平日の昼間とはいえ、ショッピングモールは人でごった返していた。夏休みなので子供連れや同世代の若者が多い。
休憩所は大きな天窓から光が差し込むサロン風になっており、空調の効いた涼しい空間で夏の陽射しを満喫出来た。
「はい! 渚さん! はい! ボク質問があります!」
元気よく挙手する。
「はぁい、マサキ君。大変元気があってよろしいですね」
対する渚はベテラン教師風の声色を装い、買い物袋を片手にソフトクリームを舐めながら、若干気だるげに返した。
「なんで、ボクが、渚さんと友幸君による、新しい水着の買い物になんか付き合わないといけないんですか!」
「それはですね、どうせマサキ君みたいなジメジメしたカビ野郎は、誰かが引っ張り出さないと外出も碌にしないだろうなという、友幸君とあたしの有り難い配慮ですね」
「言いすぎだと思います! あともう一つ質問があります」
「なんですかぁ」
「その友幸君が居ないのはなんでですかねぇっ!」
渚は咳払いをすると、友幸の低くも威厳のある声をマネする。
「わはは。今日も今日とて生徒会でトラブルが発生してしまった。例によって緊急出動を要請されたので同行は出来ん。すまん。埋め合わせは必ず。マサキにもよろしく伝えておいてくれ」
「あいつ呼び出されすぎだろ」
「友幸は頼りになるからね。しゃーない」
「お前はお前でさっさと水着買うし」
「別にいいじゃん」
「俺の意見も聞けよ」
「って言っても友幸の好みってもう完全に把握してるしな~」
「確かに。でも渚って本当買い物早いよな。元カノめっちゃ時間掛かったぞ」
「女友達と行く時はそれなりに周りに合わせるけどね。友幸やマサキが一緒ならパパっと終わらせるよ。ていうかこれからどうする?」
「折角外出したしなぁ。どっか寄ってこうぜ」
「でもどこもめっちゃ混んでるよ」
「だよなぁ」
「あたしさ、新しい水着早速着てみたいから家帰らない?」
「え~。折角出てきたのに」
「何よ。おニューの水着視聴者第一号という栄光を賜りたくないわけ?」
「どうせ似合ってるかどうかのチェックさせたいだけだろ。それこそ買う時に聞けよ」
「だってどれ欲しいかなんて決まってたし。そんで、見たいの? 見たくないの?」
「ぶっちゃけお前の水着なんてどうでもいい。それより遊びに行きたい」
「ひっど」
俺の携帯が鳴る。友幸だった。
「おう。呼び出しておいて欠席とはどういう了見だ?」
「すまんすまん。今日のところは渚とデートしておいてくれ」
「色気もへったくれもねーな」
渚の爪先が脛をこつんと叩く。
「なぁ友幸。お前の彼女すごく暴力的だぞ。今のうちにDV対策しといた方が良いんじゃね。今度弁護士探しに行こうぜ」
「わっはっは。渚が小突いたりするのは、マサキが余計な事を言った時だけだからな。俺に実害は無い。ところで新しい水着は買ってたか?」
「あぁ。さっさとお前が好きそうなの買ったってさ」
「それは楽しみだ」
「あと試着チェックしろって煩いんだけど」
「うむ、してやってくれ。マサキのセンスなら信頼性が高い」
「くっそ興味無いんだけど」
「渚の新しい水着姿を最初に目に出来るのは羨ましいの一言だが、お詫びといってはなんだが、その権利を譲ろう」
「似たような事言ってんじゃねーよ。とにかく、さっさと仕事終わらせて合流しろよ」
「ちょっとそれが怪しくなってきてな。もしかしたら今日は遊べないかもしれん」
「はぁ? マジで言ってる?」
「すまんな。あと渚に代わってくれ」
渚に携帯を差し出す。
「ほら、友幸」
渚はそれを手にすると、席を立って休憩所の隅っこに行って友幸と通話をしていた。なんとなくその姿を遠巻きに見ていたが、渚は時々俺の知らない表情で笑っていた。友達には見せない、恋人しか知らない、はにかんだ優しげな微笑み。そして通話を終える時には、「あたしも好きだよ」と言っていたのが何となくわかった。幼馴染み同士のそういう姿は少しくすぐったいが、非常にほっこりとする。
渚が戻ってくる。
「んで、どうする?」
「カラオケ行きたい」
「え~。あたし新しい服とか買ったら即着てみたいんだけど」
「じゃあここで着ろ」
「アホ」
「じゃあカラオケ行ってそこで着替えろ」
「怒られるわ」
俺はふと思いつく。
「そういえば水着でカラオケやっても怒られなさそうな所あるわ」
「え、どこ?」
「……ラブホ」
そんなわけで駅前のホテル街にこそこそと侵入し、渚が「どうせなら如何にもって所で」と言うので、西洋風のお城な外観のラブホテルに昼間っから入る。
「へ~。こんな感じなんだ」
珍しそうにラウンジできょろきょろしている。
「お前友幸と来た事ないの?」
「ない。友幸って一応生徒会長だったしね。なんとなく自制してた部分もあるんじゃないかな。マサキは?」
「元カノと何度か」
「ヒューヒュー。おっとな~」
「お前と来るのはすごく違和感あるわ」
「だよね。多分浮いてるよね、あたしら」
渚はカラカラと笑う。確かに俺達からは恋人はおろか、セフレのような空気すら放たれていないだろう。実際ラブホテルに入ってからも、俺は渚の事を性的な目で見ていないし、これからセックスが確たる予定とか言われるとそうでもない。友達同士がおふざけで入ったような場違い感を感じる。
「このパネルで部屋選ぶの?」
「そう。好きなの選べよ」
「別にどこでもいいけど……ん~。あんまり代わり映えしないね。じゃあここで」
渚が適当な部屋を選ぶとエレベーターが到着する。
「うわ、勝手に降りてきたよ。あれに乗るの?」
部屋に到着すると、「結構普通だね。ね?」と言いながら部屋中を探索する。
「興味津々じゃねーか。ていうかさっさと着替えてこいよ」
「そういやそうだった。じゃ、ちょっと待ってて」
「もうここでパパっとやれよ」
「オッケ」
渚は袋から水着を取りだし、上着を脱ごうとするが、そこで頬を染めて動きを止めた。
「やっぱお風呂で着替えてくる。なんか着替え見られるのって恥ずかしい」
そそくさと消えていく。
「なんだそれ」と見送って、ベッドに腰掛ける。
部屋を見渡すが目新しいものはない。暇つぶしは出来るが、ここじゃないと出来ないものなんて存在しない。
「強いて言うなら、声を気にせずエッチ出来るくらいか。でも普段から気にしてる風でもないしな。あいつ」
しかしラブホテルに足を踏み入れたとは思えない平常心だ。例え倦怠期の恋人が相手でも、もう少しドキドキするはずだ。興奮はするが意識はしない。我ながら変な関係だと思う。むしろ、友達として当然といえば当然の感覚なのかもしれない。
そんな事を考えていると、着替えを終えた渚がバスルームから顔を出した。
「どうよこれ」
渚が選んだのはフリルが付いた紺色のビキニだった。引き締まった身体に濃い色が良く似合う。右手を後頭部に、左手を腰に当てた茶化したポージングだが、素材が良いので様になっていた。
「いいんじゃね」
「それだけ?」
「他に何があんだよ」
メリハリのある肢体は、そんじょそこらのグラビアアイドルが束になっても敵わない。ケチのつけようもないので、称讃の言葉もおのずとシンプルになる。
「マサキが良いと思うかはどうでもいいの。友幸が気に入るかどうかを知りたいの」
「それこそあいつはお前だったら何でもいいだろ。馬鹿ップルめ」
「そうかなぁ。大丈夫? 変じゃない?」
俺に確認させようとくるくると回る。どの角度から見ても、すらりと長い手足にグラマラスな肉付きは変わりようもない。
「お前の身体が変なら、世界中の女は豚以下だな」
「ていうかあんた、なんでさっきからちょっと前屈みなわけ?」
「察しろ」
「え、まさか水着で勃っちゃってんの? 流石にそれはマジでどうかと思う」
「お前は一回、自分の身体のエロさを自覚し直せ」
「いやいや。水着ってそういう目で見るもんじゃないっしょ」
「如何にも女側の意見だな。いいか? 見せパンだろうが水着だろうがこっちは興奮する。覚えとけ」
「そんな力説されてもな。ていうか今までは普通に三人でプールとか行ってたじゃん」
「今までは完全に女だと思ってなかったし。いや正直今も思ってないけど」
「じゃあ何なのよあたしは」
「渚は渚って感じ」
「あぁその感覚はあたしもわかる。マサキはマサキで、それ以上でもそれ以下でもないっていうか」
「だろ。でもその谷間見せられると条件反射でこうなるようになっちまった」
ジーンズの盛り上がりを見ると渚はやれやれと肩を竦めた。
「あたしの水着なんて無関心って素振りしといて」
「実際関心は無い。しかし勃つもんは勃つ」
「でもそれじゃ三人で遊べないじゃん」
「いや流石にもう海は友幸と二人で行けよ。俺邪魔だろ」
「でもあの海水浴場って小学校入る前から三人で行ってたしさ、今更誰か欠けても気持ち悪いんだけど」
「いつまでも皆一緒ってわけにはいかないだろ」
「そりゃそうかもしれないけどさ」
「良い機会だし今年から二人でデートしとけよ」
「てかジーンズ脱いだら? それ辛いんじゃないの?」
「そうさせてもらうわ」
ついでに上着やら下着も脱いで全裸になる。
「誰が裸になれっつったのよ」
「でもここそういう場所だし」
「確かに」
渚はじっと俺の胯間を見つめる。
「……前から思ってたけどマサキの勃起って苦しそうなくらいビキビキいってるよね。早く精液出したいぞって亀頭に睨まれてるみたい」
「なんだそれ。友幸は違うのかよ」
渚は立ったまま、ベッドに腰掛けた俺の胯間に手を伸ばすと、屹立した先端を指でちょんと突いた。
「友幸のはわりと紳士的だよ。こんな恐いくらい血管浮き出ないし」
「恐くはないだろ」
「今はね。でも初見の時は正直ちょっとビビった」
「じゃあ大人しくさせてやってくれ」
「了解。どこ使う?」
渚はそう言うと、まずは右手の人差し指と親指で作った輪っかを口元に持っていき、舌先を小さく出した。
「ここ?」
次は折り畳んだ左腕で胸を寄せる。豊満な乳房が水風船のように形を変えた。
「こっち?」
そして右手を下に持っていき、ビキニパンツの腰紐に親指を引っかけて浮かせる。
「それとも……ハメちゃう?」
思わず喉を詰まらせる。同世代とは思えない刺激的すぎる色気。強調された唇、乳房、腰、それぞれのパーツが、百点満点中百二十点の曲線美と質感で煌いているので堪らない。
とはいえ渚本人はこういった行為に官能的な意味を持たしていない。男友達同士が冗談でグラマラスな女性の体型を示すジェスチャーを行うのと何ら変わらない。それを女性が模せば、大抵はデリカシーの欠如と見られるだろうが、全く他意を伴わず行われる渚のそういった所作は、彼女のあっさりした性格と何よりその容姿により、意図せず開放的なエロスとして昇華されてしまう。
渚の無自覚な、それも極上なる雌の誘惑に、男根が思わず跳ね上がる。
「うわっ、急にちんこが暴れた」
「男には色々あるんだよ」
「我慢汁も滲んできてるし。わかったわかった。皆まで言うな」
ビクビクと細かく震える亀頭の先端から、とろりと糸を引いて分泌液が床に垂れる。
「何がわかったんだよ」
「あたしの中に入りたいんでしょ?」
「正解」
「オッケ」と渚が答えると同時に、俺の隣に置いてあった渚の携帯が友幸からのメッセージを通知する。俺が拾い上げて目を通すと、渚は「なんて?」と尋ねた。俺はそのままメッセージを読み上げた。
「『思ったより早く片付きそうだから、終わり次第もう一度合流するよ。多分あと二時間くらい』だってさ」
「あ~……ごめん。それじゃ挿入は無しで。もしかしたらこの後友幸とするかもだし」
「なら仕方無い」
今はまだ理性があるので、そういう理由ならば自重も当然だ。ただやはり落胆は隠せない。
「期待させといてごめんね」
「しゃーないだろ。それじゃ手で頼む」
「うん」
渚は水着姿のまま俺の隣に腰掛けると、身体を密着させた。横から肩や胸に押し当たって潰れる、ビキニを纏った爆乳の感触は、まだ友幸も未経験なんだと考えると背中がむずむずした。
「あんまりした事ないから自信無いけど」
「友幸はフェラしか教えないのか」
「そう言われるとそうかも」
右隣に座った渚が右手で屹立した陰茎をぎゅっと握り込んだ。
「あっつ。マサキのおちんちんって絶対熱い方だよね」
「そんなの皆一緒だろ」
「え~。全然違うよ」
納得がいかない様子で握った手をゆっくり上下させる。既に竿まで垂れていた我慢汁がニチャニチャと音を立てた。
「それじゃ、シコシコしちゃうね?」
「お願いします」
にちゃにちゃ、にちゃにちゃ。
「これで大丈夫?」
「大丈夫」
「痛くない?」
「めっちゃ気持ち良い」
渚の握る力や手つきはややガサツだった。如何にもなやらしい手コキとは違い、友達の自慰を代替しているに過ぎないという意識からくる、無遠慮な扱き。それが逆に奏功した。
無自覚の挑発に駆られた陰茎は既に限界まで膨脹しており、渚の力強い手つきが丁度具合良く感じる。上下動する指の輪がしっかりとカリを捉えて血流を集める。
「手でシコるの面白いね。やっぱり手の平だからかな。他の場所よりも勃起していくのがわかりやすい。ほら、どんどんカリが深くなってく」
渚の左手が俺の背中から左脇腹へと回り、そして乳首に到達した。指先でカリカリと引っ掻く。「んっ」と思わず吐息が漏れ、身体が硬直する。
「『んっ』だって。ウケる」
「うるせ」
「女の子みたいな声出しちゃってさ」
渚は呆れるようにジト目で俺を見上げると、俺の胸へ顔を近づける。そして右の乳首をぺろりと舐めると、口に含んでちゅうちゅうと吸い出した。
「あぁ」
声の我慢など到底不可能な甘い快楽。
左乳首は指の腹でくにくにと優しく潰され、右乳首は舐め上げと吸い付きをローテーションされ、そして本丸は搾り取るような手つきでゴシゴシと扱かれる。
「この三点責めやばいって」
「今即興で開発した技だから。なんかあたしって、実戦の中で成長する天才主人公みたいじゃない?」
得意気な様子で馬鹿な事を言いながら、筆舌に尽くし難い快感を多方面から与えてくる。
くにくに。
ぺろぺろちゅうちゅう。
しこしこ。
「うっ、乳首吸いすぎなお前」
柔らかい舌先をぐにぐにと押し付けてきたと思えば、ちゅるるるると音を立てて乳首を吸う。
「おちんちんすっごいビンビンだよ……んっ、れろ……ちゅうぅっ……ちゅっちゅっ、れろれろ……たかが水着でこんな勃起させちゃうとかさ……ちゅっ、んっ、ぺろ、れろ」
渚の左手が胯間へと移る。包み込むような手つきで睾丸を持ち上げて、俺を見上げた。
「ザー汁、溜まってきてるよ?」
左手を乳首に戻す。しかし今度は乳首を押し潰すのではなく、摘まんでコリコリと転がす。
「金玉ぱんぱん」
掠れた声でそう囁きながら、顔を胸から離して首を伸ばす。あまりの刺激に顎を反り返らせていた俺に、冗談で作った可愛い声色を飛ばしてくる。
「おい。チューさせろ」
顎を引いて、唇を押し付け合う。
ちゅっ、ちゅっ。
空調はやや強すぎるくらいだったが、俺も渚も全身にしっとり汗を浮かべている。高揚もあるだろうが、くっついているので互いの体温を分け与えているのが大きい。渚は温かい。特に、ぐんにゃりと派手に潰れるほど密着する豊かな乳房の谷間には、鎖骨から汗が流れては消えていく。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、
軽快に舌は絡めない友達キスを繰り返す。
その中で一度ちゅうぅぅぅ、と深く長く押し付け合うキスを挟む。それが終わると渚は俺の下唇をカリっと軽く甘噛みして、唇が触れ合うほどの至近距離で不敵な笑みを浮かべる。
「二度とあたしの水着で勃起出来ないよう、このおちんぽからザーメン全部抜いてあげる」
左手で乳首をこりこり。
唇をちゅっちゅっ。
右手でチンコをしこしこ。
「そんでまた、三人で海行くよ」
扱く手つきがより強くなる。ローション代わりの我慢汁が、ぐっちょんぐっちょんと卑猥な音を立てた。
「お、言ったね?」
くっちゅくっちゅくっちゅくっちゅ。
「そっちのイクじゃない、あっ、イク、あぁっ」
噴火のように精液が飛び散る。
「わっ、わっ、わっ」
それは俺達の頭を優に飛び越える高さまで達した。四方八方に飛散する粘液の塊は、渚のビキニを上下ともに白く染めた。紺色なので特に目立つ。
しかし渚はそれに気付いた様子はなく、手の平で暴発を続ける男根に意識を奪われたままだった。
「すごい。まだ出るよ。ほら、ほら」
射精するまでの無造作な扱き方ではなく、根元からゆっくり、確実に絞るような動きに変わる。実際、搾り取られるようにビュウビュウと射精が止まらない。
「このまま全部出しちゃお。はいっ、ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅっ」
掛け声に合わせて唇を押し付けてくる。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。
まんまとそのリズムで訪れる唇の感触に合わせて透明の精液を噴出する。
とはいえ流石に出が悪くなってくると、ちんこを握るのではなく、指を絡めて慰めるように擦る。唇もそれに合わせて、深く長く重ね続ける。
「んっ、ふぅ…………どう? 金玉、空になった?」
「流石にな」
「よしよし。よく頑張ったね」
幼子を褒めるような手つきで亀頭を撫でながら、視線を自身の胸元に落とした。
「新品の水着、マサキのザーメンでべちょべちょ」
「お前の手コキがやらしいのが悪い」
「マサキがシコれっつったんでしょ。あーあー。まだ友幸とのデートで使ってないのに」
水着のフリルに付着した一際大きな白い塊を指で掬うと、視線を一度俺に合わせ、そしてすぐに精液に戻した。
「……えい」
ゼリー状の粘液がたっぷりと乗った指先を咥える。そしてくちゅくちゅと咀嚼し、喉を鳴らした。
「飲んだのか?」
「……にっがい」
「そりゃそうだろ」
「だって知らなかったし。精子がこんな味って」
そう言いながら白濁液塗れの自身の右手を見つめ、人差し指から順番に小指まで指を舐め、最後に親指の腹の精液を舐め取る。
「しかしあれだね。熱々のおちんちんから出る精液はやっぱり熱々なんだね」
そして鈴口にじんわりと浮かんだ残り汁を摘まむと、人差し指と親指で伸ばしたり縮めたり、興味深そうに繰り返した後、ぺろりと平らげた。
「しかも濃い。頑張って女の子妊娠させますって感じの味」
「どんな味だよ」
「女にしかわかんないって」
渚は笑うと、「お疲れ様」と亀頭をもう一度よしよしした。
「ていうかさ、縮んでないよね」
「だからお前の水着がエロいんだって」
渚の手コキも虚しく、俺の息子はまだまだ臨戦態勢が解けずにいた。
「まさかまた挿入しないと収まらない、男の子の生理的なあれ?」
「あれだな」
男子諸君ならば身に覚えがある、どうしても女性器と連結しなければ収まらない類いの勃起である。例えどんなに優れた快感でも、他の刺激では発散しきれない。
行き場を彷徨う男根はギチギチに怒張を続ける。到底射精直後とは思えない硬度と膨脹は、渚の瞳に同情の色を微かに浮かばせた。
「……じゃあやっぱりハメる?」
べとべとの手の平で、べとべとの肉竿を擦りながらそう言った。
ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ。
「いいのか?」
「……うん。マサキのここ、すっごい辛そうだし」
微かに微笑んだ渚の眼差しと声色からは、友達として助けになってあげたい、という情念以外は何も感じられない。
「じゃあ、その、いいっすか?」
「いいよ」
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、とおどけるように突き出した唇を啄み合う。
吐息が直に掛かる距離で、渚があくまで友好としての微笑みを浮かべて囁いた。
「マサキの気が済むまで抱いて」
もう辛抱ならんといった様子で男根が怒髪天を衝いた。ビキビキと筋肉が悲鳴を上げるほどにいきり勃つ。
「どうどう。もうすぐだからちょっとだけ我慢しようね」
渚が肉槍をそう諫めながら、サイドテーブルに手を伸ばして備え付けのコンドームを手にした。
「へ~。新発売の超極薄なんだってさ」
興味深そうに口にしながら包装を解いた。薄緑色のそれを亀頭に被せてするすると装着していく。
その途中で、ピチッと鋭い音が鳴った。
「あれ、破れちゃったんだけど」
「これだからガサツ女は」
「マサキのが大きいからでしょ。今日は普段よりも更に大きくなっちゃってる気がするし」
渚が笑いながら二つ目を手に取り、今度は慎重に装着させる。その緩やかな手つきが更に膨脹を促進させる。
「こら。大きくするなっての」
渚が呆れるように笑いながら、クルクルと根元までゴムの皮膜を被せた。
「やれば出来んじゃん」
「ふふん。本気出せばこんなもんよ」
「そんじゃこのまま上来て」
体勢を変える手間すら惜しむ。早く渚が欲しくて堪らない。ベッドの縁に腰を掛けたまま、渚に座るよう指示する。
「待って。水着脱ぐから」
「そのままでいいって」
「なんで?」
「ぶっちゃけ似合ってるし可愛いから」
「へ~。可愛いと思っちゃったんだ。マサキが。あたしをねぇ。ふーん」
渚はからかうようにニヤニヤと笑う。
「うるせえ。早く乗れよ」
「慌てちゃって。そんなあたしとやりたいんだ? 可愛いから?」
渚がニヤついたまま俺の上に跨がる。右手でビキニボトムをずらしながら、左手で陰茎の位置を固定すると、ゆっくり腰を下ろしていった。
にゅぷ、と音を立てて渚の腰が滑らかに沈みきる。運動部らしい健康的な太股はスベスベしながらもムッチリとした肉付きで、密着すると二度と離したくなくなるほどに瑞々しい。水着の感触もどこか新鮮だ。
ただでさえ結合感の強い対面座位だが、奥底まで突き刺す男性器と、それを根元まで呑み込む女性器であれば、より深い一体感を生み出す。それは本能レベルでの精神的な充足を生んだ。
二人して目を瞑り、「はぁ……」と感嘆の吐息を上げた。
瞼を開けて視線を交わすと無言のままキスをする。
「やばい。めっちゃ気持ち良い」
渚の腰に両手を添えながら、全身の細胞を歓喜に震わせた。確かにゴムは極限まで薄いようで、渚の熱が直と言ってもいいほどはっきり伝わる。
渚は俺の肩に両手を置きながら同意の頷きをしてみせる。
「わかる……あたし達ってすごくピッタリと繋がるよね……」
「相性良いんだろうな」
「親友だしね」
「それは関係無いだろ」
軽くキスをする。そして互いにゆっくりと腰を振り出した。別に打ち合わせをしたわけでもないのに、俺が引けば渚も引き、押し出し合うタイミングも重なるものだから、肉竿と蜜壷が効果的に長い距離を摩擦する。
「でもほら、動きも一緒じゃん」
非常に緩やかなストロークにも関わらず、一回一回の抽送で身を焦がすような痺れが背中を昇る。
「友達で思い出したけどさ、お前をカラオケに誘えって言われたんだけど」
「誰に?」
「クラスのとある男子」
「それは下心有りな感じ?」
「そりゃ多少はあるんじゃね。俺とお前じゃないんだし」
「じゃあパスで」
「そこは俺の顔を立てるという事で一つよしなに」
「ていうか友幸居るんだしさ」
ゆっくり腰を振り合い、合間合間に唇を重ねながら世間話に興じる。
「別に告白しようとかそういうんじゃないって。単純にお前と遊びたいんだってよ」
「ん~」
渚は困った様子で視線を逸らすと、一転、何かを閃いたのか笑みを浮かべる。
「それはあれかな? マサキみたいにあたしを可愛いと思ってるから?」
「蒸し返すんじゃねーよ」
「ちょっと本気で照れてんじゃん。ウケる。んっ、んっ、あっ」
口を滑らせた事を後悔する。
「で? カラオケ行く? 行かない?」
照れ隠しで語気が強くなると共にストロークにも力が籠もる。
「あっ、はぁっ、あっんっ……ていうかさ、その話後でいい? 今はマサキとのセックスに集中したいんだけど」
「今決めろって」
引き続き照れ隠しの為の強気の交渉。
「んっく、ふぅ、うっ、んっんっあっ……じゃあさ、一個だけ聞かせて」
「なに」
「本気であたしの水着姿、可愛いと思った?」
「やけに食いつくな」
「だって、マサキにそんな事言われた事無いし」
「正直に?」
「正直に」
「……可愛いと思ったよ」
「百点中何点?」
「正直に?」
「正直に」
「……百点」
渚はにひひと笑うと唇を押し付けてきた。
「ちょっと嬉しい」
「ちょっとかよ」
「そりゃ彼氏に言われたわけじゃないし」
「そりゃそうだ」
「でも親友に言われても嬉しいっちゃ嬉しい」
そう言いながらキスをする。腰も振り合う。
ちゅっ、ちゅっ。
ぬちゅっ、ぬちゅ。
上下の口が淫らな音を鳴らすが、問答の雰囲気自体は至極あっさりとしていた。
「それで、カラオケは来てくれるのか?」
「しゃあない。マサキの顔を立ててあげる」
「サンキュ」
「その代わり、ここからは、ちゃんとエッチに集中してね」
「まかせろ」
渚の桃尻を掴むと、ズンズン突き上げる。
「あっ、あっ、あっ、ばかっ、誰が急に激しくしろってっ、あっあっあっ」
顎を引いて甲高い声を上げる。目の前にあるビキニで包まれた爆乳が上下に揺れた。
「やばっ、これ、すぐ来そう」
「対面座位好き?」
「……好き。友幸とはいつもこれでしてる」
友幸が対面座位を好むとは、意外だった。
「その腰の動きもメイドイン友幸?」
「正解。どうこれ?」
「前後に擦りつけるのエロい」
「おちんちん気持ち良い?」
「最高っす」
渚は嬉しそうに口角を上げると、「うりゃ、うりゃ」とからかうような大袈裟なグラインドをしてみせる。それに伴いぬっちゃ、ぬっちゃ、とやはり大袈裟な水音が鳴った。
「どうよ? んん?」
「うむ、苦しゅうない。そのまま続けろ」
「任せろ。おりゃ、おりゃ」
ぎし、ぎし。
くちゅ、くちゅ。
何とも楽しそうに腰を振っていた渚だったが、不意に眉根が下がり、艶っぽい色が顔に出始める。
「これの欠点は、あたしも気持ち良くなっちゃうんだよね……んっんっ、はっあっ……あっあっ、いいっ、あっいっ、やだっ、腰溶けそう……」
渚は顎を引いたまま上目遣いで俺を見る。
「なんか、すごく気持ち良いから、あたしもつい口滑らせちゃうけどさ、正直マサキの見た目はタイプだったりする」
「マジで?」
「マジで」
「百点中何点?」
「百点。見た目だけね」
「おいおい。俺に惚れるなよ」
「百パー無いから」
渚は愉快に笑いながら即答した。
その間もベッドはギシギシと軋みを上げ続ける。
「んっ、んっ、あっ、あぁっ……マサキも、いくらあたしを可愛いと思ってるからって、好きにならないでよね」
「良く見ると中の下くらいだったわ」
「あ、そういう事言っちゃう?」
前後する腰つきが激しさを帯びる。
ギッシ、ギッシ。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
水着可愛い発言を攻められてばかりなので、こちらも反撃する。
「さっきお前さ、友幸に電話で『好きだよ』とか言ってなかった?」
にやにやと馬鹿にする笑みを浮かべながら突き上げる。
「やっ、あっ、はぁっあっ、あっあっ……そりゃ言うでしょ、好きなんだから」
そんな真っ向に返されると茶化す気にはなれない。
「卒業したら結婚すれば?」
「あたしはぶっちゃけそれでもいいんだけどね……あっあっあっあっあっ、やだっ、これすっごい好き……」
「この角度?」
「うん、それっ、あっあっあっ! あっいっ、あぁ、いいっ、マサキっ、あっあっ♡」
互いにピストンの具合を調整し合って、より身が蕩けるような繋がり方を模索していく。体温と共にセックスに熱が帯びていく。
どちらからともなく唇を重ねた。グロス要らずの艶やかな薄い唇に、己の唇を滑らすように貪る。身体がゾクゾクと甘美な痺れに蝕まれる。
渚ともっと深く繋がりたいという衝動が、頭の中で火花を散らせた。
もう少しで舌を入れそうになってしまった。渚も同様の危険を感じ取ったのか、苦笑いを浮かべた。
「危なかったね」
「ギリセーフ」
渚はぎゅっと俺に抱きつき、肩に顎を乗せた。胸に当たる豊かすぎる乳房が、ビキニの布を挟んで潰れる。
「……マサキともっと深く繋がりたいって思っちゃった」
「一言一句同じ事考えたわ」
「やっぱり親友だね。あたし達」
「だな」
離れると恋人キスの欲望に負けそうなので、頬と頬を密着した体勢のまま渚を揺らす。
「あっ、あぁっ、はっあっ……あんっ、あんっ、あんっ」
「強くしていいか?」
「うん……丁度、マサキがもっと欲しい感じ」
ふんわりとした掴み心地の、安産型の臀部をきつく握りしめ、ガツガツと渚を責め立てる。
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
喘ぎによる吐息が、耳を直接息吹く。
渚の爪が俺の背中を引っ掻くが、渚の膣が気持ち良すぎて痛みを感じる暇が無い。
「あっいっ、あっあっい♡ ゴム薄いから、マサキのおちんちんがいつもよりエッチな形してる……あんっあんっ、はぁっあっ、やばいイキそう……あぁやばいっ、はっん……マサキ、ごめん、先にイってもいい?」
「いいぞ」
「マサキはどんな感じ?」
「まだもう少し」
「じゃあ一回イっとくね」
「おう」
「あっあっあっあっあっ! マサキっ、マサキっ、あっそれ、すごっ、あっあっ、いいっ、あぁイクっ、イクイクイクっ! イっちゃうっ!!!」
一際大きなよがり声と共に、ビクッビクッと身体を痙攣させる。搾り取るような膣の収縮は相変わらずで、ピストンの中断を余儀なくされるほどに締め付ける。
渚が絶頂に身を置く最中、しがみつくように俺の首筋を激しく吸い続け、時には歯形が残りそうなくらい甘噛みをしてきた。
「はぁっ…………はぁっ…………んっ、く……はぁ、はぁ……はぁ、はぁ…………いいよ、動いて」
「くすぐったくない?」
様子を窺いながら、渚をゆっくりと上下に揺さぶる。
「んっ、んっ、これくらいなら、大丈夫……んっあっ、やっ、マサキ、セックス上手すぎだってば……」
絶頂により弛緩していた渚の全身が、再び強張り始める。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
俺の背中に回った渚の腕に力が籠もった。
「やっばい……ダメな事言っちゃいそうなくらい気持ち良い……」
「一回止めるか?」
「無理……ここで止められたら切なすぎて死ぬ」
渚は肩から顔を離すと俺と真正面から視線を合わせた。眉を八の字にしてとろんとした顔をしている。
「……あのさ、我慢出来なさそうだから、一回口に出してスッキリするね……聞かないでよ」
そう言うと渚は両手で俺の耳を塞いだ。
俺は構わずゆったりとしたピストンを続ける。
「あっ、あっ、あっ……彼氏より、気持ち良い……」
かなり不明瞭に濁ってはいるが、内容は聞き取れてしまった。言い出すことも出来ずに黙るしかなかった。
「マサキのが上手だし、おちんちんもおっきいから……友幸よりマサキのセックスのが気持ち良い」
渚は手を離すと、再び肩に顎を乗せて背中に腕を回した。
「オッケ。すっきりした」
俺は何も聞かなかった事にする。それでも雄としての優越感を刺激されたからか、明らかに渚の中を貫く俺が更に膨脹した。
渚もきっと興奮した俺に気付いただろうが、やはりそれについては言及しなかった。
「ほんと、ゴム薄いよね」
誤魔化すように渚がそう言った。
「な。めっちゃ熱いの伝わるもん」
俺もそれに乗っかって、誤魔化しの会話を続ける。
「こっちも、んっ、マサキの形が丸わかりだから、すごくエッチな感じする……中がシコシコされてるっていうか」
「こんだけ薄いと、さっき破れたのもこの所為だったのかもな」
「絶対そうだって。あたし今まで一回も破った事ないし」
「中で破れちゃったりして」
「不吉な事言わないでよ。マサキのカリ深いんだから、そこで破れちゃいそう」
「いやないだろ」
「ないよね」
大抵の惨事は、油断や慢心から構成される。俺達のような小市民にとっても、それは例外ではない。
その時、俺達二人は下腹部から確かに聞いた。
プチン、と何かが破ける音。
音というよりは、肉を伝った衝撃。
耳元で渚が恨めしそうに呟く。
「……だから言ったじゃん」
「マジかよ」
内部で如実に感じる、破れたゴムが根元に向かって縮んでいく感覚。それに伴い、裸になった陰茎が膣と直接接触していく感触も鮮明になっていく。
「……やばくない?」
「そりゃやばいよ」
ゴムは完全に根元部分に縮小された。
「生ハメ……になっちゃってるよねこれ?」
破った包装に目を向ける。
「不良品か? 結構有名なメーカーなのに」
「それよりどうする?」
渚がやや不安そうに抱擁を解き、両手を俺の胸板に当てた。
俺は顔をしかめながら答える。
「……正直に言うな」
「うん」
「渚の膣、気持ち良すぎて少しでも動いたら出そう」
渚は苦々しい笑みを浮かべる。
「こっちも一緒。ていうかぶっちゃけ動かなくてもイキそう」
「とりあえず、今は落ち着くのを待とう」
「賛成」
対面座位で繋がったまま、俺達は微動だにしないよう努める。二人して深く静かな呼吸を続け、互いの絶頂が通り過ぎるのを待つ。
渚がやや不安げに尋ねてくる。
「動かなかったら生セックスじゃないよね?」
「そうじゃね。知らんけど」
「よし。じゃあセーフ」
しかし世の中にはポリネシアンセックスというものが存在するように、抽送を伴わずに昇り詰める結合が存在する。今まさに、俺達はその状況に身を置いてしまっている。
摩擦による過度な刺激に頼らず、互いの肌や粘膜の感触をじっくり味わえる。味わってしまう。渚の極上の抱き心地を今一度再確認してしまう。
触れ合う肌はどこもかしこもスベスベしていて、きゅうきゅうに締め付ける肉壷は細かいヒダヒダが纏わり付くように蠕動している。
そして何より、渚の奥底に存在する口を、亀頭が持ち上げるように突き刺す感触が直接伝わってしまう。それは渚も同じのようで、俺の胸中を代弁するかのように口にした。
「……恋人キスしちゃってるね」
「かなり深いやつな」
鈴口と子宮口による強い啄みを互いに感じる。
「唇でもしたくなるね」
「キスでもイっちゃいそうだからまずい」
「だよね」
「あのさ、今日危ない日?」
「少なくとも、安全な日ではないかな」
「マジか」
「あのさ、わかってると思うけど……」
「うん」
渚が気まずそうに口角を上げた。
「……ぱっくり開いちゃってるから」
「だろうな。ちょっと入っちゃってるよなこれ」
「うん……赤ちゃん作る部屋に、マサキの先っぽがこんにちわしちゃってる」
「……確か我慢汁でも妊娠するんだっけ」
「すごい低確率らしいけど……もしかして漏れちゃってる?」
「多分ダダ漏れ」
「きゅっと元栓締めれないの?」
「無茶言うな」
「多分大丈夫だろうけど、マサキの精液すごく濃いからなぁ……」
「ていうか、もう孕ませていい?」
場を和ませようとしたジョークだったが、あまりの気持ち良さに頬が引き攣る。
「……だめ」
渚の返答にも切れ味が無い。
なるべく普段通りを装いやり過ごそうとするが、流石に生の粘膜接触は一味違った。
しかし俺はともかく、渚の昂りが収まっているようには見えない。より肌は汗ばみ、より呼吸の間隔が短くなり、腰は時折切なそうにもじもじと揺れた。表情からは笑みが消え、今にもとろりと溶けそうな危うさがある。
「……あのさ、マサキって生でしたことあるの?」
「ない」
「……あたしもない」
「友幸とないんだ」
「ないよ。何回か向こうがしたがったけど、やっぱり学校くらい卒業した後じゃないと、万が一が恐いかなって……んっあっ……こら、なんでおっきくすんのっ」
「いや、男の都合で」
「何それ意味わかんない……んっ……はぁ……はぁ……でもあれだね……相手が初めてだと、ちょっと嬉しいかも」
「だろ?」
「ちょっとだけだけど……はぁ、はぁ、んっく、ふぅ……」
渚の息遣いは明らかに浅くなっていた。
「……マサキ」
「なんだよ」
「これまだ生セックスじゃないよね? 動いてないもんね」
「……多分」
「……マサキ」
「なに」
「……お腹が熱い」
「そりゃ人生で一番ってくらい勃起してるからな。こっちはこっちでお前の生まんこがめちゃくちゃ熱いんだから我慢しろ」
「そうじゃなくて……いやそうなんだけど」
「なんだよ」
「だから、その……」
渚は一旦言い淀むと、生唾をごくりと飲み込み、耳を赤く染めて言葉を続けた。
「マサキの我慢汁……結構出ちゃってるよね?」
その言葉で更に膨脹する。破裂しそうなほどに苦しい。
「やっ、バカっ……だ、か、ら! これ以上大きくすんなっての!」
渚の両手が頬をつねる。
「お前が変な事言うからだろ」
両手が頬から落ちて肩に落ちる。
「だって、我慢汁で子宮がぽかぽかするんだもん…………もうだめ、我慢出来ないから一回だけキスしない?」
「……ちょっとだけな」
「了解」
ちゅ、と一度だけ軽く触れ合わせる。それだけで身体は大きく絶頂に傾いた。
渚は顔を離さずに、「……唾も欲しいんですけど」と子供がおねだりするような目線を送る。
唾液を乗せた舌を差し出すと、渚がそれを唇で挟んで吸う。
渚はこくりと喉を鳴らして嚥下すると、きゅっと口を結んで、弱々しい表情で俺を見つめる。
「なんだよ。これ以上は俺やばいって」
「……ていうかゴメン、あたしイキそう」
「いやそれはまずいって。お前イク時めっちゃ締め付けるんだから! こんなヒダヒダの膣でそんな事されたら……」
「なんか、マサキの唾呑み込んだ時、お腹の中でもこんな感じなのかなって考えちゃったら、やらしく感じちゃって……あっ、あっ、やばっ、来る……」
俺の舌が男性器で、唾液が我慢汁、口を女性器に置き換えて想像してしまった渚が、抗えない快感に襲われた。
「駄目駄目! 我慢しろって!」
「あぁ……ごめん、無理っぽい……もう限界……はぁ、っあ……」
微かな摩擦すら許さない単なる結合のまま、渚の身体が縮こまりつつ小さく震えだした。ただでさえ狭い膣道がきゅうっ、と男根を情熱的に包み込む。
渚は申し訳なさそうに「……なんとかマサキは耐えて」と息も絶え絶えに言った。
「いや絶対無理だから」
「そこをなんとか」
「無理無理」
「……んっ」
「あっ、バカ!」
「生おちんちんでイクけど、動いてないしセックスじゃないから……ギリセーフだよね」
「俺がイったら完全アウトだろ」
「……良く見たら中の下の女の生ハメくらい我慢してよ」
「嘘です渚さんは可愛くてスタイルも良いめっちゃイイ女なんですこれ以上締め付けられたら我慢出来ません」
「あたしだって、マサキの見た目だけはタイプなんだから、そんな人の生ちんぽが奥まで刺さったら、我慢出来ないっての…………あぁ、やばっ、もうそこまで来てる……♡」
「おいマジで、渚!」
「ごめん、イクっ……あっ!」
渚が辛そうに目と口を閉じたその瞬間、筆舌に尽くし難い快感が、限界まで張り詰めた男根を襲う。
うねうねと蠢くイソギンチャクが四方八方から、それも男根を押し潰さんばかりの力で押し付けられる。
「うぐぅ!」
過度な性的快感が脊髄をショートさせ、頭の中に火花を散らせる。
俺は喉を限界まで反り返らせ天井を見上げた。それは生理的な反射だったが、結果的にはそれが奏功した。目の前には水着を纏っているとはいえ、扇情的すぎるボディラインが存在する。そんなものを目にしながらこんな刺激を与えられれば、ひとたまりもない。
しかし肉壷は、引き続き俺を射精に誘う。
「んんっ、はっあっ、くぅう♡」
渚の甘い声も,俺に喜悦を与える。
もう限界だ。
肉槍の破裂が秒読み段階に入る。
出したい。
射精したい。
全身の細胞が俺に命令する。
ロックオン済みの、この女の子宮目掛けて、遺伝子情報を送り込ませろと。
その命令が快楽に変換され俺を誘惑する。この濁流のような本能に流されてしまいたい。頭がおかしくなりそうになる。
「ぬうううううううう!!!」
歯を食いしばりながら雄叫びを上げた。奥歯が砕けてしまいそうなほどの隠れた膂力。火事場の馬鹿力ならぬ濡れ場の馬鹿力。
視界がバチバチと点滅する。
一世一代の魂の燃焼。
両手で渚を持ち上げつつ腰を引いた。生じたのは僅かなズレだが、男女の結合が解除されるにはギリギリ足りた。渚の腰が俺の両太股の間に落ちる。
イソギンチャクの如き肉壷から解放された男根は、その逃亡の際の摩擦でトドメを刺されていた。つぶつぶとした膣壁による生摩擦の感触は、たった一度の抜き差し、否、抜きだけで至福の極みに達した。
肉槍がぶるんぶるんと、派手に揺れながら精液を撒き散らす。まるでバッファローが助走を始める直前の角を思わせる暴れっぷり。
糊のような精液は、渚の頭を優に越えて彼女の脳天に着弾する。渚はそれを避けようとは一切しなかった。じっと俺を見つめながら射精を受け止めた。まるでそうするのが当然の義務だと言わんばかりに。
手を触れずとも白い噴水が続く。粘液の塊は時折渚の頬や顎にも打ち付けられたが、その大半は首元から下に集中し、水着は掛かっていない場所の方が少ないほどに精液塗れになった。
渚は顎から垂れるゼリー状の粘液を指で掬って舐め取ると、「……良かった。こんな射精、中でされてたら絶対妊娠してた。精液も味濃いし」と安心したように微笑んだ。
そして「……ナイスプレー」と慎ましく俺を称えると、そのまま顔を胯間に埋めて、生のまま射精直後の男性器を頬張った。
以前はフェラチオもコンドームを着用するよう渚の方から申し出ていたが、お礼と贖罪を兼ねてか、自ら生で口の奉仕を行った。
感触においては生膣とは比べようもないが、それでも「生まれてきて良かった……」とついつい独り言が漏れる程度には多幸感に溢れた。
竿に付着した精液も渚は丁寧に舐め取り、そして尿道に残ったそれらも頬を凹ませて、「じゅるるるる」と音を鳴らしてまで吸い取った。そして例外なく全て呑み込み、胃に収めた。
「綺麗になったか?」
「ん。綺麗綺麗」
渚が顔を上げる。
「生おちんちんでイっちゃったけど、動いてないから生セックスしたわけじゃないし、ギリセーフだよね」
俺に同意を求めるが、返事をする余裕など無い。人生最大の射精を我慢した俺の心と身体が、行き場を失ったままだ。
「……おちんちん、まだギンギンだね」
水風船が破裂したと思ったら、その下から更に膨らんだ水風船が顔を出した。マトリョーシカ式の怒張男根。
「待ってね、フロントに電話して新しいゴム持ってきてもらうから。すぐにハメて抜いてあげるから」
渚がベッドの上を四つん這いで内線に向かっていく。揺れる安産型の臀部が、曖昧模糊としていた俺の意識を完全に打ち砕く。
背後から近寄り、ビキニボトムの腰紐を掴むと一気にずり下ろす。
「わっ」
驚き振り向いた渚を突き倒すと、仰向けに寝転んだ彼女のビキニトップを剥ぎ取った。精液で白濁した水着一式をベッド脇に投げ捨てる。
呆気に取られている渚の両脚の間に腰を下ろし、肉食獣のような荒く機敏な動きで穂先の照準を秘裂に合わせる。竿に精液が付着していない事を確認するだけで精一杯の、切迫した精神状態。
渚は俺が尋常ではない様子に気付きつつも、その原因が自身の勇み足で一人勝手に絶頂してしまい、俺に無理な我慢を強いてしまった自分にあるという負い目を感じていたのだろう。
それでも渚は言わなければならない。彼氏が居る女の子として、安全日ではない女の子として言わなければならない。
「……だめ、だからね?」
後先考えなくて良いのなら、自責の念も相まって、友達として俺の願いを叶えてあげたいという心苦しさを表情に浮かべる。しかし、暴走状態の俺はその心の隙を押し広げるように、生ちんこを生まんこに埋没させていった。
「んっ……くっ」
渚は唇を噛みしめながら、腹筋の出来損ないのように首を持ち上げる。
今度はアクシデントではなく、自らの意志で生挿入を果たす。得も言われぬ充足感で満たされた。
「ダメ、だってば……」
腰を引く。
にゅるる。
不純物を介さない、性器同士による摩擦の音は、ゴム着用のそれとは微妙な差異を感じた。
腰を突き出す。
にゅるんっ。
「あぁっ」
うねる膣壁に、つぶつぶのオプション。
たった一回の抜き差しで俺は悟った。これを繰り返したら一分保たない。しかしペースを調整するような余裕などあるはずもなく、俺はただただ遮二無二腰を振る。気が触れてしまいそうな、我慢の鬱憤を晴らすように腰を叩き付ける。
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
にゅるっ、にゅるっ、にゅるっ、にゅるっ。
「……マ、マサキさん」
「何すか」
「これって、いわゆる生セックスになってません?」
「その可能性は否定しきれない」
「何パーくらい?」
「おおよそ百パー」
「だよね……んっんっ、はぁっあ……避妊してないし、おちんちん行ったり来たりしてるしで、百パー生セックスだよねこれ…………あっやぁっ、いっいっ、あっあぁん♡」
「まぁ、ほら、あれだ。友達でも生セックスくらいするって」
「いつから日本はそんなフリーセックスな社会になったのさ……あっ、あんっ、はっあっ……あっあっあっあっ! んっはぁっ、あっ、それっ、あっあっ♡ やっあっ、いいっ、いっ、あんっあんっあんっ♡ ちょっ、やばいって、マサキさんマサキさん、あたし速攻でイキそうなんですけど……」
「いいぞ。もう好きにイケ。俺もお前のおまんこでイク気満々だから」
渚の膝に両手を置き、にゅるにゅると腰を前後させながら、「ちゃんと外で出すから心配すんな」と付け加えた。
「絶対、だからね……? あっ、あっ、あっ、あっ、あっ♡ イクっ、イクっ、あぁイクっ!!!」
ビクビクっと痙攣する。相変わらずの、過剰なほどの締め付けによる、過剰なほどの快感。
「……あぁもう、折角ギリセーフで留まってたのに、結局生セックスでイっちゃった……」
一息つく渚を尻目にピストンを続ける。
「あっ♡ あっ♡ こら、まだイってっ、あっひっ、いっいっ、ひぃっいっ♡」
極限まで締め付けた渚の膣は文字通り男根を捕えて離さない。腰を前後させても性器同士に摩擦が発生しづらいほどの強固な抱擁。
「あいっ、いっ、ひっんっ♡ だめっ、だめっ、死んじゃう……イってるおまんこの気持ち良い所、生チンポのカリでゴシゴシされ続けたら、死んじゃうって!」
「骨は拾ってやる」
「アホかっ! あっ♡ あっ♡ あっ♡ イック、イック、イック♡ イってるのに、イっちゃうっ! わけわかんなくなるっ! ふっう……んっ……ンッグぅ♡ はっ、はっ、はっ……うっそまた来るっ、イッく♡ はぁ……はぁ……はぁ、ちょっと待って、勘弁して、連続で来すぎだって……んん……ひぃっ、っぐ!!!」
渚は一呼吸する度に昇り詰め、心身ともにバラバラになりそうな絶頂を繰り返した。その度に中の俺を激しく抱きしめる。
既に男根は感覚を失っていた。その所在すら不明瞭で、あれほど力強く勃起していた肉槍が、マグマのような渚の膣の中で輪郭を失い、渚の一部となっていた。
不思議な一体感に身を委ねていると、渚が同様の事を口走る。
「どうしよ……おまんこ溶けちゃってる……あたしがマサキのおちんちんになっちゃってるみたい」
互いの境界線が有耶無耶になる。
幸せな快感が下腹部に凝縮された。
「出る」
普段の射精の前兆とは全く別モノだったが、その言葉が思わず口を衝いて出た。
「……マサキ」
渚が何かを訴えかけるような視線を向ける。
「わかってる。外で出すから」
「……そうじゃなくて……別にいいよ」
「え」
「……マサキの好きな所で、出していいよ」
俺が返答に詰まると、渚が続けた。
「マサキのおちんちんがこんな風になっちゃったの、さっきあたしが勝手にイっちゃった所為だし……だから今度は、マサキが好きなように気持ち良くなってくんないと、なんかフェアじゃないというかですね……」
「……そんな事言われたら、このまま出したくなるに決まってるだろうが」
渚は小さく「ん」とだけ言うと、覚悟を決めたように瞼と唇をぎゅっと閉じた。
そういえばこいつは昔からこういう所があった。当たりのアイスを引き当てても、絶対にそれを一人占めしない。俺や友幸に辛い事があると、必ず一緒に背負おうとする。嬉しい事もそうじゃない事も、友達なら分け与えて当然という考えなのだろう。
友達としての渚の一面が色濃く見せつけられた俺は、胸がほんのりと温かくなった。その温もりは性器を擦り合って発生する熱と比べるとか弱く感じるが、なにものにも代え難い尊さに溢れていた。俺と渚の間に愛などという大層な感情は無いが、どんな関係性にも負けない強い繋がりを改めて感じた。
「顔に掛けたいから座って」
そう言いながら結合を解除して、仁王立ちになる。中出しをしなければ収まらないという男の業は、いつの間にか霧散していた。
渚は一瞬きょとんとしたが、嬉しそうに身を起こして俺の前で胡座をかいて座ると、「やっぱり男女の友情って成立するよね」とやはり嬉しそうに言った。
「しないだろ。俺お前の事、女と思ってねーし」
俺に向けて顔を上げる渚に対して、自分の手で扱きながら悪態をつく。
「渚ちゃん可愛いよ~って言ってたのは、どこの誰だったかな?」
「顔は可愛いから仕方無い」
「素直でよろしい」
ちゅ、と亀頭に口づけをする。
「やっぱ良く見ると中の下だわ」
渚が無言で膝を平手打ちする。
「……出すぞ」
「よっしゃ来い」
「口開けて」
渚は口を開ける前の一瞬、少しだけ神妙な顔と声で、「……マサキ、ありがとね」と呟き、「んっ」と口を開けて舌を差し出した。そこに目掛けて射精する。とはいえ生中出し直前までいった男根から放たれる精液は、三度目とはいえおびただしい量と勢いで、瞬く間に渚の顔全域を白く染め上げた。開いた口の中にびゅるびゅると放たれていく精液も、時々口を閉じては嚥下をして、また口を開いて吐精を受け止め続けた。
勢いが弱まる頃の渚の顔は、精液が付着していない箇所が見当たらないほどに塗り潰されていた。
鈴口からどろりと垂れる最後の塊を、渚は直接舌で受け止め、それを飲み干すと「マサキのザーメン、癖になりそう」と笑い、陰茎を口に含むと「じゅるるる」と吸った。
「それめっちゃくすぐったい」
「全部吸い出してやる」
「やばいって。マジでマジで」
射精直後に渚の口淫は思わず腰が引ける。しかし渚は逃がすまいと食いついてくる。
「さっきの仕返しでーす……じゅるっ、じゅるるるる」
「てめぇ、いい加減にしろよ……あぁそれ、すっげ」
「じゅっぽ、じゅっぽ、じゅぷ、くちゅ……やば、マサキの生ちんぽ美味しい」
「もう勘弁してください……はぅ」
「やーだ。もっとザーメンちょうだい……ちゅうぅっ、っく……ちゅっぱっ、じゅるるっ、じゅぽっじゅぽっじゅぽっじゅぽっ」
「うぉぉ……この野郎!」
「きゃっ」
まるで猫がじゃれ合うような取っ組み合いから、組んず解れつを経てシックスナインの体勢となる。
「あっ、だめっ、まだそこ敏感……はぁ、ん」
「男女のくせにクリトリス勃起させてんじゃねーよ」
「やっ、吸っちゃだめっ、あぁっ♡ んっ、んっ、あっ♡ そっちがそのつもりなら、こっちだってガチで反撃するからね……んっ、れろ、んっちゅ、ちゅぱっ、ちゅぱっ、くちゅっちゅぅ」
「くっ、やるじゃねぇか……あの、渚さん」
「降参?」
「俺の負けでいいから、アナル舐めしてくれない?」
「いいよ。した事ないからやり方教えて……ちゅっ、ちゅぱっ、んっちゅ、くちゅっ、んっ、ふぅ、ちゅぅ、ちゅっちゅっ」
じゃれ合うような後戯。
生による結合ですら俺達の間には何も特別な感情を生まなかった。肌を重ねる度に深まるのは友情だけだ。
ちなみにこの後、四つん這いになってアナル舐めされながら搾乳するように手コキをされて、四度目の射精を果たした頃、丁度友幸と合流する時間となり、三人でいつも通り遊んだのであった。
渚は結構丁寧に奉仕をするクチなので、肛門への舌の這わせ方はしっかり且つねっとりとしていた。合間に挟む肛門へのキスも「ちゅっ、ちゅっ」と啄むようなものから、「ちゅう」っと音を鳴らして吸い付くようなものまでバリエーションに富み、初めてだったわりには非常に満足出来た事を記しておきたい。