カバー

幼馴染みはボーイッシュな爆乳美少女!!

マサキ・渚・友幸は、子供の頃から幼馴染みの仲良し三人組。マサキは、渚と友幸が両思いで付き合うことになっても祝福し、変わらぬ友情を築いていた。夏のある日、いつものようにマサキの部屋で友幸が来るのを待っていた渚は、暑さに耐えきれず薄着になってしまう。普段は異性として意識しない渚の無防備な姿だが、溶けるような暑さに加え、若気の至りでついつい性的興奮を覚えてしまうマサキ。身近すぎる関係ゆえに、混じりっけ無しの友愛のみで二人は性を発散させてしまう――。

書籍化に伴い読みやすく大幅改稿!
熱望されていた『パパハメ』の他、書き下ろし短編を収録!

  • 著者:懺悔
  • イラスト:ポチョムキン
  • 本体価格:1,200円+税
  • ISBN:978-4-8155-6505-3
  • 発売日:2018/5/30
口絵

タイトルをクリックで展開

「夏ってさ、出会いの季節だよな」

「ていうかクーラーつけない? 暑すぎなんだけど」

「海で出会った二人の若い男女。する事は一つだよな?」

「知らんわ組体操でもしてろよ。大体ウチらが住んでるここは、盆地で貯水池しか無いっての。クーラーつけるよ」

「夜の浜辺で夜空を見上げる」

「ちょっと、このリモコン反応しないんですけどー?」

「不意に触れ合う指先。重なる視線。高鳴る鼓動。きっと二人の想いは繋がっている。でも勇気が出ずに、はにかむだけ」

「クネクネ身悶えしてんじゃねー気持ち悪い。クーラーつかないっつってんの!」

 理想のシチュエーションが進行中の脳天に、バチンと遠慮の無い平手打ちが入る。

「いってーな。もうすぐでクライマックスだったのに」

「クーラー。反応しないんですけど?」

「渚。お前はな、ガサツだからダメなんだ」

「関係無くない?」

「貸してみろ。ほら、こうやって優しくボタンを押してやるとだな……ほら……な? 壊れてるだろ?」

「だろ? じゃないっつーの。今日も真夏日なのに、こんなの熱中症になるわ」

「お前は部活で鍛えてんだから大丈夫だろ」

「体育会系の根性でも限度があるわ。マサキの部屋はただでさえ熱が籠もりやすいんだから」

「……友幸来たら場所変えるか」

「さんせー」

「それまでは扇風機でどうかよしなに」

「うむ、苦しゅうない」

 扇風機と同時にゲームを起動する。

「友幸、いつくらいに来れるって?」

「生徒会終わるのが三時だって」

 時計に目を向けるとまだ二時過ぎだった。まだまだセミが煩い。

「引退したのに夏休みまで大変だな」

 コントローラーをカチカチ鳴らしながら、親友に同情する。

「どうしても人手が足りなくて先生側からもヘルプ入ったんだってさ」

 俺の相手をしながら渚が相づちを打つ。

「まぁ友幸なら受験だからって特別に勉強しなくても大丈夫だわな」

「普段からコツコツやってるからねー。模試も常に余裕のA判定だし」

「渚だって推薦で余裕だろ」

「ま、ね」

 渚は色んな部活から助っ人として引っ張りだこになるくらいのスポーツ少女で、水泳、陸上、バレー、バスケ、全てが全国レベルという紛う事無き天才である。胡座をかきながらも惚れ惚れするような背筋の良さが彼女の体幹の良さを物語っている。

「幼馴染みの俺も鼻が高い」

「どうでも良いけど友幸来たら勉強頑張んなよ。この勉強会は殆どマサキの為なんだから」

「わぁってるよ」

「また三人で同じ学校行きたいじゃん?」

「腐れ縁だよなぁ……」

 俺と友幸と渚は幼稚園からずっと一緒だ。それに加え……。

「お前と友幸も長いよな。中学の時からだからな」

「そだね。まぁ仲睦まじくやっとりますよ」

「だろうな。何かあったらまず俺が知るだろうしな」

「それもあたしと友幸同時に相談に来るだろうね。そん時はあたし寄りでヨロシク」

「やだよ面倒くせ」

「お、じゃああたし達に別れて欲しい? 一人だけ除け者にされて寂しかったか?」

 渚がからかうように肘を突いてくる。

「ばーか。そっちのが余計面倒臭いだろ。むしろ俺が気を遣ってたんだぜ? 祭りとかも二人で行けっつってんのにさ」

「一回二人で行ったじゃん。付き合って最初の祭り。でも二人だと違和感半端なくてさ」

「途中で呼び出されたよな」

「そうそう。オナニーしてたのに邪魔すんなって怒ってたよね」

「そりゃ怒るだろ」

「まぁでもそういう違和感出るのって、子供の時から三人一緒だったイベントだけだしさ。行ったこと無い場所とかなら普通にデートしてるよ」

「そいつは何より」

「あんたも早く彼女作ってダブルデートしようぜ。うりゃうりゃ」

 今度は肩をぶつけてくる。

「お前の取り巻きを紹介しろ」

「あの子達は……うーん、ちょっと特殊でない? いや良い子達ばかりだけどさ」

 渚は非常にモテる。特に後輩の女子から。百六十五センチという女子にしてはそこそこ高い身長。すらりとしなやかな肢体。ボーイッシュな髪型。パッチリしつつも鋭さを伴った凜々しい瞳。きりっと通った鼻筋に、薄く艶やかな唇。有り体に言うと渚は男装が似合いそうな美少女だった。

 年相応の可憐さを残しつつも、どちらかといえば麗しいという表現が似つかわしい容貌をしている。一切合切除湿された開放的な性格も、ギャップで彼女の健康美をより際立たせているようで、試合やらなんやらでは黄色い声援が飛び交う。ガチ告白もたまにされるらしい。

 勿論男からの人気も非常に高い。

 とはいえ俺にとっては一緒に風呂も入って連れションだってした事ある仲だ。当然小学校入る前の話だが。いや風呂は低学年まで入っていただろうか。どちらにせよ兄妹以上の目では見られない。

 友幸から渚が好きだと相談された時は、応援しながらも近親相姦に近い抵抗感を密かに抱いていた。今ではもう慣れたし、むしろ二人が男女として付き合っているのが自然にすら思っている。

「それにしてもマジで暑いな。明日にでも修理してもらわないと」

 額からしたたる汗を拭うと、ゲームを一時中断してシャツを脱いだ。

「あぁ、ずっる」

 渚も、俺が上半身裸になったくらいで恥ずかしがる事などしない。

 だからといって……。

「あたしも脱ご」

 流石にこの展開は予想していなかった。

「いやそれはどうなん? お前一応女だろ?」

「は? 家じゃマッパだけど?」

「ここ俺ん家ですけど」

「あたしん家みたいなもんじゃん」

 確かに、俺達三人は親も含め、家族の垣根がほぼ存在しない。正直友幸も俺が渚の裸を見たところで何も思わないだろう。俺達の間に男女という概念は存在しない。それにしてもどうなんだろうかと思うが、まぁ渚だしいいかという慣れと、こんな暑いのに自分だけ涼しくして申し訳ないという気持ちが俺を静観させた。

 俺が悩んでいる間に、渚は勢い良くポロシャツを脱ぎ捨てる。家で脱衣するような全くの気兼ねの無さだ。色気もへったくれもない。

「ん? どした? 見惚れちゃってる?」

「呆れてんだよ」

 渚のブラは薄ピンクでちょっとフリルがついていた。

「結構可愛いっしょ」

「確かに意外だわ。スポーツブラとかだと思ってた」

「イェイ流石マサキ。正解。こういうのは大抵友幸が選んでる」

「やっぱりな。あいつの好きそうな趣味だわ」

「つうかあんま人の彼氏とAV交換すんのやめてくんない? 友幸の部屋にある人妻モノって、絶対あんたのでしょ?」

「デリケートな部分をほじくるのやめてくれませんかね!」

「前付き合ってた人も年上だったしね」

「俺は過去を振り返らない。前しか見ない男なのさ」

「全然前見てないじゃん。横しか見てないんですけどぉ?」

 気がつくと画面は俺の操っていたキャラが渚に負けていた。

「あんまやらしい目で見ないでくれる?」

「自意識過剰なんだよクソドブスが。俺はオッパイ見てるだけだわ」

「あたしのオッパイだろが!」

「ちょっと喋んな。出来れば顔も隠しとけ。気が散る」

「あたしが大名なら即、切腹命じてるわ」

「しかしまたデカくなってね?」

「ん、そうかも」

「今何?」

「G」

 渚がブラ紐の位置を親指で整える。それだけでまるでメロンのような柔肉がぷるんと派手に揺れた。中身がパンパンに詰まった瑞々しい肌に汗が浮かんでおり、健康的なエロスに拍車が掛かっている。谷間に汗粒が流れ落ちていった。

「でもお前の場合はあんま大きいと邪魔になりそうだな」

「球技だと特にね。まぁ垂れたくないしサポーターとかでガッチリしてんだけどさ」

 渚はむしろ誇るように胸を突き出した。ブラに収まりきらない乳肉がむにゅりと零れる。

「……やべ、勃っちゃった」

「うわキッモ! マサキってあたしで勃起しちゃうわけ?」

「くそ……一生の不覚だわ。だが調子に乗るなよ。俺は断じてお前に興奮したわけじゃない。汗を掻いた爆乳に屈しただけだ。よってチンコ無罪を言い渡す」

 実際のところ、やはり渚に興奮したという意識は皆無だった。渚もそれがわかってるから、こうも無防備でいられる。渚はガサツだが、異性に対しての品位は極めて普通で、どんなに親しくても下ネタを口にされると引く。俺が家族扱いなだけだ。

「勝手に判決出すなや。ていうかあんた、そんなんでこの後の勉強に集中出来んの?」

「ごめんちょっと抜いていい?」

 渚は大きくため息をついた。

「しゃあないな。ほら、シコんなよ」

 そしてやや前屈みになり、ただでさえ隙間の無い胸の谷間を寄せる。マシュマロのような肉の威圧感がむぎゅっと暴力的に盛り上がる。

「……いや、誰がお前をオカズにするっつった。部屋出てけって意味だよ」

「はぁ!? こんな炎天下に外で待ってろって? もういいから、ちゃちゃっと出しちゃってよ」

 ここまで言われて引き下がるわけにはいかない。

「後悔するなよ。俺の射精距離は友幸の比じゃないぞ」

「射程距離みたいに言うな。あと人の彼氏の射精把握してんな」

「中学の時はよく競争してたわ」

「聞きたくなかった」

 俺は立ち上がると下半身も裸になった。ぼろんと屹立したちんこが勢い良く顔を出す。渚が相手なので特に羞恥心も無い。セミの鳴き声がわずらわしいと思うほどの余裕があった。

「うっわ、でっか、キッモ」

「おやおやぁ。ビビってんすかぁ?」

「うっさいな。さっさと抜け馬鹿マサキ」

 確かにいつまでも全裸でポージングしていても仕方が無いので、自慰を始める。が、流石にちょっと気まずくて無言になる。

「……何か喋ってよ」

 渚も同様だったようで、胡座をかきながら俺を見上げてそう言った。

「オナニー中に何喋ればいいんだよ」

「いつもは無言でしてんだ?」

「当たり前だろ。般若心経でも唱えながらやれってか」

「ていうか男の人ってそうやるんだね」

「友幸の見た事ないのか?」

「あるわけないじゃん」

「でも突っ込まれてるわけじゃん?」

「馬鹿じゃないの」

 渚は下らない冗談を笑い飛ばしつつ、俺が扱くのを興味深そうに観察している。

「おっきくなったね」

「そりゃ勃起してるからな」

「そうじゃなくて、子供の頃からって意味」

「お前のおっぱいもな」

「何かポーズでも取った方がいい?」

「いや、そのままで充分抜ける。でも強いて言うなら……」

「言うなら?」

「渚もオナニーしろよ」

「きも。無理」

「じゃあ普段どうやってるか教えて」

「別に普通だよ。痴漢されてるところ妄想したり」

「それって普通なのか?」

「普通だよ。そういう女子トークすると無理矢理されてるところの妄想が一番多いもん」

「へぇ」

「ていうかまだ?」

「まだ」

「長くない?」

「普通だろ。友幸が早漏なんだよ」

「あぁやっぱりそうなんだ」

「早いだろあいつ」

「他に知らないからなぁ。でも丁度良いよ。別にセックスが好きってわけじゃないし。友幸と抱き合ってると超幸せってなる」

「しゃぶったりすんの?」

「フェラチオの事? ていうかそういう話二人でしてんのかと思った」

「しないなぁ」

「ふーん。あ、口ではするよ」

「じゃあ俺もして」

「無理。キモい」

「パイズリは?」

「胸でするやつ? あるんだけどやり方よくわからなくてさ」

 渚は両手を握って左右から乳房を押し上げるように寄せた。

「こうやってしておいて、友幸がおちんちん突っ込んでシコシコするのはよくする」

「マジか」

 やはり暴力的な肉の質量に目眩がする。大きめのメロンが二つ並んでいる。

「俺も突っ込んでいい?」

「……え~」

 フェラよりは抵抗感が少なそうな受け応え。このままでは射精がいつになるかわからないという焦燥もあったのかもしれない。

「まぁ、マサキが相手だし? それくらいならいい……のか?」と渋々了承する。

 俺や渚にとっては、彼氏持ちの友達に回し飲みを要求するくらいの感覚だった。それくらいに俺達の距離は近い。近すぎてほぼ立ち位置が一致している。手を離すと解放されたちんこが跳ね上がる。

「ヘソにつきそうじゃんそれ。ていうか本当に形とか大きさ全然違うよね」

「友幸のは普通だよ」

「そうなんだ。普通が一番さね。そんな大きいの痛そうで絶対やだわ」

「うるせえ、その胸まんこをヒィヒィ言わせてやんよ」

「マジキッモ」

「そのまま寄せてて」

「あいあい」

 一歩前に出て亀頭を肉の割れ目に押し当てる。渚は胸を寄せたまま俺を見上げ、からかうようににやりと笑みを浮かべ、小声で囁いた。

「挿入れていいよ……なんつって」

 改めて見るとシャープな顔つきで、見た目に関しては非の打ち所が無い。普通の男なら一発で恋に落ちるだろうが俺はちょっと事情が違う。

「ぶっさ」

「いいからさっさとシコれ」

「はい」

 渚の肩に手を置いて、腰を突き出していく。

 ぬぷっ、と音を立てて谷間に呑み込まれる。何とも言えない柔らかな圧迫感の中を、滑るように挿入していく。亀頭の我慢汁と胸の汗でにゅるにゅると潤滑に奥まで入る。

「んっ。全部入っちゃったね。てか先っぽがちょっと鳩尾に当たってるし。やっぱり友幸のより全然大きいね」

「俺のが全部見えなくなるとかすげーな」

「ほらほら動いた動いた。あたしからはしないからね」

「はいはい。そんじゃ早速……」

 腰を前後させる。流石に膣よりかは単調な感触だが、シルクのようなスベスベの肌はまた別の快感を生み出す。ニュルニュルと摩擦を鳴らしながら、そわそわジワジワと控え目ながらも甘美な痺れが背中を昇ってくる。

 何より特筆すべきはその圧倒的質量による圧迫。それはもはや抱擁と評する方が近い。乳房に自身を差し込んでは抜くという視覚的な効果もより勃起を促進させる。硬化した肉槍は柔肉の狭間で水音をより卑猥にさせた。

ぬぷっ、ぬぷっ、ぬぷっ、ぬぷっ。

「ちょっと、人のおっぱいでやらしい音立てないでよ」

「やらしいのはお前の爆乳だ」

「むぅ。あのさ、やっぱりこの胸って男子から見たらやらしい?」

「くそエロい。はっきり言って視界への暴力」

「やっぱりか。いやさ、教室でも結構視線感じるんだよね。自意識過剰かなと思ってたんだけど」

「渚は見てくれは良いからな。それに加えてその乳じゃ、そりゃ男は皆見る」

「今ふと不穏な事を考えてしまった」

「なんだよ」

 俺は腰を振り、渚は胸を寄せたまま普通に視線を合わせていつもと何ら変わらない様子で会話する。

「もしかしてクラスの男子って、あたしでオナニーしてたりすんのかなって」

「当たり前だろ。お前中学の時から男子投票のオナペットランキングで毎回断トツで一位だぞ」

「マジか」

「俺はお前に投票した事ないけど」

「あんたはどうせ先生とかでしょ。年上好きだもんね」

「正解」

「そっかー、皆あたしで抜いてんのかぁ」

「やっぱ嫌なもん?」

 汗で滑るのか、谷間を形成するための両手の位置を整えながら、渋面を作りながら俺の問いに答える。

「ん~。まぁ陰でやってくれる分には別にいいかな。口に出されたらマジで引くけど」

「俺もこのパイズリは今後オカズにしそう」

「だから口に出したら引くっつってんのに。まぁマサキだったらどうでもいいけど」

「一応許可取った方がいいかなと」

「はいはい。どうぞあたしのパイズリ使ってシコシコしちゃってください。ていうかさ……」

 渚は谷間に潤滑油代わりに唾液を落とすと、言葉を続けた。

「射精まだ? マサキのおちんちん熱くておっぱい火傷しそうなんだけど」

 淡々とそう言う。極めて上質な性的快感を伴っているというのに、二人して性的な行為をしているという意識が皆無である。欠片でもあれば友幸に対して悪くて出来っこない。

 俺も渚も普通の倫理観を持っている。友達の彼女なんて手を出さないし、渚だって友幸以外の男に身体を触れさせたりしない。ただ俺達は一緒に居る時間が長すぎた。互いを見る目に性別という項目が存在しない。

「もうちょい」

 足された唾液が絡まり、抽送音は、ぐじゅっ、ぐじゅっ、ぐじゅっ、と卑猥を極めた。

「本当? あたしの胸まんこ気持ち良い?」

「正直最高。こんなオナホ欲しい」

「なにそれ。まぁいいけど」

「マジでそろそろ出そう」

「ん、本当だ。ちんぽパンパンじゃん。もしかしていっぱい出ちゃう感じ?」

「そんな感じ」

「いいよ。パイズリオナホにいっぱい出しちゃいな」

 渚の口調はまるで、年の離れた幼い弟のトイレを世話をしているかの如く軽い。

「あぁ出る」

 渚の肩を掴む手がより激しく強張る。根元まで乳壷に突き入れる。駆け上がる射精感。抗えぬ快感。身体が震え、視界が白く染まった。谷間からビュルビュルと、勢い良く放たれた吐精の音が漏れる。

「やだっ、ちょっと。おちんちん暴れすぎ。んっ。こらっ、大人しくしろ」

 ビクビクと震える男性器を取り押さえるように、より強く左右から挟み込む。ただでさえ規格外の乳圧が精液を搾り取るように増す。

「それやばい。気持ち良すぎ」

 谷間から顔を出した鈴口が、少量の精液を噴水のように渚の顔に目掛けて放った。

「んんっ、もう、顔に掛かったんだけど」

「渚のパイズリが気持ち良すぎるのが悪い」

「そりゃどうもすいませんでしたね」

 渚はジト目で俺を睨みながら、谷間を上下にずらす動きをする。その度に最初の射精から勢いと量こそ減るものの、ドピュっと精液が跳ね上がる。

「やばっ、止まんないわ」

「なにあんた、溜まってたの?」

「最近一人でもしてなかったからな」

「じゃあこのまま全部抜いちゃいなよ」

 上下にずらす動きが大きくなる。精液と汗と唾液が混ざってにゅるにゅると独特の水音を立てる。元々の圧迫感が強いだけに、胸で扱かれているという感覚がより鮮明になった。

「あ~マジすごい」

「まだまだチンポかっちかちだぞ。ほら頑張れよ、男の子だろ」

 やはりからかうような口調と視線を俺に向けながら、乳の谷による上下動を繰り返す。にゅるにゅると扱かれる度に、昇り詰める精液もそろそろ打ち止めを感じる。

「もうちょい乳マンコ緩めて」

「ほい」

 下手な膣より余程高い圧から解放された男根は、最後の花火と言わんばかりに、びちゃっ、と谷間の中で渚の鳩尾目掛けて勢いよく射精した。

挿絵1

「ザーメン、全部出した?」

「おかげ様で」

「よし、お疲れ。うわ、べっちゃべちゃ。ブラ取った方が良かったかなぁ」

 その言葉通り、渚の首筋から鎖骨、乳房の間は俺の精液で白く染め上がっていた。ゼリーのような塊がヘソまで垂れ落ちている。

「こりゃクラスメイトに自慢出来るな」

「するな馬鹿。ていうかさ、あんたまだギンギンなんだけど」

 渚に指摘されて下腹部に視線を落とすと、自身はまだまだ物足りないと言わんばかりに臨戦態勢を崩していない。むしろ血気盛んに青筋を立てていた。 

「これは……あれだな」

「どれよ」

 渚が小首を傾げる。

「本番しないと収まらない系の勃起だわ」

「そんなのあるの?」

「男にはそういう時がある」

 しばし無言で視線を交わした。

「……それじゃあたしはそろそろお暇しますんで。はい」

 立ち上がろうとする渚の肩を押さえる。

「まぁまぁ。ゆっくりしていけよ」

「やだよ。目が恐いもん」

「こんなつぶらな瞳をつかまえて何を言うか」

「とか言いながらジーンズのファスナー下ろすのやめてくれませんかね」

「いや幼馴染みとしてさ、渚が未だに子供っぽいの穿いてないか心配でな」

「余計なお世話なんですけど」

 軽口を叩き合いながらジーンズを下ろすと、ブラと同じ色をしたフリルのショーツが顔を出した。

「上下お揃いとは感心だな」

「バラバラだと友幸に叱られるんだってば」

 更にジーンズを膝下まで下ろしていく。白く輝く太股はしなやかに伸びており、細いというよりは引き締まっている。機能美を内包したエロスに充ちていた。

 脱がしきると、ショーツに浮かぶ染みを確認する。

「濡れてんじゃん」

「マサキだってちんぽビンビンじゃん」

「パイズリで感じるとか痴女かお前は」

「感じてないっての。こっちは気持ち良いわけじゃないし」

「じゃあなんで濡れてんだよ」

 渚はふて腐れるように口を尖らす。

「だって、あんたのおちんちん挿入れたら気持ちよさそうなんだもん」

 問答無用で押し倒してショーツも一息で剥ぎ取る。

「お前陰毛薄いのな」

「こらこらこらっ。ちょっと待って。待ってってば」

 渚が途端に真面目な顔と声色で静止してくるものだから、流石にまずいかと思い直した。俺とした事が、このうだるような暑さで頭をやられていたらしい。相手は渚だぞ。夏の出会いを求める魔力は末恐ろしい。

 渚は大きくため息をついて、こう言った。

「……ゴムは着けてよ」

 相変わらず部屋は馬鹿みたいに暑くて、外は馬鹿みたいにセミが鳴いていて、俺達は馬鹿みたいに汗だくになっていた。そろそろ飽きを感じるほどに何度も繰り返した、馬鹿みたいな夏。そんな日常の中、俺の屹立した陰茎が、渚の割れ目を押し広げて埋没していく様子は、どう考えても非日常感に溢れているのだが、不思議と俺達の友人という関係からそれほど逸脱している行為には思えなかった。

「あっ、んん」

 概ね俺と渚が重なると、まるで別人のような悩ましげな吐息を上げる。友達の隠れた側面を目の当たりにした俺は、それを指摘するのもなんだか照れくさくて、腰を前後に振る。

「んっ……んっ……んっ……んっ……」

 大した前後運動でもないのに渚の乳房は派手に揺れた。仰向けでも山と表現して差し支えのない肉丘。

「あっ、ん……はぁっ、く……あんま、奥しないでよ」

「最後まで入ってねーよ」

 引き締まった肢体に豊満な肉付きならではの、高い密度で柔肉が詰まった蜜壷は、易々と根元までの侵入を許さない。何とも突き応えのあるピストンに舌鼓を打っていると、俺はあることに気付いてしまう。

「渚。携帯鳴ってるぞ。友幸からだ」

「マジで? だったら、んっん……腰止めろっての」

「無理。渚の中、気持ち良すぎ。腰止まんない」

 両膝を持って、ゆっくりと腰を前後する。ペースを上げるとすぐにでもイってしまいそうなほどに、渚の膣は締まりが良い上に絡みついてくる。ゴムを挟んでも否応無しに伝わる極上のヒダヒダ。

「あたしだって、マサキのおちんちん気持ち良いんだから、中断してくんないと電話出られないって」

「大丈夫だって。案外いけるもんだから。バレないバレない」

「根拠は?」

「エロゲ」

「死ね……あっ、あっ、あっ、奥、ダメだってば、マジでっ」

「弱い?」

「ていうか、そんなとこまでおちんちん入ってきた事ない……んっあっ、はぁっん……」

 ブラは外していないものの、少し身体を揺らせばたぷんたぷんと揺れる肉丘は、ブラのサイズも合っていないのか柔肉が拘束から逃れるようにずれて、薄桃色の乳輪と乳首が露出してしまっていた。

「痛い?」

 渚は首を微かに横に振る。

「でも、突かれる度にすっごくビリビリくる……あっんっ、馬鹿、言ってるそばからっ、あっあっ、それっ、あんっ、それだってばっ、あっはぁっ、あんっ、あんっ」

「気持ち良さそうじゃん」

「よくわかんないっ、あっあっ、いっあっ、いいっ、あっあっはっあっ」

「いいって言ってるじゃん」

「言ってないし」

「言った」

「言ってない……あっあっあっ、いっいっ、あっいっ、あぁっ、あっ、いいっ」

 渚はピストンの合間に「ふふ」と鼻で笑うと、「言ってるね」と認めた。そしてすぐに顔を蕩けさせる。

「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、奥っ、奥っ、だめっ、あたしそこ、弱いみたい、あっいっ、いいっ」

堪らないといった様子で俺に手を重ねてくる。その間もずっと渚の携帯には友幸の着信表示が続く。

「出た方がいいんじゃね。今向かってるとかだったり」

「あたし無理、普通に喋れる自信無い」

「抜いても?」

「無理……今はマサキのおちんちんで身体がくたくたになっちゃってる」

 確かに渚の声は、普段からは想像が出来ないほどに、甲高かったり掠れていたり、甘かったりしている。

「じゃあ俺が出るわ」

 渚は何か言いたげだったし、俺も思うところは無いわけではないが、このまま放置しておくにはリスクが高い。しかし渚のぎゅうぎゅうに詰まった肉壷は、一度挿入すると最後。射精するまでは絶対に抜きたくない魔性の快楽の坩堝なので、結合解除は到底容認出来ない。

「もしもし?」

 親の声より聞いたかもしれない親友の声。外見にまで溢れる器の大きさと、懐の深さに定評のある友幸は、当然のように生徒会長を務めあげ、そして引退した今も尚、生徒会からヘルプを要請されるほどに頼られ、そして誰よりも慕われている。校内での同年代は勿論のこと、商工会議所辺りに足を運んだとしても、友幸ほどの人望と豪胆さを兼ね備えた逸物はそうそう見当たらないだろう。

「ん、マサキか? 渚はどうした?」

「トイレ。多分でかい方」

「わっはっは。俺の彼女のトイレを覗くなよ?」

「するかよ」と応えながら腰はゆっくりと振り続ける。

 ただでさえキツキツの膣壁が、ぎゅっと手で握り込んでくるかのように締め付けてくる。気を抜くと女のように喘いでしまいそうなほどの快感。

 渚は片手で口を押さえながら、もう片方の手で俺の太股を弱々しくつねった。トイレ云々の嘘ではなく、抽送を止めろという抗議だ。少し動くだけで「ぬちゃぁ」と結合部の愛液が淫らに糸を引く音が出る。それが友幸に聞こえないかを危惧しているのだろう。

 それでも俺は腰を止める事が出来ない。健康美の極致とも言える渚の抱き心地の前では、自制心などまるで歯が立たない。

「仕事はあと一時間くらいで片付きそうだ。これも後進育成を全う出来なかった俺の不徳の致すところだ」

「面倒見が良すぎるんだよお前は」

 俺では持ち得ない強い責任感に、呆れと敬意をため息で示しながらも、渚の膣を堪能する。

「俺が言い出しっぺの勉強会なのに」

「いいよ。渚とゲームしてるから」

「そうか。じゃあまた後でな」

「おう」

 通話を切ると、渚が再び両手を重ねてくる。

「友幸なんて言ってた?」

「あと一時間だって」

「それまでに射精出来そう?」

「一時間どころか一分だってやばい」

「……あたしも」

「じゃあ一緒にイク?」

「うん……あっあっ、マサキのおちんちんで深いとこされるの、マジで頭じんじんする……」

 少しずつ加速していく。

「あっ、あっ、あっ」

 渚の嬌声も1オクターブ上がる。そして俺の手首をぎゅっと掴むと、少し申し訳なさそうに言った。

「……ていうかさ、あたし、中でイクの初めてなんだけど」

「え」

「だから、セックスでイクの、今まで一回も無かったから」

「……いいのか?」

 俺でいいのか、という意味は渚に充分伝わっている。俺も渚も、友幸を連想させる言葉は口に出さない。いくら互いに異性を感じてないとはいえ、いくらそれで性行為による罪の意識を薄めようとも、この状況で何も考えないほど鈍感ではない。ただ、なんとなく場の空気に流され、なんとなく目新しさを求める、なんとなく気持ちが良い事に惹かれた、どこにでも居る若者なのだ。

「良くないけど……ごめん、我慢出来ない。マサキのおちんちんでイカせてもらっていい?」

「わかった。動くぞ」

「……ん。来て。ゴムしてるから、中で出していいからね」

 築二十年の床が、頼りなさ気にギシギシと揺れる。

「あっ、あっ、あっ、やっ、おっき……すごく簡単に、奥まで来るよね、マサキのって」

「なぁ」

「なに」

「キスはOK?」

「……ダメでしょ」

「だよな」

「流石にそこは我慢しよ」

「了解」

「注文多くてごめん」

「いいよ。して欲しい事とかあったら遠慮せず言えよ」

「エッチの時は優しいんだね。流石、年上彼女持ち」

「元、な」

「なんで別れたんだっけ」

「海外留学したから」

「鍛えられてるよね。手つきとかさ。一々やらしさ半端ない」

「嫌じゃないだろ?」

「ぶっちゃけ、挿入した時からおまんこキュンキュンしっぱなし」

「渚は締め付け良すぎ」

「でもマサキだってそれがいいんでしょ? さっきからずっとおちんちんガッチガチじゃん。硬すぎだってマジで」

「否定はしない」

「……あのさ、エッチの注文、いいんだよね?」

「おう。何でも言え」

「……マサキの本気、味わってみたいかなって」

「つまり?」

「言わせたいわけ?」

「正解」

「うっざ」と言いつつも、渚は少し照れくさそうに笑いながら、掠れた声で囁いた。

「……奥まで届くマサキの勃起ちんぽで、あたしのおまんこ、目茶苦茶にして」

 一発で理性が飛ぶ。先程までの様子を窺うような性交が嘘のように、動物さながらに腰を打ち付ける。

「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」

 渚もセミに負けない声量でよがる。

「あっあっ、やっ、おっきっ♡ あっい♡ あっいっいっ♡ マサキの本気セックス、やっばいって、こんな、激しいの、あたし、あたし、あっあっあっ、すっごっ♡」

 乳房は爆ぜるようにブラから解放され、派手に上下左右に揺れる。

「イクっ、イクっ、友達のちんぽでイっちゃうっ!!!」

 腰が跳ね上がると同時に、膣が雑巾を搾るような収縮をする。事実搾り取られるように射精した。

 渚は数秒背中を反り返らせたあと、身体全体をひくつかせながら、「あっ……♡ あっ……♡」と蕩けきった顔を天井に向けていた。

 俺の射精は中々収まる気配を見せず、ようやく背中を床につけた渚と目が合う。普通の男で普通の関係なら、人生を賭しても手に入れたい雌の顔。美しくも愛らしく、その上官能的ときた。

「悪い。キス我慢出来そうにない」

「キスはダメだって……恋人エッチっぽくなるじゃん」

「じゃあ舌は入れないから。友達としてのキスってことで」

「なにそれ」

 いつの間にか、俺達の両手は指を絡めて繋がれていた。勢いに任せて顔を近づけると渚も目を瞑った。唇が重なる。一見すると薄い渚の唇は、プルプルと弾むように押し返す感触があった。

「なんか、今更マサキとキスとか、照れくさいんだけど」

「な」

「でも、キスも上手だね」

「鍛えられたからな」

「今度友幸に教えておいてよ」

「実践で?」

「実践で」

 性的快感での高揚は収まりつつも、ぴったり密着して抱き合いながらチュッチュッと啄むようなキスを続け、普段どおりクスクスと軽口を叩き合う。胸板で潰れる幼馴染みの爆乳はマシュマロのようにふわふわだった。

 比較的涼しい風が入り込む朝方とはいえ、夏も盛りな今の時期の体育館には否応無しに熱気が籠もる。床をつくバスケットボールの音が、覚醒したての頭には少々響くも、やけにリズムが小気味良いので不快にはならない。

「朝っぱらから良くやるよ」

 開きっぱなしになった扉から中を覗き込みながら、半ば呆れるように感嘆の声を漏らす。

「そういうお前こそ勤勉じゃないか」

 隣に立つ友幸が、俺の肩を叩きながら愉快そうに口角を上げた。

「俺は補習で強制的に学校来させられてんの! 夏休みなのに! 好きで来てるお前や渚とは違うの!」

「俺達だって自発的に来てるわけじゃない。後輩からの協力要請があるからさ」

 まるでアメコミヒーローのような笑顔を浮かべる。

「友幸はまだわかるけど、あいつは物好きだよな。ただの練習相手を買って出てるんだから」

「受験シーズンに入るとどうしても本気で身体を動かす機会が無くなるからな。ウズウズしてるんだろう」

「体育会系の考えはよくわからんわ。好きこのんで疲れたいもんかね」

 そう言いながらも、バスケに集中する渚の姿に、ついつい目を奪われる。その一挙手一投足全てが躍動感に充ち満ちていた。体育館に差し込む夏の朝の陽射しが、飛び散る汗を光らせる。これほど絵になる女の子はテレビの中にもそうそう居ない。

「見惚れてしまうな」

 友幸が顎をさすりながら言う。

「渚が飛んだり跳ねたりするところなんて、もう見飽きたよ」

 欠伸混じりにそう返した。

「同じ幼馴染みでも、友達と恋人という視点の違いによる見解の相違だな。しかし渚はどちらかというと可憐というよりは凜々しい目鼻立ちなんだが、一目で女性とわかるのはなんでだろうな。あの長い睫毛か? 小さい顔か? 薄くも艶やかな唇だろうか」

「いやあのバカでけー乳だろ」

「そうか。流石のマサキもあれには雄を刺激されるか。わっはっは」

「きもい事言うな。渚のはただの脂肪の塊としか見れんわ。ていうかお前、彼氏としてああいうのはどうなん?」

 俺が顎を突き出した先には、見るからに運動部ではない、ただの野次馬の男達がちらほら散見される。

「うむ。明らかに渚を視姦しているな。ただ盗撮をしているわけでもないので咎める事も出来ん」

「そりゃそうだが」

「渚が注目を集めてしまうのは仕方が無い。あれだけの器量だ」

「それノロケ?」

「客観的事実だ。何より渚本人が、男からの好奇が混じった視線を全く気にしない性質なのだから、俺がどうこう言っても仕方が無い」

「あいつ無自覚にも程があるよな。昨日お前が来るまで二人で遊んでたろ? そん時『もしかして男子ってあたしの胸見てる?』だぜ?」

「わっはっは。その辺は俺達との幼少期の影響があるのかもな。渚は男性女性という意識の隔たりが薄いんだろう」

「だから女にもモテる、と」

 見物客は男だけに留まらない。渚が練習に参加すると聞いてか、勇姿を一目見ようとわざわざ足を運ぶ女子生徒は、特に後輩が多い。

 一旦休憩に入ったのか、渚がこっちに気付いて駆け寄ってくる。

「友幸。マサキ。おっはよ!」

 真夏の高い空より青々しい爽やかな笑顔。

「お疲れ様だな」

「友幸もね。生徒会のサポートまだ掛かりそう?」

 そう問いながら友幸の手を取り、指先をちょこんと摘まむ。なんだかんだでこういうところは年頃の女の子といった振る舞いをする。

「そうだな。帰るのは夕方になりそうだ」

「また? そりゃ大変だ。マサキの補習は何時ぐらいまで?」

「おい、なんで何も聞かずに補習って決めつけた」

「それ以外にあんたが夏休みの学校に来る用事無いじゃん」

「確かに。昼前には終わる」

「じゃあ仕方無い。最後の夏休みなのに彼女も居ないマサキ君の為に、あたしが一緒に帰ってあげよう」

「おい友幸。彼氏として責任とって、このクソドブスの口をどうにかしろ」

 俺の悪態に友幸が「わっはっは」と高らかに笑い、「誰がクソドブスだ」と渚が膝を蹴ってくる。飽きるほど繰り返したテンプレ。なのにいつまで経っても心から楽しめるのは不思議だ。

 渚と二人の帰り道。歩きの俺に付き合って自転車通学の渚は自転車を押して歩く。相変わらずセミが耳をつんざくように鳴いている。

「補習どうだった?」

「普通」

「ちゃんと集中してる? マサキだけ浪人とか笑えないからね」

「わ~かってるって。うっさいな」

「お尻叩かないとあんた動かないでしょ」

「お前らがアクティブすぎるんだよ」

「昔は虫採りでもマサキが率先してたのにね」

「忘れたよ」

「いつも我先に歩くからさ、よく川に落ちたりしてたよね」

「過去は振り返らないようにしてるんだ」

「あの時のマサキの顔ったら……ぷっ……あっはははは」

 記憶に残る俺の顔が相当面白いのか、渚は腹を抱えて笑う。

 俺が憶えているのは、俺だけビショ濡れで可哀相だからと、躊躇無く川に飛び込んできた友幸と渚の姿と、そのまま川遊びではしゃぐ皆の笑顔だった。

「そんで三人一緒に怒られたっけな」

「そうそう。そんであたしだけ泣いちゃってさ」

「昔はよく泣いてたよな。お前」

「泣き虫さんでしたねぇ」

「そういや最近、渚が泣いたとこ見た事ないな」

「今は友幸とマサキが涙脆すぎなんだって。映画とかテレビでも、隣であんだけ号泣されると冷めるわ」

「そこは『感受性豊かな男って素敵。抱いて!』ってなれよ」

「はじめてのおつかいで泣くような軟弱な男に抱かれたくないわ」

「いや昨日抱かれただろ」

「はっ。それもそうだった」

 渚は気づく様子をおどけてみせた。

 俺と渚が昨日の事に触れるのはこれが最初だった。本来なら不発弾のように扱われるネタなのだろうが、俺も渚も全くの平常心であった。

「友幸にも抱かれてるし」

「友幸は流石にはじめてのおつかいで泣かないし。あれで泣くのあんただけだし」

 渚は愉快そうにくつくつと笑いながら歩を進めると、言葉を続けた。

「そういえばさ、昨日あたし達セックスしたんだよね」

 改めて確認するみたいに言う。

「したな」

「やばくない?」

「やばいな。何がやばいってビックリするくらいお前を見る目が何も変わらない」

「本当それ。ちょっとくらい気まずくなったり意識したりするのかなって思ったんだけどさ」

「完全に杞憂だったな」

「だね。惚れられたらどうしようって思ったのに」

「整形してから出直してこい」

 渚の貫き手が脇腹に刺さる。

「どーせ可愛い気無いですよ」

 中学の頃から、毎年男子間で密かに行われている美人ランキングで常に投票ぶっちぎり一位なのは黙っておく。しかし渚も自分をブスだとは思ってないだろうが、上の方だとも本気で思ってなさそうだ。友幸の言う通り、内向き外向き関わらず、物事を見る目に性というフィルターがあまり掛からないのだろう。

「でも相変わらずお前の取り巻きすごいよな」

「ん~。流石にちょっと恥ずかしいんだけどね」

 何事もなかったかのように話題が移り変わる。別に無理矢理変えたわけじゃない。俺達の間では、その程度の関心しか示さないというだけ。

「あの一年のポニーテールの子、結構好みなんだよな」

「はいはい紹介しろって言うんでしょ」

「おなしゃす」

「年下気に入るとか珍しいじゃん」

「ま、たまにはな?」

「なに選り取り見取り出来る男みたいな雰囲気出してんのよ。あんたモテないでしょ」

「現実を突きつけるな」

「それに受験なんだから、恋愛にうつつ抜かしてる場合じゃないでしょ」

「だから現実を突きつけるな」

「それじゃあお昼ご飯食べたら、あんたん家行くから」

「わかった。そういえばクーラー直ったぞ」

「良かったじゃん」

 拍子抜けするほど何も変わらない日常。


「これ本当にクーラー直ってる?」

 渚は制服からタンクトップにホットパンツという軽装に着替えていたが、それでも部屋に入ると少し暑そうに顔を歪めながら、「はい差し入れ」とペットボトルのジュースを差し出してきた。

「元々古いからなぁ。パワー不足は寿命かな」

「まぁ無いよりはマシだけどさ。そんじゃ今日の補習の復習しな」

「はい」

「あたしゲームやってるから。終わったら声掛けて」

「はい」

 カチカチとゲームをする渚の背中に、ちゃぶ台で勉強しながら声を掛ける。

「お前何しにきたんだよ」

 思わず突っ込む。?「見張り」

「お疲れ様です」

 納得したので労を労う。

「うん」

 黙々と勉強する。暇さえあれば無駄口を叩き合っている仲だが、沈黙が続いても全く気にならない。

 三十分くらいは経っただろうか。渚はゲームに没頭している。それでもやはり暑いのか、首筋から玉のような汗が浮かんでいた。

「お前さ、その服外で着ない方がいいぞ」

「なんで」

「ブラ紐全然隠れてねーし」

「家でしか着ないから大丈夫」

「あれおかしいな。ここ俺の部屋なんだけどな」

「半分あたしん家みたいなもんでしょ」

「黒か」

「黒だよ」

 だから何と言わんばかりの平然とした受け応え。

 気分転換に立ち上がって背伸びをして、首を回すと、渚を後ろから抱きしめるように座った。

「暑いんですけど」

「休憩くらいさせろ」

 そう言って、胸を下から支えるように揉む。

 渚は意にも介さずゲームを続ける。

「あ、揉んでいい?」

「聞くの遅くない?」

「あーでかい」

「んー」

「手じゃ収まらないからな」

「んー」

 どれだけ強く指が沈むように揉みしだいても、水風船のような弾力が指をいとも容易く弾き返す。

 正面からだと底が見えない谷間も覗き見えるので、視覚的な刺激も強い。

「てかこれ休憩になるの?」

「おっぱいは男の、最初で最後の安息地なんだよ」

「でもあんた脂肪の塊とか言ってなかった?」

「あ、聞こえてた?」

「あたし集中すると周りに意識いっちゃうタイプだからね」

「知ってる」

「どうせ聞こえるように言ったんだろうけど」

「正解」

 昨日の事があったので、変な目で見てないとアピールがしたかった。渚もそこはわかっている。親友ならではの以心伝心。

「で、その脂肪の塊でおっきくなってる何かが、背中に当たってるんですけど?」

「すいませんでした。渚さんのおっぱいは即勃起するくらい魅力的です」

「よし。許す」

 許されたので無言で揉み続ける。

 タンクトップの裾から手を突っ込み、中でブラ越しに揉む。肌はじっとり濡れていた。ただでさえスベスベの肌が余計に瑞々しさを得る。

 渚は不意にメニューボタンを押してゲームを中断すると、首を後ろに倒して顔は前を向いたまま呟いた。ゲームは明らかにキリの悪いところだった。

「……する?」

「いい?」

「……ん」

「じゃあ……する」

 セックスの導入に関してはどちらもまだ手探りで、間合いを計る。俺と渚の間で、こんな遠慮がちなやり取りをする余地が残っていた事に驚いた。

 渚は俺に胸を揉まれながら、黙々とホットパンツだけを脱いだ。

 そして座ったまま身体を反転させて俺と向き合うと、タンクトップの裾に手を掛けた。俺はジーンズを下げながら、黒いブラを纏った爆乳が目の前にぼろんと差し出されるように揺れたのを見ていた。

「すっげ」

 思わず声に出る。

「やっぱこれG以上あるって」

「そうかな。わかんない。マサキは大きい方が好きなの?」

「見ての通りです」

 俺につられて渚の視線が落ちる。トランクスに張ったテントを見て渚は小さく笑った。

「よしよし。もう少し我慢しようね」

 子供をあやすように、その天辺を手の平で撫でる。

 渚と目が合う。

 どちらからともなく唇を押し付け合った。

 ちゅっ。

 もう一度。

 ちゅっ。

 舌は入れない約束。

 互いの唇の感触だけを確認し合う、親愛の証の延長である友達キス。

 それだけでも俺の男根に血液が凝縮される。

 渚の手が優しくテントの柱を握る。

 俺と鼻先がぶつかりそうな距離で目を合わせたまま、「……もうちょっとであたしの中に入ってこれるからね」とやはりあやすように言った。

 悔しい事にそれが可愛かったので、今度は明確に俺から唇を奪う。

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。

 キスをしながら、渚の両手が俺のシャツのボタンを上から外していく。

 脱がし合いっこで多少身体が上下するが、なるべく唇は離れないよう二人で協力しながらキスは継続する。

 渚の両手がボタンを外し終えて、そのままシャツを脱がしに掛かる。俺も渚のショーツの横紐に指を掛ける。

 互いに脱がしやすく、それでいてキスが続けられるように、言葉を交わさずとも二人で膝立ちになる。

 シャツとショーツがほぼ同時に脱げると俺はトランクス、渚はブラだけとなる。

 唇を啄み合いながら、俺の右手と渚の左手が指を絡めて握り合い、俺の左手は渚の胸をブラの上から揉み上げ、渚の右手が俺の胯間をトランクスの上からさする。

挿絵2

 それから、俺の両手は渚の腰に、渚の両手は俺の肩にそれぞれ添えられた。

 目を瞑り、ちゅっ、ちゅっ、と二回キスをする。そして唇を強く押し当てると、ちゅうううう、と長く深く唇を吸い合う。あくまで舌は入れない。友達としてのキス。

 口を離し、瞼を開けると、「……挿入れたい」、「……欲しい」と同時に口にする。

 照れくさくてはにかんだ後、ちゅ、ちゅ、ちゅ、と三回啄み合う。

 それから俺が首筋にキスをし、渚がトランクスを下ろして屹立した陰茎を手の平で包んで撫でる。

「バックでいい?」

 鎖骨を甘噛みしながら尋ねると、渚が「ん」と別人のような儚い声を出す。

 そのまま下に向かってキスをしていく。ブラを少しずらして、薄桃色の乳首を口に含み、そして優しく吸った。

「はっん……」

 渚が肩を丸める。陰茎を握る手にも力が入った。もう片方の手で俺のうなじを弱々しくもぎゅっと掴み、「……マサキ……お願い」と言いながら、肉槍を求めるように強く握った。

「四つん這いになって」

 俺の指示に従い、渚がベッドの上で肘をつき、腰を突き上げる。その間にゴムの装着を完了した俺が、渚の背後に移動する。

 亀頭を膣口へ照準を合わせ、陰唇に沿って上下に動かすと、渚の腰が悩ましげに揺れた。膣口は既にぐしょぐしょに濡れていた。

「じゃあ、挿入れるんで」

 繰り返すが、断じて渚を異性として意識はしてない。してないが、単純に照れくさいのは別問題として残るので、なんとなく茶化したような口調をしてしまう。

「お願いします」

 その辺は渚も一緒だったようだ。

 まるで処女のように綺麗な秘裂が亀頭で押し広げられる。そのままむにゅりと形を変えて男根を呑み込んだ。

 渚の膣は相変わらず締まりすぎなほどに締まり、その所為でぴっちり吸い付いてくる膣壁は、襞を備えているものだから、思わず顔をしかめたくなるほどに気持ちが良い。無警戒に何度も往復すれば、たちまち射精に導かれるであろう事は想像に難くない。

 その上、「んっ」と普段とは百八十度違う、可愛げのある声を出すものだから、余計にちんこに悪い。

「動くぞ」

「ゆっくりね……マサキのおっきぃんだから」

 慎重に腰を前後させる。渚の背筋に緊張が走る。両手も拳を作っていた。

 にゅる、にゅる、にゅる、とスムーズに摩擦するが、その実、やはり内部では肉槍がしっかりと肉壷にホールドされ、その上締め付けられるという事態に陥っているので、具合が良い事この上無い。

「あっ……あっ……んっ……あっ……」

「はじめてのおつかいで泣くような、貧弱な男にまた抱かれてるけど」

 渚が小さく笑う。

「貧弱とか言ってすいませんでした」

 微かに速度を上げる。

「あっ、あっ、んっ……マサキのセックス、すごく強い……」

「背中、汗びっしょりだぞ」

「……エッチって結構汗掻かない?」

「まあな」

「んっ、あっ……はぁっ、あっ……あっ……あっ」

 徐々に結合部が奏でる音に、粘り気が増していく。

 ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ。

 愛液が白濁し始めた頃、渚が口を開く。

「……あのさ、バックやめない?」

「なんで?」

「流石におちんちん、奥まで来すぎ」

「でもお前、奥突くとえろい声出すじゃん」

「マサキ相手にそんなん出すわけないでしょ」

「セミが煩くなかったら外まで聞こえてるぞ。セミさん達に感謝しろ」

「だから出さないって」

 スポーツ少女らしい美しく引き締まった背中と腰を、見下ろしながら突いていると、相手が幼馴染みとはいえ征服欲に駆られる。

 無駄な肉がそぎ落とされた臀部はしっかり安産型で、桃尻と呼ぶに相応しい形状と質感を兼ね備えている。両手でがっちり掴んで腰を叩き付けると、パンパンパンッ、と軽妙な音が鳴り響く。

「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」

「ほら」

「……別にえろくはないっしょ」

「えろいし。余計勃起するし」

「……あたしの喘ぎ声で硬くするとか引くわ……あっあっ、はぁっ、あんっあんっあんっ、あぁ、いっあ」

「そんな可愛い声出されて興奮しない方がどん引きだろ」

「可愛く、ないし……あっあっあっあっあっ!」

 背後からでも、横にはみ出した乳房が派手に揺れているのがわかる。

「お前って本当背中綺麗なのな。てかやっぱ細いな」

 こういう時は流石に女だと頭では納得する。反応するのは下半身だけだが。

「自分じゃわかんないよ……んっんっ、あっあぁっ」

 身体を繋げ、言葉を交わしていくうちに、快楽が照れくささを覆い隠し、遠慮や恥じらいを誤魔化していく。

「ピストンさ、深く大きくと、浅く細かくだったらどっちが好き?」

「どっちも好きだけど」

「どっちもってのが一番困るんだけど」

「だってマジでどっちも好きなんだもん」

「友幸の時はどうしてんだよ」

「友幸はあんまりバックしない」

「じゃあまずは深いのな」

 パンっ、パンっ、パンっ。

「あんっ、あんっ、あんっ」

「どう?」

「……やだっ。奥突かれると頭の天辺まで痺れて、感じすぎちゃう。あと、マサキのおちんちん長いから、抜いたり刺したりがはっきりわかってエッチすぎる」

「じゃあ浅いの」

 入り口辺りをクチュクチュクチュと、カリで執拗に擦る。

「こっちもやだっ……同じとこばっかり擦らないでっ、あっあっあっ、これ、切なすぎるよ……もっとおまんこに欲しくなっちゃう……」

 渚は身悶えするように綺麗な背中を捩りながら、はぁはぁと乱れた息遣いのまま言った。

「……マサキが気持ち良くなれるように腰振れば、それでいいよ」

「結構いじらしい事言うのな」

「だってセックスってさ、相手が気持ち良かったら、自分も気持ち良くなれるじゃん」

 そういう気持ちは当然俺にも有る。渚が気持ちよさそうな声を上げれば、俺も気持ちが良い。

 ただし俺達のセックスに気遣いや愛情なんて介在しない。互いの身体にどっぷり浸かってはいるが、相変わらずそこには異性として見る目は皆無である。スポーツのようなセックスとは言い得て妙で、俺も渚も相手の身体を使って快感を分け与えているだけだ。それは慈愛ですらなく、チームワークの感情に近い。

「だから、マサキはあたしのおまんこでいっぱい気持ち良くなって」

 こういうのはターン制なので、今回は俺が渚の申し出に甘んじる。

「わかったよ。俺の好きなやり方でさせてもらうな」

「んっ。いいよ」

 ぴったり根元まで結合し、腰を叩き付けるというよりかは、腰をくっつけたままガツガツと渚ごと揺らすような動きをする。

「んっんっふっ……こういうの、好きなんだ……あっあっんっん」

「どう?」

「あっ、あっ、あっ……これ、すごいね……奥にめっちゃ刺さる……」

「好きな感じ?」

「わかんない、こんなの初めてで、やっあっ、はぁっあっ、んっんっ、あぁっいい……かも……あっすご」

「もうちょい強くするな?」

「う、うん、わかった……でも奥はあんまグリグリしちゃ……あっあっ♡ ダメっ言ってんじゃん馬鹿っ、あっあっあっあっ! ちょっ、こらっ、マジで奥グリグリは反則っ、んっくっ、うっあっ、あっあっひぃ♡ 待って待って待って! マジで待って!」

「好きにやっていいって言ったろ」

 あまりに切羽詰まった声を上げるのでピストン中断。

「……前言撤回。グリグリはダメっ」

「めっちゃ喘いでたけど」

「だって子宮降りてきちゃったじゃん」

「それダメなん?」

「だめでしょ。マサキのおちんちんで赤ちゃん欲しくなるのは、ルール違反じゃない?」

 別にちゃんと話し合ったわけではないが、俺と渚の間では既に暗黙の了解が複数存在し、尚且つその殆どが一致している。友達キスもその一環だ。長年の腐れ縁が、自然と価値感を摺り合わせる。

 渚は振り返り横目で睨む。

「それとも何? あんたもしかして、あたしで子供作りたいわけ?」

「ぞっとするわ」

「でしょ? だからパンパンって感じでよろしく」

 ゴムしてるんだけどな、という無粋な突っ込みはせずに、言われた通りに、奥ではなく膣壁を摩擦するようなピストンに切り替える。

 パンッ、パンッ、パンッ。

「あっ! あっ! あっ!」

 パンッ、パンッ、パンッ。

「あっ、あっ、んっあ……こっちのが、セックスって感じするよね」

「さっきのは何だよ」

「子作りエッチ? わかんないけど……あっ、あっ、いいっいいっ、あんっ、あっいっ♡ あたしとマサキはこっちでしょ」

「まぁ、確かにこっちのが気持ち良いか」

 渚の蜜壷は非常に締まりが良い上に単調な構造ではないので、長いストロークをすると男根全身で悦楽の極みを味わう事が出来る。

「でしょ? んっんっんっ、あぁっ、はっあっ、あっあっ♡ ほら、もっとあたしのおまんこでシコシコして、おちんちんに沢山ザーメン溜めなよ。いっぱい出た方が気持ち良いでしょ?」

 恋人とのセックスとはまるで違い、互いの自慰を協力し合っているような交わり。両者とも快感による性的高揚はあるものの、それ以外の感情は混じらない。

「もう充分溜まってるんですが」

「じゃあ出しちゃう?」

「いい?」

「どうしよっかな……んっ、んっ……もうちょっとして欲しい気もするし」

「出したい。お願い」

「と言いつつ禁止したはずの『奥にグリグリ』するのやめてくんない?」

「焦らされてるから、ちんこが一人でに動いちゃうんだよ」

「ていうか、男なら勝手に腰振ってビュービュー出せば?」

「いやほら。やっぱり大切な幼馴染みで親友だし? 一人で勝手にイクのはよろしくないかなと」

「じゃあ許可する。イっちゃえ」

「そもそも、さっきから自分で腰振ってるよね」

「……だって欲しいんだもん」

「何を?」

 露骨におねだりを要求するような口調で尋ねる。

「うっざ」

「何を?」

「マジできもい」

「な、に、を?」

「……マサキの逞しいおちんぽください」

「友人の頼み事なら仕方無いな」

 パシンっ、パシンっ、パシンっ。

「あっ! あっ! あっ! やばいっ、マサキ……」

「なに?」

「……もっと、おまんこメチャクチャにして欲しいです」

 茶化す敬語ではなく、ガチの嘆願。応えてやらねば友達でも男でもない。

「あっあっあっあっあっあっあっ♡」

 後先を考えないピストン。

「やっあっ♡ すごいっ、はげしっ♡ あっあっい、マサキのおちんちん、強い♡」

 射精の気配を感じる。

 俺は昂りの勢いに任せて、ダメだとわかっている質問をする。

「最後だけゴム外すの有り?」

「絶対無し」

 即答だった。先程までのよがりが嘘のように拒絶された。

 しかし同時に、「んっ、あぁっ♡」と全身を震わせ、膣がぎゅうううっと更に締まる。

 渚がひぃひぃと肩を上下させながら言う。

「……ほら、マサキの生ちんぽ想像しただけで軽くイッちゃったじゃん……」

「知らんがな」

 ピストンを続行する。

「あんっ! あんっ! あんっ! あんっ!」

 一層甲高い声を上げた。

 下の口から垂れ出る涎が、シーツに染みを作っていった。

「すげーぐちょぐちょ」

「んっんっ……そりゃこんな気持ち良いおちんちん、生でハメたいとか言われたら、濡れちゃうってば……あいっ、いっいっ、んっあぁっ♡」

「子宮口もガッチリ亀頭咥えこんできてるしさ」

「バカっ、言わないでっ、あっあっいっいっ♡」

「ルール違反じゃないっすかね?」

「……うっさいな。友達セックスなのに子作りモードにさせるあんたのちんぽが悪い」

 俺も限界なのでラストスパートに入る。

 渚の背中がぐぐっと反り返り、肩甲骨が寄る。汗で艶かしく輝く背筋が、より色気を増した。

「あっあっいっ♡ いっあっ、あっひ♡ あぁっ、イクっ、イクっ、これ、イっちゃうっ! イクイクっ! マサキ、あたしイっちゃうからねっ!」

「俺ももう少しだから」

「……じゃあ一緒にイく?」

「我慢しなくていいぞ」

「やだ……待つ」

「なんでだよ」

「なんでって……友達じゃん」

 水くさいと言わんばかりにそんな事を言う。

「わかったよ。ていうかこんな事言ってる間にもう出そうだわ」

「んっ、オッケ……じゃああたしも遠慮無く……んっ、んっ、はぁっあ……マサキのおちんちんで……あっあっあっ! あっイク♡ あっイク♡ マサキ、一緒に、あぁ、イック♡」

 最後の最後だけ、禁止された奥にグリグリと押し付けるピストンをする。亀頭が何かに突き当たり、持ち上げるような感覚。先端がぐにゅりと何かに包まれる。

「バカっ、だめっ、そんなとこに勃起ちんぽ刺したらダメっ!」

 射精を目前に控えたらそんな声は届かない。気にせずグリグリ押し付けてズンズンほじくると、渚が今日一番のはしたない声を上げる。

「あああっ♡ あああっ♡ あああっ♡」

 ほぼ同時に渚のしなやかな身体が収縮すると、ぎゅうぎゅうに詰まった肉壷に、更に外側から手で握り込まれたような圧迫感が襲う。

 俺も渚の尻肉を力いっぱい握りしめて果てた。とてつもない勢いで吐精する。ビュルルルルルっ、と渚の腰肉を伝って震動が伝わってきた。

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ 一番奥で亀頭と深いキスしちゃってるから、ゴムしててもザーメンで子宮口火傷しそう……」

 渚がとろんとした声色でそう言った。

 俺はあまりの至福に返事が出来ず、しばらくは根元まで挿入したままビクンビクンと射精の余韻に浸る。

「……ゴムの先っぽ破れないか不安になるくらい出てますけど……」

「抜いた方がいい?」

「……いいよ別に。どうせならマサキが出したいだけおまんこ使っちゃって」

 なんだかんだで渚は俺に甘いところがある。それは俺も同じなのだが。

 相変わらずセミが煩いし、汗でべっとりだが、不思議と不快ではない。

 渚は四つん這いのまま、「マサキとエッチすると本当良い汗掻く」と満足気に呟いた。

 俺はそんな渚を後ろから貫き、小さく腰を前後して、尿道に残った精液を処理しながら「俺とのセックスは部活かよ」と突っ込む。

「そんな感じかも。部活引退してモヤモヤしてた部分がすっきりするし……ていうか……んっ、んっ……イった後に中を擦られるのくすぐったいんですけど」

「お前が好きなだけ出せっつったんだろが」

「でも、マサキのおちんちん、全然ちっちゃくならないんだもん……んっあっ♡ まだカチカチにかったいしっ、セックス用の気持ち良い勃起ちんぽのままでっ、あっやっ、はぁっんっ、こらっ、いい加減大人しくしろってば、あっあっあっ♡ 早く全部ザーメン抜いてくれないと、あっ♡ バカ、ほらっ、またイっちゃうじゃんっ……あっあっあんっ、あっ♡」

 友達と過ごす夏休みの昼下がりの時間は恋人のそれとは違い、甘酸っぱさとは無縁だが、渚とたっぷり肌を重ねた後の部屋の匂いは、子供の頃に三人で飲んだ瓶ソーダの味を思い出させた。

「一汗掻いた後のコーラは堪んないね」

 渚が全裸のまま仁王立ちでグビグビと豪快にペットボトルを飲み干していく。コンドームを括りながら、その姿に感服していた。今更こいつに見惚れるなんて事はないが、その日本人離れしたメリハリの利いた肢体は無意識に生唾を呑み込ませる。

 腰回りから太股はムチムチとダイナミックな肉付きをしているのに、お腹はしっかりとくびれており、ふくらはぎなんかもキュっと引き締まっていて細い。そしてやはり特に目がいくのはたわわに実った胸部。全てが美しく、健やかな曲線を描いている。色気を感じさせない振る舞いを、逆にエロティックに映らせてしまっている。

「ん? どしたの? マサキも欲しい?」

「体育会系が炭酸一気飲みはまずいんじゃねーの?」

「引退してんだから硬い事言わないでよ。現役時代は結構ストイックに我慢してたんだしさ」

「太るぞ」

「かな? ぶっちゃけマサキから見て部活辞めた後のあたしって太った? ジョギングとかは欠かしてないんだけどな」

 手の平でお腹をすりながらそう尋ねる。

「お前の腹なんて興味ねーよ」

 実際、以前から渚の体型を注視したことなどないが、変わらず洗練されたスタイルを維持しているのは称賛すべきところだ。全身にうっすら汗を纏ったままなのが更に健康美に拍車を掛けている。

「でもやっぱり、胸はなんかおっきくなった気がする」

「だろうな」

「成長が断言出来るって事は、やっぱり前からあたしのおっぱい凝視してやがったな」

「違うわアホ。お前Gカップって言ってたけど絶対それGじゃないだろ。いつからちゃんと計ってないんだよ」

「え、そっかな。精々半年くらい前だと思うんだけど」

「明らかにブラのサイズが合ってないだろ」

「確かに。ちょっときついんだよね」

 ペットボトルに残ったコーラを飲み干そうと胸を張った。まさにメロンのような形の良い乳房が惜しげもなく揺れる。

 渚は二本目を手に取ると、「マサキも飲む?」と指で摘まんでブラブラと揺らした。

「ていうかそれは元々俺の分だろ」

「ちょっと頂戴」

「ちょっとだぞ」

「サーンキュ……んっ、んっ、んっ」

「ちょっとだっつってんだろ。何グビグビ飲んでんだ」

 立ち上がってゴミ箱にゴムを投げ入れるついでに、渚の膝裏に軽く蹴りをいれる。

「男のくせに細かいんだから」

「お前が女のくせにガサツなんだよ」

「そのガサツな女で勃起するくせに」

「顔と身体だけは良いからな」

「谷間好きだもんねマサキ。どうだほら。んん? またしたくなっちゃう?」

 小馬鹿にするような声色と笑みをさせ、やや前屈みになり底の見えない谷間を形成する。

「まぁまぁだな」

「上から目線でモノ言いながら元気にならないでよ」

 再び背筋を伸ばして笑う渚の胸を、真正面から粗雑に揉みしだく。

「めっちゃ弾むよな。お前の爆乳」

「人のおっぱいで遊ばないで欲しいんですけどー?」

 両手で弄ぶように揉む。手の平に乗せて下から持ち上げたり、鷲掴みして上下左右にこねくり回す。

「指が沈む沈む」

「好きだねマサキも。ま、あたしもマサキのおちんちん好きだし? 人の事言えないけど?」

 渚は左手を腰に当て、右手で俺の半勃起状態のちんこをそっと握り、優しく扱きだす。

「色の薄い乳首ってエロいよな」

「知らないよ。同意を求めるな。でもどうなんだろ。友幸もあんま触ってこないってのも関係あるのかな」

「あいつは尻派だからな」

「わかる! ずっとお尻触ってるの友幸って。ずっと胸ばっかの誰かさんとは大違い」

 裏ピースでちんこを挟んで前後しながら、時々親指の腹でくにくにと先端を刺激してくる。

「こんな、人生で一回拝めるかどうかの大物を前にしてスカしてられるかよ」

「大袈裟すぎ。ていうかさ、マサキのおちんちん、完全復活するの早くない?」

 その言葉通り、俺のちんこはびきびきと音を鳴らすように仰角を上げていた。それに伴い、渚の扱く手つきも変わる。手の平で握りしめ、しゅっしゅっとリズミカルに摩擦する。

「渚のエロい身体が悪い。ていうかお前も濡れてるじゃん」

 胸しか愛撫していないのに、内股をとろりと粘液が伝って落ちている。

「マサキのエロいちんぽが悪い」

 愛液を流してるのは渚だけではない。渚の手中のちんこは、既にニチャニチャと卑猥な音を奏でていた。

 渚はあくまで片手を腰に当て、背筋を伸ばして堂々とした立ち姿のまま口を開く。

「なんでこんな我慢汁垂らしてんの?」

 ニチャニチャ。

「渚にハメたいから」

 ニチャニチャ。

「ふーん」

 手コキが止まると、渚は背伸びをして唇を押し付けてきた。

「じゃ、もう一汗掻く?」

 二人していそいそとベッドの乱れたシーツを直す。俺も渚ももうセックスの事しか頭にない。

 俺が先にベッドに腰掛けると、「すいませんその前にフェラチオいいっすか?」と尋ねる。

「ゴム着けてたらいいよ」

「じゃあお願い」

「はいはい」

 渚は俺の足の間に腰を下ろすと、ゴムを咥え、被せるように亀頭へ唇を押し付けてきた。根元近くまで咥えこまれると生暖かさに包まれた。顔を引くと半透明の黒色の皮膜が男根を覆っていた。

「いつもそうやってゴム着けてんの?」

「結構上手いでしょ? 友幸直伝だよ。でもマサキの大きいからちょっと難しかった」

 そして根元の裏筋から丁寧にキスをしていく。上目遣いで男を見上げ続けるのも友幸の指導だろうか。

 男性器へのキスは、特にカリと鈴口には念入りだった。唇を突き出し、何度も何度も「ちゅっ、ちゅっ」と口づけで音を鳴らす。

「随分丁寧なんだな」

「フェラチオに関しては結構、友幸が厳しいからね」

「そういえばあいつ、AVでも絶対フェラシーン飛ばさないって言ってたな」

「人妻モノしか見ないマサキよりは健全だと思うけどね」

 そう言いながら亀頭へのキスを続け、右手の指で睾丸を軽く何度か持ち上げる。そして顔を再び根元の方へ埋めると、今度は舌で睾丸を持ち上げ、転がし、そして口に含んで優しく吸った。

「ザーメン、溜まってきてる?」

 やはり上目遣いで聞いてくる。

「ガンガンチャージ中」

「マジか。んっ、ちゅう、ちゅっちゅ……いっぱい作って、いっぱい出しなよ」

 もう一度口に含み、舌で転がす。男で最も無防備な箇所だが、渚の口と舌は温かくて安心する。竿自体には一切刺激が無いのに、ビクンビクンと跳ね上がった。

「挿入れたくなってきた?」

「うん」

「もうちょっと我慢しようね」

 片手で竿を扱きながら、睾丸を甘噛みすると、「マサキはここも大きいね。道理で沢山出るわけだ」と感心するように言った。

 そして顔の位置を肉槍の穂先に置くと、「こうして欲しいとかあったら言ってよ。あたし友幸の気持ち良いとこしか知らないんだから」と補足し、一呼吸置いて「まさかマサキのおちんちん咥える事になるなんてね」とはにかんだ。

 じっと俺を見上げながら、「ちゅっ」と亀頭にキス。

「ちゅっ」

 もう一回。

「ちゅう」

 更に一回。しかし今度は唇を離さない。俺と視線を交わしたまま、そのまま唇をカリの方へ滑らせていく。

 瑞々しい弾力の唇がカリの段差を越える。亀頭が渚の口に収まる。じんわりと暖かい。舌が裏筋をぺろりと舐める。その次は亀頭をツンツンと突いてきた。その度にちんこがピクッピクッと反応する。

 そのまま首を進めると、その動きに伴ってちんこを包む快感が広がっていく。渚の舌、唾液は身悶えするくらいに温かい。

 根元までは咥えきれなかったようで、途中で引き返してはカリの所でまた根元に向かう。

「くちゅ……んっ……くちゅ……ふぅ……」

 それを何度か繰り返すと、顔を離して口元を拭った。

「ごめん。マサキのおっきいから、全部は咥えられなかった」

「別にいいよ。無理すんな」

「でも新発見。おっきぃ方がしゃぶり甲斐ある」

 そう言うと両手を俺の膝に置き、再び口淫を始める。

 くっちゅ、くっちゅ、くっちゅ、くっちゅ。

 今度は咥える深さよりも、リズムを優先している。

 頬をすぼめ、口の中で吸引を続ける。

 徐々に速度を増し、ゴムを着用した男性器は唾液でベトベトに光っている。

 じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ。

「あ~、めっちゃ良い。友幸は良い指導してるな」

「結構スパルタだからね」

 チュパチュパと音を立てながら、恋人との営みを楽しそうに語る。

「あんま想像出来ないな」

「一回バナナで練習させられたし」

 舌のざらつきや艶やかな唇による刺激で背中をじんじん痺れさせながらも、友達の奇行についつい声を上げて笑ってしまう。

「馬鹿だなあいつは」

「彼女にフェラ仕込むのにどんだけ情熱注いでんだって話」

「でも渚もえらいな。それに応えるんだから。あっ、それマジ気持ち良いわ」

「んっ、マサキここ弱いんだ? くちゅっ、ちゅぅっ、ちゅぱっちゅぱっ、んっ、ふぅ……まぁ惚れた弱みっていうかさ……じゅぷっ、ちゅぅっく、じゅぽっ、じゅぽっ、じゅっぽっ、じゅっぽ」

「そういや告ったの渚からだっけ」

「そうだよ」

「実は殆ど同時だったんだけどな。中二の時に俺が友幸から相談受けて、それで色々画策してる内にお前が先に告白しちゃって」

「そうだったんだ。それ初耳なんだけど」

「結構大変だったんだぜ。三人の関係崩れるんじゃないかって悩んだりさ」

「くっちゅ、くっちゅっ、ちゅぅ、っぱ……んっふっ、じゅるっ、じゅるるるっ……ちゅぱっちゅぱっ」

「あ~、その吸い付き最高……友幸良い仕事してるわ」

「ウチの彼氏さんがお世話になったみたいだしちょっとサービス……ちゅく、ちゅうっ、くちゅくちゅ」

「ていうかじゃあ、普段は渚が尽くす感じなんだ?」

「どうだろ。尽くすっていうか……まぁ結構甘えるね」

「マジか」

「二人っきりだと結構甘々だよウチら」

「微塵も気付けなかった」

「だろうね」

「にゃんにゃん♪ とか言ったりするの?」

「めっちゃ言う」

「きもっ!」

「だいちゅき♪ とか言いまくるよウチら。ウチらっていうかあたしが」

「くっそきもい!」

「あはは。確かに客観的に見るときついね。でも二人の時ってどこもそんなもんでしょ……んっ、くちゅ、じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ」

「俺はそんな事……いや、あったかも」

「でしょ? やっぱ相手が年上だからマサキが甘えてたの?」

「誤解するなよ。俺は元々赤ちゃんプレイに人類の可能性を感じているんだ。相手の年齢は関係無い。年下だろうがやるときはやる男だ。俺は」

「マジ半端ないっす先輩」

 口を離して渚が笑う。吐息が竿全体に掛かってくすぐったい。

挿絵3

 ひとしきり笑うとすぐに咥え直した。

「ちゅっぷ……んっちゅぱっ……ちゅる……じゅっぽ、じゅっぽ、じゅっぽ、じゅっぽ…………ていうかさ、こんな話してる時になんだけどさ」

「ん?」

「……まだしない? セックス」

「もうちょい渚の口を味わいたい」

「はーい」

 くちゅ、くちゅ。

 ちゅぱ、ちゅぱ。

 じゅぽっじゅぽっじゅぽっ。

 気が付くと渚の片手が俺の膝から消え、自らの胯間に伸ばしていた。クチュクチュと陰部で音を鳴らしている。

 俺を見上げる渚の瞳は、熱っぽく潤んでいる。

 フェラを中断すると、口からぼろんと飛び跳ねるように逃れたちんこと、渚の舌に唾液の橋が架かった。

「今のお前の顔のがエロいわ」

「こんなのしゃぶってたらエロくもなるって」

「フェラしながら自分でクリ触るとか痴女だよ痴女」

 流石に恥ずかしいのか、渚の頬が紅潮し、むっと俺を睨んだ。

「あんたが焦らすからでしょ」

「別に焦らしてないだろ」

「いや露骨に態度に出したじゃん。もう挿入れて欲しいってさ」

「そうやって言ってくれないとわかんねーなー」

「あーあ。やっぱりいくら年上に鍛えられても、ダメな男はダメだね。その点、友幸は上手くリードするんだよね。出来る男は違うなぁ」

「女が相手なら俺も空気くらい読むんだけどなぁ」

 わざとらしい嫌味と挑発の応酬。何のトゲも刺さってない悪態。いつものプロレス。

「あれ、それなんかカチンと来るんですけど」

 口をへの字に曲げてぎゅっと陰茎を握る。勿論本気ではない。あくまでじゃれ合いの延長。

「大体お前は昔っから恥じらいが足りないんだよ。それさえ直せばちったぁ女に近付くんじゃないか?」

 実のところ渚がデリカシーを投げ捨てるのは俺の前だけなのでそんな事は思っていない。他の友人の前では、サバサバした普通の女の子だ。

「あんたも、ここぞって時にビビっちゃう癖、直したらちょっとはモテるんじゃない? 小学校の時に好きな先生が寿退職するお別れ会の時に、ラブレター渡せなかったマサキ君?」

「あ、それ今言っちゃう?」

 俺は渚の両脇を掴んで持ち上げるとベッドに仰向けで寝かせた。

 渚の両手を掴んで見下ろす。

「じゃあお望み通り、男らしくガンガンに犯してやるよ」

 その言葉に、渚はギンギンに怒張している俺の逸物をちらりと覗き見て、「……お手柔らかにお願いします」としおらしく呟いた。

 すらりと長い両脚の踵を持って左右に広げる。薄い陰毛の先で既にトロトロになっている陰唇は、一切ビラビラが無い綺麗なピンク色で、俺を誘うようにひくつかせていた。

 腰の動きだけで亀頭の位置を膣口に合わせる。ぴたりと照準が合い、あとは腰を押し出すだけ。

 こっから焦らして虐めてやろうかとも思ったが、渚はもう本気で堪らないのか、しおらしい声色と表情で、「ここから焦らすのは無しだからね……フェラチオしてた時からずっとマサキが欲しかったんだから」などと口にするものだから、幼馴染みとしてはそこまで非道にはなれなかった。

 にゅりんと音を立てて亀頭をねじ込み、全体の半分ほどを挿入した。

 別に焦らしたわけではない。渚の膣は本当に狭い上にギチギチと圧力が高いので、少しずつ慣れさせながら挿入しようとしただけだ。

 ただ渚にとっては一気に串刺しにしてもらえると思っていたのだろう。焦らされたと勘違いした渚はこれでもかという切ない顔で弱音を吐く。

「お口みたいに、そこもマサキのおちんちんでいっぱいにして……」

 ずぷぷっ、と肉槍が膣道を押し広げて進む。

「んっ……」

 八割くらいの侵略。

 並の男性器なら根元まで挿入しているであろう深さ。しかし渚はこれで全てじゃないと知っている。知っているからこそ、腰をもじもじと揺らしてねだる。

「……最後まで来て」

 ぐっ、と腰を打ち出した。陰毛と陰毛が触れ合うほど、下腹部がぴったりと密着する。

「あぁ…………マサキ……」

 渚は顎をぐっと引き、甲高い声を上げる。右腕の肘を天井に向けて曲げ、頭のすぐ横でシーツを強く握りしめた。手の平では収まらない豊かな乳房がお椀というよりは大皿のように広がりつつも盛り上がっている。

 渚は全身を細かくひくつかせている。

「これが欲しかった?」

 俺の問い掛けに、こくこくと声も出さずに細い顎を小さく上下させた。

「どうしてほしい?」

 左手だけ踵から離し、手の平を渚の頬に添える。親指で唇を触ると、渚は自らその指をフェラチオするようにしゃぶった。

「……して」

 ぬるりとした感触が指を這う。

「聞こえない」

 普段は颯爽とした渚の表情が悔しそうに、それでいてとろんと溶けた。

 渚は堪らないといった様子で俺を見つめながら、親指をくちゅくちゅと音を立てて吸う。

「おまんこ、めちゃくちゃにして……」

 左手を足首に戻して、両踵をぐいっと前に突き出す。渚の腰が浮き上がり、結合部が丸見えになる。

 俺が渚に入っている。現実感が極めて希薄な光景。

 小さい頃から男女の隔てなく遊んでいた俺と渚が、性器を繋げている。

 セックスしている。

「……あたしのやらしいおまんこ、マサキの友達ちんぽでお仕置きしてください」 

 恋愛感情どころか、どちらも互いを異性とすら意識していないのに。

 成分は肉欲のみの性行為。性欲ですらない気がする。その名の通り、互いの肉を欲しているだけ。

 ある意味これこそが、純度の高いセックスなのかもしれない。

 大きく一回抜き差しする。

「あん……」

 少し間を置いてもう一回。

「……はぁっ、あ」

 面白いように乳肉が派手に揺れる。

 あの凜々しくて爽やかで、老若男女問わず黄色い声援を飛ばさせる渚が、まるでか弱い少女のような表情で、「……意地悪しないでよ」などと言う。

「そんなつもりないんだけど」

「んっ……こんなの、やだ………あっんっ……もっと出たり入ったりしてほしい……」

 徐々に間隔を狭める。

「あっ……あっ……あっ……あっ……あっ」

「もう少しペース落とす?」

 渚はぶんぶんと首を左右に振る。

「やだっ、ていうか、もっと欲しいくらいだし……あっあっ、いっいっ、このおちんちん、二回戦なのに、すごいっ……あっはぁっ、んっあっ、おっきくて、気持ち良い……」

 ペースを維持する。

「あんっ、あんっ、あんっ……お願いもっと……もっと奥まで来て……」

「もっと?」

「うん……マサキが全部欲しい」

 渚の背中が浮くほどに膝裏を更に深く抱え込む。鼻先が触れ合いそうなほどに上半身を倒れ込ませた。

「あぁ、これっ……♡」

 渚の肩が小刻みに痙攣する。悦楽を謳歌する震え。表情はまるで苦痛を耐えているようにすら見えた。

「これ以上無理ってくらい挿入ったぞ」

「……うん……マサキと、完全に一つになってる……」

 渚はしばらくぎゅっと目を瞑っていた。額に汗がじっとりと浮かぶ。

 ようやくうっすら目を開けると、「……犯していいよ」と切なさを孕んだ照れ笑いを浮かべた。

 無言で抽送を開始する。前後というよりは上下に腰を振る。

「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」

 カモシカのような脚がぶらぶらと揺れる。

「これっ、奥刺さる…………おちんちん刺さっちゃってる」

 再び瞼をきつく閉じる。

「おっきっ♡ あっいっ、あんっあっ、いっいっ、マサキの、おっきぃよ♡」

「好きだろ? でかいの」

「う、うんっ、好き……二回戦なのに、友幸より深い所にくるマサキのおちんちん、好きっ♡」

 ピストンを止める。渚も気まずそうに苦笑いを浮かべた。

「……ごめん今の無し」

「俺には何も聞こえなかった」

 ピストンを再開する。

 この友達セックスはいくつかの暗黙の了解の上に成り立っていた。その中でも、直接的に友幸と比較しないという不文律は最上に位置する。結果として俺が下に位置する比較は良いが、その逆は絶対NGなのだ。

「キスしていいか?」

「舌は入れちゃダメだからね」

 この友達キスも暗黙の了解の一つだ。唇だけで啄み合う。

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。

「あっ、あっ、あっ、はぁっあっ、この挿入れ方、奥、当たるっ……んっ、ちゅっ……あっはぁ、ちゅっちゅっ……マサキ、やっぱりキス上手」

 甘い吐息を、直接鼻腔で受け続ける。

 これほど深く繋がっているのに、舌は絡める事が出来ないというもどかしさ。おそらく渚も一緒なのだろう。

 もう一度ピストンを中断する。

「渚、口開けて」

「っん」

 代替行為として、舌で唾液を落とすと渚はむしろ積極的に受け入れた。

 糸を引いて渚の舌に落ちると、渚はすぐに口を閉じて喉を鳴らした。

「渚のも頂戴」

「……いいよ」

 俺は上から落とせばいい。しかし下の渚はそうはいかない。唾液を舌先に乗せて突き出す。俺はそれを唇で挟んで吸う。その際に舌先が微かに触れ合う。電気が流れた。あまりに甘美な感触。吸い付きたいという激しい衝動に駆られるが、何とか律する。

「もっかいいいか?」

「……うん」

 再び渚の口内に唾液を落とす。

 渚はじっと俺を見つめながら口を閉じると、味わうようにくちゅくちゅと音を鳴らしてから嚥下した。

 そして先程と同様に、舌に唾液を集めて俺に差し出す。俺はそれを唇で挟んで吸う。そして今度は恣意的に舌先を触れ合わせる。脳天に甘い痺れが突き刺さる。渚も肩を強張らせ、一層に蕩けた表情をしてみせた。

 そのまま舌先だけでの交接を続ける。渚も舌を引っ込めない。見つめ合ったままチロチロと突き合う。キスではなく、唾液交換の為という欺瞞の接触行為。

 不意に渚が「んっ……」と掠れた声を出して肩を震わせながら目を瞑った。膣が緩やかに締まる。まるで男根を抱擁するような収縮。ピストンせずに舌先だけの交わりで軽い絶頂を迎えていた。

 渚は慌てて枕を手に取ると、それをぎゅっときつく押し当てるように抱えて顔を覆った。

「……これ以上はやばいと思います」

 枕の下からくぐもった声が聞こえる。

「だな」

「今日はルール違反多すぎ。たるんでるから気を引き締めていこ」

「了解」

 俺は上半身を起こし、両手を渚の膝に置いてピストンを再開する。渚は枕を離そうとしない。

「……あたしはもうイったから、後はもうマサキの好きなように動いて射精したらいいよ」

「わかった」

 淡々とした会話と、結合部がグチョグチョと卑猥な水音を奏でるのが同時進行する。

「んっ、んっ、はっ、ん…………ああもう、この後絶対友幸とキスしまくろ」

「そのままヤリまくれよ」

「多分しない」

「なんで?」

「……マサキとした後って、しばらくマサキの形のままになっちゃうから……あっ、あっ、んっあっ、やばっ、また来る……」

「でも友幸だってお前とキスしたら絶対興奮するぞ。生殺しは可哀相だ」

「愛情たっぷりのフェラチオですっきりさせるから大丈夫」

「今度それ、俺にもお願い」

「マサキには友情たっぷりのフェラチオで」

「どう違うんだよ」

 思わず笑ってしまう。渚もつられて笑う。

「わかんない……でもやっぱり、はぁっ、ん……赤ちゃん欲しいかどうかじゃない? あっあっあっ、んっ、マジでまたイキそうかも」

「タイミング合わせるか?」

「大丈夫。ありがと。好きに動いていいよ。マサキが出す時あたしもイケると思うから……ていうかもうヤバイし……もうすぐそこまで来てる感じ……」

「俺も」

「んっんっ、あっあっ……好きな時に出していいからね?」

「おう」

「やっ、はげしっ、あっ、あっ、あっ♡ 口まんこで溜めたザーメン、いっぱいおまんこに出してっ」

「ああ出そう……出すぞ」

「うん、来て……あっ好き♡ これっ、これっ♡ あっあっあっ♡ マサキの深いカリでゴシゴシされるの本当好きっ♡」

「あぁいくっ」

「あたしも……あっ、イク♡」

 俺が果てるのと同時に、渚は身を捩った。肉壷の圧迫は先程の比ではない。根元まで埋没した肉槍を、ギュルギュルと激しく絞る。それと同期するように枕を力強く握りしめながら、何とも切なそうに囁いた。

「……今めちゃくちゃマサキと恋人キスしたい……」

 枕で顔を隠したままでそんな事を言う。

 俺は俺で、全身を悦楽で打ち震わせつつ精液を吐き出し、「そりゃこんだけ幸福度高いセックスだとな。俺も渚と思いっきり舌絡ませたくて仕方無い」と返した。

「ね。でも我慢だからね」

 そう言いつつも身体をクネらせながら、膣もうねうねと蠕動を続ける。

 挿入したまま会話を続ける。

「俺多分、今晩お前でオナニーすると思うわ」

 渚は枕を下にずらし、目元だけ覗かせると、ジト目で俺を睨む。

「一々宣言しなくていいから」

「著作権的なものって発生する?」

「許可も取ろうとしないでいいから」

「親しき仲にも礼儀ありかなと」

「……別にいいよ。あたしでいっぱいシコシコして」

「お前とベロチューするとこ妄想しながらやるから」

 枕の下で渚がくすりと笑う。

「え、妄想の中のあたしズルくない? 現実のあたしが我慢してんのに」

「ていうかさ、まさかこんな時に、小学生の時の苦い思い出をほじくり返されるとは思わなかったわ」

 まだキツく締まった膣の中で、出し切っていない精液を絞り出すように、腰をゆっくりと前後させながら思い出話に華を咲かせる。

「あれ自分で言っててめっちゃ懐かしかった……んっ、あっ……はっ、あっ…………あん時のマサキは超ヘタレだったね」

「タイムスリップしてやり直したいわ」

「今は射精しても、おちんちん硬いままの立派な男の子になれたもんね……んっんっ、あっあっ、やっ、マジでまだ硬い……まだ出してる?」

「出してる」

「ん、オッケ……金玉カラになるまでザーメン出しちゃお……あっ、はぁっあっん……マサキとのエッチ終わった後のこの時間、すっごい好き」

「友幸はあんま後戯しないの?」

「結構さっさとどいちゃうから寂しい」

「けしからんな。もっとねっとりするように言っておいてやる」

「言ってやってよ……んっ、くっ……あっあっ、やっあっ……マサキのはねっとりしすぎだけどね」

「これはこれで嫌?」

「……気持ち良すぎて溶けそうです」

「じゃあ続けます」

「やった。やっぱり持つべきものは友達だね……んっんっんっ、あっいい♡」

 気だるくも緩やかな時間。恋人とも、ただのセフレとも違う、気さくに楽しく気持ち良いひととき。


「それじゃ、あたし行くから」

 服を着た渚が部屋の扉に手を掛ける。

「おう。友幸によろしく」

 同様に服を着た俺が見送る。俺達の中では、互いの家は勝手知ったる我が家も同然。わざわざ玄関まで見送ったりしない。

 渚は俺にじっと視線を向けたまま、立ち尽くしている。

「なんだよ」

「ちょっと口開けて」

「は?」

「いいから」

 そして背伸びをして顔を近づけると、「……舌出して」と囁いた。言う通りにすると渚も舌だけ突き出し、そのまま一度だけ、深くぬるりと舌を絡めた。

 すぐに離れる。それでも俺達の舌には唾液の糸が引いた。一瞬だったが、渚の舌の感触は鮮明に残っている。

 渚は両手を後ろで組んで俺を見上げる。

「こんなんでもオカズに出来る?」

「余裕。ネタの提供に感謝する」

「あんまり抜きすぎて夏バテしないようにね」

「おう」

「ん。それじゃ」

 渚はくるりと踵を返して廊下に出て行った。階段を駆け下りる音が途中まで聞こえたが、すぐに引き返して来た。扉が開く。

 顔を出した渚は少し照れくさそうに笑い、「普通にするの忘れてた」と言い、すっと近寄り背伸びしてきたから、俺もそれを迎えるように少し屈んだ。

 ちゅっ、と一度だけ可愛く唇を押し付け合う。友情の証のキス。

 そして俺の方を向いたまま後退して廊下に出ると、「じゃね。バイバイ」となんら変わらない様子で小さく手を振り、今度こそ階段を駆け下りて行った。

 余談。

 渚が帰宅し、陽が沈んだ頃、なんとなく気になって携帯で渚にメッセージを送る。

『あれから友幸とキスした?』

『した。しまくった。おかげ様で大変盛り上がりました』

『俺という前座に感謝しろよ』

『なんて悲しい上から目線でしょう。一方その頃マサキ君は一人寂しくシコシコしてたわけ?』

『宣言通り、渚で抜かせてもらいました』

『友達ってオカズになるんだ』

『案外悪くない。やはり非日常感が鍵だな』

『ちょっとわかる』

『渚は痴漢だっけ』

『たまにだけどね。でもあたし達のエッチって、最早そこまで非日常感なくない?』

『それはそれ、所詮は妄想だからな。もう一線踏み外しまくりだよ。お前もめっちゃ情熱的にベロチューしてきたし』

『やばいわこいつ、現実との境界があやふやになってる』

『まさか渚があんな言葉まで口にするとは』

『一体あたしは、何言ったんですかね』

『普通に中出し催促してきた』

『普通って何だ』

『いいじゃん妄想の中でくらい。なんなら渚も俺使っていいぞ』

『結構です。ていうかシチュエーションが想像出来ない』

『じゃあ俺が考えてやる。そうだな。放課後の学校で、ムラムラした俺に保健室で無理矢理レイプされるとか』

『あ~』

『お気に召さない?』

『いや、正直無理矢理っていうのはね、うん、結構有りなんですよね』

『お前って結構Mっ気あるよな』

『そうかなぁ。でも現実だったら絶対嫌だけどね。まったりしてる方がいいよ』

『ていうかお前も一人でしたりするんだな』

『月に一回するかどうかだよ。でもマサキとエッチした夜はしたくなる』

『わかる』

『ね。してる時はもう死にそう、勘弁して! って感じだけど、家に帰るともっとしたかったなってなる』

『今度機会があったら、朝からどれだけ出来るか挑戦するか』

『疲れたら休憩がてらゲームして、そんでエッチして、みたいな?』

『そんな感じ。やっべ想像したらなんかムラムラしてきた。二回目抜こうかな』

『あんた本当凄いよね。友幸は精々二回戦あるかどうかだよ』

『前カノと別れてから結構ご無沙汰だったからな。溜まってたんかも』

『抜いとけ抜いとけ。昼間はしっかり勉強してもらわないとなんだから』

『どうせなら渚の声聞きながらしたいんだけど』

『別にいいけど。じゃあ通話にするね』

「おいっす」

「もしかしてもうシコシコしてたり?」

「今ズボンとパンツ脱いで……あ、はい、始めました」

「実況しなくていいから」

「今ですね、ボクの中の渚さん、めっちゃ雌の顔しながらベロチューねだってきてます」

「リアルのあたしは苦笑いだけどね」

「一応リアリティ高める為に聞きたいんだけど、俺とベロチューする時どんな感じになりそう?」

「え~どうだろ。うーん……多分めっちゃ抱きつくと思う。マサキすごい上手だし、結構早く盛り上がっちゃいそう。あとすっごいブリっ子みたいな声で名前呼ぶ」

「やってみて」

「ん、こほん…………マサキっ♡ もっといっぱいチューしてっ♡ とか言いそう。てか言うわ絶対」

「いいぞ。捗る」

「……今扱いてるの?」

「うん」

「なんかハァハァ言ってるし、ゴシゴシって聞こえるしで」

「渚もしていいぞ」

「……え~。どうしよっかな」

「いいじゃん。一緒にしようぜ」

 俺としては、友幸に一緒にAV観ようと誘うのと変わらない。

「ん~……じゃあご一緒させてもらおうかな」

 渚も似たような感覚なのだろう。いくら幼少の頃から異性を感じさせない間柄とはいえ、渚だけ並んで立ちションをしたりなどが出来なかったので、もしかしたらこういうイベントに一種の憧れのようなものがあるのかもしれない。まぁ男同士でも一緒にオナニーをするというのは中々聞かないが、馬鹿っぽい事を一緒にやるというのは、やはり友達としての醍醐味だろう。

「そういや今日友幸としなかったの」

「ん? したよ」

 気軽な返事と共に、ごそごそと衣擦れの音が聞こえる。

「今どんな格好?」

「下を脱ぐとこ。上はTシャツ。マサキは?」

「一緒だわ」

「ついでにおっぱいなんかを自撮りで送ってもらえると、非常に助かる」

「マサキの勃起ちんちんの自撮り送ってくれたらね」

「いいよ」

「いやいや。冗談のつもりだったんだけど……って送ってくるの早っ! てか既にガッチガチだし」

「これはお恥ずかしい」

「あんた元カノにもこういうの送ってたの?」

「いやしてない。それは流石に恥ずかしい」

「あたしにも恥ずかしがれよ」

「不思議と全く無い。あと正直、彼女って言っても他人だし、流出の危険とか考えるじゃん」

 その点、渚が相手だと心配が無い。その事に対して渚も一々反応しない。揺るがない信頼が俺達の間には前提として存在する。

「……やば。マサキの勃起ちんぽ見るだけで濡れちゃう」

「これどうしたい?」

「……そりゃまずはフェラチオかな。先っぽにいっぱいキスして、金玉も咥えて……それからしゃぶる」

「今自分で触りながらやってる?」

「……うん」

「どこ?」

「クリトリス」

「勃起してる?」

「マサキほどじゃないけど」

「めっちゃクチュクチュって音聞こえるんだけど」

「あんたのシコシコだって聞こえてるんですけど……はい自撮り送ったよ」

「えっろ」

 捲り上げたシャツの裾を口で咥えて、ブラを外した爆乳による谷間が俯瞰で撮影されている。下も少し脱ぎかけで、ショーツや太股の付け根がちらりと覗き見える。目線を片手で隠しているのが生々しい。

「こんなの撮ったの初めてだから何気に恥ずかしい」

「友幸欲しがったりしないんだ」

「しないね」

「一応これ終わったら消すから安心しろよ」

「一々言わなくていいよ。信用してる」

「そんでフェラの後は?」

「……向かい合ってベッドに座って、おちんちん触りながらキス」

「恋人キス?」

「ガチのベロチュー。ナメクジの交尾みたいに舌絡め合うの」

「それから?」

「後ろから挿入れられる。それもダメって言ってんのに生で」

「ほうほう」

「それで……んっ……ガンガンに犯されて……はぅ、っく…………やばいもうイキそう」

 渚が自嘲する。

「もうちょい頑張れ」

「……今マサキのおちんちんどうなってんの?」

「割りと限界寸前。俺の生ちんこ気持ち良い?」

「……うん、マサキのおちんちんってさ、射精する前に余計エラが張るからあれすごい好き……生ならもっとやばそう……」

「尻を鷲掴みにして、バシバシ腰打ち付けてやるからな」

「やばいってそれ……想像するだけでお腹熱くなっちゃったじゃん……」

 渚はすぅっと息を吸うと、セックスの時とは違い、消え入りそうな声で「あっ、あっ、あっ」と儚い嬌声を上げた。

「マサキ……あたしとの生セックス、気持ち良い?」

「ゴムしててもウネウネしてるのが伝わるからな。生だと秒殺されそう」

「……どこで出す?」

「絶対中。我慢出来る自信無い」

「……いいよ」

「出されちゃうんだ?」

「……あたしはダメって言ってるのに、マサキが無理矢理って感じ……あっ、やばい、これすごく興奮するかも……」

「なんか俺の中の渚、友幸に謝ってるわ」

「絶対ごめんって連呼してる……でもマサキ止まらなくて……すっごいパンパンパンってされて……あぁ、あっん、きちゃう」

「イク時、先っぽを思いっきりお前の奥に押し付けるから」

「……そんなの絶対赤ちゃん出来ちゃうじゃん……んっ、ふぅ、んっん」

 通話口の向こうで、水音がくちゅくちゅと激しく鳴った。

「あぁイキそう」

「……うん、あたしも一緒に……んっ」

「このまま出すからな」

「やばいって……マサキの精子で妊娠とか……あぁっ、やっあっ……やっ、イク」

「俺も出るっ……うっ」

「あっあっ、すごい、ビュルビュル出てる音聞こえる……あっイク」

 渚を後ろから貫きながら、好き勝手に射精する自分を想像する。この日通算四回目の射精とは思えない勢いで精液を真上に噴出させながら、「……渚、イってるか?」と尋ねる。

「うん……マサキに中出しされるの想像しながらイってる…………んっ、んっ、はぁっあっ……マサキもあたしの中に出してる?」

「めっちゃ出てる」

「……いいよ、そのまま気が済むまで出して……」

 渚の掠れた声を聞きながら、ぴゅっ、ぴゅっ、と噴水を続ける陰茎を扱き続ける。手の平が渚の膣に思えてくる。想像の中で俺達は確かに生セックスを敢行したのだ。

 途端に静かになる。しばらくは渚の息遣いだけが通話口から漏れ聞こえた。

「……めっちゃ良かった」

「あたしも。足つりそう……」

 こんな充実した自慰は初めてだと言わんばかりに、俺達の吐息は満足気だった。

「ふぅ…………なんか盛り上がっちゃったな」

「やっぱ妄想だとね……有り得ない事もしちゃうから」

「ていうかちょっと引くわ。流石に妊娠させたらやばいだろ」

「うわ出たよ、モテない男特有の空気読めなさ。一人で勝手に醒めないでくれる?」

 切り替えの速さは恋人やセフレの比ではない。シームレスというよりかはそもそもスイッチは常に友達モードから切り替わらない。

「まぁオナニーの妄想といったら、孕ませは定番だけどな」

「気持ち悪っ。明日から声掛けないでね」

「言われなくてもクソドブスに掛ける声は無い。精液は掛ける」

「あんたの精子で孕むなんて、卵子の無駄遣いもいいとこだわ」

「妄想とはいえ、お前みたいなガサツ女を孕ませたい精子なんて希少なんだから、黙って妊娠しとけ」

「は? あたし毎年オナペットランキング一位なんじゃなかったんですかね?」

「そういやそうだったわ。お前校内の男子全員の精子で孕んでるから。やったな。友達として俺も鼻が高いわ」

「嬉しくないし!」

 遠慮や気兼ねなど一切無用の、親友同士による一種のピロートーク。これ以上心地の良い賢者タイムもない。

「ま、楽しかったけどな」

「ね。これまたしようよ」

「とりあえず満足だわ。付き合ってくれてありがとな」

「こちらこそ。すごいスッキリした」

「そんじゃおやすみ」

「うん。また明日ね。おやすみ」

 夏のアバンチュールとは無縁の熱帯夜だが、友達と楽しいひとときを過ごせたので良しとする。

 平日の昼間とはいえ、ショッピングモールは人でごった返していた。夏休みなので子供連れや同世代の若者が多い。

 休憩所は大きな天窓から光が差し込むサロン風になっており、空調の効いた涼しい空間で夏の陽射しを満喫出来た。

「はい! 渚さん! はい! ボク質問があります!」

 元気よく挙手する。

「はぁい、マサキ君。大変元気があってよろしいですね」

 対する渚はベテラン教師風の声色を装い、買い物袋を片手にソフトクリームを舐めながら、若干気だるげに返した。

「なんで、ボクが、渚さんと友幸君による、新しい水着の買い物になんか付き合わないといけないんですか!」

「それはですね、どうせマサキ君みたいなジメジメしたカビ野郎は、誰かが引っ張り出さないと外出も碌にしないだろうなという、友幸君とあたしの有り難い配慮ですね」

「言いすぎだと思います! あともう一つ質問があります」

「なんですかぁ」

「その友幸君が居ないのはなんでですかねぇっ!」

 渚は咳払いをすると、友幸の低くも威厳のある声をマネする。

「わはは。今日も今日とて生徒会でトラブルが発生してしまった。例によって緊急出動を要請されたので同行は出来ん。すまん。埋め合わせは必ず。マサキにもよろしく伝えておいてくれ」

「あいつ呼び出されすぎだろ」

「友幸は頼りになるからね。しゃーない」

「お前はお前でさっさと水着買うし」

「別にいいじゃん」

「俺の意見も聞けよ」

「って言っても友幸の好みってもう完全に把握してるしな~」

「確かに。でも渚って本当買い物早いよな。元カノめっちゃ時間掛かったぞ」

「女友達と行く時はそれなりに周りに合わせるけどね。友幸やマサキが一緒ならパパっと終わらせるよ。ていうかこれからどうする?」

「折角外出したしなぁ。どっか寄ってこうぜ」

「でもどこもめっちゃ混んでるよ」

「だよなぁ」

「あたしさ、新しい水着早速着てみたいから家帰らない?」

「え~。折角出てきたのに」

「何よ。おニューの水着視聴者第一号という栄光を賜りたくないわけ?」

「どうせ似合ってるかどうかのチェックさせたいだけだろ。それこそ買う時に聞けよ」

「だってどれ欲しいかなんて決まってたし。そんで、見たいの? 見たくないの?」

「ぶっちゃけお前の水着なんてどうでもいい。それより遊びに行きたい」

「ひっど」

 俺の携帯が鳴る。友幸だった。

「おう。呼び出しておいて欠席とはどういう了見だ?」

「すまんすまん。今日のところは渚とデートしておいてくれ」

「色気もへったくれもねーな」

 渚の爪先が脛をこつんと叩く。

「なぁ友幸。お前の彼女すごく暴力的だぞ。今のうちにDV対策しといた方が良いんじゃね。今度弁護士探しに行こうぜ」

「わっはっは。渚が小突いたりするのは、マサキが余計な事を言った時だけだからな。俺に実害は無い。ところで新しい水着は買ってたか?」

「あぁ。さっさとお前が好きそうなの買ったってさ」

「それは楽しみだ」

「あと試着チェックしろって煩いんだけど」

「うむ、してやってくれ。マサキのセンスなら信頼性が高い」

「くっそ興味無いんだけど」

「渚の新しい水着姿を最初に目に出来るのは羨ましいの一言だが、お詫びといってはなんだが、その権利を譲ろう」

「似たような事言ってんじゃねーよ。とにかく、さっさと仕事終わらせて合流しろよ」

「ちょっとそれが怪しくなってきてな。もしかしたら今日は遊べないかもしれん」

「はぁ? マジで言ってる?」

「すまんな。あと渚に代わってくれ」

 渚に携帯を差し出す。

「ほら、友幸」

 渚はそれを手にすると、席を立って休憩所の隅っこに行って友幸と通話をしていた。なんとなくその姿を遠巻きに見ていたが、渚は時々俺の知らない表情で笑っていた。友達には見せない、恋人しか知らない、はにかんだ優しげな微笑み。そして通話を終える時には、「あたしも好きだよ」と言っていたのが何となくわかった。幼馴染み同士のそういう姿は少しくすぐったいが、非常にほっこりとする。

 渚が戻ってくる。

「んで、どうする?」

「カラオケ行きたい」

「え~。あたし新しい服とか買ったら即着てみたいんだけど」

「じゃあここで着ろ」

「アホ」

「じゃあカラオケ行ってそこで着替えろ」

「怒られるわ」

 俺はふと思いつく。

「そういえば水着でカラオケやっても怒られなさそうな所あるわ」

「え、どこ?」

「……ラブホ」

 そんなわけで駅前のホテル街にこそこそと侵入し、渚が「どうせなら如何にもって所で」と言うので、西洋風のお城な外観のラブホテルに昼間っから入る。

「へ~。こんな感じなんだ」

 珍しそうにラウンジできょろきょろしている。

「お前友幸と来た事ないの?」

「ない。友幸って一応生徒会長だったしね。なんとなく自制してた部分もあるんじゃないかな。マサキは?」

「元カノと何度か」

「ヒューヒュー。おっとな~」

「お前と来るのはすごく違和感あるわ」

「だよね。多分浮いてるよね、あたしら」

 渚はカラカラと笑う。確かに俺達からは恋人はおろか、セフレのような空気すら放たれていないだろう。実際ラブホテルに入ってからも、俺は渚の事を性的な目で見ていないし、これからセックスが確たる予定とか言われるとそうでもない。友達同士がおふざけで入ったような場違い感を感じる。

「このパネルで部屋選ぶの?」

「そう。好きなの選べよ」

「別にどこでもいいけど……ん~。あんまり代わり映えしないね。じゃあここで」

 渚が適当な部屋を選ぶとエレベーターが到着する。

「うわ、勝手に降りてきたよ。あれに乗るの?」

 部屋に到着すると、「結構普通だね。ね?」と言いながら部屋中を探索する。

「興味津々じゃねーか。ていうかさっさと着替えてこいよ」

「そういやそうだった。じゃ、ちょっと待ってて」

「もうここでパパっとやれよ」

「オッケ」

 渚は袋から水着を取りだし、上着を脱ごうとするが、そこで頬を染めて動きを止めた。

「やっぱお風呂で着替えてくる。なんか着替え見られるのって恥ずかしい」

 そそくさと消えていく。

「なんだそれ」と見送って、ベッドに腰掛ける。

 部屋を見渡すが目新しいものはない。暇つぶしは出来るが、ここじゃないと出来ないものなんて存在しない。

「強いて言うなら、声を気にせずエッチ出来るくらいか。でも普段から気にしてる風でもないしな。あいつ」

 しかしラブホテルに足を踏み入れたとは思えない平常心だ。例え倦怠期の恋人が相手でも、もう少しドキドキするはずだ。興奮はするが意識はしない。我ながら変な関係だと思う。むしろ、友達として当然といえば当然の感覚なのかもしれない。

 そんな事を考えていると、着替えを終えた渚がバスルームから顔を出した。

「どうよこれ」

 渚が選んだのはフリルが付いた紺色のビキニだった。引き締まった身体に濃い色が良く似合う。右手を後頭部に、左手を腰に当てた茶化したポージングだが、素材が良いので様になっていた。

「いいんじゃね」

「それだけ?」

「他に何があんだよ」

 メリハリのある肢体は、そんじょそこらのグラビアアイドルが束になっても敵わない。ケチのつけようもないので、称讃の言葉もおのずとシンプルになる。

「マサキが良いと思うかはどうでもいいの。友幸が気に入るかどうかを知りたいの」

「それこそあいつはお前だったら何でもいいだろ。馬鹿ップルめ」

「そうかなぁ。大丈夫? 変じゃない?」

 俺に確認させようとくるくると回る。どの角度から見ても、すらりと長い手足にグラマラスな肉付きは変わりようもない。

「お前の身体が変なら、世界中の女は豚以下だな」

「ていうかあんた、なんでさっきからちょっと前屈みなわけ?」

「察しろ」

「え、まさか水着で勃っちゃってんの? 流石にそれはマジでどうかと思う」

「お前は一回、自分の身体のエロさを自覚し直せ」

「いやいや。水着ってそういう目で見るもんじゃないっしょ」

「如何にも女側の意見だな。いいか? 見せパンだろうが水着だろうがこっちは興奮する。覚えとけ」

「そんな力説されてもな。ていうか今までは普通に三人でプールとか行ってたじゃん」

「今までは完全に女だと思ってなかったし。いや正直今も思ってないけど」

「じゃあ何なのよあたしは」

「渚は渚って感じ」

「あぁその感覚はあたしもわかる。マサキはマサキで、それ以上でもそれ以下でもないっていうか」

「だろ。でもその谷間見せられると条件反射でこうなるようになっちまった」

 ジーンズの盛り上がりを見ると渚はやれやれと肩を竦めた。

「あたしの水着なんて無関心って素振りしといて」

「実際関心は無い。しかし勃つもんは勃つ」

「でもそれじゃ三人で遊べないじゃん」

「いや流石にもう海は友幸と二人で行けよ。俺邪魔だろ」

「でもあの海水浴場って小学校入る前から三人で行ってたしさ、今更誰か欠けても気持ち悪いんだけど」

「いつまでも皆一緒ってわけにはいかないだろ」

「そりゃそうかもしれないけどさ」

「良い機会だし今年から二人でデートしとけよ」

「てかジーンズ脱いだら? それ辛いんじゃないの?」

「そうさせてもらうわ」

 ついでに上着やら下着も脱いで全裸になる。

「誰が裸になれっつったのよ」

「でもここそういう場所だし」

「確かに」

 渚はじっと俺の胯間を見つめる。

「……前から思ってたけどマサキの勃起って苦しそうなくらいビキビキいってるよね。早く精液出したいぞって亀頭に睨まれてるみたい」

「なんだそれ。友幸は違うのかよ」

 渚は立ったまま、ベッドに腰掛けた俺の胯間に手を伸ばすと、屹立した先端を指でちょんと突いた。

「友幸のはわりと紳士的だよ。こんな恐いくらい血管浮き出ないし」

「恐くはないだろ」

「今はね。でも初見の時は正直ちょっとビビった」

「じゃあ大人しくさせてやってくれ」

「了解。どこ使う?」

 渚はそう言うと、まずは右手の人差し指と親指で作った輪っかを口元に持っていき、舌先を小さく出した。

「ここ?」

 次は折り畳んだ左腕で胸を寄せる。豊満な乳房が水風船のように形を変えた。

「こっち?」

 そして右手を下に持っていき、ビキニパンツの腰紐に親指を引っかけて浮かせる。

「それとも……ハメちゃう?」

 思わず喉を詰まらせる。同世代とは思えない刺激的すぎる色気。強調された唇、乳房、腰、それぞれのパーツが、百点満点中百二十点の曲線美と質感で煌いているので堪らない。

 とはいえ渚本人はこういった行為に官能的な意味を持たしていない。男友達同士が冗談でグラマラスな女性の体型を示すジェスチャーを行うのと何ら変わらない。それを女性が模せば、大抵はデリカシーの欠如と見られるだろうが、全く他意を伴わず行われる渚のそういった所作は、彼女のあっさりした性格と何よりその容姿により、意図せず開放的なエロスとして昇華されてしまう。

 渚の無自覚な、それも極上なる雌の誘惑に、男根が思わず跳ね上がる。

「うわっ、急にちんこが暴れた」

「男には色々あるんだよ」

「我慢汁も滲んできてるし。わかったわかった。皆まで言うな」

 ビクビクと細かく震える亀頭の先端から、とろりと糸を引いて分泌液が床に垂れる。

「何がわかったんだよ」

「あたしの中に入りたいんでしょ?」

「正解」

「オッケ」と渚が答えると同時に、俺の隣に置いてあった渚の携帯が友幸からのメッセージを通知する。俺が拾い上げて目を通すと、渚は「なんて?」と尋ねた。俺はそのままメッセージを読み上げた。

「『思ったより早く片付きそうだから、終わり次第もう一度合流するよ。多分あと二時間くらい』だってさ」

「あ~……ごめん。それじゃ挿入は無しで。もしかしたらこの後友幸とするかもだし」

「なら仕方無い」

 今はまだ理性があるので、そういう理由ならば自重も当然だ。ただやはり落胆は隠せない。

「期待させといてごめんね」

「しゃーないだろ。それじゃ手で頼む」

「うん」

 渚は水着姿のまま俺の隣に腰掛けると、身体を密着させた。横から肩や胸に押し当たって潰れる、ビキニを纏った爆乳の感触は、まだ友幸も未経験なんだと考えると背中がむずむずした。

「あんまりした事ないから自信無いけど」

「友幸はフェラしか教えないのか」

「そう言われるとそうかも」

 右隣に座った渚が右手で屹立した陰茎をぎゅっと握り込んだ。

「あっつ。マサキのおちんちんって絶対熱い方だよね」

「そんなの皆一緒だろ」

「え~。全然違うよ」

 納得がいかない様子で握った手をゆっくり上下させる。既に竿まで垂れていた我慢汁がニチャニチャと音を立てた。

「それじゃ、シコシコしちゃうね?」

「お願いします」

 にちゃにちゃ、にちゃにちゃ。

「これで大丈夫?」

「大丈夫」

「痛くない?」

「めっちゃ気持ち良い」

 渚の握る力や手つきはややガサツだった。如何にもなやらしい手コキとは違い、友達の自慰を代替しているに過ぎないという意識からくる、無遠慮な扱き。それが逆に奏功した。

 無自覚の挑発に駆られた陰茎は既に限界まで膨脹しており、渚の力強い手つきが丁度具合良く感じる。上下動する指の輪がしっかりとカリを捉えて血流を集める。

「手でシコるの面白いね。やっぱり手の平だからかな。他の場所よりも勃起していくのがわかりやすい。ほら、どんどんカリが深くなってく」

 渚の左手が俺の背中から左脇腹へと回り、そして乳首に到達した。指先でカリカリと引っ掻く。「んっ」と思わず吐息が漏れ、身体が硬直する。

「『んっ』だって。ウケる」

「うるせ」

「女の子みたいな声出しちゃってさ」

 渚は呆れるようにジト目で俺を見上げると、俺の胸へ顔を近づける。そして右の乳首をぺろりと舐めると、口に含んでちゅうちゅうと吸い出した。

「あぁ」

 声の我慢など到底不可能な甘い快楽。

 左乳首は指の腹でくにくにと優しく潰され、右乳首は舐め上げと吸い付きをローテーションされ、そして本丸は搾り取るような手つきでゴシゴシと扱かれる。

「この三点責めやばいって」

「今即興で開発した技だから。なんかあたしって、実戦の中で成長する天才主人公みたいじゃない?」

 得意気な様子で馬鹿な事を言いながら、筆舌に尽くし難い快感を多方面から与えてくる。

 くにくに。

 ぺろぺろちゅうちゅう。

 しこしこ。

「うっ、乳首吸いすぎなお前」

 柔らかい舌先をぐにぐにと押し付けてきたと思えば、ちゅるるるると音を立てて乳首を吸う。

「おちんちんすっごいビンビンだよ……んっ、れろ……ちゅうぅっ……ちゅっちゅっ、れろれろ……たかが水着でこんな勃起させちゃうとかさ……ちゅっ、んっ、ぺろ、れろ」

 渚の左手が胯間へと移る。包み込むような手つきで睾丸を持ち上げて、俺を見上げた。

「ザー汁、溜まってきてるよ?」

 左手を乳首に戻す。しかし今度は乳首を押し潰すのではなく、摘まんでコリコリと転がす。

「金玉ぱんぱん」

 掠れた声でそう囁きながら、顔を胸から離して首を伸ばす。あまりの刺激に顎を反り返らせていた俺に、冗談で作った可愛い声色を飛ばしてくる。

「おい。チューさせろ」

 顎を引いて、唇を押し付け合う。

 ちゅっ、ちゅっ。

 空調はやや強すぎるくらいだったが、俺も渚も全身にしっとり汗を浮かべている。高揚もあるだろうが、くっついているので互いの体温を分け与えているのが大きい。渚は温かい。特に、ぐんにゃりと派手に潰れるほど密着する豊かな乳房の谷間には、鎖骨から汗が流れては消えていく。

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、

 軽快に舌は絡めない友達キスを繰り返す。

 その中で一度ちゅうぅぅぅ、と深く長く押し付け合うキスを挟む。それが終わると渚は俺の下唇をカリっと軽く甘噛みして、唇が触れ合うほどの至近距離で不敵な笑みを浮かべる。

「二度とあたしの水着で勃起出来ないよう、このおちんぽからザーメン全部抜いてあげる」

 左手で乳首をこりこり。

 唇をちゅっちゅっ。

 右手でチンコをしこしこ。

「そんでまた、三人で海行くよ」

 扱く手つきがより強くなる。ローション代わりの我慢汁が、ぐっちょんぐっちょんと卑猥な音を立てた。

挿絵4

「お、言ったね?」

 くっちゅくっちゅくっちゅくっちゅ。

「そっちのイクじゃない、あっ、イク、あぁっ」

 噴火のように精液が飛び散る。

「わっ、わっ、わっ」

 それは俺達の頭を優に飛び越える高さまで達した。四方八方に飛散する粘液の塊は、渚のビキニを上下ともに白く染めた。紺色なので特に目立つ。

 しかし渚はそれに気付いた様子はなく、手の平で暴発を続ける男根に意識を奪われたままだった。

「すごい。まだ出るよ。ほら、ほら」

 射精するまでの無造作な扱き方ではなく、根元からゆっくり、確実に絞るような動きに変わる。実際、搾り取られるようにビュウビュウと射精が止まらない。

「このまま全部出しちゃお。はいっ、ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっ」

 掛け声に合わせて唇を押し付けてくる。

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。

 まんまとそのリズムで訪れる唇の感触に合わせて透明の精液を噴出する。

 とはいえ流石に出が悪くなってくると、ちんこを握るのではなく、指を絡めて慰めるように擦る。唇もそれに合わせて、深く長く重ね続ける。

「んっ、ふぅ…………どう? 金玉、空になった?」

「流石にな」

「よしよし。よく頑張ったね」

 幼子を褒めるような手つきで亀頭を撫でながら、視線を自身の胸元に落とした。

「新品の水着、マサキのザーメンでべちょべちょ」

「お前の手コキがやらしいのが悪い」

「マサキがシコれっつったんでしょ。あーあー。まだ友幸とのデートで使ってないのに」

 水着のフリルに付着した一際大きな白い塊を指で掬うと、視線を一度俺に合わせ、そしてすぐに精液に戻した。

「……えい」

 ゼリー状の粘液がたっぷりと乗った指先を咥える。そしてくちゅくちゅと咀嚼し、喉を鳴らした。

「飲んだのか?」

「……にっがい」

「そりゃそうだろ」

「だって知らなかったし。精子がこんな味って」

 そう言いながら白濁液塗れの自身の右手を見つめ、人差し指から順番に小指まで指を舐め、最後に親指の腹の精液を舐め取る。

「しかしあれだね。熱々のおちんちんから出る精液はやっぱり熱々なんだね」

 そして鈴口にじんわりと浮かんだ残り汁を摘まむと、人差し指と親指で伸ばしたり縮めたり、興味深そうに繰り返した後、ぺろりと平らげた。

「しかも濃い。頑張って女の子妊娠させますって感じの味」

「どんな味だよ」

「女にしかわかんないって」

 渚は笑うと、「お疲れ様」と亀頭をもう一度よしよしした。

「ていうかさ、縮んでないよね」

「だからお前の水着がエロいんだって」

 渚の手コキも虚しく、俺の息子はまだまだ臨戦態勢が解けずにいた。

「まさかまた挿入しないと収まらない、男の子の生理的なあれ?」

「あれだな」

 男子諸君ならば身に覚えがある、どうしても女性器と連結しなければ収まらない類いの勃起である。例えどんなに優れた快感でも、他の刺激では発散しきれない。

 行き場を彷徨う男根はギチギチに怒張を続ける。到底射精直後とは思えない硬度と膨脹は、渚の瞳に同情の色を微かに浮かばせた。

「……じゃあやっぱりハメる?」

 べとべとの手の平で、べとべとの肉竿を擦りながらそう言った。

 ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ。

「いいのか?」

「……うん。マサキのここ、すっごい辛そうだし」

 微かに微笑んだ渚の眼差しと声色からは、友達として助けになってあげたい、という情念以外は何も感じられない。

「じゃあ、その、いいっすか?」

「いいよ」

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、とおどけるように突き出した唇を啄み合う。

 吐息が直に掛かる距離で、渚があくまで友好としての微笑みを浮かべて囁いた。

「マサキの気が済むまで抱いて」

 もう辛抱ならんといった様子で男根が怒髪天を衝いた。ビキビキと筋肉が悲鳴を上げるほどにいきり勃つ。

「どうどう。もうすぐだからちょっとだけ我慢しようね」

 渚が肉槍をそう諫めながら、サイドテーブルに手を伸ばして備え付けのコンドームを手にした。

「へ~。新発売の超極薄なんだってさ」

 興味深そうに口にしながら包装を解いた。薄緑色のそれを亀頭に被せてするすると装着していく。

 その途中で、ピチッと鋭い音が鳴った。

「あれ、破れちゃったんだけど」

「これだからガサツ女は」

「マサキのが大きいからでしょ。今日は普段よりも更に大きくなっちゃってる気がするし」

 渚が笑いながら二つ目を手に取り、今度は慎重に装着させる。その緩やかな手つきが更に膨脹を促進させる。

「こら。大きくするなっての」

 渚が呆れるように笑いながら、クルクルと根元までゴムの皮膜を被せた。

「やれば出来んじゃん」

「ふふん。本気出せばこんなもんよ」

「そんじゃこのまま上来て」

 体勢を変える手間すら惜しむ。早く渚が欲しくて堪らない。ベッドの縁に腰を掛けたまま、渚に座るよう指示する。

「待って。水着脱ぐから」

「そのままでいいって」

「なんで?」

「ぶっちゃけ似合ってるし可愛いから」

「へ~。可愛いと思っちゃったんだ。マサキが。あたしをねぇ。ふーん」

 渚はからかうようにニヤニヤと笑う。

「うるせえ。早く乗れよ」

「慌てちゃって。そんなあたしとやりたいんだ? 可愛いから?」

 渚がニヤついたまま俺の上に跨がる。右手でビキニボトムをずらしながら、左手で陰茎の位置を固定すると、ゆっくり腰を下ろしていった。

 にゅぷ、と音を立てて渚の腰が滑らかに沈みきる。運動部らしい健康的な太股はスベスベしながらもムッチリとした肉付きで、密着すると二度と離したくなくなるほどに瑞々しい。水着の感触もどこか新鮮だ。

 ただでさえ結合感の強い対面座位だが、奥底まで突き刺す男性器と、それを根元まで呑み込む女性器であれば、より深い一体感を生み出す。それは本能レベルでの精神的な充足を生んだ。

 二人して目を瞑り、「はぁ……」と感嘆の吐息を上げた。

 瞼を開けて視線を交わすと無言のままキスをする。

「やばい。めっちゃ気持ち良い」

 渚の腰に両手を添えながら、全身の細胞を歓喜に震わせた。確かにゴムは極限まで薄いようで、渚の熱が直と言ってもいいほどはっきり伝わる。

 渚は俺の肩に両手を置きながら同意の頷きをしてみせる。

「わかる……あたし達ってすごくピッタリと繋がるよね……」

「相性良いんだろうな」

「親友だしね」

「それは関係無いだろ」

 軽くキスをする。そして互いにゆっくりと腰を振り出した。別に打ち合わせをしたわけでもないのに、俺が引けば渚も引き、押し出し合うタイミングも重なるものだから、肉竿と蜜壷が効果的に長い距離を摩擦する。

「でもほら、動きも一緒じゃん」

 非常に緩やかなストロークにも関わらず、一回一回の抽送で身を焦がすような痺れが背中を昇る。

「友達で思い出したけどさ、お前をカラオケに誘えって言われたんだけど」

「誰に?」

「クラスのとある男子」

「それは下心有りな感じ?」

「そりゃ多少はあるんじゃね。俺とお前じゃないんだし」

「じゃあパスで」

「そこは俺の顔を立てるという事で一つよしなに」

「ていうか友幸居るんだしさ」

 ゆっくり腰を振り合い、合間合間に唇を重ねながら世間話に興じる。

「別に告白しようとかそういうんじゃないって。単純にお前と遊びたいんだってよ」

「ん~」

 渚は困った様子で視線を逸らすと、一転、何かを閃いたのか笑みを浮かべる。

「それはあれかな? マサキみたいにあたしを可愛いと思ってるから?」

「蒸し返すんじゃねーよ」

「ちょっと本気で照れてんじゃん。ウケる。んっ、んっ、あっ」

 口を滑らせた事を後悔する。

「で? カラオケ行く? 行かない?」

 照れ隠しで語気が強くなると共にストロークにも力が籠もる。

「あっ、はぁっ、あっんっ……ていうかさ、その話後でいい? 今はマサキとのセックスに集中したいんだけど」

「今決めろって」

 引き続き照れ隠しの為の強気の交渉。

「んっく、ふぅ、うっ、んっんっあっ……じゃあさ、一個だけ聞かせて」

「なに」

「本気であたしの水着姿、可愛いと思った?」

「やけに食いつくな」

「だって、マサキにそんな事言われた事無いし」

「正直に?」

「正直に」

「……可愛いと思ったよ」

「百点中何点?」

「正直に?」

「正直に」

「……百点」

 渚はにひひと笑うと唇を押し付けてきた。

「ちょっと嬉しい」

「ちょっとかよ」

「そりゃ彼氏に言われたわけじゃないし」

「そりゃそうだ」

「でも親友に言われても嬉しいっちゃ嬉しい」

 そう言いながらキスをする。腰も振り合う。

 ちゅっ、ちゅっ。

 ぬちゅっ、ぬちゅ。

 上下の口が淫らな音を鳴らすが、問答の雰囲気自体は至極あっさりとしていた。

「それで、カラオケは来てくれるのか?」

「しゃあない。マサキの顔を立ててあげる」

「サンキュ」

「その代わり、ここからは、ちゃんとエッチに集中してね」

「まかせろ」

 渚の桃尻を掴むと、ズンズン突き上げる。

「あっ、あっ、あっ、ばかっ、誰が急に激しくしろってっ、あっあっあっ」

 顎を引いて甲高い声を上げる。目の前にあるビキニで包まれた爆乳が上下に揺れた。

「やばっ、これ、すぐ来そう」

「対面座位好き?」

「……好き。友幸とはいつもこれでしてる」

 友幸が対面座位を好むとは、意外だった。

「その腰の動きもメイドイン友幸?」

「正解。どうこれ?」

「前後に擦りつけるのエロい」

「おちんちん気持ち良い?」

「最高っす」

 渚は嬉しそうに口角を上げると、「うりゃ、うりゃ」とからかうような大袈裟なグラインドをしてみせる。それに伴いぬっちゃ、ぬっちゃ、とやはり大袈裟な水音が鳴った。

「どうよ? んん?」

「うむ、苦しゅうない。そのまま続けろ」

「任せろ。おりゃ、おりゃ」

 ぎし、ぎし。

 くちゅ、くちゅ。

 何とも楽しそうに腰を振っていた渚だったが、不意に眉根が下がり、艶っぽい色が顔に出始める。

「これの欠点は、あたしも気持ち良くなっちゃうんだよね……んっんっ、はっあっ……あっあっ、いいっ、あっいっ、やだっ、腰溶けそう……」

 渚は顎を引いたまま上目遣いで俺を見る。

「なんか、すごく気持ち良いから、あたしもつい口滑らせちゃうけどさ、正直マサキの見た目はタイプだったりする」

「マジで?」

「マジで」

「百点中何点?」

「百点。見た目だけね」

「おいおい。俺に惚れるなよ」

「百パー無いから」

 渚は愉快に笑いながら即答した。

 その間もベッドはギシギシと軋みを上げ続ける。

「んっ、んっ、あっ、あぁっ……マサキも、いくらあたしを可愛いと思ってるからって、好きにならないでよね」

「良く見ると中の下くらいだったわ」

「あ、そういう事言っちゃう?」

 前後する腰つきが激しさを帯びる。

 ギッシ、ギッシ。

「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」

 水着可愛い発言を攻められてばかりなので、こちらも反撃する。

「さっきお前さ、友幸に電話で『好きだよ』とか言ってなかった?」

 にやにやと馬鹿にする笑みを浮かべながら突き上げる。

「やっ、あっ、はぁっあっ、あっあっ……そりゃ言うでしょ、好きなんだから」

 そんな真っ向に返されると茶化す気にはなれない。

「卒業したら結婚すれば?」

「あたしはぶっちゃけそれでもいいんだけどね……あっあっあっあっあっ、やだっ、これすっごい好き……」

「この角度?」

「うん、それっ、あっあっあっ! あっいっ、あぁ、いいっ、マサキっ、あっあっ♡」

 互いにピストンの具合を調整し合って、より身が蕩けるような繋がり方を模索していく。体温と共にセックスに熱が帯びていく。 

 どちらからともなく唇を重ねた。グロス要らずの艶やかな薄い唇に、己の唇を滑らすように貪る。身体がゾクゾクと甘美な痺れに蝕まれる。

 渚ともっと深く繋がりたいという衝動が、頭の中で火花を散らせた。

 もう少しで舌を入れそうになってしまった。渚も同様の危険を感じ取ったのか、苦笑いを浮かべた。

「危なかったね」

「ギリセーフ」

 渚はぎゅっと俺に抱きつき、肩に顎を乗せた。胸に当たる豊かすぎる乳房が、ビキニの布を挟んで潰れる。

「……マサキともっと深く繋がりたいって思っちゃった」

「一言一句同じ事考えたわ」

「やっぱり親友だね。あたし達」

「だな」

 離れると恋人キスの欲望に負けそうなので、頬と頬を密着した体勢のまま渚を揺らす。

「あっ、あぁっ、はっあっ……あんっ、あんっ、あんっ」

「強くしていいか?」

「うん……丁度、マサキがもっと欲しい感じ」

 ふんわりとした掴み心地の、安産型の臀部をきつく握りしめ、ガツガツと渚を責め立てる。

「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」

 喘ぎによる吐息が、耳を直接息吹く。

 渚の爪が俺の背中を引っ掻くが、渚の膣が気持ち良すぎて痛みを感じる暇が無い。

「あっいっ、あっあっい♡ ゴム薄いから、マサキのおちんちんがいつもよりエッチな形してる……あんっあんっ、はぁっあっ、やばいイキそう……あぁやばいっ、はっん……マサキ、ごめん、先にイってもいい?」

「いいぞ」

「マサキはどんな感じ?」

「まだもう少し」

「じゃあ一回イっとくね」

「おう」

「あっあっあっあっあっ! マサキっ、マサキっ、あっそれ、すごっ、あっあっ、いいっ、あぁイクっ、イクイクイクっ! イっちゃうっ!!!」

 一際大きなよがり声と共に、ビクッビクッと身体を痙攣させる。搾り取るような膣の収縮は相変わらずで、ピストンの中断を余儀なくされるほどに締め付ける。

 渚が絶頂に身を置く最中、しがみつくように俺の首筋を激しく吸い続け、時には歯形が残りそうなくらい甘噛みをしてきた。

「はぁっ…………はぁっ…………んっ、く……はぁ、はぁ……はぁ、はぁ…………いいよ、動いて」

「くすぐったくない?」

 様子を窺いながら、渚をゆっくりと上下に揺さぶる。

「んっ、んっ、これくらいなら、大丈夫……んっあっ、やっ、マサキ、セックス上手すぎだってば……」

 絶頂により弛緩していた渚の全身が、再び強張り始める。

「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」

 俺の背中に回った渚の腕に力が籠もった。

「やっばい……ダメな事言っちゃいそうなくらい気持ち良い……」

「一回止めるか?」

「無理……ここで止められたら切なすぎて死ぬ」

 渚は肩から顔を離すと俺と真正面から視線を合わせた。眉を八の字にしてとろんとした顔をしている。

「……あのさ、我慢出来なさそうだから、一回口に出してスッキリするね……聞かないでよ」

 そう言うと渚は両手で俺の耳を塞いだ。

 俺は構わずゆったりとしたピストンを続ける。

「あっ、あっ、あっ……彼氏より、気持ち良い……」

 かなり不明瞭に濁ってはいるが、内容は聞き取れてしまった。言い出すことも出来ずに黙るしかなかった。

「マサキのが上手だし、おちんちんもおっきいから……友幸よりマサキのセックスのが気持ち良い」

 渚は手を離すと、再び肩に顎を乗せて背中に腕を回した。

「オッケ。すっきりした」

 俺は何も聞かなかった事にする。それでも雄としての優越感を刺激されたからか、明らかに渚の中を貫く俺が更に膨脹した。

 渚もきっと興奮した俺に気付いただろうが、やはりそれについては言及しなかった。

「ほんと、ゴム薄いよね」

 誤魔化すように渚がそう言った。

「な。めっちゃ熱いの伝わるもん」

 俺もそれに乗っかって、誤魔化しの会話を続ける。

「こっちも、んっ、マサキの形が丸わかりだから、すごくエッチな感じする……中がシコシコされてるっていうか」

「こんだけ薄いと、さっき破れたのもこの所為だったのかもな」

「絶対そうだって。あたし今まで一回も破った事ないし」

「中で破れちゃったりして」

「不吉な事言わないでよ。マサキのカリ深いんだから、そこで破れちゃいそう」

「いやないだろ」

「ないよね」

 大抵の惨事は、油断や慢心から構成される。俺達のような小市民にとっても、それは例外ではない。

 その時、俺達二人は下腹部から確かに聞いた。

 プチン、と何かが破ける音。

 音というよりは、肉を伝った衝撃。

 耳元で渚が恨めしそうに呟く。

「……だから言ったじゃん」

「マジかよ」

 内部で如実に感じる、破れたゴムが根元に向かって縮んでいく感覚。それに伴い、裸になった陰茎が膣と直接接触していく感触も鮮明になっていく。

「……やばくない?」

「そりゃやばいよ」

 ゴムは完全に根元部分に縮小された。

「生ハメ……になっちゃってるよねこれ?」

 破った包装に目を向ける。

「不良品か? 結構有名なメーカーなのに」

「それよりどうする?」

 渚がやや不安そうに抱擁を解き、両手を俺の胸板に当てた。

 俺は顔をしかめながら答える。

「……正直に言うな」

「うん」

「渚の膣、気持ち良すぎて少しでも動いたら出そう」

 渚は苦々しい笑みを浮かべる。

「こっちも一緒。ていうかぶっちゃけ動かなくてもイキそう」

「とりあえず、今は落ち着くのを待とう」

「賛成」

 対面座位で繋がったまま、俺達は微動だにしないよう努める。二人して深く静かな呼吸を続け、互いの絶頂が通り過ぎるのを待つ。

 渚がやや不安げに尋ねてくる。

「動かなかったら生セックスじゃないよね?」

「そうじゃね。知らんけど」

「よし。じゃあセーフ」

 しかし世の中にはポリネシアンセックスというものが存在するように、抽送を伴わずに昇り詰める結合が存在する。今まさに、俺達はその状況に身を置いてしまっている。

 摩擦による過度な刺激に頼らず、互いの肌や粘膜の感触をじっくり味わえる。味わってしまう。渚の極上の抱き心地を今一度再確認してしまう。

 触れ合う肌はどこもかしこもスベスベしていて、きゅうきゅうに締め付ける肉壷は細かいヒダヒダが纏わり付くように蠕動している。

 そして何より、渚の奥底に存在する口を、亀頭が持ち上げるように突き刺す感触が直接伝わってしまう。それは渚も同じのようで、俺の胸中を代弁するかのように口にした。

「……恋人キスしちゃってるね」

「かなり深いやつな」

 鈴口と子宮口による強い啄みを互いに感じる。

「唇でもしたくなるね」

「キスでもイっちゃいそうだからまずい」

「だよね」

「あのさ、今日危ない日?」

「少なくとも、安全な日ではないかな」

「マジか」

「あのさ、わかってると思うけど……」

「うん」

 渚が気まずそうに口角を上げた。

「……ぱっくり開いちゃってるから」

「だろうな。ちょっと入っちゃってるよなこれ」

「うん……赤ちゃん作る部屋に、マサキの先っぽがこんにちわしちゃってる」

「……確か我慢汁でも妊娠するんだっけ」

「すごい低確率らしいけど……もしかして漏れちゃってる?」

「多分ダダ漏れ」

「きゅっと元栓締めれないの?」

「無茶言うな」

「多分大丈夫だろうけど、マサキの精液すごく濃いからなぁ……」

「ていうか、もう孕ませていい?」

 場を和ませようとしたジョークだったが、あまりの気持ち良さに頬が引き攣る。

「……だめ」

 渚の返答にも切れ味が無い。

 なるべく普段通りを装いやり過ごそうとするが、流石に生の粘膜接触は一味違った。

 しかし俺はともかく、渚の昂りが収まっているようには見えない。より肌は汗ばみ、より呼吸の間隔が短くなり、腰は時折切なそうにもじもじと揺れた。表情からは笑みが消え、今にもとろりと溶けそうな危うさがある。

「……あのさ、マサキって生でしたことあるの?」

「ない」

「……あたしもない」

「友幸とないんだ」

「ないよ。何回か向こうがしたがったけど、やっぱり学校くらい卒業した後じゃないと、万が一が恐いかなって……んっあっ……こら、なんでおっきくすんのっ」

「いや、男の都合で」

「何それ意味わかんない……んっ……はぁ……はぁ……でもあれだね……相手が初めてだと、ちょっと嬉しいかも」

「だろ?」

「ちょっとだけだけど……はぁ、はぁ、んっく、ふぅ……」

 渚の息遣いは明らかに浅くなっていた。

「……マサキ」

「なんだよ」

「これまだ生セックスじゃないよね? 動いてないもんね」

「……多分」

「……マサキ」

「なに」

「……お腹が熱い」

「そりゃ人生で一番ってくらい勃起してるからな。こっちはこっちでお前の生まんこがめちゃくちゃ熱いんだから我慢しろ」

「そうじゃなくて……いやそうなんだけど」

「なんだよ」

「だから、その……」

 渚は一旦言い淀むと、生唾をごくりと飲み込み、耳を赤く染めて言葉を続けた。

「マサキの我慢汁……結構出ちゃってるよね?」

 その言葉で更に膨脹する。破裂しそうなほどに苦しい。

「やっ、バカっ……だ、か、ら! これ以上大きくすんなっての!」

 渚の両手が頬をつねる。

「お前が変な事言うからだろ」

 両手が頬から落ちて肩に落ちる。

「だって、我慢汁で子宮がぽかぽかするんだもん…………もうだめ、我慢出来ないから一回だけキスしない?」

「……ちょっとだけな」

「了解」

 ちゅ、と一度だけ軽く触れ合わせる。それだけで身体は大きく絶頂に傾いた。

 渚は顔を離さずに、「……唾も欲しいんですけど」と子供がおねだりするような目線を送る。

 唾液を乗せた舌を差し出すと、渚がそれを唇で挟んで吸う。

 渚はこくりと喉を鳴らして嚥下すると、きゅっと口を結んで、弱々しい表情で俺を見つめる。

「なんだよ。これ以上は俺やばいって」

「……ていうかゴメン、あたしイキそう」

「いやそれはまずいって。お前イク時めっちゃ締め付けるんだから! こんなヒダヒダの膣でそんな事されたら……」

「なんか、マサキの唾呑み込んだ時、お腹の中でもこんな感じなのかなって考えちゃったら、やらしく感じちゃって……あっ、あっ、やばっ、来る……」

 俺の舌が男性器で、唾液が我慢汁、口を女性器に置き換えて想像してしまった渚が、抗えない快感に襲われた。

「駄目駄目! 我慢しろって!」

「あぁ……ごめん、無理っぽい……もう限界……はぁ、っあ……」 

 微かな摩擦すら許さない単なる結合のまま、渚の身体が縮こまりつつ小さく震えだした。ただでさえ狭い膣道がきゅうっ、と男根を情熱的に包み込む。

 渚は申し訳なさそうに「……なんとかマサキは耐えて」と息も絶え絶えに言った。

「いや絶対無理だから」

「そこをなんとか」

「無理無理」

「……んっ」

「あっ、バカ!」

「生おちんちんでイクけど、動いてないしセックスじゃないから……ギリセーフだよね」

「俺がイったら完全アウトだろ」

「……良く見たら中の下の女の生ハメくらい我慢してよ」

「嘘です渚さんは可愛くてスタイルも良いめっちゃイイ女なんですこれ以上締め付けられたら我慢出来ません」

「あたしだって、マサキの見た目だけはタイプなんだから、そんな人の生ちんぽが奥まで刺さったら、我慢出来ないっての…………あぁ、やばっ、もうそこまで来てる……♡」

「おいマジで、渚!」

「ごめん、イクっ……あっ!」

 渚が辛そうに目と口を閉じたその瞬間、筆舌に尽くし難い快感が、限界まで張り詰めた男根を襲う。

 うねうねと蠢くイソギンチャクが四方八方から、それも男根を押し潰さんばかりの力で押し付けられる。

「うぐぅ!」

 過度な性的快感が脊髄をショートさせ、頭の中に火花を散らせる。

 俺は喉を限界まで反り返らせ天井を見上げた。それは生理的な反射だったが、結果的にはそれが奏功した。目の前には水着を纏っているとはいえ、扇情的すぎるボディラインが存在する。そんなものを目にしながらこんな刺激を与えられれば、ひとたまりもない。

 しかし肉壷は、引き続き俺を射精に誘う。

「んんっ、はっあっ、くぅう♡」

 渚の甘い声も,俺に喜悦を与える。

 もう限界だ。

 肉槍の破裂が秒読み段階に入る。

 出したい。

 射精したい。

 全身の細胞が俺に命令する。

 ロックオン済みの、この女の子宮目掛けて、遺伝子情報を送り込ませろと。

 その命令が快楽に変換され俺を誘惑する。この濁流のような本能に流されてしまいたい。頭がおかしくなりそうになる。

「ぬうううううううう!!!」

 歯を食いしばりながら雄叫びを上げた。奥歯が砕けてしまいそうなほどの隠れた膂力。火事場の馬鹿力ならぬ濡れ場の馬鹿力。

 視界がバチバチと点滅する。

 一世一代の魂の燃焼。

 両手で渚を持ち上げつつ腰を引いた。生じたのは僅かなズレだが、男女の結合が解除されるにはギリギリ足りた。渚の腰が俺の両太股の間に落ちる。

 イソギンチャクの如き肉壷から解放された男根は、その逃亡の際の摩擦でトドメを刺されていた。つぶつぶとした膣壁による生摩擦の感触は、たった一度の抜き差し、否、抜きだけで至福の極みに達した。

 肉槍がぶるんぶるんと、派手に揺れながら精液を撒き散らす。まるでバッファローが助走を始める直前の角を思わせる暴れっぷり。

 糊のような精液は、渚の頭を優に越えて彼女の脳天に着弾する。渚はそれを避けようとは一切しなかった。じっと俺を見つめながら射精を受け止めた。まるでそうするのが当然の義務だと言わんばかりに。

 手を触れずとも白い噴水が続く。粘液の塊は時折渚の頬や顎にも打ち付けられたが、その大半は首元から下に集中し、水着は掛かっていない場所の方が少ないほどに精液塗れになった。

 渚は顎から垂れるゼリー状の粘液を指で掬って舐め取ると、「……良かった。こんな射精、中でされてたら絶対妊娠してた。精液も味濃いし」と安心したように微笑んだ。

 そして「……ナイスプレー」と慎ましく俺を称えると、そのまま顔を胯間に埋めて、生のまま射精直後の男性器を頬張った。

 以前はフェラチオもコンドームを着用するよう渚の方から申し出ていたが、お礼と贖罪を兼ねてか、自ら生で口の奉仕を行った。

 感触においては生膣とは比べようもないが、それでも「生まれてきて良かった……」とついつい独り言が漏れる程度には多幸感に溢れた。

 竿に付着した精液も渚は丁寧に舐め取り、そして尿道に残ったそれらも頬を凹ませて、「じゅるるるる」と音を鳴らしてまで吸い取った。そして例外なく全て呑み込み、胃に収めた。

「綺麗になったか?」

「ん。綺麗綺麗」

 渚が顔を上げる。

「生おちんちんでイっちゃったけど、動いてないから生セックスしたわけじゃないし、ギリセーフだよね」

 俺に同意を求めるが、返事をする余裕など無い。人生最大の射精を我慢した俺の心と身体が、行き場を失ったままだ。

「……おちんちん、まだギンギンだね」

 水風船が破裂したと思ったら、その下から更に膨らんだ水風船が顔を出した。マトリョーシカ式の怒張男根。

「待ってね、フロントに電話して新しいゴム持ってきてもらうから。すぐにハメて抜いてあげるから」

 渚がベッドの上を四つん這いで内線に向かっていく。揺れる安産型の臀部が、曖昧模糊としていた俺の意識を完全に打ち砕く。

 背後から近寄り、ビキニボトムの腰紐を掴むと一気にずり下ろす。

「わっ」

 驚き振り向いた渚を突き倒すと、仰向けに寝転んだ彼女のビキニトップを剥ぎ取った。精液で白濁した水着一式をベッド脇に投げ捨てる。

 呆気に取られている渚の両脚の間に腰を下ろし、肉食獣のような荒く機敏な動きで穂先の照準を秘裂に合わせる。竿に精液が付着していない事を確認するだけで精一杯の、切迫した精神状態。

 渚は俺が尋常ではない様子に気付きつつも、その原因が自身の勇み足で一人勝手に絶頂してしまい、俺に無理な我慢を強いてしまった自分にあるという負い目を感じていたのだろう。

 それでも渚は言わなければならない。彼氏が居る女の子として、安全日ではない女の子として言わなければならない。

「……だめ、だからね?」

 後先考えなくて良いのなら、自責の念も相まって、友達として俺の願いを叶えてあげたいという心苦しさを表情に浮かべる。しかし、暴走状態の俺はその心の隙を押し広げるように、生ちんこを生まんこに埋没させていった。

「んっ……くっ」

 渚は唇を噛みしめながら、腹筋の出来損ないのように首を持ち上げる。

 今度はアクシデントではなく、自らの意志で生挿入を果たす。得も言われぬ充足感で満たされた。

「ダメ、だってば……」

 腰を引く。

 にゅるる。

 不純物を介さない、性器同士による摩擦の音は、ゴム着用のそれとは微妙な差異を感じた。

 腰を突き出す。

 にゅるんっ。

「あぁっ」

 うねる膣壁に、つぶつぶのオプション。

 たった一回の抜き差しで俺は悟った。これを繰り返したら一分保たない。しかしペースを調整するような余裕などあるはずもなく、俺はただただ遮二無二腰を振る。気が触れてしまいそうな、我慢の鬱憤を晴らすように腰を叩き付ける。

「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」

 にゅるっ、にゅるっ、にゅるっ、にゅるっ。

「……マ、マサキさん」

「何すか」

「これって、いわゆる生セックスになってません?」

「その可能性は否定しきれない」

「何パーくらい?」

「おおよそ百パー」

「だよね……んっんっ、はぁっあ……避妊してないし、おちんちん行ったり来たりしてるしで、百パー生セックスだよねこれ…………あっやぁっ、いっいっ、あっあぁん♡」

「まぁ、ほら、あれだ。友達でも生セックスくらいするって」

「いつから日本はそんなフリーセックスな社会になったのさ……あっ、あんっ、はっあっ……あっあっあっあっ! んっはぁっ、あっ、それっ、あっあっ♡ やっあっ、いいっ、いっ、あんっあんっあんっ♡ ちょっ、やばいって、マサキさんマサキさん、あたし速攻でイキそうなんですけど……」

「いいぞ。もう好きにイケ。俺もお前のおまんこでイク気満々だから」

 渚の膝に両手を置き、にゅるにゅると腰を前後させながら、「ちゃんと外で出すから心配すんな」と付け加えた。

「絶対、だからね……? あっ、あっ、あっ、あっ、あっ♡ イクっ、イクっ、あぁイクっ!!!」

 ビクビクっと痙攣する。相変わらずの、過剰なほどの締め付けによる、過剰なほどの快感。

「……あぁもう、折角ギリセーフで留まってたのに、結局生セックスでイっちゃった……」

 一息つく渚を尻目にピストンを続ける。

「あっ♡ あっ♡ こら、まだイってっ、あっひっ、いっいっ、ひぃっいっ♡」

 極限まで締め付けた渚の膣は文字通り男根を捕えて離さない。腰を前後させても性器同士に摩擦が発生しづらいほどの強固な抱擁。

「あいっ、いっ、ひっんっ♡ だめっ、だめっ、死んじゃう……イってるおまんこの気持ち良い所、生チンポのカリでゴシゴシされ続けたら、死んじゃうって!」

「骨は拾ってやる」

「アホかっ! あっ♡ あっ♡ あっ♡ イック、イック、イック♡ イってるのに、イっちゃうっ! わけわかんなくなるっ! ふっう……んっ……ンッグぅ♡ はっ、はっ、はっ……うっそまた来るっ、イッく♡ はぁ……はぁ……はぁ、ちょっと待って、勘弁して、連続で来すぎだって……んん……ひぃっ、っぐ!!!」

 渚は一呼吸する度に昇り詰め、心身ともにバラバラになりそうな絶頂を繰り返した。その度に中の俺を激しく抱きしめる。

 既に男根は感覚を失っていた。その所在すら不明瞭で、あれほど力強く勃起していた肉槍が、マグマのような渚の膣の中で輪郭を失い、渚の一部となっていた。

 不思議な一体感に身を委ねていると、渚が同様の事を口走る。

「どうしよ……おまんこ溶けちゃってる……あたしがマサキのおちんちんになっちゃってるみたい」

 互いの境界線が有耶無耶になる。

 幸せな快感が下腹部に凝縮された。

「出る」

 普段の射精の前兆とは全く別モノだったが、その言葉が思わず口を衝いて出た。

「……マサキ」

 渚が何かを訴えかけるような視線を向ける。

「わかってる。外で出すから」

「……そうじゃなくて……別にいいよ」

「え」

「……マサキの好きな所で、出していいよ」

 俺が返答に詰まると、渚が続けた。

「マサキのおちんちんがこんな風になっちゃったの、さっきあたしが勝手にイっちゃった所為だし……だから今度は、マサキが好きなように気持ち良くなってくんないと、なんかフェアじゃないというかですね……」

「……そんな事言われたら、このまま出したくなるに決まってるだろうが」

 渚は小さく「ん」とだけ言うと、覚悟を決めたように瞼と唇をぎゅっと閉じた。

 そういえばこいつは昔からこういう所があった。当たりのアイスを引き当てても、絶対にそれを一人占めしない。俺や友幸に辛い事があると、必ず一緒に背負おうとする。嬉しい事もそうじゃない事も、友達なら分け与えて当然という考えなのだろう。

 友達としての渚の一面が色濃く見せつけられた俺は、胸がほんのりと温かくなった。その温もりは性器を擦り合って発生する熱と比べるとか弱く感じるが、なにものにも代え難い尊さに溢れていた。俺と渚の間に愛などという大層な感情は無いが、どんな関係性にも負けない強い繋がりを改めて感じた。

「顔に掛けたいから座って」

 そう言いながら結合を解除して、仁王立ちになる。中出しをしなければ収まらないという男の業は、いつの間にか霧散していた。

 渚は一瞬きょとんとしたが、嬉しそうに身を起こして俺の前で胡座をかいて座ると、「やっぱり男女の友情って成立するよね」とやはり嬉しそうに言った。

「しないだろ。俺お前の事、女と思ってねーし」

 俺に向けて顔を上げる渚に対して、自分の手で扱きながら悪態をつく。

「渚ちゃん可愛いよ~って言ってたのは、どこの誰だったかな?」

「顔は可愛いから仕方無い」

「素直でよろしい」

 ちゅ、と亀頭に口づけをする。

「やっぱ良く見ると中の下だわ」

 渚が無言で膝を平手打ちする。

「……出すぞ」

「よっしゃ来い」

「口開けて」

 渚は口を開ける前の一瞬、少しだけ神妙な顔と声で、「……マサキ、ありがとね」と呟き、「んっ」と口を開けて舌を差し出した。そこに目掛けて射精する。とはいえ生中出し直前までいった男根から放たれる精液は、三度目とはいえおびただしい量と勢いで、瞬く間に渚の顔全域を白く染め上げた。開いた口の中にびゅるびゅると放たれていく精液も、時々口を閉じては嚥下をして、また口を開いて吐精を受け止め続けた。

 勢いが弱まる頃の渚の顔は、精液が付着していない箇所が見当たらないほどに塗り潰されていた。

 鈴口からどろりと垂れる最後の塊を、渚は直接舌で受け止め、それを飲み干すと「マサキのザーメン、癖になりそう」と笑い、陰茎を口に含むと「じゅるるる」と吸った。

「それめっちゃくすぐったい」

「全部吸い出してやる」

「やばいって。マジでマジで」

 射精直後に渚の口淫は思わず腰が引ける。しかし渚は逃がすまいと食いついてくる。

「さっきの仕返しでーす……じゅるっ、じゅるるるる」

「てめぇ、いい加減にしろよ……あぁそれ、すっげ」

「じゅっぽ、じゅっぽ、じゅぷ、くちゅ……やば、マサキの生ちんぽ美味しい」

「もう勘弁してください……はぅ」

「やーだ。もっとザーメンちょうだい……ちゅうぅっ、っく……ちゅっぱっ、じゅるるっ、じゅぽっじゅぽっじゅぽっじゅぽっ」

「うぉぉ……この野郎!」

「きゃっ」

 まるで猫がじゃれ合うような取っ組み合いから、組んず解れつを経てシックスナインの体勢となる。

「あっ、だめっ、まだそこ敏感……はぁ、ん」

「男女のくせにクリトリス勃起させてんじゃねーよ」

「やっ、吸っちゃだめっ、あぁっ♡ んっ、んっ、あっ♡ そっちがそのつもりなら、こっちだってガチで反撃するからね……んっ、れろ、んっちゅ、ちゅぱっ、ちゅぱっ、くちゅっちゅぅ」

「くっ、やるじゃねぇか……あの、渚さん」

「降参?」

「俺の負けでいいから、アナル舐めしてくれない?」

「いいよ。した事ないからやり方教えて……ちゅっ、ちゅぱっ、んっちゅ、くちゅっ、んっ、ふぅ、ちゅぅ、ちゅっちゅっ」

 じゃれ合うような後戯。

 生による結合ですら俺達の間には何も特別な感情を生まなかった。肌を重ねる度に深まるのは友情だけだ。

 ちなみにこの後、四つん這いになってアナル舐めされながら搾乳するように手コキをされて、四度目の射精を果たした頃、丁度友幸と合流する時間となり、三人でいつも通り遊んだのであった。

 渚は結構丁寧に奉仕をするクチなので、肛門への舌の這わせ方はしっかり且つねっとりとしていた。合間に挟む肛門へのキスも「ちゅっ、ちゅっ」と啄むようなものから、「ちゅう」っと音を鳴らして吸い付くようなものまでバリエーションに富み、初めてだったわりには非常に満足出来た事を記しておきたい。

 チャイムが鳴る。

 来年の今頃には耳にする事がないであろうその音色も、本来ならばセンチメンタルな気分にさせるのかもしれないが、夏休みも後半に差し掛かった真夏の盛りではそんな殊勝な心持ちにはなれない。

「それじゃ、今日やった所をきちんと復習しとくように」

「う~っす」

 力を使い果たして机に突っ伏す。ひんやりと冷たく気持ちが良い。

 先生が教室を出て行くと同時に、友幸と渚が入れ替わりで顔を出す。

「お疲れのようだな」

 友幸が俺の隣に立ち、渚は前の机の椅子に座った。

 俺は額を机に押し付けながら口を開く。

「おい元会長。クーラー導入してくれ。こんな暑くちゃ頭に何も入らねー」

「そんな金は無い」

 友幸が笑い飛ばすと、渚がパシパシと俺の後頭部を撫でるように叩く。

「どうせクールダウンしても何も入らないでしょ。マサキのここ」

「良い事思いついたわ。お前ちょっと援交して予算稼いでこい」

 手の平が拳骨に変わり、ごつんと鈍い音を鳴らす。友幸が更に愉快そうに笑った。

「扇風機を一人占めだしいいじゃないか」

「遠回しに補習受けてるの俺だけって馬鹿にするのやめてください」

 机で額を冷やしながら盛大にため息をつく。

「ていうかお前らも夏休みだってのに毎日毎日朝っぱらからよく学校来れるよな。最後の夏休みだぞ?」

「あたしは夏休みの学校って結構好きだけどな」

「うむ。普段と違う趣があるな」

「俺は静かで不気味だから苦手だわ」

「人口密度少ないからかな。空気が綺麗な気がする。窓から入ってくる陽射しとかも爽やかな感じしない?」

「しねーよ。ただの紫外線だわこんなもん」

 渚はおどけるように肩を竦めた。

「マサキ君はロマンが無いね。そんなんだから最後の夏休みなのに彼女が出来ないんだぞ」

「食い気と運動しか頭にない単細胞に言われたくねーんだよ」

「その単細胞に勉強で負けてんのは誰かなぁ?」

「俺です。泣きそう」

「泣くな泣くな。おーよちよち」

 わしゃわしゃと無造作に髪を撫でてくる。

「それで、今日はもう終わりなのか?」

 渚の手を払いのけるように上半身を起こして友幸の質問に口を開いた。

「あ~。補習自体は終わりだけど、折角だしこのまま課題やってくわ。お前らは?」

「俺はまだ掛かるかな。もしかしたら昼をまたぐかもしれん」

「げー。大変だねお前も」

「あたしはもう何も無いよ」

「じゃあさっさと帰れ暇人」

「え~。どうせなら皆で一緒に帰ろうよ」

「俺は無理かもしれんな。まぁ時間が空いたらまた後で様子を見に来る。渚も別に無理して俺を待つ必要はないぞ」

「え、やだ。待つ」

 渚の指がちょこんと友幸のスラックスのポケットを摘まんだ。こういうところは素直に可愛らしいと思う。皆でとは言ったものの、やはり渚としては友幸と一緒に帰りたいという前提があるのだろう。

「そうか。まぁマサキの勉強を見てやってくれ」

 友幸は相変わらず頼り甲斐のある笑みを浮かべると、俺に「それじゃあな」とだけ言い残して足を廊下に進めた。「おう。生徒会も頑張れ」と背中に声を掛けると、振り返らずに片手を上げて応じた。

 渚もその背中を追って小走りで廊下に出た、と思ったらすぐに戻ってきた。

「なんだ。お別れのキスでもしてきたんか?」

 珍しく渚が照れくさそうに視線を逸らしながら再び前の席に腰を掛けると、「正解」とだけ呟いた。

「あーあ。校内で不純異性交遊だわ。これはスキャンダルですわ」

 プリントを机に広げながら囃し立てる。

「別にいいでしょ。もう会長じゃないんだし」

「でも友幸って結構その辺真面目だからな」

「そうなんだよね。まぁ立場もあるからしょうがないんだけど」

「でも正直わかるぞ。俺も同じ学校の彼女作って学校でエッチしたかった」

「恋人作りの動機が不純すぎる」

 渚は頬杖をつくと、苦笑いを浮かべながら下敷きで風を扇いだ。前髪がそよそよと控えめに揺れる。

「後輩紹介してくれ」

「そういや前から言ってたね。誰か好みの子居たっけ?」

「誰でもいいから片っ端から話つけといてくれ」

「男らしいんだか何なんだか」

 いくつかプリントの問題を手早く解くと、俺は再び机に突っ伏した。

「あ~~~。彼女と学校でイチャつきて~~~」

「そんなに?」

「卒業まで一年切ってると思うと尚更後悔が強まる」

「あ~」

「その辺に彼女落ちてないかなぁ」

「友達キスで良かったらあたしがしてあげるけどさ」

「マジで?」

 顔を上げる。

「……でも渚じゃなぁ……」

「何だ失礼だな君は。ほら来たまえ。夢を叶えてあげよう」

 渚が冗談めかして目を閉じて唇を突き出す。

 素早く顔を寄せて、ちゅ、と唇同士で音を鳴らした。

 目を開けた渚が「どう? 夢を叶えた気分は?」と得意気な表情を浮かべた。

「全然ダメだ。甘酸っぱさの欠片もねぇ」

「確かに」

 渚は愉快そうに鼻で笑うと、「ま、ちゃんと後輩紹介してあげるから卒業までに頑張りなよ。友達じゃなくて恋人とキス出来るようにさ」と下敷きで風を俺に対してパタパタと届けた。

「ていうかお前、今日ちょっとブラウス透けてね?」

「あー。いつもだったら白しか着けないんだけどね。夏休み中は結構油断しがち」

「水色か」

「可愛いっしょ」

「まずまずだな」

 互いに照れや気まずさは無い。肉体関係の有無に関係無く、俺と渚の距離は元々こんなものだ。流石に互いの相手が別の女友達や男友達ならこんな平静ではいられない。

 しかしそれはそれとして、谷間には生唾を呑み込んでしまうのが男の性というものだ。

「ちょっと勃起しちゃったじゃねーか」

「知らんがな」

「邪魔しに来たんなら帰れよ」

「あんたが勝手に集中乱しただけでしょ。透けブラ程度でだらしない」

「育ったよなぁこれ」

 シャーペンの消しゴム部分でブラウスの胸部を突く。ぷるんぷるんと押し返すように弾んだ。

 渚は動じる様子もなく、「重くて大変なんだから」とだけ言った。

 やみつきになる弾力。ぷにぷにと柔らかな肉丘への刺突を続ける。

「勉強しろ」

 渚の呆れの視線を無視する。

 俺はシャーペンを置くと、真正面から右手で胸を鷲掴みにする。

 もみもみ。

 もみもみ。

 渚は白けたような視線を送り続けるが無視。何故こいつの爆乳はこうまで俺の手の平を虜にするのか。頭だけは至って冷静で、相変わらず友達としか認識していない。いっその事、渚を好きにでもなれればもっと楽しめたのかもしれないが、そういう感情が湧き起こる気配は微塵も無い。

 それでもなんとなくキスしたくなって顔を近づける。渚も付き合いで仕方無くといった感じで目を瞑る。

 ちゅ。

「楽しい?」

「楽しい」

「あ、そ」

 渚曰く、普段と違う教室の空気と、ブラウスに透けた水色の爆乳が俺の夢を妥協させる。恋人じゃなくてもいいか、と。

「あのさ、渚さん」

「はい?」

「ついでにもう一つ夢を叶えたいんだけど」

「却下」

「はっや」

「どうせ学校でエッチしたいって言うんでしょ?」

「流石幼馴染み。以心伝心」 

「ここから飛び降りて無傷なら考えてあげる」

「ここ三階です渚さん」

「だから後輩紹介してあげるって」

「いやでもさ、仮にだぞ。仮に今から付き合えたとしても、卒業までに校内エッチの許可を得られるほどの信頼を得られる自信が無い」

「それはあんた次第でしょ」

「俺はな、こう見えて結構プラトニックなんだよ」

「ていうか、恋愛では肝心なとこでヘタレなだけでしょ」

 痛い所を突かれる。ガチの恋愛だと俺はやや慎重すぎるきらいがある。その点、渚は異性を意識しない友達なので非常に気が楽だ。

「……頼む。一回してみたいんだ」

 恥を忍んで頭を下げながら裏事情を話す。

 渚はげんなりするようなため息をついた。結構本気でげんなりしていた。

「……ゴム持ってんの?」

「……無いっす」

 更に億劫そうなため息と表情を浮かべる。

 渚は頭を掻きながら、「……ま、この前生でしちゃったし? 今日安全日だからいいけどさ」と面倒臭そうに言った。ツンデレとかではなくて、まるで友達とご飯を食べに行ったら、財布を忘れたから奢ってと言われた時のような、仕方無しにというオーラをびんびんに感じる。

「……で、どこでするの?」

 ジト目で肩を落としながらそう尋ねる。逆に俺は声を張り上げた。うだるような熱さも忘れて気分が高揚する。

「やっぱり保健室が王道だよな!」

「いきなりテンション高っ! 夏休みだし開いてないっしょ」

「体育倉庫も捨て難い」

「部活やってるし無理無理。あとサウナみたいになってるって」

「じゃあ……」


 補習課題を一時中断した俺らが向かったのは、教室近くの男子トイレ。

 人気が無いのを確認してから、手早く二人で個室に入る。

 渚が興味深そうに見回すと、押し殺した声で呟く。

「ふーん。女子と別に変わらないね」

 当然俺も声を絞って返事をする。

「でも綺麗だろ?」

「確かに」

 夏休みに入ってから始まった改装工事は終わったばかりで、ただでさえ使用者が限られる夏休みの学校のトイレは新品同様だった。女子とは違い、男子は個室の使用頻度が少ない為、もしかすると本当にまだ未使用なのかもしれない。

 閉めた扉に背を預ける渚は、先程までの億劫さを忘れたかのように俺を見上げながら、楽しそうな笑みを浮かべた。まるで悪戯を計画する小学生のように瞳を輝かせる。

「なんかちょっとドキドキするかも」

「流石に男子トイレは初めてだよな」

「え~、憶えてない? 小学校の時にさ、あったじゃん」

「あぁ肝試しっつって夜の公園行った時か」

「そうそう。でもあの時は三人一緒だったけどね」

「個室から悪霊の唸り声がする。ポルターガイストだって俺が騒いだんだよな」

「あたしら全員めっちゃビビってたよね。それで皆で手を繋いで扉開けたら、酔っ払いのオッサンがイビキかいて寝てただけっていう」

「あったあった」

 懐かしい思い出に、声量を抑えたままクスクスと笑い合う。

「でもこんな病院みたいな綺麗なトイレじゃなかったけどね」

「汚かったよな」

「ね」

 談笑しつつ、俺達はごく自然に唇を重ねた。渚は目を閉じて顎を上げ、俺はやや前屈みになりながら左手を渚の頭のすぐ隣に突いた。

 ちゅ、ちゅ、と軽く唇を突き合うと、「こういうの壁ドンって言うんだっけ?」と渚がはにかんだ。

 今度は深く唇を吸い合う。

 ちゅぅぅう、と音を引きずらせながら、俺の右手が渚の左太股に伸びた。むちむちと肉が詰まった触り心地に、すべすべと滑るような手触り。

 スカートを捲り上げるように徐々に手が昇っていく。

 ショーツの腰紐に指が当たると、そのまま臀部へと移る。

 渚の左手は俺の腰にそっとあてがい、右手は手の平で胯間をさすっている。

 桃尻を優しく鷲掴みすると、やけにショーツの触り心地が滑らかな事に気付く。

 唇を擦り合わせながら囁く。

「なんかサラサラしてる」

「生地が薄いやつだからかも」

 吐息が直接唇に掛かる。それを呑み込むようにキスを続ける。

 壁についていた左手も下ろして、両手で臀部を揉みしだく。つんと上を向いた尻肉は、むにゅりと指が沈み込むボリュームも兼ね備えており、たっぷりとした肉感で指先を愉しませてくれる。その動きに伴い、互いの胸部が密着する。

 ブラウス越しに伝わる巨乳の感触は生のそれとは違い、普段目にする渚の制服姿という日常感が背徳感に変換される。

 渚の右手もたださするだけの動きから、勃起した陰茎をスラックス越しに扱く動きにシフトしていた。

「ビンビンじゃん」

 唇が触れ合ってる距離で、渚が瞼を開けて茶化すように囁く。

「早く渚の中に入りたいってさ」

「へ~」

 渚はくすくすと笑いながらファスナーを下ろして逸物を取り出すと、指の腹で裏筋をくすぐるように撫でながら唇を吸ってきた。

「ちゅぅ、んっ、ちゅっ、く、ちゅぅぅう……ホントだ。入りたい?」

「入りたい」

「ていうか前から思ってたけど、よく友達で勃起出来るね」

「勘違いするな。お前の身体に興奮しているだけでお前に興奮しているわけじゃない」

「はいはい」

「どうせお前だって濡れてんだろ」

「マサキなんかで濡れるわけないじゃん……ちゅっちゅっ、んっちゅう、くちゅ、ちゅっ」

「じゃあ確かめてみるわ」

 俺が便座に腰を下ろすと、渚の下腹部が目前に位置した。

 腰紐を左右から掴み、するすると下ろしていく。

 膝下まで下ろした水色のショーツのクロッチは、じっとりと愛液で染みが出来ていた。

 そのままショーツを下ろしていくと、渚が協力するように片足を上げたのでそのまま剥ぎ取り、タンクの上に乗せた。

 スカートを捲り上げると、鼻先には薄い陰毛を生やした秘裂。

 健康的な肉付きの太股を少し開かせて顔を埋めると、そのまま陰核を舐め上げた。

「んっ」

 渚は微かに腰を引いたが逃がさない。顔を押し付けたまま舌による愛撫を続ける。

「めっちゃ濡れてますけど」

「やっ、だ」

 渚の掠れた声は結構本気で恥ずかしがっていた。俺はてっきりいつものノリで悪態を掛け合うのかと思っていたし、渚もそのつもりだったんだろうけど、ついついスイッチが変な所に入ってしまったんだろう。渚の片手が俺の頭を掴んだが、その手に入る力も可愛げのあるものだったし、こっそり見上げるともう片方の手首で口元を隠して、如何にも女の子らしい仕草と表情で恥じらっていた。

 俺は構わず舐め続ける。

「んっ、ふぅ……」

 渚の膝がやや外側に向いて折れ曲がり、カクカクと揺れ出す。

「クリトリスめっちゃ勃ってきてる」

「恥ずかしいから言わないでって」

「なぁ? ぐちょぐちょだぞ?」

「……そりゃ、マサキに入ってきて欲しいからじゃない?」

 渚の口調は淡泊さを保とうとしていたが、身体の高揚は隠し切れずにいた。

 勃起したクリトリスを吸い続けると、頭を掴む手は左右両方となった。込められた力と共に、声色には切羽詰まった感情が見え隠れする。

「……ごめん。マジで欲しくなってきた」

 それでもクンニを止めずにむしろ加速する。

「んっ、んっ……はぁっ、あ……マサキ、おちんちん、頂戴」

「くださいだろ」

 息も絶え絶えになりつつある渚を前にしたら、ついつい珍しくSっ気が出てしまった。これも学校エッチという非日常感が生み出す魔力だろうか。

「……マサキの気持ち良いおちんちんください」

 意外と素直に言う。

 狭い個室という圧迫感や密室感も、普段とは違う高揚を後押ししているのだろうか。

「扉に手をついて、こっちに腰突き上げろ」

 渚が言う通りにすると、俺はまずスカートだけを脱がして、それをトイレの横のへりに掛けた。続いて俺もスラックスを脱いでスカートの隣に掛ける。

 立ちバックの体勢となり、自分に向かって腰を向ける渚の後ろ姿はあまりに扇情的だった。

 見慣れた上履き。細いくるぶしにふくらはぎ。むっちりとした裏腿にしっかりとした腰付き。ぐっと反らした白いブラウスの背中は水色のブラのホックが微かに透けている。そして、待ちきれないとばかりにひくつく陰裂は愛液でテカテカと、綺麗なピンク色をより淫らに照らしていた。

 我慢汁を垂らす生の亀頭を、ヒクヒクと蠢く膣口にあてがう。

「挿入れるぞ」

「……うん」

「生だからな」

「……うん」

 ゆっくり腰を突き出すと、ぐにょりと渚が俺を呑み込む。熱して溶かしたスライムに挿入したような感触。それでいてぴったりと張り付き、そして押し潰そうとするような圧迫感に包まれる。思わず身震いするほどやはり気持ちが良すぎる。長持ちしない事を改めて再認識。

「多分すぐ出そう」

 渚の返事は無かった。代わりに肉槍が突き刺さった桃尻をびくびくと痙攣させており、膝はカクカクと揺れている。扉についていた両手の内、片方を口元に持っていき、必死に声を押し殺そうとしているように見える。

「声、我慢出来るか?」

 渚は首を横にふるふると振った。

「これくらいなら大丈夫だろ?」

 一回の抜き差しで十秒ほど掛ける、あまりにも慎重なピストン。それでも渚の生膣は容易く男を射精へと導く。締め付ける肉壁を掻き分ける感触が堪らない。

 何も纏っていない男根が渚の中に出たり入ったりしている光景は、ゴムを着けてのそれとは全く別の感想をもたらす。改めて強く、セックスをしていると知らしめる。

 にゅ……ちゅ……にゅ……ちゅ……。

「やばい、これでも保たないかも」

 渚の四肢に強張りを感じる。必死に声を押し留めているが、それでも時折、吐息が漏れていた。

「んっ……く…………ふっ……う……」

 俺も渚も、全身の汗が噴き出る。どちらも限界が近い。

「どこに出したらいい?」

 どうやっても多少は制服を汚してしまうかもしれない。口の中に出すのが一番良いかもしれないと思った。しかし渚の返答は予想外だった。

「ヒント…………今日は安全日です」

「……いいのか?」

 渚は少しの躊躇いの後、首を縦に振った。

「……この前、すごく我慢させちゃったから」

 申し訳なさそうに言う。結構本気で気にしていたのかもしれない。友人同士の間の貸し借りには律儀な渚らしい。

「大丈夫、なんだよな?」

 ゆっくりと腰を前後させながら問う。

「あたし、生理めっちゃ正確だから……」

「……じゃあ、中で失礼していいっすか?」

「……いいっすよ」

 嫌が応にも胸が高鳴る。

 女の性器の中で、精液を放出出来る。

 その事実はどうしようもないほど、俺を舞い上がらせた。

 軽く立ち眩み。

 自分が男である事を思い出し、渚が女であることを思い出す。

 今まで俺達は、男女である以前に、友達という関係でセックスをしていた。

 しかしそれがこの瞬間逆転する。俺達は友達である以前に、男であり女であると本能が告げる。

 肉槍がかつてないほどの力強さを得る。渚が女だと認知し、自身の仕事を理解したように膨脹と硬化に輪を掛ける。

 けして渚に恋愛感情を抱いたわけではない。ここに至っても友情以外の感情は湧き起こらない。今俺の心臓を鷲掴みにしている手の正体は、愛だの情だのという文化的な観念ではなく、ただの動物としての、雄としての本能。

「渚、ちょっと気持ち悪い事言っていい?」

 射精を覚悟した俺はピストンを変化させた。ペチンっ、ペチンっ、と一回ずつ区切るように、渚の桃尻に下腹部を叩き付ける。丸い尻肉がその度に水面のように揺れる。

「いつも……んっ、んっ……馬鹿な事しか言わないじゃん……あっ、ん……」

「あのさ、お前の事、妊娠させるつもりで出すから」

「はっ、あぁ…………思った以上に気持ち悪くてウケる……」

 俺の先端と密着している渚の奥底が、キュンキュンとハートマークをつけて喘いだのが伝わった。

「だってお前気持ち良すぎるんだもん。こんなん孕ませたくなるって」

 渚は口元を押さえていた片方の手を再び扉につく。そしてより背中を反らせ、腰を突き上げた。むにょりとした臀部の柔らかさが下腹部に押し付けられ、埋没している陰茎がこの母性の象徴のような桃尻に包まれているのだと思うとつい甘えたくなる。全てを渚に受け止めてもらいたくなる。

「……好きに出したらいいよ。どうせ安全日だしさ……マサキがいっぱい出してくれたら、あたしも嬉しいし……あっ、やっ、おっき……♡」

「それじゃ、そのつもりで出すんで、お願いします」

 ペチン、ペチン、ペチン。

「こちらこそ、よろしくお願いします……あっ、あっ、あっ、あっ、あっ♡」

 こんな時でも冗談めいた軽口は忘れない。

「……あのさ、マサキって中出し初めて?」

「生挿入の時も初めてだって言っただろ」

「あたしに二つも初めて貰われてやんの……ざまぁ……んっんっ、くぅ、っふ、あっやだ、カリ引っ掛かって、あっやだっ、そこ、すごい好き、あっ、あっ、あっ♡」

「光栄に思えよ精液便所」

「……なんかそれ、えっちぃんですけど」

「やっぱりお前ってたまにMっ気出すよな」

「マサキがSなだけ」

「ていうか出そう」

「いいよ、出して」

「渚は? イきそう?」

「気にしないでいいよ。ぶっちゃけあたし、マサキが生で入ってくると、ずっとイキっぱなしみたいになるから、好きなタイミングで出してオッケーっす」

「マジか」

「あとさ、あたしもマサキと同じ感じになってるから……」

「同じって?」

「だから……あっいっ♡ あっあっ♡ んっ……だからさ……その……安全日だから絶対無いけど、無いから思うんだろうけど……マサキの赤ちゃん、作るつもりで受け止めるから」

「俺の子供、嫌じゃない?」

 いつぞやのテレフォンセックスのように茶番を交えた、それでいてどこまで本気か自分達でもわからないやり取り。

「……出来たらちゃんと産んであげるってば」

 安全日による安心が前提にあるからこそ出来る茶番なのか、それともそこまで俺達の間の垣根が低く薄くなっているのか、俺には判断が出来なかった。ただ一つ確かなのは、俺の遺伝子が歓喜に震えている事。そして付け加えるならば、渚の膣が俺の精液を求めて、締め付けを止めない事。

「絶対孕ませてやる」

「安全日だっつってんでしょ馬鹿……んっんっ、あっあっ、はぁっあっ♡」

「俺のエリート精子君はそんな障害、ものともせんわ」

「本体は補習ばっかりなのにね……あっあっいっいぃ、あっいいっ、あっあっ♡ でも確かに、おちんちんとザーメンは、めちゃくちゃ優秀かも……あんっ、あんっ、あんっ、あんっ♡ マサキの精液って、めっちゃ特濃だから、無理矢理着床してきそう……あっいっ♡ おっき♡ おっきくて、すごくっ、あっあっいっい♡」

「出すからな」

「うん、来てっ」

 男性器は限界まで筋肉密度を増し、渚の肉壷もそれに対抗するよう収縮した。

 精液が鈴口をこじ開けて放たれんとしたその刹那、俺は身体を硬直させる。渚もやや遅れて、その音を聞いた。

 廊下の方から聞こえる大きな足音。ずんずんと自信に溢れた特徴的な足音。

「マサキ、居るか?」

 トイレの出入り口から聞こえた俺を呼ぶ幼馴染みの声。今まさに俺が中出しをしようとした女の彼氏の声。

「お、おう」

 テンパった俺は馬鹿正直に答える。

「予定外に時間が空いたんでな。教室に行っても誰も居ないからトイレと思ったが正解だったか。渚はどこか知ってるか?」

「……あぁわかんね。どっか行った」

 渚が俺よりも緊張しているのがわかる。両手を扉についたまま微動だにしない。

「そうか。部活の方に顔を出したかな」

 それでもどうしようもなく、渚の身体は男にとって至福がすぎる。見下ろす背中から腰へのラインだけでも艶かしいのに、陰茎を拘束する肉壁は蠢く事を止めない。

「何か拾い食いでもしたか」

「学校来る前に、公園でどっかの爺ちゃんが鳩にエサやってたからご相伴に与った」

「わっはっは。そうか。ならゆっくりしてくれ。邪魔したな」

 そう言いつつも友幸の足音は、俺と渚が交接している個室の前から動かない。

挿絵5

 一瞬沈黙。そして友幸が言葉を続ける。

「……トイレ中にすまんが、一つ俺の独り言に付き合ってくれないか?」

「……なんだよ」

 精液が尿道いっぱいに詰まる。

「どうしても誰かに言いたくてな。しかしその相手はお前しか居ないんだ」

「だからなんだよ」

「先日な、渚とその……避妊具を装着しないでセックスをした」

「……あ、そう」

 睾丸がきゅうっと持ち上がる。

「なんというか、幸せとはこういう事なんだなと、若輩ながらも悟ってしまったよ」

「それはどうもご馳走様」

 射精を目前に控えた爆発的な高揚感を背負いながらも、なんとか惚気に対して軽口を返す事に成功する。

一方で渚は膝をカクカクと揺れさせていた。何度か渚を抱いた俺は、その痙攣が絶頂によるものだと知っている。更には渚の太股を愛液でも精液でもない液体がちょろちょろと伝って上履きを濡らし、ついには床を浸していく。潮噴きや失禁の一種だろうか。ただでさえ窮屈な肉壷が更に密度を上げる。目の前に白い火花が散った。

「あのさ、友幸」

「なんだ」

「もしかして中で出しちゃったりとか?」

「いや、それは流石に自重したよ。学生の内は我慢するべきかなと」

 渚の子宮は誰の精液にも染まった事がない。その事実に肉槍が雄叫びを上げる。

 今まさに亀頭が舌を絡めてキスをしているこの口の先は、誰の子種も受け入れた事のない場所で、それは神聖な処女性を感じた。

 出したい。

 渚の子宮を俺の精液で汚したい。

 極上の女の初めてを奪いたいという男としての本懐。

 しかし幼馴染みを慮る友達としての理性。

 それらが混ざり合い、境界線が曖昧のまま、導火線の火が刻一刻と終着点に向かって迫る。

「友幸」

「なんだ」

「渚の事、好きか?」

 性欲と理性の狭間で、俺の口が無意識に尋ねる。

「何を今更。愛している」

 その瞬間。渚の膣が情熱的に俺を抱擁した。返事代わりの恋人用の蠢き。渚がいかに友幸を愛しく思っているかが伝わる。

 しかし、その膣壁を使っての返信を受け取ったのは俺だった。

 ミミズ千匹。数の子天井。それらが四方八方から迫る。過剰なほど甘美な誘惑。導火線を飛び越えて、直接火薬に点火される。

 ああ。

 ダメだ。

 友幸。

 すまん。 

 渚の初めての中出し、貰うから。

 爆ぜる。

 俺は友幸を薄壁一枚挟み、渚の中に精液を放った。

 ビュルルルル、と勢い良く放たれたそれは、音が漏れないかと不安になるほどだった。

 渚の腰を掴んでいた両手を壁についた渚の両手に重ねる。それを上からぎゅっと握り、吐精を続ける。

 心の中で勝ち鬨を上げながら、水鉄砲のようにビチャビチャと精液を子宮口に撃ちつける。

 顎から汗が垂れ、渚の背中に落ちる。白いブラウスに染みが出来てうっすら肌が透けた。

 友幸は俺が射精中もずっと何かを話していた。

 話の内容はうっすらとしかわからない。

 視界が真っ白に霞むほどの快感と、何より男としての充足感で全てが不鮮明だった。

 おそらく渚への想いを一通り熱弁し、更には恋人との避妊具を挟まないセックスが如何に幸せだったかを語っていたように思える。

 その間も俺は歯を食いしばって渚の中にドクドクと精液を送り込み、渚も膣をキュンキュン喘ぎながらも受け止めていた。そして、呑み込みきれない精液は愛液と一緒に床に垂らしていた。確かに渚とのセックスは最高で、渚の中で行う射精は心が弾け飛んでしまいそうなほど幸せだった。

 友幸のそれとは違い、俺と渚の間には恋や愛なんてこれっぽっちも見当たらない。それでも性器が直接触れ合う心地好さと、種付けによる生物としての達成感が俺達を心酔させた。

 桃尻に根元まで密着させた肉槍で、壊れたポンプのようにびゅるびゅると精液を注ぎ続ける。全てが純白に染まり何も考えられない。身体中の細胞が少しでも多く、そして勢い良く渚に精液を届けようと躍起になる。渚の膣もそれに応え、ぎゅう、ぎゅう、と断続的に圧迫しては絞り取り、ぐにゅぐにゅと膣壁を擦り合わせるように蠢いた。気が付けば俺は渚の背中に涎を垂らしていた。茫然自失となるほどの快楽。

 必死に渚の手を握る。渚も必死に俺の手を握り返していた。安全日とはいえ、俺達はそれぞれが初めてだった男女本来の営みの中、純白の世界で抱き合っていた。一つに溶け合っていた。

「それじゃあな。俺は生徒会に戻る。タイミングが合ったら皆で一緒に帰ろう」

 足音が遠のいていくと、びゅっ、びゅっ、と最後の白い噴水を渚の奥深くで打ち上げる。

 しかし到底勃起が収まる気配はしなかった。

 俺は再び両手で渚の腰を持つと腰を振り始めた。

「もう、誰も居ないから」

 いつの間にか、喉がカラカラになっていた俺の声は余裕の欠片も見当たらない。

 もっと出したい。

 もっと渚の中で射精したい。

 もっともっと、渚の中を俺でいっぱいにしたい。

 今度は暴発ではなくきちんと自らの意志で、自らの動きで、渚の子宮に精液を注ぎたい。

 腰を引く。白い臀部から覗かせた竿は既に真っ白だった。

 腰を突き出す。精液を纏った男性器が、ぐじゅりと音を立てて女性器に根元まで姿を消す。

 引く。

 ぬぷっ。

 突く。

 ぐじゅっ。

 渚の腰はずっとガクガクと揺れていた。口元も、友幸が去ったとはいえ、必死に歯を食いしばっているのだろう。「ひっ……い♡ あっ……ひ♡」と漏れ聞こえる嬌声はまるで虫の羽音のように微かで儚いが、悲鳴のような切迫感と、それ以上の悦楽が入り交じった何とも言えない甘みを感じる。

 俺はもう後先の事を考えられなくて、ズンッズンッと無心で腰を叩き付ける。その度に渚の丸い尻がパチン、パチン、と軽快な音を鳴らした。

「んっ、ひっ、あっいっ、いっいっ♡」

「すぐに出すからな」

 喘ぎを無理に我慢させている渚に申し訳なくて、そう声を掛ける。

「……べ、別に急がなくていいからね……あっあっひっ、んっ……あたしも、マサキが一番気持ち良い射精して欲しいし……」

 息も絶え絶えにそんな甲斐甲斐しい事を言われると、余計に射精欲が加速する。

「少しでも早く、お前の中でちゃんとセックスして、射精したい。もうそれだけしか考えられんわ」

「……わかった。まだもう少し入ると思うから……」

「さっきから奥まで突いてるって」

「そうじゃなくて……子宮の中」

「あぁ、そっち」

「もうタプタプだけど、もうちょっと入ると思うから……だから……あっ、あっ♡ んっ、溢れちゃうまでマサキのザーメン入れちゃっていいよ……」

「苦しいとかはない?」

「そういう感じはしないから大丈夫……ていうかさ、ほら、あたしって今は、マサキの精液便所なんでしょ?」

 渚はからかうような明朗な口調でそう言ったが、明らかに無理をしているのが伝わった。言葉の節々でひぃひぃと息が荒い。

「そういえばそうだった。それじゃ遠慮無く」

 丸尻はどれだけ強く鷲掴みしても指を柔らかく弾ませる。思う存分突いてこの中に全てを吐き出したくさせる、底の見えない母性を感じる。

 ガツガツと掘削するようにピストンする。生で渚を相手にこんな動きをしたら、どんな男でも一分保たないであろう、射精前提の決死のピストン。

「あぁっ、あっあっ♡ あっひっ、ひぃっい♡ いっ、いっ、いっ♡ ひっ、ん♡」

 結合部はグジュグジュと音を立てて、白いクリームを泡立てている。一発目の精液が漏れ出てくるのをパンパンに膨脹した亀頭で押し返し、更には二射目を送り込もうとしている。

「出すぞっ」

 渚はコクリと首を縦に振った。

 あと二度か三度腰を振れば確実に射精する。

「出すからな」

 あまりの快感に声を震わせながら念を押す。

 コクコクと二度素早く縦に振る。

 とどめと言わんばかりにバチンと激しく、臀部に下腹部を突き立てる。

 尻肉をむにゅりと持ち上げるほどに密着させた。

「うぅっ!」

 陰茎の付け根から尿道に電流が走る。

 カタパルトから射出されるように、白い粘液が肉壷の中で飛び出るのを感じる。

 ビュルっ!

 自分の全てが撃ち出されていくような感覚。

「……渚」

 自身の情報を他人に分け与える事が目的の射精は、ゴムを着けたそれとはまるで別モノだった。

 心身ともに空っぽになりそうなほどの多幸感に、安産型の尻に指先を深く食い込ませる。引き締まっているはずの渚の身体は、不思議とどこも柔らかい。胸も、尻も、膣も、そして子宮口も。

 ビュルルルルっ!

「……お前の中で……全部出すからな」

 その言葉通り、全身全霊を男根に凝縮させる。己の分身を、渚の一部にするための射精。

 渚の膝はやや外側に向いて折れており、頼り気無くガクガクと揺れていた。腰を突き上げ、背中を反り返らせ、両手を扉についたまま、小さく「……はい」と返事をした。それは真剣な敬語だった。たとえ安全日だろうが、繁殖という男女の営みに真摯に向き合った女の声。

 びゅるっ! びゅるっ! びゅるっ!

「あっんっ……あっあぁ……♡」

 ぎちぎちの肉壷に拘束されながらも、跳ね上がるように射精を続ける男根に、渚は身を捩らせながら甘い声を上げた。

「まだ出るぞ」

「ごめん……溢れちゃうかも」

「きっちり栓してっから」

 渚が喘ぎながらも鼻で笑う。

「それなら安心だね。マサキのおっきぃから」

「だろ?」

 互いの絶頂のピークがやや収まりつつあり、普段通りの雰囲気で会話をする程度には余裕が戻った。

 お掃除フェラならぬお掃除ピストンを行う。

「あ~この肉便器、精子絞り取るには本当良い締まり具合だな」

「屈辱だわ~。ムカつくから借りたゲーム返さないでおこ」

「あんだと、ちゃんと返せやコラ」

 お掃除ピストンのストロークを長く早くする。

「あっ♡ あっ♡ ちょっと、おちんちん使うの反則でしょが」

「十秒ルールだから」

「あっあっ♡ こらっ、あっやっ♡ それっ、だめっ、あっいぃ、あぁもう、だめだってっ、あっあっやばっ、それ、すごっ、あぁ馬鹿っ、イっちゃう♡ あぁっ♡」

 戯れのようなピストンを続けると、結合部から大きな精液の塊が一つ床に落ちる。

「あーあ、漏れちゃったじゃねーか」

 渚は息を整えると、「はいはい。あたしの所為あたしの所為」とわざとらしく不満を口にした。

「このまま座るな」

「んっ」

 繋がったまま、ゆっくりと便座に腰を下ろす。

 百六十センチ半ばはあるにしては軽い渚を、下腹部で受け止める。全体重の掛かった瑞々しい肌と肉の感触が心地好い。フルとは言わずとも、まだ勃起を続ける陰茎を包む膣との穏やかな接合は、この世の安堵と悦楽が煮詰まっていた。

 ブラウスの裾から両手を突っ込み、胸を揉み。

「本当無駄にデカイよな」

「あんたのおちんちんほど無駄じゃないけどね」

「誰の第一王子が無駄だってぇ?」

 腰を突き上げる。

「あっ、あっ、あっ♡ んっあぁ……はぁ、はぁ、はぁ…………はい反則十秒以上。あとで往復ビンタね」

「罰則が厳しすぎる」

「あんっあんっ♡ ちょっとこら、口で勝てないからって、おちんちんに頼るなっての、やっあっ♡ うそ、マサキのおちんちん、まだ気持ち良い形のまんまだしっ、あっあっあっ♡ かったいっ♡」

 ブラウスの中でブラに指を掛けて上から下にずらすと、同世代では規格外の豊乳がカップからぼろんと顔を出す。背後から揉みしだくが、左右の山をそれぞれ片手で担当していては手中には収まらない。揉んでも揉んでも揉み足りない。それにしても柔らかく、それでいて確かな弾力。目の前にあるうなじにキスをしてから舌を這わせた。全身で渚を満喫する。

「もうちょっと出そうだから続けていい?」

「じゃあ、しょうがないな、んっんっ、あっ♡ このまま使っていいよ、マサキの、ザーメン用便器」

「それ気に入ってんじゃん」

「気に入ってません」

「はい正直に言おうね」

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ やばっ、またイク♡」

 俺に座った渚がビクビクと硬直すると、まだ勃起の体裁は保っている肉槍を締め付ける。

「そのまま絞り取って」

「……あぁもう、マサキのおちんちん、半勃起でも気持ち良すぎるって」

 嬌声交じりな文句をつけられながらも、ドクドクと残った精液を注入し続ける。

 ブラウスの中の乳首を両手でコリコリと摘まむと、渚の背中がビクンと仰け反った。

「んにゃっ」

「そんな乳首弱かったっけ」

「わかんない……お腹が精液で熱いから……その所為かも……やっ、やっ、やっ」

 うっとりしたような声でそんな事を言う。

「そんなのわかるんだ」

「うん、自分でもビックリ。前から知ってたけど、マサキのザーメンってすっごいあったかいよね。あっ、ちょっと、乳首、そんなしちゃダメだってば」

 構わず乳首責めを続けると、渚は結合が解けない程度に腰を前にずらしていく。

「……マサキ、やばい……なんか出ちゃうかも」

 何とも切なそうな声を上げるので、介錯の意味合いで乳首を摘まむ指に更に力を込める。

「出しちゃえ」

「あっ……あっ……あっ……あぁうそっ、出るっ」

 渚が腰を浮かせる。

 ビュウッ!

 勢い良く渚が噴出したのは、やはり潮なのか失禁なのかはわからなかった。新品のトイレの扉をビチャビチャと水鉄砲で撃つかのように濡らしていた。

「あっ、あっ、あっ」

 ビュッ、ビュッ、ビュッ。

「もっと出せるだろ」

「もう、無理」

「ほら、シーシーしろ」

 最後に乳首をぎゅうっと強く摘まむ。

「あぁっ!」

 ビュウウウウッ。

 完全に結合が解けるほど腰を浮かすと、透明の液体は頭を飛び越しそうな高さのアーチを掛けた。

 喉から仰け反りながら、しばらく腰を浮かしてピュッピュッと潮を吹いていたが、やがて脱力して腰を下ろした。

 今度は純粋に俺自身がその感触を愉しむ為に、乳房を優しく揉みながら首筋にキスをする。

「なんつうか、渚で良かったよ」

「はぁ、はぁ……何が?」

「こんなエッチ出来る相手が渚じゃなかったら、友達でも絶対惚れてた」

「わかる。あたしもマサキじゃなかったら、こんな気持ち良いエッチする人絶対好きになってた」

 渚が顔を横に向けると、俺達は示し合わせたように唇を突き出し、ちゅっ、ちゅっ、と友情を確かめるようなキスを続ける。

「夢を叶えた気分は?」と渚がぐったりした笑みで尋ねる。

「感無量です。ごっつぁんです」

 一つの夢を叶えた夏休みの学校は、達成感と友達の唇によって満たされていた。

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