花咲く。滴り落ちる愛液は、足元で水溜まりを作っていた。

 おまんこ全部に口づけて、強めに、ちゅぅ~……ちゅぅ~……と膣内まで吸い上げる。

「──んはぁ! あっ、いい、んぁ……おまんこ気持ちいいぃ、あっあっはぁ、いいぃ、あっ! 舌ぁ挿入ってきましたぁ、舌ぁ、ネロ様の舌ぁいいぃ……あ、気持ちいいぃ……あっはっぁ! ネロ様っ舌ぁああぁ! んぁ、気持ちいいぃですぅ……私のおまんこにネロ様の舌ぁ……あっ、あっ、おまんこにネロ様の舌ぁああああ!」

 くねくね動いてしまうクレアの腰を掴んで、秘部の奥まで吸い上げる──ちゅぅ~……ちゅぅ~……と。

挿絵5

「はっ……いいぃ、あっんんぁ、あっ! イぃ、ネロ様の舌ぁ、イぃ、イキそぉです、イク、あっあぁぁ!」

「イクときは一緒におしっこしてね、クレア」

「あっ、え? あぁ! ダぁ、ネロ様にぃ、おしっこかか──あっ! ダメぇ、イクぅ、ネロ様ぁ……おしっこがぁ……私の、おしっこかかっちゃ……あっ、イクぅ、ネロ様におしっこかかっちゃ……ああ!」

「ほら、おしっこ漏らしながらイって。クレアがおしっこ漏らしながらイっちゃうところ、見たいんだ」

「やぁ、ダメぇ、ネロ様ぁ……おしっこぉ、あっヤっダメ、ホントに出ちゃう、かかっちゃう……おしっこぉ」

「お漏らしメイドのクレアは、おしっこしながらイかなくちゃ駄目だからね、お漏らしクレア」

「あっあっ! ダメぇ激しくしちゃダメぇ、イ、イっちゃう、ぁはぁ! イっイっあ……でちゃっ、でちゃうぅ!」

「おしっこ漏らして、クレア。ちゃんと見ててあげるから、お漏らしクレア、おまんこからおしっこ出して」

「ホントに出る、でちゃう、おしっこでちゃう──ネロ様にかかっちゃ、あっ! ダぁヤっ、んぁ、ああぁ! 退いてくだ、あっダメぇ、で、でる、でちゃうぅ! ホントにでちゃうぅ! ネロさまぁ! ネロさまぁ!」

 舌の動きを激しくして──ちゅぅ~……。

「あっあっ! で、おしぃ……っこ、も、もう、でちゃ……で、ああああああああぁぁぁ────…………っ」

 チョロチョロチョロ……チョロチョロチョロ……と、黄色い液体が流れる。

 脱力しているものの、クレアは同時にはイかなかったので、そのままお尻を持ち上げて、舌をわれめの奥深くに挿入し、激しく動かす。

「──え? え? え? ああっ! ネロさまぁ……ダメ、いまぁダメぇです! まだ、おしっこが、あ、あっ、 ネロさまぁ、あっはっんぁ! した、したで、ネロさまの舌で、あっ、イクぅ……おしっこしたのにぃまたイクぅ、ダメぇネロさまぁ、イ、あっ、イク! イクぅイクぅ……したぁ、ネロさまのしたで、イぃ、あっはぁ! イっ、イクぅ、おまんこイっちゃあああああっ! あああああああああああぁぁ────…………っ」

 愛液が飛び散って、膀胱に残っていたおしっこもまた、チョロチョロチョロ、チョロチョロチョロと流れ出た。

 バスタブの縁に腰掛けつつも、気を失っているように身を放り投げて、壁に寄り掛かっているクレア。

 僕はバスタブの中で、腰をついている。下半身にクレアのおしっこの温度を感じながら。

「……も、申し……申し訳……ありま……せん、ネロ……さま……」

「なにが申し訳ないの?」

「……わ、私の……お、おし……っこ……を、その、かけてしまい……ました……」

「可愛かったよ? クレアがおしっこ漏らしちゃうところ。これから満月の夜まで毎日、クレアのおしっこをかけてもらうかな」

「……え? あの、それは……?」

「ローレライに、こう言ってやろう」

 雄弁な沈黙もいいけれど、たまには言い返しても罰は当たらないだろう。

「私のニオイがついた男に抱かれなさい」

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